今回はお待たせしました、海未回です。話も海未視点で進みますが決して変態な回ではないのでご安心ください!前回暴れすぎましたから少し反省です(少しだけ)
ちなみに話の構成には元ネタがあります。
園田海未役の園田海未です――――って、そんなネタはどうでもいいのです!!今、私は重大な危機に立たされています。
早いもので、μ'sの皆さんと零の家で同棲生活を初めて5日が経ちました。もうすぐで一週間が経つと考えると、これまでの人生の中でここまで早く時が進んだと感じられるのは初めてです。それほど零やμ'sの皆さんと一緒にいるのが楽しいのでしょう。初めは同棲生活には否定的だったのですが、一緒に住んでみれば楽しくて案外悪くないものです。
さて、穂乃果たちは折角恋人である零の家へ来たということで、彼にお手製の料理やお菓子などをほぼ毎日交代で振舞っています。もちろん零のためとはいえ私たちもそれを頂くのですが、ここ最近の練習量が多いためか、ついつい食べ過ぎてしまうんですよね。
そして、気がついたら――――――
「ふ、増えてます……体重が!!」
お風呂から上がった私は、タオルを身体に巻いて脱衣所にあった体重計の上に乗っています。なんとなしに測ってみたらまさかここまで増加していたとは……
穂乃果や花陽に散々体重を気にするように言ってきたのにも関わらず、まさかこの私までもが同じ状況に陥っているなんて……やっぱり食べ過ぎが原因でしょうか?穂乃果と雪穂が作ったほむまんやことりのチーズケーキ、花陽のマカロンや凛お手製のラーメンなど、原因を思い出せばキリがありません。
ああ……もしこのことが零や穂乃果に知られてしまったら!?絶対馬鹿にされること確定です!!穂乃果からは『あれるぇ~海未ちゃん、あれだけ穂乃果にガミガミ言って、自分は体重が増えてるってどういうことかなぁ~』と皮肉混じりで煽られるでしょう!!零からも確実にネタにされてしまいます!!それだけは何としても避けなければ!!
こうなったら――――ダイエット大作戦です!!
零や穂乃果はもちろん、彼らの耳に入ることを警戒して誰にも言わずたった1人でダイエットを成功させてみせます!!やるったらやります!!
~※~
翌朝:学院
「お腹が空きました……」
ダイエット1日目ということで、まずは朝食を少しだけ抜いてみました。
もちろん朝食を抜くダイエットなど逆に身体を壊す可能性があることは分かっています。ですがこの体重増加は恐らく食べ過ぎが原因。思い出せば最近は朝食ですらたくさん食べていました。そのせいもあってか、朝食を少し抜いただけでまだ1限の授業前なのにも関わらずもの凄くお腹が空くのです……
「どうしたの海未ちゃん?朝から元気ないよ……?」
「ことり……ご心配ありがとうございます。最近練習量が多くて、ちょっと疲れているだけなので大丈夫ですよ」
「そう?でも気分が悪くなったらいつでも言ってね?来週末にライブが控えてるのに、身体壊しちゃったら大変だから……」
「お気遣いありがとうございます」
ことりの心配そうな顔を見ていると、胸が苦しくなってきますね……嘘を付いている私を許してください。穂乃果に近しいことりにダイエットのことを知られてしまうと、彼女の耳に入ってしまう可能性がグンと高くなります。ですが親友を騙すのはやっぱり辛いものがありますね……
「あっそうだ!!ことり、今日朝早くに起きてチーズケーキを作ってきたんだ♪これを食べればきっと元気になるよ!!」
「えっ!?」
ち、チーズケーキ!?!?あまり頭に糖分が回っておらず空腹でお腹が鳴りそうな今、ことりのチーズケーキはまるで某アンパンのような救世主です!!まさかここまで自分から甘いモノを求める時があったでしょうか!?
ことりは私の目の前に小さくスライスされたチーズケーキを手渡してきました。見た目は至って普通のチーズケーキなのに、私の目から見ればそれは宝石のようにキラキラと光っています。チーズケーキの黄色が今の私には黄金の輝きにしか見えません!!
さらにこの鼻をそそる甘い匂い!!この匂いだけで空腹を満たすことができるのならどれだけよかったことか……残念ながらお腹の虫が活発になるだけで、今にもお腹が鳴ってしまいそうです!!
「あぁ~いい匂い♪ことりちゃ~ん!!穂乃果にも頂戴!!」
「はいどうぞ♪」
「わ~い♪ありがとう!!」
チーズケーキの甘い匂いに誘われて、穂乃果がフラフラとこちらへやってきました。そしてことりからチーズケーキを受け取ると、大きな口を開けて――――
「やっぱりことりちゃんのチーズケーキ最高!!よっ!!世界一!!」
「もう~照れるよ穂乃果ちゃん♪」
まさか一口で全部食べてしまうとは……今日の朝食でパンとご飯の両方食べていたのにも関わらずまだ食べられるんですか。本当なら注意するところなんですけど、今の私にはその権利はありません……
「海未ちゃんもどうぞ♪」
「今日のチーズケーキは今まで以上の美味しさだよ!!流石零君への愛を込めただけのことはあるね!!」
「えへへ~~それほどでも♪」
「あっ、あぁ……」
ことりは再び私の目の前にチーズケーキを差し出しました。またしても甘い匂いが私の鼻、そしてお腹の虫を刺激します!!このままではお腹が空いていることを悟られるかもしれません。穂乃果は気づかないでしょうが、ことりは意外と察しがいいので……
仕方がありません、ここは――――
「すみません!!ちょっとお手洗いに!!」
「あっ、海未ちゃん!!」
「行っちゃった……」
私は席を立ち、全速力で教室から出ました。
すみませんことり、穂乃果!!私は一度決めたことは貫き通したいのです。どれだけ甘い誘惑に誘われたとしてもそれに靡くとは武士の恥、例え親友だったとしてもそれは変わりません!!
あぁ……走り去る時に見えたことりのシュンとしか顔が私の胸に突き刺さります。この上ない罪悪感に襲われてしまいますがダイエットのためなのです、許してください!!
私はそのまま誰とも目を合わさぬよう、猛ダッシュで廊下を駆け抜けました。うぅ、生徒会副会長としての威厳もなにもありませんね……
~※~
「はぁ~……お腹が空きました。さっきから同じことばかり言ってますね……」
登校してくる生徒を掻き分け、私は中庭のベンチに座り込んでいます。普段ならこの程度で疲れることはないのですが、まさか朝食を一食抜いただけでもここまで体力が出ないとは……若干ですが息切れもしますし、このまま昼食の時間まで私の身体は持つのでしょうか?いや、持たせます!!マイナス思考になってはダメです!!
ぐぅ~~。
「ハッ!!こ、これは私の……お腹の音!?」
は、恥ずかしいです!!周りの誰もいないとはいえ、まさかここまでハッキリとお腹の音が聞こえるとは……さっきの意気込みが一瞬にして溶けてしまいました!!この音を自分でコントロールできるわけではありませんし、授業中に鳴らないことを祈るしかありません。
「そう言えば、お腹が鳴るのを抑えたい時は思いっきり息を吸い込むのがいいと聞いたことがあります。試すのは初めてですが、ここは藁にもすがる思いでやってみましょう」
おおっ!!お腹が空気で満たされる感じがします。これは思った以上に効果があるのでは!?お腹の音も鳴らなくなりました。では教室に戻る前にもっともっと吸っておきましょう!!
「お前……こんなとこでなにやってんだ?」
「れ、零!?」
突然後ろから声がしたと思ったら、いつの間にか零が私の背後に立っていました。よりにもよって一番見つかりたくない人に見つかってしまうとは!?穂乃果にダイエットのことを知られるのもイヤですが、一番危険なのは零です!!いつも体重管理にはうるさい私がダイエットだなんて、彼に知られたら笑われるに決まっていますから!!
「あ、あなたどうしてここへ……?」
「さっき教室に戻ったら穂乃果とことりがお前のこと話していてさ、なんか様子がおかしいって。だから探してたんだよ」
「そ、そうですか……」
「それでお前はなにしてんだ?」
「別に心配されるようなことはなにも!!」
カンの鋭い零のことです。少しでも不穏な動きを見せればすぐにバレてしまうでしょう。ここは頭をフルに回転させて彼を追い返さなければ――――と思いましたが、朝食を抜いているせいでイマイチ頭がよく回りません。
零が目の前に現れただけでこれだけ取り乱してしまっているのに、さらに頭まで回らないとなると――――もう絶体絶命、空前絶後、背水の陣、暗雲低迷、危急存亡です!!窮余一策の手すらも思い浮かばないとは!?
「さっきことりが作ってきたチーズケーキ、食べずに飛び出してきたんだろ?洋菓子があまり好きじゃないお前でも、ことりのチーズケーキだけは毎回美味しそうに食べてたじゃねぇか」
「それはそうですが、今日はあまり食欲がないので……」
嘘です!!本当はお腹の中に何も入ってないと言っていいほど空いています!!でもあれほどまでに言い突っぱねてしまったら、もう言えないじゃないですかぁあああああ!!
「体調が悪いなら無理せず俺に言えよ。意外とお前も自分で抱え込む性格してるからな」
「はい、ありがとうございます……」
なんとか深く詮索されずに済みました。彼はかなり強引なところもあるのでバレなかったのは僥倖と言えるでしょう。でも零と穂乃果、ことりは家だけではなく授業中や休み時間も一緒にいます。少なくとも今日一日だけは上手く切り抜けなければなりません。園田海未、17年の人生最大の山場です!!
「ほら、もう1限目始まるから戻ろうぜ。立てるか?」
「大丈夫です。ご心配お掛けしてすみません……」
「いいよ別に。むしろ俺たちは心配を掛け合うような仲じゃないか。だから男の俺に言いづらかったら穂乃果やことり、μ'sのメンバーを頼れよ」
「零……」
その優しさが私の心に突き刺さります!!ことりといい零といい、いつもこんなに優しかったですか!?いつも無駄にからかわれることが多かったような……?もしかしたらこんな状況だからこそ気づくことがあるのかもしれませんね。
~※~
「今日はなんとか耐え切りました。頑張ったのですから、体重も減っているといいのですが……」
あの後なんとか昼食まで耐え切りました。昼食を取ったあとはいつも通りの体力に戻ったので零たちに心配されることはなく、練習も無事に終えることができました。μ'sの皆さんにまで心配を掛けることなく今日を終えられたのはよかったですね。これで零たちも私のことを疑わなくなるといいのですが。
そして運命の体重測定。昨日と同じく、私はお風呂上がりにバスタオル1枚だけを身体に巻いて体重計と対峙しています。今日は朝食を抜いて、しかも練習はいつもより1.5倍ほど激しく動いたので確実に脂肪も燃焼されているでしょう。今日こそは……今日こそは!!
覚悟を決めました。私は目を瞑ってまず右足を体重計の上に乗せます。その後すぐに左足も同じように乗せ、目を……目を開きますよ!!お願いします!!
「…………へ?え、えぇええええええええええええええええええ!?」
ふ、ふふふふふふ増えてます!?体重が……増えています!!
ど、どうしてですか!?!?今日あれだけ頑張ったのですよ!?変わらないどころかむしろ増えているってどういうことですか!?もしかして今朝空気を吸い過ぎたのが原因でしょうか!?もはや私の身体に何が起こっているのか分かりません!!もしかして病気!?生涯太り続ける病気ですか!?
「はぁはぁ……落ち着きましょう。これでは皆さんにバレてしまいます……でも夕食もある程度抑えたのにこの仕打ちとは、これは明日も今日と同じように切り抜ける必要があるみたいですね……」
憂鬱ながらも、まだまだ私のダイエット生活は続くみたいです……
~※~
~翌朝:学院~
「う、海未ちゃん大丈夫?」
「こ、ことり……心配の必要はありません。元気ですよ」
「そんな風には見えないけど……」
まさか私が穂乃果みたいに机を枕にして寝ることになるとは……
私はまたしても朝食を抜き、今日という修羅に足を踏み入れました。昨日と違うのは夕食まで少食にしてしまったこと。つまり昨日の朝以上に今朝はお腹の虫が活発なのです。頼みますからお腹の中で暴れるのだけはやめてください!!昨日も授業中にお腹が鳴りそうで冷汗をかきましたから!!
「昨日海未ちゃん、いつも以上に練習頑張ってたもんね♪穂乃果も見習わないと!!」
「穂乃果……あなたにしてはいい心がけです」
「そんな弱々しく上から目線で言われても……」
まさか穂乃果に引かれるとは思ってもいませんでした。今の私はそれほどまでに弱っているということなのでしょうか?園田の娘たるものいつも誠実でなければなりませんのに……食べることばかり考えてしまいます。これでは穂乃果や花陽と同じではないですか……
「そうだっ、今朝着替えを取りに家に帰ったらね、お母さんからほむまんを貰ったんだ!!これを食べれば海未ちゃんも元気でるよ!!」
「ほむまん……」
「はいこれはことりちゃんの分!!」
「わぁ~ありがとう♪ほむまん食べるの結構久しぶりだなぁ~」
「最近は新作ばかり試食してもらってたからね。実は私も久しぶりなんだ」
ほむまん……私は穂むらの和菓子が好きでよく買うのですが、特にお饅頭は大好物なのです。だからそうやって目の前で見せられると、お腹の虫が一気に動き出しちゃいます!!私もほむまんは久しぶりですが、ここまでいい匂いでしたっけ!?空腹過ぎていつもよく食べているほむまんが、より一層美味しそうに見えて仕方がありません!!
唸ります!!忌々しいお腹の虫たちが!!
こ、ここにいては確実にお腹が鳴ってしまいます!!それを穂乃果とことりに聞かれたら、ダイエットしていることが一瞬にしてバレて……
2人には申し訳ないですが、昨日と同じくここで離脱します!!
「わ、私はお腹いっぱいなので、あとは零に全部あげちゃってください」
「えっ、そうなの?あまり朝ごはん食べてなかったような気がするけど」
「穂乃果はパンにご飯、目玉焼きにお魚、そして最後にはパンとたまごを合体させてフレンチトーストを食べたよ!!」
「それは食べ過ぎだよ穂乃果ちゃん……」
「そ、そうですよ……す、すみません、ちょっとお手洗いに行ってきます!!」
会話が主軸が穂乃果に向けられている間に、私は席を立って教室を飛び出しました。まさか2日続けて2人を騙すようなことをしてしまうとは……お腹は空いていますが心は罪悪感でいっぱいです。
「う、海未ちゃんがほむまんを拒否するとは珍しい!!」
「やっぱり何かあったのかなぁ?」
「穂乃果、ことり」
「「零くん!?」」
「ここからは俺に任せてくれないか?」
~※~
「はぁ~……また穂乃果とことりにいらぬ心配を掛けてしまいました……」
そして私はまたしても中庭まで猛ダッシュで走りました。途中で何人もの下級生から『ん?あれって園田先輩じゃない?どうして廊下走っているんだろう?』みたいな目で見られ、もはや生徒会副会長失格です……これではもし仮にダイエットが成功したとしても、それで犠牲となった代償が大き過ぎますよ……
あぁ……どうしたらいいのかを考えようにも、お腹が空き過ぎて頭が上手く回りません。このまま穂乃果やことりを騙し続けていいのでしょうか?でも体重が増えたことを自分からバラすのは恥ずかしいです!!真姫みたいにプライドがあるわけではないですが、やはり私も女性です、例え同性であっても体重の話をするのは気が引けます。
い、一体どうすれば――――――
「ま~たこんなところで座り込んで、なにやってんだよ」
「零!?」
昨日と同じく突然後ろから声を掛けられ振り向いてみると、そこには零が心配そうな目をして立っていました。彼のこんな顔を見るのはいつぶりでしょうか……?その顔を見ているとなんだかこちらまで寂しくなってきます。
「ほらよ」
「つ、冷たい!!」
零は私の頬に冷たい何かを押し付けてきました。それを手に取って確認してみると、よくCMでも放送されている、朝時間がないサラリーマン向けに販売されている飲むタイプのゼリーでした。謳い文句は確か……『カロリー控えめ』でしたっけ?それほど食べずにお腹を満たしたい人向けのゼリーだそうです。
「それなら大して食わなくてもある程度腹は満たせるだろ」
「あ、ありがとうございます。ですがなぜこれを私に……?」
「無茶なダイエットしてるからだ……」
「え……?」
ま、まさか零にバレていたとは!?このことは誰にも言っていないはずです……まさか脱衣所で叫んでいたのが聞こえていたとか……?いやそんなはずはありません。体重計に乗る前に脱衣所の外や周りに誰もいないことを入念に確認しましたから。それなのにどうして……?
「女の子が飯を食わない理由は2つ。1つはマジで体調が悪いこと。でもお前は昨日の練習で穂乃果や凛に負けないくらい激しく動いていた。だから体調が悪いなんてことはない。だとしたら残るはもう1つ、ダイエットしかないだろ。現に昨日お前、昼食後はいつも通りだったしな」
「そ、それは……」
「大方、俺や穂乃果に知られることで馬鹿にされるとでも思ってんだろ?いつも穂乃果たちにうるさくダイエットダイエット言っているお前なら、そう考えてしまうのも無理はないけどな」
私は、言葉を失ってしまいます。
まさか零が私のことをここまで見てくれていただなんて、感心など軽く通り越して感動してしまいました。黙っていたはずなのに、騙していたはずなのに、彼は私の心を完璧に読み当てたのですから。
バレてしまったと少し焦る反面、今まで心の中に溜め込んできたものが一気に流れ出し、その気持ちを共有できる人ができて安心もしています。自分の心は汚れているのにも関わらず、人の心を浄化するのは得意なんですね。
本当に、流石と言わざるを得ないです。
「はい、すべてあなたの言う通り、私は昨日からずっとダイエットをしていました」
「言わなかったのはいいとして、どうして騙したりしてたんだ?穂乃果もことりも、言ってさえいれば協力ぐらいはしてくれただろうに」
「やはり同性や親友であったとしても、体重のことを離すのは恥ずかしいのです……」
私がそう言った瞬間、後ろにいた零が座っている私の前に回り込んできました。
そして、私に近づき両手で私の肩を優しく掴みました。か、顔が近いです!!
「いいか海未、いくらダイエットと言っても無理はするな。身体を壊してしまったらライブどころじゃないし、それより日常生活にまで支障をきたすだろ。俺はお前に身体なんて壊して欲しくない。そんなことで悩んでいるお前を見たくない。お前にはずっと笑顔でいて欲しい。恥ずかしかったら別に話さなくても構わない。だけど決して無理はするな。無理をされると俺が……イヤ、だから」
最後は自分で言っていて恥ずかしくなったのか、顔を赤くしてすこしそっぽを向いてしまいました。そんな彼が愛おしくて可愛くて、今まで悩んでいたことが急にちっぽけなことのように思えてきます。
私は勘違いをしていました。零はこういう人でしたね。彼は人の失敗を笑いに変えてしまう、ある意味で最低な人間なのですが、それは失敗した本人にやる気を与える不思議な力があります。
そして私たちが本気で悩んでいる時は、決してそのようなことはしません。ちょっと強引なところもありますが、優しく手を差し伸べてくれる。その暖かさに私たちは惚れてしまったのです。
「ふふっ♪」
「な、なんだよ急に笑いやがって……」
「すみません♪突然真顔で語りだすものですから、少しおかしくって♪」
「ポエマーみたいで悪かったな」
「別にそこまでは言ってないじゃないですか」
笑ってしまったのは何も分かっていなかった自分に呆れてしまったというのもありますけどね。でも今は彼の暖かさが心に染みます。もっとあなたの側にいたい、そう思えるくらいに……
「私のこと、ずっと見ていてくれたんですね」
「当たり前だろ、彼女なんだから。だから無理してたらすぐに分かる」
「ふふっ♪ありがとうございます」
「ああ。でも穂乃果とことりには謝ろうな。アイツら昨日からずっとお前のこと心配してたんだぞ?」
「それはもちろんです。いらぬ心配をお掛けしましたね」
「そうだな。じゃあ戻るか!!」
「はいっ!!」
今回もまたあなたに助けてもらいましたね。でもいつか私からも精一杯の恩返しをするつもりですから、覚悟してくださいね♪
あなたと付き合うことができて、本当によかった……
「あぁ、そうだ言い忘れてた」
「なんですか?」
「脱衣所の体重計、アレ壊れてるから」
「は…………?」
なんですってぇええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?!?
綺麗に話のオチをつければよかったものの、汚く終わるのがこの小説なのです(笑)
初めはダイエットなら花陽にさせようと思っていたのですが、前回の後書きに載せた登場回数リストを見てもらえれば分かる通り、海未の出番が少なくメインすらあまり張ったことがない実状でした。従って彼女が抜擢され、結果的に可愛く描けたのでよかったです。
流石、公式で真面目キャラでもありネタキャラでもある海未。構想を文字に起こす時でもこれほど書きやすいキャラはいませんでしたよ(笑)
思い返せば零君と恋人になった9人の中で、『新日常』に入って零君とエ○チしていないのは彼女だけなんですよね。頬っぺを触ったりキスはしましたけど。これは次の個人回では零君を暴走させざるを得ないな!!
恐らく今月の更新はあと1回です。本当に一ヶ月、早いですねぇ~……
Twitter始めてみた
https://twitter.com/CamelliaDahlia