ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常2~   作:薮椿

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私だって甘やかされたい!!

「やぁ~っと卒論終わったよ。ようやく春休みかぁ~」

 

 

 伸びをしながら虹ヶ咲の校内を歩く。

 先日大学の集大成である卒業論文の発表が終わり、ついにお待ちかねの春休みに突入した。大学の春休みと言えば2か月越えの長期休暇であり、もはや人生の春とも呼ばれるくらいだ。その長い休暇期間に旅行へ行く者、バイトに精を出す者、勉強に勤しむ者などなど、これだけ自己研鑽に使える期間は人生で存在しないくらいだ。

 

 かく言う俺の予定はと言うと、別にどこかへ遠出することもないしバイトをするつもりもなく、勉強も卒論でさんざんやったのでもう勘弁。だったら何をするのか、そりゃ女の子たちとの予定が詰まっているのでそれを消化するに限る。俺が長期休みに入ったという情報がどこから漏れたのか、最近やたらめったら女の子たちから予定を入れられるんだよな……。もちろん鬱陶しいとか思ってないけど、ちょっとくらい休ませてくれてもいいんじゃねぇか……?

 

 若干の憂いを感じつつも、女の子たちとの日常をより一層謳歌できる期間は楽しみでもある。そんなことを考えながら部室に入ると、何やら脳を蕩けさせるくらいの甘い香りが部屋を支配していた。

 

 

「な、なんだよこれ……。エマ、お前の仕業か……?」

「あっ、零さん。こんにちは!」

 

 

 エマがお香のようなものを焚いていたので、この甘い香りは間違いなくコイツの仕業だろう。ただ甘ったるくて腹に溜まる重さみたいな感じではなく、むしろ疲れを癒すかのような薄甘い香りのためぶっちゃけ心地良いと言えば心地良い。この部室にいるのが母性の塊であるエマ1人ってのも癒し効果に拍車をかけているのかもしれない。

 

 

「どうしてこんなアロマなんて焚いてんだ? みんな練習続きで疲れてるからとか?」

「それもそうですけど、一番の理由は零さんのためですっ!」

「えっ、俺?」

「はいっ! 最近卒論や教師に向けてのお勉強でお疲れみたいでしたから、これもう私が癒してあげるしかないと思いました♪」

 

 

 今まで見たことがないほどの笑顔を向けるエマ。コイツにとって人を甘やかしたり癒したり、お世話することは何よりの生きがいとなっている。私生活ズボラな果林や寝坊助な彼方が同級生にいるせいでその願望に更に拍車がかかっており、もはや誰かを甘やかしていないと居ても立っても居られない中毒症状に陥っていたこともあるくらいだ。同じユニットのかすみや璃奈の面倒もよく見ていたり、歳の割に大人びているしずくや栞子を唯一甘やかす存在としても活躍。もはやみんなのお母さん、いやママと言っても差し支えはないだろう。

 

 ただ、流石に年上の俺に対しては甘やかそうとしてこない。俺のことを心酔するほど慕っているってのもあるだろうが、コイツが俺に迫って来る時は他の子と同じく女性として誘惑してくることが多い。だから今、こうして俺を癒そうとしてくるのは意外と珍しかったりもするんだ。

 

 

「まあ最近色々重なって疲れ気味なのは確かだからな。で? どうやって癒してくれるんだ?」

「えっ、私に甘えてくれるんですか!?」

「甘えるっつうか、たまにはリラックスしたいだけだ」

「えへへ、ずっとこの瞬間を待ってました♪」

「なんかちょっとこえぇな……」

 

 

 笑顔に曇りは一切ないんだけど、ここまで楽しみにしているってことは虎視眈々とこの時を狙ってたってことだ。もちろん俺を甘やかしたいのは善意なんだろうけど、年上の男にそんな気を向けるのは度胸があるっつうか、怖いくらいの母性の持ち主なんだと思う。コイツのテンションが上がり過ぎて赤ちゃんプレイとか強要されないよな……??

 

 

「怖くないですよ! さぁ思い切って私にオギャりましょう!」

「やっぱり赤ちゃんプレイじゃねぇか!? そんな趣味はない!!」

「私は疲れを癒す達人なんですよ!? だったらここでオギャらないと損です! たっぷりバブみを感じさせてあげますから!」

「どこから覚えて来るんだよその言葉……」

 

 

 エマは名前から分かる通り留学生であり、日本のオタク文化には疎いはずだ。だが最近は自分のライブ動画に寄せられるコメントに影響を受けているため、そういったオタク用語を次々を覚えてしまっているという非常に残念な展開となっている。まあ母性があるってのは自分自身で公言しており、むしろオタク用語を使用することでみんなと一体感を持てるから本人は嬉しがってるんだけどな。ただ真っ白なキャンパスを黒塗りにしてるような気がして罪悪感がある。言っておくと、俺はそういった言葉を教え込んでないからな……。

 

 エマはソファに腰を掛ける。すると大胆にもスカートの中が見えそうになるくらいに両脚を開いた。

 何をしているのかと目を丸くして彼女を見てみると、屈託のない笑顔で自分の脚と脚の間を指差していた。

 

 

「まさか……その間に入れと?」

「はい♪」

 

 

 両脚をパカパカと開閉させながら俺を誘うエマ。女子としてはしたないことこの上ないが、あの柔らかい太ももに挟まれたらどれだけ気持ちいいだろうか。虹ヶ咲のスカートが短いせいで彼女の肉付きが良くきめ細かな白い太ももが露わになっており、開閉して動かすものだからその太ももが揺れて非常に艶めかしい。男と言うのは女の子の胸が揺れる様に目が惹かれるもの。だったら同じ柔らかさと弾力性を持った太ももの揺れに敏感になるも仕方ないだろう。

 

 俺はしゃがみ込み、その揺ら揺らする太ももに釣られるようにエマの開いた両脚の中に侵入する。年下の女の子に脚を開かせてその間に鎮座するだけでも犯罪臭が半端ない。同時に未だにこんなのに釣られる自分が情けなくなってくる。でも男だもん、誘惑に乗って当たり前だろ……??

 

 するとエマは両脚の太ももで俺の顔を優しく挟み込んで来た。いきなりだったので驚いたが、その気持ち良さに抵抗する気にはならなかった。

 なんつうかまぁ……いいじゃん。最近疲れてるってのも相まってか、柔らかいものに包まれるこの感覚に異様なまでの癒しを感じる。その柔らかさは胸で顔を挟まれている感覚と大差はない。傍から見たらさっきよりも情けない姿に見えるが、疲れを癒せるのであれば少しくらいの恥は受け入れよう。どうせ誰も見てねぇしな。

 

 

「どうですか~? 気持ちいですか~?」

 

 

 そして繰り出される癒しボイス。元々コイツの声色は脳トロな部類なのだが、今日は俺を労う目的があるのか意図的にトロける声を出しているようだ。その目論見は見事に的中しており、何故かリラックスできている。ただ太ももに挟まれているだけなのに、やっぱり女の子のカラダの癒し効果は凄い。あとエマ自身の母性滴る雰囲気も相乗効果になっていそうだ。

 

 

「零さん、次は頭を上げてもらってもいいですか?」

「ん?」

 

 

 エマのお願いに従い、太ももに挟まれた状態から頭を上げる。すると目の前には大きな胸、それを隔てて彼女の顔が見える。こうして下から見上げてみると胸の下に影ができているのが良く分かり、コイツの圧倒的な巨乳がやたらと存在感を放っていた。いくら女の子の胸を見慣れている俺とは言えども、この圧巻な光景には思わず息を飲むしかない。

 

 しばらくその胸に見入っていると、それを隔てた向こうにいるエマと目が合う。彼女は聖母のような笑みを見せると、自分の両手を俺の後頭部へあてた。そしてそのまま俺の頭を自分の腹に押し付けて両方の太ももで俺の身体を挟み込んだ。更に上体を少し倒し、その豊満な胸を俺の頭に乗せる。一瞬で俺の身体はエマの全身に包まれた。

 

 

「あ~~今とっても母性が高まっていくのを感じるぅ~~♪」

 

 

 今まで聞いたことがないくらいの昇天しそうな声を出すエマ。確かに男の頭部を自分の手、胸、太もも、腹で抱え込めば、そりゃ包容力も鍛えられるだろう。しかも相手は普段甘やかそうにも甘やかせない年上の男性。そんな奴を自分の温もりで包み込むことができたら、世話好きの身からしたら快感だろうな……。

 

 俺の方はと言うと、またしても情けない光景になってしまった。女の子の脚の間に忍び込み、頭を抱きかかえられながら顔面を腹に押し付けている。成人男性が女子高生に対する行動としてはもう擁護できないレベルで情けなく、傍から見たら気味悪がられることは必至だ。

 

 ちなみに俺の後頭部はエマの巨乳置きとなっているのだが、柔らかいながらにずっしりとした重みを感じるのがこれまた気持ちいい。もう裸の付き合いは何度もあるため彼女の胸を直に触ったことはあるのだが、その双丘を後頭部で下から持ち上げてみるとその重量を実感できる。やはり美味い果実は実もぎっしり、ということか。そしてそんな男を狂わせるような胸を堪能できる唯一の男が自分だけとなると、それはそれで支配欲が湧き上がってくるな。

 

 そんな邪な気持ちはもちろんだが、しっかりと疲れが癒されているのも事実。さっきは胸の話ばかりしていたが、太ももも頭に添えられている手も、顔面を押し付けているお腹も、そして彼女の温もりや雰囲気も何もかも全てが柔らかい。基本的の俺は女の子のメンタルケアをする立場で癒す立場だったのだが、たまにはこうして女の子に身を委ねているだけってのもいいかもしれないな。流石にオギャるのは勘弁だけど……。

 

 

「かすみちゃんとか璃奈ちゃんとか、女の子をぎゅ~ってするのももちろん楽しいんですけど、こうして男の子を癒してあげたいとも思っていたんです。手のかかる男の子をこうして抱きしめて、おとなしくなった姿を見ると母性を感じちゃいますよね♪」

「いや同意を求められても……。つうか俺が手のかかる男の子だってことか? おねショタじゃねぇんだから……」

「今回はちょっと違いますね。私の憧れで大好きな年上の男性が、こうして素直に私に甘えてくれるのが嬉しい、という感じです。どちらにせよ母性を感じられることに変わりはないんですけど」

「人を甘やかすことにそこまで突き抜けてるのがすげぇよ……」

 

 

 何がコイツをバブみの衝動に駆らせるのか。でも世話好きな奴は俺の知り合いにも結構いて、身近だと侑だってそうだ。最近は俺の生活態度を事細かに注意してくる。歩夢の話だとアイツ普段はズボラな方なのに、俺に対してだけはあれこれ世話を焼いてくる。もちろんエマの方が圧倒的に母性が高いが、コイツは人の世話が趣味みたいになってんだろうな。そうでなければ男を抱きしめただけで幸せは感じない。

 

 

「でも良かったです。私でも零さんの疲れを取ることができて」

「噂には聞いてたけどホントにお前って癒しの力があるのかもな。少しの時間だけだったけど、頭を抱きかかえられただけなのに普通に気持ち良かったからさ」

「本当ですか!? ずっと夢だったんです! この手で零さんを甘やかすことが!」

「別に甘やかされてはねぇけどな……」

 

 

 すげぇ夢だなオイ。ここまで来ると俺みたいな偏屈な男だけでなく、不良男子の更生や男性犯罪者の説得や懐柔など、男相手なら無敵の力を発揮しそうだ。もちろん男だけではなく女性も虜にしているので敵はない。母性が高い女性は強キャラなイメージがあるので、コイツからもそのイメージに違わぬバブみを感じられる。油断してるとそのうち本当に赤ちゃんにされそうだから怖いな……。

 

 

「よく頑張りまちたね~。よちよ~ち」

「だから赤ちゃんプレイは勘弁だって言ってんだろ……」

「零さんの精神年齢が幼くなるところを見たいです」

「好きな男が自分にオギャる姿を見たいのか……」

「カッコいい零さんももちろん好きですけど、可愛い姿も見てみたいですから!」

 

 

 意外と欲が深いな……。たださっき赤ちゃん言葉で話しかけられた時、ほんの少しばかり心が揺れ動いたのは内緒だ。下手にこの状態を続けると本当にコイツの母性に飲み込まれちまうかもしれない。

 

 しばらくして結局オギャらせることができなかったので諦めたのか、エマは俺を解放する。彼女は名残惜しい表情をしていたが、流石にご主人様気質の相手をそう簡単に堕とすことはできない。それにあまり続けていると他の奴が来てあの情けない姿を見られる可能性があるため、ここで離してくれたのは助かったかな。

 

 

「これからはいつでも頼ってくださいね! 零さんだったら大歓迎どころか、私からお誘いしちゃいます♪」

「サンキュ。たださっきみたいなオギャるような恰好は恥ずかしいから、次やるときはそうだな……普通に抱きしめるくらいにしてくれ」

「それこそいつでも! あっ……」

「ん……?」

 

 

 さっきまで意気揚々としていたのに、急に頬を染めてしおらしくなりやがった。俺の方を見たり目を逸らしたり、何か俺の方から行動させたがっているのだろうか。女の子特有の『察してよ!』ってやつ……??

 

 

「そういえば私も最近疲れ気味と言いますか、大学が推薦で決まって、残り時間をスクールアイドルの練習に捧げているので……」

「…………なるほど。お前、人にはたくさん甘えてきていいって言ってるのに、自分はそうしないんだな」

「そ、それは……ちょっと恥ずかしいですねこれ―――――はわぁっ!? えっ、い、いきなり抱きしめるなんて……!!」

 

 

 まどろっこしいので抱きしめてやることにした。コイツはいつも誰かを抱きしめる側なので、抱きしめられる側を体験するのは珍しいだろう。まあ裸の付き合いという意味では抱いてやっているのだが、何気ない日常の中でこうして抱きしめられるのはコイツにとってあまりないことだと思う。だからこそこうのように余裕のない表情を見せているのだろう。

 

 

「抱きしめられるって、こんな気持ちになるんですね……」

「なんだよその人の温もりを初めて知ったみたいな反応は……」

「いつもはこっちから抱きしめてばかりなので、逆の立場にはあまり慣れてなくて……」

「じゃあお前を抱きしめられるのは俺くらいってことか」

「そ、そうですね……。でも、それって最高です……♪」

 

 

 エマは嬉しそうに俺の胸に顔を埋める。

 いつもは聖母でお母さんでママだけど、今の表情を見る限りコイツも立派な思春期女子高生だ。やっぱり女の子は恥じる姿と笑顔が良く映える。女の子側から癒してくれるのも悪くはなかったが、俺の本質はサディスティックでバイオレンス。結局はこちらから攻めて女の子の反応を見る方が好きだ。自分が惚れられているという満足感を得られるからかもしれない。

 

 

「みんないつもこうやって抱きしめてもらってるんだ……。私ももっとやってもらおうかな……」

「俺は別に構わねぇけど、誰かに抱きしめられてるお前なんて他の奴らが見たらビックリするだろうな」

「この気持ち良さを味わえるのであれば、今まで築き上げてきたキャラなんて!!」

「おいおいアイデンティティは崩すな。まあ他の奴らは容赦ねぇから、甘えることを躊躇してたのはお前くらいだけどな」

 

 

 歩夢たちは『褒めて褒めて!』と尻尾を振る犬のように擦り寄って来るからな。エマもスキンシップが多い方ではあるが俺に媚びるような態度ではなかったので、ある意味で大人、ある意味では一歩引いていた。まあベッドの上だとそんなコイツも激しく誘惑して来る組の1人なんだけどな。ほら、この前のネグリジェの3年生組が集まって俺を揉みくちゃにしたやつとかさ。あれもエマ考案のイベントだったらしいので、性格的に肉食系ではあるらしい。

 

 

「零さん、ワガママなお願いで申し訳ないんですけど、私を――――甘やかしてください」

「え? 俺がお前を……?」

「たまには甘やかされるのもいいかなって。それだったらその相手は零さんがいいです」

 

 

 エマは俺の胸に顔を埋めながら自分の欲望を吐露する。誰かを包み込んで癒すのが生きがいなんだと思っていたが、それだと内側から人のぬくもりを感じられるけど外側から感じることはできない。今もこうして俺に抱き寄せられているエマだが、よほど嬉しいことなのか俺を抱きしめる力が強い。意外な一面だが、女の子の本髄を見られるのは俺にとっても嬉しいことだ。

 

 エマの頭に右手を添える。すると彼女の身体がぴくっと動く。本当に慣れてないんだな……。

 どうやら甘やかされるのをご所望のようなので、恥ずかしいけどここは彼女のためにも優しく労ってやろう。

 

 

「いつも頑張っていて偉いな」

「ひんっ!?」

「…………。いつもみんなを見守ってくれてありがとな。だから今日は俺にたっぷり身を委ねろ。気が済むまで甘えていいんだよ」

「ひゃいっ!!」

「おい、変な声上げるな……」

「そ、想像以上に心をグッと掴まれてつい……!!」

 

 

 甘やかしてやったらやったで謎の奇声を上げるエマ。もしかして言葉選びを間違えたか? 誰かを抱きしめることはあっても、こうして甘やかすことはあまりないからどんな言葉をかけたらいいのか分からなかったんだ。とりあえず思いついたありきたりな言葉をかけてみたのだが、どうやらコイツにとってはクリーンヒットだったらしい。俺の胸に顔を埋めままなので、自分の羞恥に満ちている表情を見られたくないのだろう。耳まで真っ赤にしているので相当なダメージだったに違いない。

 

 

「こ、これがイケボで癒されるというシチュエーションなんですね……。ファンのみんながいつも私に言ってるASMRというものかな……?」

「いや別に声色はいつも通りだよ。俺に抱き寄せられて、甘い言葉をかけられてるから美化されてるだけじゃねぇのか?」

 

 

 だがコイツからしてみれば美化されてようがどうでもいいことだろう。俺に甘えているという体験ができればそれ以上のことはない。そう考えていると思う。

 しばらくして、エマが遂に顔を上げる。まだ頬は赤いものの、その潤んだ瞳の表情は女性慣れしている俺でも見惚れてしまった。

 

 

「あ、あのぅ……もう1個お願いしてもいいですか?」

「なんだ?」

「キス……して欲しいです。頑張ってるご褒美に……」

「あぁ……」

 

 

 これ以上にないってくらい恋する女子の顔をしている。いつもは暖かい笑顔でみんなを癒す聖母のような子なのに、今は普通の思春期女子。ほんわか雰囲気で歩夢たちの中では背も高いので存在感も大きいが、こうして抱きしめていると俺の身体にすっぽり収まるため、コイツもやっぱり普通の女の子なんだって思うよ。

 

 エマが目を瞑って唇を少しこちらへ突き出してきたので、俺はそれに応える。カラダの肉付きも良いが、唇も肉厚だ。ただこの口付けの温度は彼女自身の穏やかな温もりとは違い、彼女の想いと押しの強さで激しい熱さとなっている。ここまで俺の唇に貪りついてくるのも普段の彼女からは考えられないくらいだ。それほどまでに俺に甘えたい想いは膨れ上がっていたらしい。そしてその想いをキスという形で思う存分に発散している。

 

 受けに回ろうかとも思ったが、甘やかして欲しい願望相手となればこっちから攻めた方がいいだろう。エマもその意図を汲み取ったのか、さっきまでの激しさを抑えて俺からの口付けを素直に受け取っていた。やがてお互いの息遣いや香りを交換する形となり、俺たちがどれだけ密着しているのかが雰囲気だけでも丸分かりだった。

 

 ちなみに俺の身体は()()()()()熱くなっている。虹ヶ咲の子たちとキスすることで、俺の『女の子の愛を受け止めるキャパシティ』が広がっているらしい(秋葉談)。何気に歩夢たち12人とのキスを早々に終えないと身体が破裂するらしいのだが、今のエマの愛おしさを見たら自分のことなんてどうでもいいな。

 

 そして、少し息苦しくなってきたので唇を離す。エマは恍惚とした表情をしており、発せられる微かな息遣いは赤く染まった頬と相まってとても官能的であった。

 

 

「どうだ? 満足したか?」

「はい……。零さんに甘えられて、キスまでしてもらって、もう安らかな眠りについてもいいです……」

「おい冗談言うな。つうか既にカラダの関係にまで発展してるのに、今更甘えられないことにコンプレックスを抱いてたなんて思わなかったぞ」

「エッチなことはエッチなこと、そうでないことはそうでないことなんです」

 

 

 健全なお付き合いをしている恋人がいるけど、裏ではカラダの関係だけのセフレもいるみたいなことか……? いや流石にコイツの純粋な気持ちをそんな邪推に考えては申し訳ないか。

 

 今日はエマの別の一面が見られて楽しかった。甘やかしたい願望と同じくらい甘えたい願望があっただなんて、俺もまだまだ女心の勉強不足だな。いや女心ほど複雑なモノはないと思ってるから、多分一生かけても理解できないだろう。だからこそ意外な一面が見られた時の嬉しさが半端ない。以前の愛が意外な嫉妬心を見せてくれた時のように、裏の姿を見せてくれるってことはこちらを信用して本心を曝け出してくれるってことだからな。

 

 

「零さん、そのぉ……また甘えてもいいですか?」

「あぁ、いつでも。みんなの前で恥ずかしかったら、2人きりの時でもいい」

「ありがとうございます! でしたらお互いにお互いを癒しちゃいましょう! 私も零さんをたぁ~~っぷりと甘やかして、赤ちゃんになっちゃうくらいに甘やかしてあげますね!」

「それは勘弁してくれ……」

 

 

 屈託のない笑顔だから強くは否定できないのがもどかしい……。

 俺がやれることとしたら、バブみを感じてもオギャらないように母性に対する耐性をしっかり付けておくことくらいかな……。

 




 絶対に甘やかされない男 vs 絶対にオギャらせる女の子の試合でしたが、逆に相手を甘やかした零君の勝利でした(笑) ただ全てを振り切ったエマに対して次からどうなるかは予想できないですが……

 そしてこれで虹ヶ咲の子たちとのキスは5人目。なんかもうキスの描写がマンネリしてきている気がする……(笑)


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