ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常2~   作:薮椿

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自己紹介で覚醒タイム!

「おっ、1年生全員揃ってるな」

「集まれっていたの先生っすけどね……」

 

 

 秋口となり夏の暑さも和らいできたこの時期。学校生活も今年度も半分が経過し、1年生たちは高校生活に慣れ、2年生たちも初めて後輩がいる生活が日常として当たり前になった頃だろう。結ヶ丘はどちらかと言えばお嬢様学校寄りの部類なので生徒の質も高く、新入生が入ってからこれまで校内で目立った問題は起きていない。そういった意味では生徒だけでなく教師たちも過ごしやすい環境になっていた。

 

 そして秋ともなれば体育祭や文化祭などの青春行事が目白押し。去年は1学年しかいなかったもののそれなりに盛り上がりを見せていた。ただ今年度コイツら新入生が入って人数が単純に倍になったため、今年はどちらの行事も昨年以上の盛況になるに違いない。それ故に、準備中の今の段階でも学校中が活気に満ち溢れて血気盛んとなっていた。

 

 そんな中、俺も謎のやる気が出ており――――

 

 

「なんですの、その大きいカメラ」

「経費で買ったんだ。スマホより断然映りも良くなるし、スクールアイドルを続けていくのならあっても損はねぇだろ」

「確かにスクールアイドルは宣伝とかでたくさん動画を撮影するけど、そんな高そうなカメラ、いざ使うってなったら何をするか迷うな」

「文化祭ライブのためのPVとか?」

「いや、もっと先にやることがあるだろ。お前らの自己紹介動画だよ」

「「「「えっ……?」」」」

 

 

 1年生の4人は揃って目を丸くする。

 実はLiellaが9人体制になってからまだ1ヶ月程度しか経っていない。しかも最後のメンバーである夏美が加入してからライブに参加もしていなければ動画も出していないので、この4人の存在が世に知られているかと言われたら……まぁほぼ知られてないだろう。しかもメンバーが揃ったのが夏休み中であったためか、2学期となり学校生活が再始動してからの活動もまだ日が浅い。つまり学校の生徒や教師ですらLiellaが9人になってるなんて知らない可能性がある。だからこそ自己紹介動画でアピールが必要なんだ。

 

 ――――ってことをコイツらに伝えたのだが、1人を除いてなんだかそこまで前向きではない反応を見せている。

 

 

「自己紹介って1人で動画に映るんっすよね……?」

「当たりめぇだろ。個々人の自己紹介なんだから」

「1人かぁ……。1人ってなるとちょっと恥ずかしいな……」

「そういえば1人で動画に出演したことはなかった。だから緊張」

「だから慣れる必要があんだよ。いつまでも殻に閉じこもってないで、ここらで覚醒しないとな」

 

 

 1年生たちは動画はもちろん、まだステージに上がった経験すらほとんどない。動画は夏美がLiellaの練習風景として撮影していたこともあるが、それはあくまで日常を垂れ流しているだけで、カメラと面と向かって何かを披露することはほとんどなかった。そのせいできな子もメイも四季も恥ずかしさを覚えているのだろう。

 

 しかし、ただ1人。1人だけ他のみんなにマウントを取れると確信したのか、生意気で得意げな笑みを浮かべていた。

 

 

「全く、皆さん弱々メンタル過ぎて見ていられませんの。ここはLiellaのメンバーにして公認インフルエンサーであるこの私が、バズる自己紹介というものを教えてあげますの」

「公認って、いつも勝手に撮影して勝手に投稿してるだけっすよね……」

「もう完全な隠し撮り」

「シャラップ! クソ雑魚メンタルの持ち主はこの場で発言権はないですの!」

「じゃあ最初はお前からな。カメラセッティングするから、このホワイトボードの前に立て」

「再生数の持ち主が披露する自己紹介の凄さ、とくとご覧あれ~ですの」

 

 

 どこからそんな自信が湧いてくんだよ。再生数っつったってたかだか数千だし、チャンネル登録者数も最近4桁を突破したばかりだろ。しかも自分の実力ではなくLiellaの肩書の利用と日常の練習風景を盗撮しただけだ。まあ動画投稿が乱立するこのネット社会、登録者が1,000人を超えてるだけでも結構凄い部類なんだけどな。

 

 夏美は堂々とした態度でカメラの前に立つ。

 そして目を閉じたと思ったら、間もなくして今度は目を大きく見開いた。

 

 

「オニナッツー! 日々のあれこれエトセトラー。あなたの心のオニサプリ、オニナッツこと鬼塚夏美ですのー! 皆さんに元気と勇気を分け与えるビッグなスクールアイドルを目指していますので、是非応援の程よろしくお願いしますの! また、Liellaの新規メンバーとして加入したことで、これからはもっと身近にスクールアイドルの活動をお届けするのでチャンネル登録も是非! もしかしたらLiellaの誰にも見せられないあ~んな顔やこ~んな顔まで見られちゃうかも!? というわけでこのチャンネルも鬼塚夏美のことも今後ともよろしくお願いいたしますの!」

 

「へぇ、やるじゃん」

 

 

 自分のチャンネルの宣伝まで織り込みやがったが、自己紹介と共に自分がエルチューバーであることを公にし、自分とチャンネルのどちらも応援してもらうように誘導しやがった。宣伝が混じっているとは言えども自己紹介としては効果的であり、チャンネルのファンを自分のファンにすることも、これから自分のファンになる人を自身のチャンネルに誘導したりと、流石は動画制作者と言うべきかバズる方法はある程度心がけているようだ。

 

 正直最初はちょっとバカにしてたけど、物怖じせず自分を表に出せるこの性格はスクールアイドルとしての強みになるな。

 そしてその自己紹介は他の3人も響いたようだ。

 

 

「すげぇ、初めて夏美を尊敬してる……」

「見直したっす! 輝いてるよ夏美ちゃん!」

「キラキラしすぎて、いつもの小物臭が全然しなかった」

「それ褒めてるんですの!? フッ、でもまぁこの程度であれば余裕余裕」

 

 

 ぶっちゃけ自己紹介もいつも聞き慣れているフレーズだったのだが、あれくらいキャラ付けが濃い方が覚えてもらえる率は高い。スクールアイドルが爆発的に増えているこの戦国時代、よほど容姿が優れているとかビジュアル面で勝らない限り、ただの自己紹介では中々注目しては貰えねぇだろうからな。コイツらも容姿レベルは十分だけど、スクールアイドルになる奴らはもちろんだがみんな見た目レベルが高い。その中で生き残るためにはファーストコンタクトとなる自己紹介の印象が重要になるんだ。

 

 

「次はきな子、お前やってみろ」

「つ、次っすか!? は、はい……」

 

 

 指名されて身体をビクッとさせたきな子。おずおずとカメラの前に立つが、さっきの夏美とのテンションの差は歴然。もう自己紹介が上手くいくとは思えないが、とりあえず実力を見よう。

 

 

「さ、桜小路きな子です……。趣味は家庭菜園、パン作り、好きな食べ物はじゃがいも、かぼちゃ、とうもろこし……。特技は動物と話せること……。せ、先輩たちみたいな憧れのスクールアイドルになるために頑張るので、今後ともよろしくお願いいたします……」

 

「声ちっさ……」

 

 

 録音できていたか怪しいと疑ってしまうほどの音量だった。しかもカメラ目線でもないし、ずっともじもじしてるし、それはそれで可愛いと思う人がいるかもしれないが、自分の名前すらまともに聞こえないのは自己紹介としては成り立っていない。まあ大体こうなることは予想してたけど……。

 

 

「よっ! きな子可愛かったぞ!」

「控えめなところがきな子ちゃんのキャラをよく表していたと思う」

「お前ら、自分たちのハードルを下げようとしてんじゃねぇよ……」

「「う゛っ……」」

 

 

 夏美によって上げられた自己紹介のハードルを必死に下げようとする四季メイの幼馴染コンビ。そもそもコイツらもきな子の声が聴こえてたか怪しいだろ……。

 

 

「こうなったらきな子を覚醒させるしかありませんの」

「な、なにをするんすか!?」

「先生、ちょ~っと失礼しますの」

「えっ?」

 

 

 夏美は俺の後ろに回り込む。

 そして、きな子に向かって俺の背中を思いっきり押した。

 

 

「うわぁっ!?」

「ひゃっ!? せ、先生!?」

 

 

 押された勢いで俺の身体は当然きな子に覆い被さろうとする。そのまま押し潰してしまうのを避けるため、彼女の肩を掴んでホワイトボードの方へと押し当てる。これでお互いの衝突は避けられたわけだが、彼女の身体が俺とホワイトボードに挟まれる形となっている。つまりこれは――――

 

 

「壁ドン。きな子ちゃんと先生が」

「漫画とかでよくあるやつか。現実で初めて見た……」

「あわ、あわわわわわわわわわわわわわわわわわわ……ッ!!」

 

 

 きな子が顔を真っ赤にしながら目をぐるぐるさせる。そりゃいきなり男に顔を近づけられたら普通の女の子なら誰でもそうなるって。隣で見ている四季とメイも頬を染めてこちらをチラチラと見たり見なかったりしてるし、年上の若い男の壁ドンは思春期女子には効果抜群だろう。

 

 つうか夏美の奴、一体どうしてこんなことを……。

 

 

「きな子、あなたのお名前は!?」

「さ、桜小路きな子ですっ!!」

「趣味は!?」

「家庭菜園、パン作りですっ!!」

「特技は!?」

「特技は動物と話せること!!」

「スクールアイドルとしての意気込みは!?」

「せ、先輩たちみたいな憧れのスクールアイドルになるために頑張るので、今後ともよろしくお願いいたします!!」

「よし、これでいいですの」

 

 

 いいのかよ……。確かに大声でさっきよりは格段に聞き取りやすかった、というか声量オーバーで動画にしたら音が飛んでないか心配なレベルだぞ……。

 そして夏美の狙いはこれだったかと理解した。恥ずかしさを極限まで突破させれば、逆に何も考えられなくなってヤケクソになるってことか。ある意味で羞恥心を乗り越えられるかもしれないけどさ……。

 

 

「成功体験を作れば恥ずかしさも払拭できますの。こうして無事に動画を撮り終えることができたので、きな子としても結果オーライですの」

「いやさっきのを動画として上げるのは勘弁っす!!」

 

 

 そりゃそうだ。男に詰め寄られている(不慮の事故だったが)動画なんて公開できないし、増してや自分がオンナの表情を見せてる様を大衆に晒すわけにはいかねぇもんな。

 

 

「ほらほら、次は四季の番ですの。はい、どーんっ!」

「ひゃっ!?」

「おっと」

 

 

 今度は四季が夏美に押されて俺の身体に倒れ込む。そして俺は思わず反射的に彼女を抱きしめてしまう。

 俺の腕の中で目をぱちぱちさせ、一体何が起こったのかと理解しきれていない反応をする四季。ただ徐々に現状を把握したのか、首元から耳の先まで分かりやすく順番に紅くなっていった。

 

 

「せ、先生……!? そ、その私、まだ心の準備が……うぅ……」

「四季、先生に対してお前……そんなに大胆だったのか!?」

「先生に抱き着くなんて勇気あるっす……!!」

「ち、ちがっ!? これは夏美ちゃんが……って、先生、ぎゅってし過ぎ……」

「声ちっさ。聴こえねぇんだけど」

「あの、その、うっ、うぅぅぅぅ……っ!!」

 

 

 ヤバい、ちょっと壊れてかけてる? いつも冷静で表情変化も少ないコイツが珍しく羞恥に表情を崩されている。そりゃ男に抱きかかえられていればそうなるのは必然かもしれないが、コイツもコイツで俺の腕を強く掴んでいるので離れようとはしていない。つまり自ら自分の羞恥心に敗北しに行っているんだ。

 

 

「四季も遂に覚醒の時ですの! はい、あなたのお名前は!?」

「若菜四季……」

「趣味は!?」

「昆虫採集と実験……」

「特技は!?」

「暗算とソロキャンプ……」

「スクールアイドルとしての意気込みは!?」

「メイの可愛さを伝えられるように頑張る……」

「カット! いい表情でしたの!」

「いやもうロボットかのように感情なかったけどな……」

 

 

 四季の奴、夏美の問いかけに対して定型文を答えるだけの人形に成り下がっている。最近AIのチャットボットが流行っているが、もうそっちの方が感情豊かな会話ができそうだったぞ……。

 放っておいても正気に戻りそうにもないから肩を揺すってやる。すると瞳に光が戻ったのでどうやら目を覚ましたようだ。

 

 

「あれ、自己紹介の撮影は……?」

「もう終わったよ。お前が昇天している間にな」

「もしかして、先生と密着して変な顔してなかった……?」

「それはそれで視聴者受けする可愛い顔だからOKですの。さて、最後は――――そこ、なに部室から逃げようとしてますの」

「う゛っ……!?」

 

 

 逃亡既の所で見つかり、冷や汗が止まらないメイ。まあ親友と幼馴染のあの痴態を見て、自分も同じロールプレイをするハメになるんだったら逃げたくもなるわな。

 つうか男にちょっと抱きしめられただけで意識がぶっ飛びそうになるのか。コイツらの先輩たち然り、最近の思春期女子は恋愛クソ雑魚なのか? 虹ヶ咲の奴らが異常だっただけかもしれないけどさ。

 恋をしてもらうのは大いに結構だけど、少し触れただけでここまで羞恥を感じてしまうのは問題だ。だからこそまともな恋愛をするためにも自己紹介での羞恥心克服は重要だったんだ。夏美のせいで直接俺に触れあうという荒治療になってるが……。

 

 夏美は部室の扉とメイの間に割り込んで逃亡を阻止する。これで完全に退路は断たれた。

 

 

「本気でやるのかよ……」

「自己紹介動画のためですの」

「お前笑ってるぞ! 明らかに自分が愉しむためだろ! 助けてくれきな子!」

「あの自己紹介をそのまま動画にするのはきな子もイヤっすけど、先生に抱きしめてもらうのはその……悪くない、というか……どちらかと言えば……いい」

「四季! って、まだぼぉ~っとしてやがる! もう仲間がいねぇ!!」

「さぁさぁ、おとなしく自己を曝け出すんですの。なぁに、羞恥に悶え苦しんでる間に全部終わりますの」

「なんでたかが自己紹介にここまで……って、夏美押すな――――うわぁあっ!?」

「っと!」

 

 

 またしても夏美の勢いに乗せられて、今度はメイが俺に向かって背中を押される。そして俺はさっきと同じくまた女の子を抱き留める係になったわけだが、こうして触れてみると1人1人触り心地が違うんだなと実感する。いや性的な目線ではなく、メイみたいに華奢な子もいれば、きな子や四季のように肉付きの良い子もいて発育具合が違うなぁと思っただけだ。教師になっても治んねぇな、こういう見方をしちまうのは。

 

 そんなことを考えている間にも、メイは俺の腕の中で沸騰していた。

 

 

「ふしゅ~……」

「おい、もう自己紹介どころじゃねぇぞコイツ」

「メイちゃん、今まで見た中でも一番乙女っぽいっす!」

「ぽいじゃない乙女。メイは可愛いんだよ」

「お前らそれ追い打ちをかけてるだけだからな……。今のコイツには聞こえてねぇだろうけど」

「これでメイも都合のいい人形なりましたの。今のうちに自己紹介を――――」

「その前に私に好きって言わせたい」

「私利私欲塗れで汚らしいですの。まあ百合は一定数の需要があるので、動画としては映えるかもしれませんが……」

「やめろやめろ。本人の知らぬところで自尊心破壊するな」

 

 

 メイは普段は勝気で荒っぽいので、だから乙女チックになった今だからこそイジリたい気持ちは分からなくもない。俺だって女の子を自分色に染め上げるのは好きな部類だからな。ただ今は教師として止めに入らせてもらう。むしろ止めないと後でメイに詰め寄られそうだからな。

 だったら最初からこの無理矢理な自己紹介の流れを止めろよって話だが、俺の想像以上にきな子たち3人が自己紹介を恥ずかしがっていたので、話を進めるって意味では多少の荒療治は仕方ないと思って見守ることにした。それに女の子の可愛い反応が見られるのなら俺は満足できるから。

 

 

「それではいつも通り覚醒タイムですの。はい、あなたのお名前は!?」

「米女、メイ……」

「趣味は!?」

「子猫のグッズ集め、猫の動画を見ること、あとスクールアイドル……」

「本当に可愛い趣味ばかりですの……。コホン、特技は?」

「運動全般、特に走ること……」

「スクールアイドルとしての意気込みは!?」

「可愛くなれるかは分からないけど……できる限り頑張ってみる……」

「見た目とは裏腹な謙虚さと健気さ。これは自己紹介でいいアピールになりますの」

 

 

 まるで洗脳されているかのように言わされてる自己紹介だなオイ。催眠系はニッチとは言えども人気が根強いジャンルだから、割と注目度がある自己紹介にはなるかもな……。

 そんな感じで全員分の自己紹介を撮り終わったのだが、もちろん夏美以外の映像は使い物になりやしない。慌てふためいている者、ロボットの様になっている者、催眠洗脳の様になっている者など、本当に偏った趣味の奴にしか刺さらねぇぞ。しかもみんな男に抱かれて顔を真っ赤にしてるから、男性ファンにとっては当然の如く誰得の動画となってしまう。見守るっつってアレだけど、なんか時間だけ無駄に浪費した感が半端ねぇな……。

 

 

「ハッ!? 私は一体なにを……!? って、夏美!? 消せ! さっき撮ったのを今すぐに!!」

「他のスクールアイドルにはないバズる自己紹介でしたので、それ無理ですの」

「先生はこれでいいんっすか!? 自己紹介をしようと言ったのは先生なのに、夏美ちゃんに任せてしまって……」

「確かに方向性はアレだけど、こういうのは生徒のお前らが主体になってやることだ。俺は自己紹介動画を撮ろうってきっかけを与えてやっただけだよ。学校は生徒がメインであって教師が出しゃばるもんじゃねぇからな」

「私たちが主体……。だったらどんな動画にするかは私たちが決めていいってこと」

「そうだな」「そうっすね」

 

「ふぇ……?」

 

 

 四季、メイ、きな子の3人の目が怪しく光る。その眼光はこれまで屈辱を与えてきた夏美に向く。

 そして当の本人は身体を震わせて冷汗を大量に流していた。3人が向ける眼光はまさに捕食者の瞳。黒歴史を刻み込まれた復讐と言わんばかりのドス黒いオーラに、流石の俺も口出しできなかった。

 

 

「こうなったら私らみんな同じ自己紹介をしなきゃ不公平だよなぁ!? あぁん?」

「夏美ちゃんも同じ屈辱を味わうべき。いや屈辱じゃない、先生に抱かれる幸せを共感させてあげる……」

「きな子たちは友達っすよね? だったら夏美ちゃんも同じ気持ちを感じてみるといいっす。大丈夫、先生は暖かいっすよ……」

「皆さん目が怖いですの……」

「人をイジるってことはな、それだけ恨みを買うってことなんだよ」

 

 

 もう過去に何度見て来たか分からないこの因果応報をそのまま体現したかのような光景。自分が加害者になったこともあれば被害者になったこともあり、傍観者だったこともある。てか大体どのスクールアイドルのグループにも1人くらいいるよな、その四字熟語が似合う女の子って。

 

 

「見せてくれよ、お前がぶっ壊れる様を! ほらっ!」

「ひゃあんっ!?」

「おっとっと。すげぇ勢いだな……」

 

 

 夏美はメイに両手で背中を押され、他の奴らが受けた仕打ちをやり返される。ただメイの怨念が詰まっていたのか押しのパワーが強く、さっきの誰よりも勢いよく俺の胸に飛び込んで来た。そのため俺は夏美の頭を自分の胸で抱きかかえる形となったわけだが――――

 

 

「ふわぁっ、せ、先生、ち、近い……!!」

「瞬き凄いぞお前。動揺し過ぎだ」

「だ、だって暖かいし、力強くて男らしくてその私……」

「語尾忘れるくらいか、重症だな……」

「私ら以上にショートしてんじゃねぇか……」

「結局夏美ちゃんもクソ雑魚だったってこと」

「でもいつも自信満々の夏美ちゃんが恥じらってる姿、可愛いっす!」

「あう、あうあぅあぅ……!!」

 

 

 確かに他の奴らと比べても一番顔を赤くしているのもコイツだし、なんならお得意のお嬢様語尾が消えるくらいだから相当追い込まれているのだろう。自分で仕掛けた仕打ちに自分がハメられて、しかも自分が一番ダメージを負うって中々にダサいけど……。

 

 

「それでは覚醒タイムと行くか。はい、あなたのお名前は!?」

「お、鬼塚夏美!!」

「趣味は?」

「スムージー開発とエルチューブ!!」

「特技を教えてくださいっす」

「しゃ、写真と動画制作!!」

「スクールアイドルとしての意気込みは!?」

「自分と皆さんの夢を叶えられるように頑張ります!!」

 

 

 もう脳内に浮かんだ言葉を反射的に発しているのか、ヤケクソ気味になっているのは否めない。気になる男に頭を抱きかかえられてるだけでこうなるのか。それでもここまでバグるのは羞恥心が弱々し過ぎると思うが……。

 

 

「おい起きろ。もう自己紹介終わったぞ」

「ハッ! じ、自己紹介……!? もしかしてさっきのが……ですの?」

「あぁ。バッチリ取れてたぜ、私らと同じ顔をして自己紹介しているお前の映像」

「愛らしさはたっぷりあった」

「これでチャンネル人気が出るといいっすね~♪」

「カ、カメラをこっちに寄越すですの! ちょっ、逃げるな!!」

 

 

 そして1年生同士の鬼ごっこが始まった。止めた方がいいのかそうでないのか。ま、子供のじゃれ合いを見ている感覚でほっこりするからそのままでいいか。

 羞恥心はまだ克服できてないけど、今回でコイツらのメンタルの強さ(弱さ?)がある程度わかっただけでも収穫だ。そのうちみっちり鍛えてやって、卵状態から覚醒させてやるから覚悟しておけ。

 

 ちなみに部室内で騒いでいる最中に部長の千砂都がやって来て、4人がこってり絞られたのはまた別の話。

 




 今回は2期生メインのお話でした!
 前回もほぼほぼ2期生メインだったのでこれで連続となりますが、2話描き続けて思ったことは、意外と2期生ってキャラが立っていて話が描きやすかったことですね。
アニメだとメイン回以外はあまり目立つことがなかったので、私も小説にした時に4人を上手く描けるか怪しんでいたのですが、なんたって全員がボケとツッコミになれるためかネタの幅が広がりそうで今後に期待できる4人でした(笑)
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