「そんなわけで、この前の生徒会でそんなことがあったんす……」
「ハ、ハーレムって、そんなアニメや漫画みたいなこと言う奴がいるんだな……」
「でも結ヶ丘での先生のポジションって、まさにハーレムの中心って感じがする」
「結ヶ丘は先生以外の教師も生徒も全員女性ですの。そう言われても仕方がないと言いますか……」
澁谷かのんです。
今日はきな子ちゃんたち1年生がライブで使用する衣装の装飾を買い出しに行く、ということで先輩として付き添いをしています。
って言うのは半分嘘で、私は今度の文化祭に向けての準備のため買い出し中。自分のクラスではコスプレ喫茶を開くため、その衣装の装飾を買い出しに行っているというのが本当の理由。目的は違えど目的地は一緒だったので、結局こうして一緒に行くことになりました。
そんな中、先日の新生徒会の初顔合わせの様子をきな子ちゃんが話したことで今の状況に至る。『ハーレム』なんて創作の世界でしか聞いたことがない言葉が現実に出てきて、みんなそれぞれ思うところがある様子。ただ四季ちゃんが言った通り、先生がそのような状態になっているのは周知の事実で、恋愛感情とまではいかなくても先生を慕っている生徒は多い。
そして、その人望の厚さは結ヶ丘の校内だけに留まらない。昨年度の終わり、先生が話してくれた衝撃の事実。それは多くの女性と関係を持っているということ。それを知っているのはその時にいた私たち2年生組だけで、きな子ちゃんたちはもちろん、他の生徒のみんなも知らないはず。先生はきな子ちゃんたちには時が来たら話すとは言ってたけど、あまりに信じがたい事実なだけに、ここにいるみんなが先生の本性を知るのはまだまだ先になりそう。
「それにしても七草先輩って何て言うか、怪しさ半端ないよなー」
「うん。小悪魔的な笑みでネチネチと煽って来るあの言動、メスガキって感じ」
「し、四季ちゃん、相手先輩っす……」
「かのん先輩は1年生の頃からずっと同じクラスで親友だと聞きましたの。昔の七草先輩もあんな感じでだったんですの?」
「う~ん、去年は活発快活な元気な女の子って感じだったよ。今年からかな、掴みどころがなくなっちゃったのは……」
思春期のイメチェンにしては変わり過ぎだと思うんだよね……。ただ色んな部活のサポーターとして活躍しているのは変わってなくて、それ故に生徒だけではなく先生たちからも評価が高い。その実、私たちも去年はライブの準備とかたくさん助けてもらったし、今回だって生徒会の会計として間接的にフォローしてくれている。正直何を考えているのかはサッパリだけど、悪い人ではない……と思う。信じる! だって親友だもん!
「それにしても、恋してるか根掘り葉掘り聞き出そうとするなんて相当な耳年増ですの」
「それで自分が先生のことを好きだとゲロってしまったの、きな子ちゃん」
「えぇっ!? 違うっすよ!! 標的にされてたのはかのん先輩っすから!!」
「ちょっ、ちょっとその話はしないでって言ったよね!? それにきな子ちゃんだって顔真っ赤にしてたじゃん!」
「えっ、やっぱりきな子って先生のこと好きなのか!?」
「そ、それは……って、だったらみんなもそうじゃないっすか!?」
「「「そ、それはない……」」」
「顔、赤いっすよ……」
うわぁ~みんなわっかりやす~い……。元々知ってはいたけど、こうして自分の恋心を指摘されるのって客観的に見るとここまで分かりやすくなるものなんだ。まあ自分のことを棚に上げてるけど……。
4人共スクールアイドルになる前から先生と交流があり、その過程を経て私たちLiellaに加入したようなものなので、先生に対する意識は私の想像しているよりも大きいものだと思う。そりゃ顔が良く、歳も他の先生と比べて比較的に近い若い男性の先生に優しくされた靡いちゃうよね。私だってそうだもん。
「好きとか、そういうのは良く分かんねぇなぁ~私」
「私はエルチューブ活動で忙しくて、そんなことにかまけている暇はありませんの」
「恋なんて余計な雑念は邪魔なだけ」
「き、きな子もどうすればいいのか分からないっす……」
「そうなんだ。だったら先生が誰かと付き合ってもいいの?」
「「「「それは……ダメ」」」」
「えぇ……」
分かりやすっ!! みんな分かりやす過ぎるよ!! しかも自分は興味なさそうに振る舞って、いざ先生に女性ができたら否定するって結構重いね!!
とにかく、みんなが先生のことを男性として見ていることがこれで確定したかな。前々から分かってはいたけど、本人たちの口から直接語られたらもう逃げ場はない。多分先生もきな子ちゃんたちの気持ちには気付いてるんだろうな。
そんな恋バナをしながら目的地であるアクセサリーショップに向かう。
その道中、見知った人影を見つけた。みんなも私と同じタイミングで気付いたみたいだ。
「あれって、先生だよな?」
「そうっすね。私服姿の先生って、あまり見たことないから新鮮っす」
「でも私服で街中に1人。これは怪しい」
「もしかしたら女がいるかもしれない……って、流石にそれはないですの。先生、誰とも付き合ってないって言ってましたので」
言っちゃダメだ言っちゃダメだ! インドアな先生が1人で外出するなんてあり得ないことも、外に出る時は大抵女性に誘われた時だってことも、それに付き合ってる人がたくさんいるってことも! でも言えないのってもどかしい!
ちなみに先生はこっちには気付いていないみたい。
先生は誰ともお付き合いしていないと信じ、休日の昼間に1人で若者の街の中にいる男性を少し憐れんでいるきな子ちゃんたち。わざわざこちらから声をかけてあげますよ的な僅かながらの上から目線の雰囲気を感じる。
だけど、その余裕は――――
「お兄さん!」
一瞬で打ち崩された。
「「「「お、女の……人!?」」」」
よくハモるねぇ今日は。
先生の側に駆け寄って来た女性は確か――――そうだ、高崎侑さん! 虹ヶ咲スクールアイドル同好会のマネージャーの侑さんだ!
侑さんって確か今年の春から大学生になってた気がするけど、残った後輩メンバーのマネージャーは続けていると先生が言っていた。つまり今日もその活動の一環だったりするのかな。以前も同じような状況に可可ちゃんたちと一緒になったことがあって、その時は2人でライブの打ち上げ会場を一緒に探してる最中だった気がする。
あっ、確かにそう思い返してみれば去年と全く同じ場面だ。ということは、きな子ちゃんたちもしかして……!!
「あ、あれって先生の彼女さんっすか!?」
「休日の昼間、若者の街で若い男女が待ち合わせ。シチュエーションとしてはバッチリ」
「おいおいマジかよ……」
「これはスクープですの! 彼女がいないと生徒を騙していた、一世一代のスクープですの!」
あぁ、やっぱり勘違いしちゃってるよねぇ……。先生も見た目カッコいいけど、侑さんもスクールアイドルをやれるんじゃないかってくらい可愛い人だ。それ故にそんなお似合いの2人の仲睦まじい様子を傍から見ると恋人同士と勘違いしてしまうのは無理もない。実際には恋人ではないらしいんだけど、勘違いしてしまうほどには2人の距離も近くて親密なのはやり取りを見ているだけですぐ分かる。羨ましいと思っちゃうくらいにはね。
「いや、もしかして先生は寂しさを紛らわせているのかもしれない」
「どうことだよ四季」
「レンタル彼女」
「レンカノって、お金を払って彼女役をやってもらうってアレですの?」
「そ、そんな、先生がそんなので気を紛らわせているなんて思えないっす……」
「でも教師って、多感で反抗期な未成年をたくさん相手にするからストレスが溜まりやすいって聞く。だからレンカノで、自分を全肯定してくれる女の子を相手にして癒されているのかもしれない」
「なるほどな……」
えぇっ!? なんかあらぬ方向に勘違いしてない!? 動揺し過ぎて冷静な判断ができなくなっているのか、四季ちゃんの言ったことみんな真に受けてるし! 早くそんなことないよって否定しなきゃ……!!
「それにしても、『お兄さん』ってなんだよあの呼び方。兄妹じゃあるまいし」
「まるで兄妹プレイですの。ま、まさか、そういうオプションを付けてるってことですの!?」
「先生には実の妹がいるはず。なのにレンカノの女に妹キャラをさせるとか、中々に闇が深い」
「もしかしたら先生、家で妹さんと上手くやれてないんすかね……」
また新たなる誤解が生まれてる!! しかも先生がちょっと可哀想な目で見られてる!! みんなの勝手な妄想なのに!!
そういや私や可可ちゃんたちも侑さんの『お兄さん』呼びを聞いて、先生と侑さんが兄妹だって勘違いしてた気がする。だからきな子ちゃんたちに強くツッコミを入れられないんだけど、それでもいくらストレスで寂しいからってレンタル彼女に兄妹プレイのオプションを付けるって被害妄想はヒド過ぎるような……。
「あっ、移動しましたの」
「バレないようにこっそり後を付けよう。レンタル彼女にしても本当の彼女にしても、今まで隠してきた意味を知りたい」
「そうだな。あんな可愛い彼女がいることを黙ってたなんて……」
「ほら、かのん先輩も行くっすよ」
「えぇ……」
みんなの中で先生の品位が勝手に下がっていくから真実を話そうと思っていたんだけど、ぶっちゃけるとこのすれ違いシチュエーションが面白いからもう少しだけ見守っていたくなる。お笑いとかでよくある全てを知ったうえで鑑賞する勘違いネタが面白いように、今がまさにその状況だ。
だからちょっとだけ、ちょっとだけだから。許して先生!!
~※~
そして、きな子ちゃんたちの先生追跡に付き合うことになった。
往来する人が多いのでこちらに気付かれてはいないみたい。耳を澄ませば辛うじて2人の声が聴こえてくる、それくらいのポジションで追跡をしていた。
「今日はスカートなんだな」
「気付くの遅いですよ。女の子の服を褒めるのは出会ってすぐでないと」
「いやどう褒めるか迷ってたからさ。普段はズボンのお前がわざわざ俺のためにスカートを履いてくれる、その健気さをな」
「お兄さんと2人で出かける時だけですから、スカートにするのは」
「あぁ、眼福だ。似合ってるよ」
「もうっ……。ありがとうございます……」
うわぁ~もうこのやり取りだけで仲が良いのが伝わって来る。むしろこれでお付き合いしていないのが疑問に思っちゃうくらいだよ。しかも敬語の後輩女子と頼りになる先輩男子という、まさにアニメや漫画の世界であるような理想の関係性。好きな男性のために服を選ぶ女性と、それをしっかりと褒める男性。いやもうカップルじゃん。
そして、こっちの後輩たちの反応はと言うと――――
「レンタル彼女って服の指定とかもできるんすね。都会の男性たちはこういうので火遊びしてるってことっすか……」
「でも普通に恋人っぽくもあるように見えるぞ。どっちなんだ……?」
「どちらにせよ、先生が女に飢えてるのことに変わりはない」
「自分の顧問がここまで性欲の猛獣だったなんて、あまり考えたくはありませんの……」
いや拗れ過ぎ。向こうは甘酸っぱい恋人みたいな会話してるのに、どうしてこっちはこうも捻くれてるの……。ただ単に先生には恋人、もしくはそれに準ずるくらいに親しい女性がいて、今日は一緒にお出かけしているって発想で全てが解決するのに……。
どうやら最初に話が捻じれに捻じれ切ってしまったせいで、きな子ちゃんたちの想像力は常軌を逸しちゃってるみたい。ただ、自分の好きな人にあんなに親しい女性がいたら冷静でいられないのは分かるかも。実際に私たちも去年そうだったからね。
「それにしても、お互いに全く気兼ねがなくて楽しそうですの。先生とデートするってあんな感じに……」
「先生とデートっすかぁ……」
「先生とデート……」
「先生とデートか……」
被害妄想から連想して、今度は自分の妄想に耽っちゃったよ。なるほど、先生がいつも私たちに言ってる状態がこれかぁ。客観的に見て初めて分かったけど、意外と恥ずかしいねこれ。かと言ってじゃあ自分が治せるかと聞かれたら堪えられないけど……。先生とのあんなことを想像しちゃうのは仕方ないもん、華の女子高生なんだから。
「あっ、ほらみんな早く。先生たち行っちゃうよ」
「「「「あっ……」」」」
私の一言で現実に戻って来る。
先生のいつもの苦労が少し分かった気がするよ……。
~※~
そしてまた追跡再会。その間も先生と侑さんの楽しそうな会話が聴こえてくる。
「そういえばホテル、どこにします?」
「あぁ、その話か。まだ決めてなかったのか?」
「そんな簡単に決められませんよ。大事な日なんですから」
「「「「ホ、ホテルぅ!?!?」」」」
また何か勘違いが始まっちゃった?? でもこれは私も勘違いしてしまう。多分どこか旅行に行くとかそんな感じだと思うんだけど、きな子ちゃんたちの顔はもう真っ赤に真っ赤。恐らくみんな
ていうかさっきの声大きかったけど、聞こえてない大丈夫??
「レンタル彼女はそういうサービスもやってるんすか!?」
「普通はそういったお触り系のオプションはなかったはず。つまりこれはレンカノではなく――――パパ活」
「なにっ!? マジでそうだとしたら大問題じゃねぇか!!」
「先生の性欲の飢え具合は相当ですの!!」
「えぇっと、パパ活ってなんすか……?」
「お金を払って未成年の女の子とセックスをすること」
「ひっ!?」
余計に被害妄想が広がってるんですけど!? これやっぱり本当のことを話した方がいいのかな!? そうしないと先生が犯罪者扱いされちゃいそうなんですけど!?
よし、流石にもう真実を伝えよう。勝手に被害妄想をして、勝手に先生の信用が低下して、そして顧問と教え子の間に亀裂が入ったらスクールアイドル活動もやりにくくなるしね。それになにより、私がいるのにすぐに本当のことを言わなかったと先生に知られたら……うん。
「あのぉ、みんな? 実はあの人は―――――」
「しっ! かのん先輩静かにするですの! また何か聞こえて……」
「みんなで泊まるなら、1室はなるべく広い部屋がいいですよね」
「1つのベッドで2人以上で寝るなら費用は抑えられるけどな」
「極論過ぎますけど、それ窮屈過ぎません?」
「みんなで泊まるって、これが噂に聞いていたハーレムってやつか!?」
「しかも1つのベッドをみんなでって、一体何、いやナニをするんですの!?」
「複数のパパ活オンナを一堂に集めてセックス」
「ひぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
あぁ、もう先生がどんどん犯罪者に仕立て上げられていく……。この負の連鎖を止めようと思ってるんだけど、きな子ちゃんたちが変に勢いづいてしまって私の言葉に耳を貸そうとしない。それどころかあらぬ妄想が全速前進でどんどん加速しているせいで、私まで巻き込み事故でその妄想に囚われてしまいそうで怖い。どうしようこの状況……。
「あれ、いつの間にか先生たちいなくなってますの!」
「人混みで紛れた一瞬で消えた」
「ん? あっちの路地裏の方にそれらしき人影が見えたっす!」
「よし、行くぞ! かのん先輩も!」
「えぇ……」
ダメだ、みんなが止まらない。純粋なきな子ちゃんまでもがピンク色の脳になってしまい、もう私の言葉なんて一切届かないと思う。
そんなこんなで先生と侑さんが消えたと思われるビルの前に到着する。もしかしたら見失ったのかと誰もが思ったその瞬間、ビルとビルの間、こちらからは見えない日の当たっていない暗い場所から声が聴こえて来た。
「お兄さん、それ……大きいです」
「そうか? でも入りきるだろ」
「大きい? 入る? これはセックスの匂い」
「まさか裏路地でそんなことしてんのかよ!?」
「先生の大きいのがあの人にあそこに入りきるかどうかってことですの……!?」
「あっ、あぁ……あぁ……」
ていうかセックスセックス連呼し過ぎ!! しかも妄想が超トップスピードで地球一周できちゃいそうになってるから!!
ただこれはまぁ、声だけしか聞こえないから勘違いしなくもない。私もてっきり変なことしてるのかと思っちゃったけど、周りに慌ただしくしている人がいると自分は冷静になれるって本当だったんだ……。
「お、お兄さん……それ、ダメぇ……」
「なんだよ、もう押すぞ」
「
「しかも挿入れたあとに押すってことは……ピストン」
「先生から動いてるのか!? ホテルまで我慢できなくなってここでヤるなんてマジかよ!?」
「ひぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
えっ、本当にやってないよね?? みんなの被害妄想の余波で私まで騙されそうなんだけど、大丈夫だよね!? きな子ちゃんもう壊れちゃいそうだし、止めに入った方がいいの!?
「もう我慢できねぇ。覗く」
「Me Too」
「動画ネタにできないのであれば、せめてこの目で見てやりますの」
「えっ、本当に行くんすか?」
怖いもの見たさ、好奇心もある。私たちは恐る恐る声のする路地裏を覗いてみる。すると――――
「な~んちゃって♪」
「「「「「うひゃぁああああああああっ!?」」」」」
覗こうとした瞬間、侑さんがひょっこり現れる。当然私たちは驚いてしまい、周りに聞こえそうなくらいの悲鳴を上げてしまった。
侑さんのさっきの口っぷり、もしかして……気付かれてた??
~※~
「ったく、勝手な思い込みで変な勘違いしてんじゃねぇよ」
「「「「すみません……」」」」
お互いに何をしていたのか事情を話した上で、きな子ちゃんたちがあらぬ勘違いをしていたことに呆れる先生。いくら思春期とは言え、自分の教え子にレンカノ使用してるだの、ホテルでパパ活してるだの、野外でヤっちゃってるだのと思われていたのってどんな気持ちなんだろう。もちろん私が早めに本当のことを喋っていれば全部回避できたことなんだけど……。
「でもいきなりビックリしましたよ。みんなを驚かせたいから、ナチュラルにちょっとエッチな話題になるように演技しろって。ただ虹ヶ咲のみんなで泊まるホテルをスマホで予約しようとしてただけなのに」
「えっ、そうなんですか?」
「うん。『大きい』って言ったのは予約しようとしていたホテルの部屋が広いって意味で、『入りきる』って言うのは虹ヶ咲のみんなが1部屋で入り切れるかを気にしていたんだよ」
「ちなみにもう押すって言ったのは、半ば勢いで予約ボタンを押す、つまりスマホをタップしようとしただけだ」
「そんな勢いで決めていいのかと思って『ダメ』って言ったんだけど、ここすぐ予約が埋まっちゃうからお兄さんが急いじゃって……」
「ま、エロい意味になるように言葉を選んでたのは確かだけどな」
「「「「うぐっ……」」」」
手玉に取られていたことを知り、きな子ちゃんたちは特大ダメージを受ける。やっぱり先生に対してストーカーは無理なんだなって。去年私たちの時もバレてたからね。
「それにしても、みんなそこまで妄想しちゃうなんてねぇ。それだけお兄さんのことが好きなんだ♪」
「そ、それは違うっす! いや違わなくはないっすけど……」
「そんなじゃねぇし!! 多分……」
「自分の顧問が変なことをしていないか、確かめるのは当然だっただけ……」
「私はスクープ映像が撮れるか期待していただけですの……」
「もう誤魔化しちゃってぇ~。可愛いなぁ♪」
侑さんって人の恋愛を期待している感あるよね。私たちの時もこうしてグイグイ突っ込んで来たし……。
ただ私たちの先生に対する想いがバレバレなのは目に見えていて、七海ちゃんも気付いてたし、今さっき会ったばかりの侑さんにも看破されたので、それ故にみんなからこうして応援されてしまう。嬉しいけどそれはそれで恥ずかしいんだよね。
ちなみに、先生と侑さんはただ単に一緒に遊びに行く予定だったっぽい。もうそれデートじゃんって思ったけど、実際のところ本当に付き合ってないのかな? 仲良すぎるからもしかしてキスとか……付き合ってないんだったら流石にないよね。
「また女の子増やして……。相変わらずですねお兄さん」
「もうお前も慣れただろ、こういった状況」
「ですね。だから私がやれることは――――」
侑さんは私たちに近づく。そして先生に聞こえないような小声で私たちに囁いた。
「そっちはもうすぐ文化祭でしょ? お兄さんと関係を進めたかったらそこがチャンスだよ。お兄さんってお祭り事とか面倒そうな顔してるけど、一緒に回って見ると意外と楽しそうにするんだよね。だから頑張ってみて! 文化祭パワーだよ!」
こちらを鼓舞激励する侑さん。それはきな子ちゃんたちに言っているのと同時に、私にも言っているように聞こえた。先生と特別な関係である侑さんのことだ、こっちの事情は全て先生から聞いて知っているんだと思う。だからこそのアドバイスか……。
「おい侑、なに話してんだ?」
「内緒です。でも、覚悟しておいた方がいいと思いますよ。もしかしたらお兄さんから恋に落ちちゃうかもしれませんし」
「はぁ?」
「文化祭、か……」
きな子ちゃんたちも何かしら思うところがあるようで、みんなの心の引き金が引かれたような、そんな気がした。
私も1年生の終わりに先生の過去や本性を聞いたけど、それ以来特に関係は進んでいない。
学校生活3年間の内、もう半分が過ぎた。私も先生と、もっと――――
本日はゲスト回として侑に登場してもらいました!
最後に登場したのが3月なので、そこまで久しぶり感はないかもしれませんね(笑)
実は別作品のキャラをもっと出して欲しいという声を頂くことがあるのですが、あくまでその章に登場するメインキャラを活躍させる都合上、そう頻繁に別作品キャラを出せないのが事実。
あとは今回の侑が大学生(虹ヶ咲編の2年後のため)になっているみたいに、時系列によってはキャラを成長した姿で出す必要があるため、下手に出し過ぎると今後また出したくなった時に設定に矛盾が出たり出なかったりを悩みたくない、という作者個人の理由もあったりします。
でも侑は私のお気に入りで、虹ヶ咲編でももう1人の主人公ポジションでいい役回りをしているので、もしかしたら彼女は他に出番がある……かも?(期待しないでください 笑)