澁谷かのんです。
今日は休日ですが、2年生は全国模試のため学校に集まっています。
とは言ってももう終わっていて、今は模試の後の空き時間で生徒会の倉庫の片づけをしているところ。実は文化祭で使用したものがたくさん置き去りになっていて、いつか片付けよう片付けようと言って全然やれなくてズルズルとずっと引っ張ってたのがこれまでの出来事。普段の放課後は授業や部活、生徒会活動があって片付けの時間すらあまり取れなかったんだけど、今日は模試で終わりなのでいい機会だと思って可可ちゃんたちにも手伝ってもらって片付け中です。
ちなみにきな子ちゃんたち1年生はイベント参加のために山奥の街へ。先生はさっき1年生のみんなと電話で話していたみたいで、バイクでどこかへ行くって言ってたけどなんだったんだろう?
事情は後から聞けばいいと思いつつ、私たち2年生は片づけを進めていた。
「全く、どうしてこんなに溜め込んでるのよ……」
「初めての大きな文化祭だったので、来年にもまた使えそうなものは残しておこうの精神で捨てずにいたらこのように……」
「外の倉庫には入りきらなかったと聞いていマス」
「だから生徒会室の物置を借りて保管しようと思ってたんだけど、それでももう置ききれなくなっちゃったんだよね」
「去年とは違って今年はどの出し物も気合入ってたもんねぇ。せっかく作ったのに捨てたくないって気持ちは分かるよ」
ある程度は外の倉庫に保管してるけど、ここもほぼ限界まで物が保管してある。看板や旗と言った大きな物から、小道具や小物まで多種多様。それらはハンドメイドしたものも多く、だからこそ思い出の品として保管しておきたいって気持ちがあったんだと思う。ただ毎年そんなことを続けていたら溢れることは確定だし、そもそもほとんどが1年に1回しか使わない物で、しかも来年に流用できるかも分からない物も多いので断捨離することを決意。もちろん作った人には許可を得てね。
そんな感じで私たちLiellaの2年生組が処分できそうな物を選定する中で、もう1人この片付けに参加している子が――――
「なんでアタシがこんなことに駆り出されなくちゃいけないのぉ~。メンドくさっ」
七草七海ちゃん。
2年連続で私とは同じクラスであり、一応親友。一応って付けちゃったのは先日の文化祭でそれはそれは色々あったから。どうやら先生のことを物心が付いた時からずっと慕っていたみたいで、文化祭までは私たちと先生の関係を見守っていたらしいんだけど、あまり進展がなかったのを見るに見かねて遂に表舞台に出てきたって感じかな。
七海ちゃんは秋葉さんによって『先生と恋愛するためには私たちの恋をサポートしなければならない』命を受けているようで、それまではさりげなく私たちのサポートをしていたと言っていた。確かに私が可可ちゃんと2人でスクールアイドルをしている時からやたらと気にかけてくれていて、あの時は親友だから助けてくれていると思ってたんだけど、さっき言ったみたいにどうやら結構な打算だったみたい。
性格も見た目もその頃とは全然違っていて、去年は三つ編みで制服も着こなす、言葉は悪いけど少し地味目ではあった。だけど今はマゼンタを濃くしたような髪色に染め、三つ編みではない普通のツインテールになっている。制服も気崩してスカートも短い。喋り方もなんていうか、煽り口調で心を見透かしたような態度を取る。今も私たちに聞かせるような声色で独り言を言ってるし、正直全然掴めない性格になってしまった。いや、この性格が七海ちゃんの素と言った方がいいのかな。
「そもそも七海さんは生徒会の役員ではありませんか。これも立派な生徒会の仕事ですよ」
「そうやって言っておけば都合よく動かせると思ってぇ! これだから集団に属する下っ端ポジションは嫌いなんだよ」
「じゃあどうして生徒会に入ったの……」
「そりゃあ澁谷ちゃんたちを近くで監視するためだよ。ちょっかいを出しやすいとも言えるかな」
絶対に後者の方が本音でしょ……。
生徒会役員を募集していた頃はまだ綺麗な七海ちゃんだったから、会計になってくれたことは助かったし、ありがとうとも思っていた。役員をスクールアイドルで固めると部活が忙しくなった時に生徒会の機能が停止しちゃうから、スクールアイドル以外の人で誰かやってくれたら、それこそ七海ちゃんのような色んな人や部活を手助けするヒーローさんに入ってもらえるのは大助かりだった。
ただ、本人の蓋を開けてみるとこんな感じだからなぁ……。
「去年は葉月ちゃん1人でも仕事が回ってたから、役員になったところでそこまで苦労はしないかなぁって思ってたんだよ」
「もう可可たちの前では
「ななみん……? はぁ、猫被っていい子面するのって疲れるんだよ。唐ちゃんみたいに頭空っぽでも生きていければ幸せだったんだけどねぇ」
「誰が空っぽデスか誰が!! どこが空っぽにみえマスか!?」
「幼そうな見た目と脊髄反射で喋ってそうなその単純な性格」
「詳しく説明しなくてもいいデス!!」
「求めてきたのそっちじゃん」
七海ちゃんてなんていうか、人の欠点を言語化して攻撃するのが得意だよね……。そのせいか煽り能力が高く、可可ちゃんみたいな煽り耐性がない人がこうして手玉に取られちゃうくらい。悪い人ではないことは分かってるんだけど、やっぱり恋のライバルって感じで意識されてるのかなぁ私たち。
「そんなことを言うのなら、ななみんの背は可可よりちょっと低いじゃないデスか!! 幼さで言えばそっちの方が適任デス!」
「胸は大きいから」
「むっ、ロリ巨乳というやつデスか……」
「そうそう。センセーはエッチな子が大好きだからね、アタシの存在そのものでもみんなに勝ってるってわけ♪」
「エ、エッチな子……!?」
先生ってそうだったの!? 普段の先生を見ていると硬派っぽいからそんなことはないと思ってたんだけど、幼い頃から先生のことを教え込まれてきた七海ちゃんが言うのなら間違いないのかも……。
片づけをしながらも、2人の会話に耳を傾けてしまう私たち。先生がどんな女性が好きかはもちろん、そういえば先生自身の情報ってあまり聞いたことがないことに気が付く。私たちのことは根掘り葉掘り心を漁ってくるのに、自分のことはあまり話さないもんなぁ先生って。
「エッチなこと……。好きなのデスか、先生が……」
「そうだよ。だって男だもん。それに好きじゃなかったら、あれだけたくさんの女性とお付き合いしてないでしょ。人望で女性の心を惹いているのは確かだけど、結果的には身も心も捧げている人が多いってことは……」
「身も……!?」
男性と結ばれるってそこまで覚悟しておかなきゃいけないことなの!? それとも先生だけ!?
私の脳内に先生とベッドインしている妄想が浮かび上がる。先生がそこまでやり手なんだったら、私も近い将来こうなっているかもしれないと思うと顔が熱くなる。それはみんなもそうみたいで、もう片付けの手は一切動いていない。七海ちゃんが可可ちゃんに向けた強制妄想攻撃の流れ弾でみんながダメージを受けていた。
「でも唐ちゃんは私ほどじゃないけど胸はそこそこだから、普通にセンセーは靡くと思うよ? 無邪気なロリ顔JKってだけで需要あるし」
「その評価をされても全く嬉しくないデス……」
「いやそれがチャームポイントってやつでしょ。アタシにそう評価されても微妙だと思うけど、先生に褒められたら嬉しいでしょ?」
「そ、それは……」
「『可可は無邪気で可愛いな』とか、『童顔なのに胸は大きくて興奮するよ』とか。そうやって2人きりになって、身体をあちこち触られたらどう思うのかなぁ~?」
「あ、あぁ……ッッ!!」
また七海ちゃんに遊ばれてる……。
先生が好きだという気持ちを最大限に利用されているのはもういつものこと。私も私で恋煩いには弱い方だけど、それはみんなも同じで、恋愛経験のない奥手な私たちの心を好き勝手に弄り回してくる。七海ちゃんからすればこれこそが精神を強くするための特訓らしいんだけど、私たちで遊んでいる時の本人はとても楽しそうだし、本当にそうなのかと疑わざるを得ない。
「もう、そんなくだらないことやってないで早く片付けて帰るわよ。ただでさえ模試終わりで疲れてるのに……」
「でもさっきは耳をかっぽじってるかってくらい耳の穴を大きくして、ずっとアタシたちの会話聞いてたよね? ツンデレもいくところまでいくとただのむっつりだよ、平安名ちゃん♪」
「は、はぁ!? 誰がスケベよ!?」
「まあ分からなくもないデス」
「アンタはどっちの味方なのよ……」
攻撃の矛先がすみれちゃんに向く。
すみれちゃんは
それで、七海ちゃんが語るすみれちゃんのチャームポイントは――――
「美人寄りで胸も大きいってことで、脱げばセンセーも勝手に興奮してくれるよ」
「なにそれ適当すぎない……?」
「いやいや、脱げばいいってのは女性にとって最高の誉め言葉だよ。だって肌を晒すだけで男が勝手に欲情してくれるんだよ? コスパとタイパどっちもいいじゃん」
「そんなこと言われても、先生が興味を持ってくれないと意味ないんじゃ……」
「いくら女性経験豊富なセンセーでも、美人の裸となればドキドキするよ。想像してみなよ、夜のホテルで2人きり、自分を求めてくれるセンセーを……。いつも優しいセンセーが、自分の前だけで少し肉食系になって迫ってくる……」
恥ずかしい!! 自分が攻撃されているわけでもないのに、勝手に妄想が広がってしまって恥ずかしい!!
でも確かに先生って時々上から目線で肉食系の片鱗を見せることがあるし、すみれちゃんみたいな綺麗でスタイルのいい女性が脱いだら我慢できなくなっちゃうのかも……。
すみれちゃんは顔を真っ赤にして私たちに背を向けると、流し込まれる妄想を振り払うためか片付けの手を動かし始めた。
「次は葉月ちゃんのチャームポイントだね」
「まだやるのですか……?」
「まあ葉月ちゃんは生徒会長でお堅い性格だけど、胸はそれなりに大きいからそのギャップだけで男は悶絶するよ」
「ふ、不要ですそんなギャップ!!」
「えぇ~? 普段は真面目でエッチなことなんて無縁みたいな顔している女の子が、脱いだらスケベな身体してるって男の興奮を一番滾らせるシチュエーションじゃん」
女の私にはその良さが全く分からないけど、男性ってギャップ萌えみたいなのが好きなのかな……。可可ちゃんの時も童顔だけど身体はいいから興奮させられるみたいなこと言ってたし……。
なんか、七海ちゃんと一緒にいると知らなくてもいい男性の性癖の情報を強制的に取得させられてる気がする。
「先生はもっと誠実な方です。たまに手を抜いて楽をすることもありますが、それは私たち全員を満遍なく面倒を見てくださって疲れているからであって、それは労働に対する正当な休暇。つまり七海さんの言うような不誠実なこと、先生は絶対にしないはずです」
「でも複数の女性と付き合ってるよね? それは普通のことなの??」
「そ、それは私には及ばぬお考えが先生に……」
「もう認めちゃいなよ。センセーの世界は一夫多妻制で不誠実で、そんな人の側にいるのなら自分も不誠実にならないとって。想像してみなよ、生徒会長として毎日毎日責務の重圧に押しつぶされている中、唯一の癒しがセンセーに身体を捧げること。普段は生真面目な自分が重荷から解き放たれて裸になり、それを受け入れてくれるセンセーのことをね」
「先生が、受け止めてくれる……?」
やっぱり生徒会長ともなるとストレスって溜るのかな? 今は私たちがいるけど、去年までは生徒数が少なかったこともあってかずっと1人でやってたんだもんね。その時から先生は恋ちゃんのことを機にかけていて、1人で生徒会顧問みたいなことをしていたから、そりゃ恋ちゃんの先生への依存度が高くなるのも無理はない気がする。
だからこうやって七海ちゃんの妄言に簡単に捕まっちゃって、妄想の世界から帰ってこられなくなっちゃうんだよね……。私たち、いつもこんな展開になる気がする……。
「次は嵐ちゃんか」
「やっぱり私もなんだ……。私はみんなみたいにスタイルが良くないから、身体でどうこうっていうのは無理なんじゃないかなぁ」
「分かってないねぇ。貧相な身体にはそれだけの価値があるんだよ。嵐ちゃんは背も低いロリ体型。それつまり、男のロリコン性癖をくすぐるんだよ」
「そ、そうなんだ……。でも先生にそんな趣味があるとは思えないけど……」
「あのね、男ってのは誰しもがロリコンなんだよ。先生は今年で24歳、私たちは17歳。歳の差がないように見えて小学1年生と中学1年生の差くらいあるんだよ?」
「確かに、私の身体にも需要がある……!?」
「そうそう」
あの策士と呼ばれたちぃちゃんですら騙されそうになっている。自分の身体が貧相だってことを気にしていたことは知ってたから、だからこそこういった甘言に誘導されちゃうのかも……。
本当なら幼馴染を元の世界に戻してあげたいけど、自分の身体にも希望があると知ったちぃちゃんは心なしか嬉しそう。だから下手に声をかけるのが躊躇われてしまう。七海ちゃんがこっちを見て口角を上げ薄ら笑みを浮かべてきたので、どうやら私が口出しできないことはお見通しみたい。なんか悔しい……。
「ロリ体型の裸を見るっていうのは、男にとってそれはそれは興奮を煽られるんだよ。背徳感って言うのかな、犯罪臭がするから見てはいけない、でも見たいという誘惑。嵐ちゃんならそれを叶えてあげられるんだよ。だって自分さえ脱げばセンセーを満足させられるんだから。しかもこの中でそれができるのは、成長が微妙なあなただけ。ある意味でアドバンテージなんだよ」
「私だけが、先生に特別を与えてあげられる……??」
「そうだよ。そのちっちゃいおっぱい、ちっちゃいおしりで、センセーの中の背徳感を刺激して、その快楽に捕らわれたセンセーを独り占めできちゃうんだから」
「先生とそこまで……!!」
「ちょっとちょっと!! 吹き込みすぎ!!」
七海ちゃんの口車が上手すぎてちぃちゃんが変な性癖に目覚めそうだったので、慌てて元の世界に引きずり戻す。幼馴染が露出魔になったら一体どうしてくれるの全く……。
「ま、今日はこのくらいかな。遊んだ遊んだ」
「もう本音を隠さなくなったね……」
「遊びたかったのも本当だけど、これもみんなとセンセーを結びつけるための作戦の1つだよ。自分の魅力を知ればセンセーにもアプローチしやすくなるでしょ」
「そのアプローチの仕方が問題な気が――――って、あれ?」
「ん? どしたの?」
可可ちゃん、すみれちゃん、恋ちゃん、ちぃちゃん。みんな七海ちゃんに言葉巧みに誘導されて羞恥心をボロボロにされている。
そう、みんな。Liella2年生のみんな――――うん、やっぱり!!
「私は!?」
「へ?」
「私にはないの!? そういった私にだけできるアプローチみたいなの!?」
「なに? さっきまで否定してたのに、今度は求めるって情緒不安定過ぎない?」
「い、いや、みんながアドバイスされてるのに、私だけされてないのはなんでかなぁと思っただけで、別にアドバイスの中身はどうでもいいって言うか……」
「フフッ、欲しがりさん♪」
「違うから!! ハブられたことを気にしてるだけだから!!」
別に身体を使って先生の気を引こうだなんて一切思ってないけど、私だけその手段がないっていう事実がね……。内容はどうでもいいし実行もしないけど、私だけチャームポイントなしって言われてるみたいなのがちょっと引っかかる。
そして、七海ちゃんは私の正面に立つと、片手を私の肩に置いた。
「渋谷ちゃんはね、チャームポイントないよ」
「はぁ!?」
「だってスタイルは平安名ちゃんや葉月ちゃんより下だし、かといって唐ちゃんのようなロリ顔でも、嵐ちゃんみたいなロリ体型でもない。つまり――――下位互換だよ♪」
「いやそうかもしれないけど、そういうのを無理矢理にでも見つけて煽るのが七海ちゃんでしょ!?」
「私をどんな目で見てるのかな……。ていうか、煽られたいの?」
「私だけチャームポイントなしっていうのはそれはそれで……」
そりゃ私よりもみんなの方が魅力的だと思うけど、こう真正面から特徴なしとか言われるとそれはそれでちょっと腹が立つ。しかも下位互換って……あっ、いやいや、こうして感情的になるから七海ちゃんの策略に嵌っちゃうのか。みんなももっと冷静でいられれば妄想に連れ込まれることもなかったもんね……。
「あっ、でも声だけはいいよね。歌声だけは自慢できるポイントだとしたら……」
「だとしたら??」
「おぉ、食い気味だねぇ。声がいいってことは、性行為の時にいい声で鳴けるってことじゃん?」
「へ?」
七海ちゃんがニタリと笑みを浮かべる。
これもしかして、踏み込んじゃいけない話題だったやつ? 感情的になってたのは私もだったってこと!?
「じゃあセンセーとヤる時に、センセーの興奮がより増すようなメスの声で鳴けばいいと思うよ♪」
「ふえっ、えっ、ちょっ……えっ!? それチャームポイントなの!? 私の!?」
いらない妄想が脳内を過る。
ダメダメ! そんなことを想像したら自分がエッチな子みたいじゃん! それに妄想内の先生にも現実の先生にも申し訳ないよ!!
「あぁ~そういやこのあと用事あるんだった。それじゃあ渋谷ちゃん、みんな、今日のアドバイスを糧にセンセーへのアプローチ頑張ってね♪」
「ちょっ、逃げるの!? 待って!! 他にあるでしょ私のチャームポイントぉおおおおおおおおお!!」
満足したのか七海ちゃんはこの場から颯爽と逃げ出してしまい、これ以上の追及はできなくなってしまった。
結局みんな恥ずかしがったままだし、私は変なチャームポイントを押し付けられるし……。
えっ、私の特徴の活かし方って本当にベッドの上で鳴くことだけじゃない……よね??
Liellaのキャラって何故かスリーサイズが公開されてないんですよねぇ。なのであまりキャラのスタイルについて詳しく言及できないのですが、皆さんの世間的な評価を参考に今回はネタにしてみました。
まあこの小説で女の子のスタイルを語るのは様式美みたいなものですから(笑)
そういや2話連続で零君がサブキャラになってしまったので、そろそろ復帰させないと……
☆10評価をくださった、幻聖さん、ありがとうございました!