ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常2~   作:薮椿

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次なる一歩:その想いは銀河を超える

 スクールアイドルはアマチュアのアイドルだが、今や世間でも一般に認知されるようなビッグコンテンツになりつつある。そのため、有名になりさえすれば仮にもアイドルで容姿が優れていることもあってか、スクールアイドル以外の仕事が舞い込んでくることもままある。そこから卒業後の進路を決める奴もいるので、どんな形であれ自分から動いて目立つことは大切なのだろう。

 

 そして、Liellaにもそういった仕事の依頼が初めて届いた。話題のスクールアイドルに新作ドレスを着て欲しいという撮影モデルの依頼で、Liellaからはすみれが直々にご指名された。

 もちろん全員が驚いていたのだが、一番度肝を抜かれていたのはすみれであり、最初はイタズラかと思っていたらしい。ただ連絡してみるとマジの依頼であり、元々自分を魅せることが得意な彼女にとってはピッタリの仕事内容だったので、二つ返事でこれを承諾した。

 

 そんなわけでとある日の放課後、俺たちは依頼元の会社の撮影スタジオに来ていた。別のグループの子たちも何人か同じモデルとして依頼されたのか、すみれと同じくらい容姿端麗でエレガントな女の子たちが揃っている。

 ちなみに俺は顧問として付き添いで来ている。最初は来る予定はなかったんだけど、すみれが顧問の付き添いの許可を依頼元に取ったらしく、せっかく許可をもらったのなら行かないわけにはいかないという理由でここにいる。他のグループの顧問はいないようなので1人だけ付き添いに来ているって現状が少し恥ずかしいのだが、アイツどうしてわざわざ俺を来るように仕向けたのか。ま、女の子の晴れ姿を見られるのは悪くないけどさ。

 

 そんなこんなしている間にすみれの撮影が終わった。モデルに来た子の中で一番最初の撮影だったため当初は緊張した様子だったが、流石はスクールアイドルというべきか、カメラの前に立った瞬間にプロ顔負けの顔立ちとなっていた。プロ扱いするのは早いかもしれないけど、アマチュアとも言えねぇのかもしれないな。

 

 すみれは夢にまで見たモデル撮影を終え、やり切って満足そうな顔をしている。その熱気が収まらぬ中、部屋の隅で撮影の様子を眺めていた俺のもとへと帰って来た。撮影のため白のドレス衣装を着ているのだが、お嬢様キャラが似合うコイツにまさにピッタリだな。

 

 

「お疲れ」

「どうだった? いつもとは違う私の姿は」

「完璧、とは言えないな。初めてにしては良かったんじゃないか、写真映り。スクールアイドルで自分を魅せている経験が活きたな」

「なによその上から目線。たまには素直に褒めたらどうなの?」

「100点を出すとそこで成長が打ち切りになっちまう。だから俺が完璧を判断を下すことはない」

「相変わらずカッコつけちゃって」

 

 

 すみれは微笑みながら俺の隣に腰を掛ける。既に1年半の付き合いのコイツからしてみれば俺の性格も熟知しており、皮肉のような褒め方をしてもさらりとスルーされた。

 素直に褒めはしなかったが、撮影自体はぶっちゃけ良かったと思っている。被写体の美貌と華やかさを映し出すのがモデル撮影。つまりLiella中でもトップクラスでエレガントな彼女にとって、モデル撮影というのはスクールアイドルのステージ以上に自分の魅力を前面に押し出せるわけだ。ステージでは華やかさと言うより煌びやかな面を魅せる傾向にあり、個人撮影の場合は個々の端麗さ、ステージの場合はチームとしての輝かしさを魅せる、と言えばいいか。コイツの場合は前者の方がより魅力が際立つ。

 

 

「スクールアイドルの衣装も可愛いから好きだけど、ドレスみたいな自分を引き立たせる衣装はもっと好き。撮影の感触も良かったし、このまま継続して仕事が貰えるかもって思うと打算的だと分かっていてもニヤケちゃいそう……」

「いいんじゃねぇの別に。やりたかったんだろ、こういうこと」

「そうね。スクールアイドルはこのための足掛かり。夢のスタートラインを切ることができて嬉しさでいっぱいよ。もちろんスクールアイドルも大事だから、今はそっちに専念するけどね」

 

 

 あの『グソクムシ』時代からの大躍進。まさか高校の年代でここまで出世するとは思っていなかっただろう。スクールアイドル活動で人気が出たのが功を奏したか。

 コイツ自身はモデル業など芸能方面への進路を希望しているが、かと言って今のスクールアイドル活動を踏み台にしているかと言われたらそうではない。むしろ自分をここまでの舞台に押し上げてくれたことを感謝しているし、去年スクールアイドルに誘ってくれたかのんたちに対しては言葉だけでは伝えられないほどの恩がある。ってことを俺だけに話したことがある。直接本人たちに言えばいいのにって思うけど、プライドの高いコイツだからこそそう簡単にはいかないのだろう。難儀な性格だな……。

 

 でも実は、Liellaの中でも一番人情味に溢れてるのはコイツ説が俺の中ではある。何かと世話焼きだし、言い方はキツイけど何だかんだ付き合うタイプで、後輩の面倒見もいい。自分以外に興味がないトゲのある性格に見えるけど、実は仲間想いというギャップが余計に人情味の高さが際立って見えるのかもしれないな。

 

 

「そういや、アイツらがお前の晴れ姿が見たいから写真を撮って送ってくれって言ってたな。もう送ったのか?」

「まだよ。ていうか今は送らない。みんなには本が出るまで待ってもらうわ」

「なんでだよ?」

「そ、それは……」

 

 

 すみれは頬を赤くしてこちらを見つめる。だけど俺が見つめ返すとすぐにそっぽを向いてしまった。そんなに恥ずかしいのか、アイツらに見せるのが。コイツの魅力はLiellaの奴らなら誰でも知ってるし、それこそ普段はからかい合っている可可ですら、今回のコイツのドレス姿には見惚れるしかないだろう。

 

 俺も見惚れているってわけではないが、今目の前にいる彼女は俺が今まで見てきたどの彼女よりも綺麗だと思っている。もちろんスクールアイドルの彼女もいいが、どちらかと言えばアイドルのようなきゃぴきゃぴした姿より、ドレスアップした華々しい姿の方が似合ってるしな。

 

 

「じゃ、そろそろ行くわよ」

「行くってどこに?」

「屋上。この会社の屋上、ドラマの撮影にも使われるくらい夕日が綺麗に見えるのよ。せっかく来たんだから行っておきたいと思ってね」

「その恰好でか?」

「そ、そうよ、悪い? いいから早く立つ、てきぱき歩く!!」

「ったく……」

 

 

 どうやらただ撮影のためだけにここに来たってわけではなさそうだ。わざわざ俺を誘ったことといい、屋上に撮影映えのスポットがあると知っていたことといい、何か他に考えがあってのことだろう。

 なんにせよ、まだ他の子が撮影している最中だから解散まで時間はある。何をするのかは知らないけど付き合ってやるか。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 確かに言われた通りだった。紅に金を混ぜた強烈な色彩の夕日が街を燃えるような瑞々しい夕映えで包んでいる。事前に予告されていたから感動は半減するだろうと馬鹿にしていたのだが、これは撮影映えスポットとして確かに絵になると、芸術に微塵も興味もない俺ですらそう思えた。

 

 ただ、12月も迫るこの季節。夕暮れの時間帯になると見晴らしのいい屋上にいることも相まって結構冷える。暖かそうな風景が広がっているのに中々のギャップだ。

 俺は上着を脱いで、すみれに放り投げた。

 

 

「あ、ありがとう……」

「寒いこと分かってんだから、着るものくらい持って来いよな」

「この格好じゃないとダメなのよ……」

 

 

 何をするのかは知らないが、その時になったら上着を脱げばいいだけじゃねぇのって、そういう正論は女性に対してNGらしい。最近はロジハラだの論破だのすぐ噛みつかれる時代だからな、今が割といい雰囲気なのも相まって、ここはコイツに主導権を握らせておいた方がいいだろう。

 

 すみれは屋上を囲うフェンスまで歩み寄る。ドレスが白のせいか夕日色に染まり、彼女の色白の肌と綺麗な金髪も夕焼けの朱色によって輝きを増している。その姿に思わず神々しさを感じてしまい、もう景色よりも彼女から目を離せなくなっていた。この光景を見ることができただけでもここに来た甲斐があったってものだ。

 

 

「私、このまま行けば夢だった芸能関係の仕事をやれるかもしれない」

「あぁ、撮影を見た感じはそうだろうな。評判超良かったし」

「えぇ。でも私の輝きをより際立たせるためには『ラブライブ!』に優勝しなくちゃいけない。負けたのに美を語るなんて許せないから」

「プライドたけぇな、相変わらず」

「これが私だから」

 

 

 成功以外に輝く手段はないってことか。まあ幼少期に『グソクムシ』で芸能界の底辺を見たらそりゃそんな考え方にもなるか。ただ俺は否定しない。そっちの方が向上力が上がり、努力した女の子の魅力の良さは俺も良く知っている。それに勝った方が美談になし、なによりカッコいいだろ?

 

 

「だからこそ、みんなと協力して今度こそは優勝を掴む。それが自分のため、みんなのため、どちらにもなるしね」

 

 

 Liellaの中でも優勝することへの気概が強いのは、帰国が運命を握っている可可と自分の夢の行方を賭けているコイツの2人だと思っている。他のみんなももちろんだが、この2人だけはズバ抜けた執念がある。どちらの人生もスクールアイドルでの成功が分岐点となっているからだろう。しかもそれは敷かれたレールではなく自分で決めたこと。だからこそ優勝への意気込みも凄まじい。

 

 だからと言って、仲間を蔑ろにして1人で目立つとか、そういったことは考えていない。さっきも言った通り、コイツほど仲間想いの奴はいない。当初は自分が少し芸能界にいたからって理由でスクールアイドルを見下していたが、今は同じ目標に突き進む仲間として対等に接している。それも自分の夢を叶える過程における成長だったのだろう。

 

 自分のために、我が道を歩いていたらいつの間にか仲間ができて、仲間を助けていた。あれ、どこかで聞いたような人生だな……。

 

 

「それで? 優勝目指して頑張れ、って言って欲しいのか? そのために俺を連れてきたわけじゃねぇだろ」

「ッ!? 話の流れってものがあるでしょ! もう、察しがいいのも困りものね……」

 

 

 ただ優勝を目指していることを口実に発破をかけてもらいたいのなら、俺をわざわざこんな映える場所に呼び出す必要はない。他に理由があるはずだが、実はここまでの流れで大体想像がついていた。

 

 

「『ラブライブ!』で優勝するのも、芸能界に進出する夢を果たすのも、どっちもアンタへの想いに決着をつけてから。そう思っただけよ。このドレスをあの子たちに見せないのも、最初にアンタに見て欲しかったから」

 

 

 やっぱり、そういうことだったのか。

 気持ちが中途半端のままでは自分を魅せることはできない。それはコイツの信念だ。去年とあるライブでセンターを飾ることがあったのだが、その時はビビってライブができない小心者な面を見せた。あれだけ見下していたスクールアイドルで、だ。それを可可に見抜かれた時は激しく動揺しており、でもそのおかげで自分が如何に無駄な自信家で、臆病者であると知れたから精神的な成長の機会でもあった。

 

 その経験があったからだろう、中途半端な気持ちで本番に臨むことを良しとしない考えになったのは。

 つまり、俺に対する想いをここで全て吐き出すつもりなのか……? 他の奴らより先に? マジで??

 

 

「多分! 恐らくだけど、もしかしたら勘違いかもしれないけど――――好き、なんじゃないかって思ってる!! 思い過ごしかもしれないけど!!」

「えっ!? すげぇ曖昧じゃねぇか!?」

「そんなパッと答えが出せるようなことじゃないでしょ!! できると思ったけど、この場所でなら!!」

「にしても保険かけすぎだろ……」

「いいムードの中でなら後押しされると思ってたのよ。それでも恥ずかしさが勝っちゃったけど……」

 

 

 だからこの場所に連れてきたのか。普通に好意を伝えるのは恥ずかしい、だからロマンティックな場所でなら行けると思ったらやっぱり恥ずかしいって何たる茶番。物事を何でもストレートに言うコイツであっても、流石に恋愛に関しては真っすぐ駆け抜けるのは難しいみたいだ。

 

 

「それだと、結局は中途半端な気持ちのまま『ラブライブ!』の予選に臨むことになるんじゃないのか? もうすぐだろ、予選」

「中途半端じゃない。いくら曖昧でも、いくら保険をかけても、言ったことは事実だから。その事実だけで満足よ、今のところはね」

「今のところねぇ……」

 

 

 美味しいものを食べた、旅行へ行った、高いモノを買ったなど自分を満足させる手段はいくらでもあるが、現代の若者はそれそのものの感想と言うよりかは、食べた、行った、買ったという実績が欲しいだけって人も多い。SNSで投稿して自己肯定感を高めたり、他の人との話題のネタにするために、何かをした行動そのものをゴールにする。他の例で挙げるとアニメを倍速で観て、そのアニメを楽しむよりも観たという実績を作りたい、そんなところだ。

 

 つまり、今のすみれがそんな感じ。自分の中で引っかかっていることを解消できれば、その結果がどうなろうと良かったのだろう。自分が動いたという実績さえ作れればそれでな。

 

 俺はそれを中途半端と思うことはない。だってライブをするのはコイツ自身なんだから。自分が迷いなき心でステージに上がれるのであれば、コイツだけが満足すればいい。俺になんていくらでも迷惑をかけていいんだからさ。

 

 ただ、『()()()()()()』って条件付きだけどな。

 

 

「でも安心したよ。七草やウィーンが横やりを入れてきても悩まず、自分自身しか見つめてないいつものお前で」

「そりゃ最初は驚いたわよ。実際の恋愛ってこんなに波乱万丈になるものなのってね」

「まあ大体は素直に行かない気がする。俺の周りでの話だけど……」

 

 

 たまにはまともな恋愛をしたいところだけど、秋葉(アイツ)がいる限りそれは叶わぬ願いなんだろうなぁっと完全に諦めている。俺の周りにいると毎度慌ただしいせいで、女の子たちにちょっと申し訳ない気持ちもあるんだよな……。

 

 

「それにあの子たちはあの子たちの恋があって、私には私の恋がある。邪魔してくるわけでもないし、気にする必要はないでしょ」

「七草はお前らが結ばれないと自分に恋愛する資格が与えられてないからな、むしろ協力してくれる側だ」

「協力してくれるの、あの子が? こっちが恋愛初心者だからってからかってるだけでしょ」

「遊ばれてるとも言えるな……」

 

 

 アイツは煽ることで俺たちの恋模様を加速させようとしているようで、それは大なり小なり成功していると言ってもいい。すみれみたいにあまり気にしていない奴もいるが、ライバルの登場は少なからずLiellaの恋心を刺激したはずだ。

 

 

「とにかく、アンタに想いを伝える手段は自分を魅せること。それはライブで、そして『ラブライブ!』を優勝することで果たされる。見せてあげるわよ、優勝の景色を」

「見届けてやるよ、一番間近でな」

「とは言いつつ、アンタなら見慣れてるんじゃないの? 他のスクールアイドルにもたくさん見させてもらってるでしょ」

「せっかくお互いに意気込んでいい感じだったのに、冷めること言うなよな……」

 

 

 俺の隣にいたスクールアイドルはもれなく結果を出す謎の現象があったので、大会優勝の場面には何度も立ち会ってきた。それでもグループが違えば感動も違うもの、今回もまた俺の観たことのない感動を与えてくれることを期待してるよ。

 

 

「にしても残念だったな。お前の渾身の告白が聞けると思ったのに」

「な゛あっ!? ふ、ふんっ! 私の告白を受けるなんて、アンタにはまだ早いのよ!」

「もしかしてその白ドレスも、ウェディングドレスを想像して選んだとか?」

「はぁ!? 自惚れるんじゃないわよ! これは向こうが用意してくれたの! 全く、アンタも七海と同じね……」

「ははっ……」

 

 

 性悪なアイツと同じって言われるのだけは勘弁だな。

 でも反応が可愛いのは確かだから、からかいたくなる気持ちも分かる。それを含めて、みんなの色んな表情をもっと見てみたいって思うよ。

 




 すみれみたいに我が強くて芯が一本通ってるキャラは好きです!
 そういった意味ではLiellaの中で推しを決めるとしたら、決めたことをやり通す意志が強い彼女や可可が推しキャラになるかも……?



 Liella編の第二章も第30話に到達しました。
 予定としては年末までに完結とし、話数的には残り10話程度になると思います。そのため、来年の1発目から早速新章へ突入できればと計画中です。
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