ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常2~   作:薮椿

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七草七海は聞き出したい

 澁谷かのんです。

 『ラブライブ!』の予選を終えてから数日が経過。結果は無事に本選出場決定!

 今回は去年よりも更にスクールアイドルたちのレベルが高く、他のグループのライブに見惚れちゃって危うく自信をなくしかけそうになったこともあったけど、9人一致団結して今までのどの練習よりも最高のパフォーマンスを披露でき、私たちの中でも納得のいくライブができたことで不安も乗り越えられました。

 

 そんなわけで、今日は予選通過を祝したパーティ―――――の料理に使う材料の買い出しに行っていました。今は学校に帰ってきて家庭科室の大きな冷蔵庫に食材を詰めているところ。

 ちなみにパーティは明日だから今日は買い出しだけで終わり。でも既に今の時点で一緒に買い出しに行ってくれた1年生たちはテンションが上がっています。

 

 

「メイ、今日ずっとニヤニヤしてる」

「だって予選通過したんたぞ? あの『ラブライブ!』で! そりゃ嬉しいに決まってるだろ!」

「予選を通過してから私のチャンネルの登録者人数も爆伸びですの! これは笑いが止まらない……うひひ!」

「夏美ちゃんは別の意味で喜んでいるっす……」

「そういうきな子ちゃんだって、もう優勝したってくらいに泣いてた」

「う゛っ!? それを言うなら四季ちゃんだって、きな子が見たことないくらい笑顔が決まってたっす!」

「そ、そう……?」

「結局みんな嬉しかったってことだろ」

 

 

 1年生たちは初めての『ラブライブ!』だったけど、初出場とは思えないくらいの良いライブを披露してくれたことは一緒にステージに立った私が良く知っている。グループ加入直後は2年生との実力不足に悩んでいた時期もあったけど、今はもう私たちとの差は一切ない。これも先生が4人に特別指導してくれたおかげかな。やっぱり最終的には先生のおかげと考えてしまうあたり、私たちにとっての先生の存在が大きくなっていた。

 

 そんな中、後ろから赤髪ツインテールの女の子――――七海ちゃんが話しかけてくる。

 

 

「いやぁ~浮足立ってるねぇ1年生ちゃんたち」

「七海ちゃん。うん、今の『ラブライブ!』は参加グループが多すぎて、予選を抜けることさえ難しいもん。それをパスしたとなったらああなっちゃうよ」

 

 

 この場に七海ちゃんもいる。買い出しに行く話を七海ちゃんにもしていたので、用事で来られない他の2年生チームの代役として(勝手に)付き添ってきたのが事の流れ。裏の性格を知ってからは何かと私たちも彼女のことを警戒することが増えたけど、それは今回もそうだ。何の見返りもなく手伝ってくれるって、今度は何を考えているんだろう……。一応親友だけど、あの性格を知っちゃったら……ねぇ。

 

 

「ま、死ぬ気で頑張ってよ。みんなが『ラブライブ!』を優勝して、センセーに告白して結ばれたら私も自動的に結ばれるんだから」

「えっ、そういうシステムだったっけ? 私たちと先生がくっついたら、七海ちゃんの恋愛が解禁されるって聞いたような……」

「だってセンセーが告白してきた女の子を突っぱねるわけないもん。つまり告白した時点で勝利ってこと。そして私はいつでも告白する気満々。だから後はそっち次第だよ」

「そっか、人の恋路を背負ってるのか私たち……」

「そうだよ。だからもし優勝できなかったら――――握り潰してやる」

「どこを!?!?」

 

 

 目こわっ!! 勝手に人のライブに人生を捧げておいてそれはないよ……。

 ただ本人も半分冗談なのか、すぐにいつものイタズラな笑みに戻る。もうどの表情が本当の七海ちゃんなのか分からなくなってくるかも……。

 

 

「で、どうなの? センセーとは最近」

「どうって? なにが?」

「なにって、まさか何も発展してないの? 私が本性まで出してあげたのに??」

「それは七海ちゃんが勝手にやったことだよね……。別に何もないわけじゃないけど、じゃあ何か進展があったと言えるほどの何かがあるわけでも……」

「ヘタレ、意気地なし、小心者、ボロ雑巾。アタシは自分よりも圧倒的に下の人間に自分の人生を託してるのか……。泣けてくるね」

「よくもまぁそんな流れるように悪口を……」

 

 

 七海ちゃんはこちらを見上げるように目を細め、口角を上げる。憎たらしいったらありゃしないけど、先生も言っていた『コイツが超絶美少女じゃなければ今頃顔面パンチしてた。ただの美少女でも殴っていた。超絶だから躊躇ってしまった』という気持ち、よく分かり過ぎる。自分が可愛いのを分かっていて、それを武器にして多少の煽りは許されると思っているからタチが悪い。たまに本当に友達同士なのか疑っちゃうくらいだよ……。

 

 

「1年生ズはどうなの? 先生と何か進展あった?」

 

 

 あっ、きな子ちゃんたちに矛先が向いちゃった。1年生たちにあまり変なこと吹き込まないよう私が会話をすることでブロックしていたつもりなんだけど、流石にもう限界かも……。

 

 

「私はそうでもないけど、メイは進展あったっぽい。先生を見る目が明らかに乙女になってる」

「ちょっ!? お前勝手なこと言うな!!」

「ほほぅ、これはスキャンダルですの。スクールアイドルが教師に恋する、まさに炎上騒動」

「ん? でも夏美ちゃんも最近先生に熱い視線を向けてるっす」

「の゛ぁ゛!? そ、そんなことないですの!!」

「やけに野太い声が聞こえたっす、さっき……」

 

 

 そういや夏美ちゃんとメイちゃん、最近先生と2人きりになれた日があった気がする。先生は身近な存在でありながら、2人きりになれる機会は中々なかったりするんだよね。そりゃ先生は社会人で教師だから仕事がたくさんあって、それでも私たちの指導をしてくれて、他にも学校中の生徒の勉強を見てあげるなど、いつ休んでるんだって思うくらいに忙しそう。だから先生と2人きりでいられる時間は貴重だったりする。

 

 そして、2人きりの時間であったとしても私たちをさりげなくエスコートしてくれたりと、少しは休めばいいのに女性に対する気遣いを常にしてくれる。そのせいでやたらとドキドキさせられたりするから、夏美ちゃんやメイちゃんがこうなってしまうのも無理はないんだよね……。

 

 

「ていうかさ、あれだけのビッグイベントがあったのに進展がそれだけってことはないでしょ」

「ビッグイベント……って、なんかあったっけ?」

「あれ」

「あれって―――――あ゛っ!?」

 

 

 思わず言葉にならない言葉を発してしまい、はしたなくあんぐりと口を開ける。そしてそれはきな子ちゃんたちもそうだった。

 七海ちゃんが指さした先。窓の向こうに見えるのは――――例の銭湯。

 

 

「な、なななななにもなかったよ! なにも!!」

「その反応は逆にあったって言ってるようなものでしょ。せっかくみんな裸を見せたっていうのに、何もなかったはウソすぎるよ」

「ちょっ、ちょっと待って! どうして七海ちゃんがあのことを知ってるの!?」

「だって私も聞いたもん♪ あの秋葉(あくま)に」

「そうなんだ……」

 

 

 秋葉先生、どうして教えちゃったのこの子に!? この世で一番知られたくない人に知られて冷や汗が止まらない。

 そして、これからの展開を暗示するかのように七海ちゃんの笑顔の黒さは最高潮に達していた。イタズラな笑みという言葉を辞書で引いたらこの顔が写真で出てきてもおかしくないくらいに……。

 

 

「それでぇ? センセーの裸は見たの?? どうだった――――鬼塚ちゃん?? センセーの身体、前から洗ったよね?」

「え゛っ!? そ、それはその……意外といい胸板……でしたの」

「は? それだけ?」

「恥ずかしくてあまり見られなかったと言いますか……」

「下は?」

「そこはいいって、先生が……」

「ダメよダメよはやっての合図!! 男も女も変わらない!!」

「ええっ!?」

 

 

 あの時、銭湯に充満していた変な煙のせいで私たちはみんな正気を失っていた。そのせいで大胆な行動を取っちゃったけど、最低限ギリギリのラインに触れないように先生がコントロールしてくれていたんだと客観的に記憶を思い出すと分かる。それでも攻めろと七海ちゃんは言ってるみたいだけど……。

 

 

「あと下半身のタオル1枚でセンセーを丸裸に出来たのに、私が夢見たそのポジションにそっちがいち早く着いたってのに、何もしなかった……? 脱がしたいとは思わなかったの?」

「あの時はちょっと変な気持ちになってまして……す、少しは」

「えっ、夏美お前、そういうことに興味あったのか!?」

「意外。やっぱり動画投稿者の女性は承認欲求の塊。自分を魅せて男性に抱かれたい欲求を持つビッチ」

「そこっ!! 事実無根の偏見を持つのはやめますの!!」

 

 

 なんか話があらぬ方向に進んでいるような……。確かにあの時は私たちがおかしくなってたけど、秋葉先生曰く『あのガスは本心の奥底に眠る願望を引き出す効果がある』って言ってたし、もしかしたら私たちってエッチなことに興味あっちゃったりするのかな……? い、いやいや、そんなことない……はず。

 

 

「そんなこと言いながらも、米女ちゃんはセンセーと湯舟に浸かっている時にずっと身体見てたじゃん」

「がはっ!? ゴホッ、ゴホッ!! そ、そりゃ見るだろ!! 女だったらイイ身体した男くらい!!」

「開き直りましたの……」

「私のメイが男に寝取られていく……」

「おい四季! それだと私まで変態性癖持ちみたいに思われるだろ!!」

 

 

 七海ちゃんによってみんなの心の奥底がまた掘り返されてる。しかも七海ちゃんは最初に一言を言っただけで後は愉しそうに見てるだけ。いいようにオモチャにされてるなぁみんな。私もいつもされてるけど……。

 

 

「内部崩壊ってこうして生まれるのかぁ。ちょっと亀裂を入れてあげただけで勝手に広げて分裂するなんて、これほど面白いことはないよね♪」

「もうっ、予選抜けてこれから頑張ろうって時になんてことしてくれるの……」

「これだけ恥ずかしい思いをすれば少しは羞恥心が晴れるかと思ってね。センセーにも近づきやすくなるでしょ。ま、反応が面白いからっていうのもあるけどね♪」

「そっちが本音だよね……」

 

 

 敵なのか味方なのか分からない人って二次元の世界の話だと思ってたけど、こうも分かりやすい子が現実でいるなんて……。先生は『アイツの好きにやらせておけばいい。裏切るような奴じゃなさそうだしな』って言ってたし、根は優しい子だって1年の頃から友達だったからよく知ってるけど、今の状況を見てると疑いたくなっちゃうよねぇ……。

 

 とりあえず、現在絶賛ヒートアップ中の夏美ちゃんとメイちゃん、クールを装ってるけどアブナイ発言を繰り返す四季ちゃんもついでに止めないと。

 あれ? 夏美ちゃん、メイちゃん、四季ちゃん……? ん? そうだきな子ちゃんは??

 

 

「あっ、あぁ……先生の……裸……」

「頭から湯気が出てますの……」

「きな子、意外とむっつりなんだな」

「純朴な田舎娘ほど、性根はエッチだったりする」

「はっ!? 今とてつもない不名誉が降りかかってきた気がするっす!」

 

 

 このままだとLiellaが男性の裸のことばかり考えているエッチな集団に思われちゃうよ……。

 この前も私たち2年生にも先生とあんなことやこんなことをする妄想を流し込んできたし、これで1年生と2年生どちらも潜在的な性的欲求を七海ちゃんに掘り起こされたことになる。私たちの恥ずかしさを克服するために辱めてるって言ってたけど、痛みに慣れるために体罰をする昔の教育と変わらない気がする……。

 

 

「それで? 知りたくないの? センセーがどれだけ男らしいカラダをしているのか、見てみたくないの?」

「み、見たくないと言えば……」

「見たい部類かもしれない」

「いや普通に……」

「見てみたいっす……」

「思春期女子って感じだねぇ。好きだよ、汚い欲望を曝け出すその姿。渋々ながら自らの欲求を隠しきれずに思わずゲロっちゃうその滑稽さ。フフフ……♪」

「本音漏れ過ぎだから……」

 

 

 また遊ぼうとしてる。だったら抵抗すればいいじゃんって話になるんだけど、何故か暗示をかけられたかのように七海ちゃんに思考を誘導されちゃうんだよね。七海ちゃんの話し方が上手いのか、自分のペースに乗せるのが得意なのか。こちらが何も喋らなくても、その蠱惑的な眼は相手の気を彼女に集中させる効果があるような気もする。私の身近にこんな子がいたなんて恐ろしい。むしろ1年以上もよく猫被っていられたって感心しちゃうくらいだ。

 

 

「ま、センセーの裸を見たいんだったらまずは今の中途半端な関係から先に進むことだね。その気になれば割とヤってくれるから、センセーは」

「やるって、何を……?」

「えっ、エッチなこと。いわゆるセックス」

「「「「セッ……ク!!」」」」

 

 

 みんな大きな声で言いそうになったけど必死に堪えたね……。

 七海ちゃんは真顔だ。如何わしい言葉を使うことに一切の躊躇がない。ただでさえ銭湯であんなことがあったばかりなのに、そんな話をされたらまた余計な想像が止まらなくなりそうな……。

 

 

「センセーに女がたくさんいるのは知っての通り。凄いのは、たくさんの女を1人で一晩丸々相手できること。あの大所帯の虹ヶ先のスクールアイドル相手でさえ、あの人数を1人で相手をしきってなお余裕のある精力の強さがあるんだよ。それは男としての体力、鍛えられた身体、とめどない性欲、全てにおいてパーフェクトな証」

「体力も……」

「身体も……」

「性欲も」

「パーフェクト……」

 

 

 きな子ちゃんたちは顔を真っ赤にしながら息を飲む。ついでに私も唾を飲み込む。

 男女の夜伽がどんなものかは分からないけど、先生の裸を見てしまった今なら少し想像できる。あの意外とイイ身体で迫られたらもう――――って、ダメダメこんな妄想してたら! 先生ゴメンなさい!! あれもこれも七海ちゃんのせいですから!!

 

 

「でもあなたたちはセンセーを丸裸にする最大のチャンスを逃した。また見たいのであれば、それこそお付き合いして一緒にベッドに入るしかないってことだよ」

「それだと先生の裸見たさがメインに思われるような……」

「目的はなんでもいいよ。ただお近づきになりたい、お付き合いしたいってよりも、その後で何をしたいって考えてる方が夢あるし、センセーもみんなとの未来を想像しやすくなると思う。たくさんの女の子と付き合ってるにも関わらず、1人1人との日常を大切にしているあの人になら、自分のやりたいことを伝えた方がいいかもね」

「「「「「…………」」」」」

「なにポカーンとして」

「七海ちゃんって、まともなアドバイスもできたんだね」

「失礼な!」

 

 

 観察眼は鋭いから、自分が面白くないからやらないだけで今みたいに真面目なアドバイスもできるはずなんだよね。いつもそうなら毎回何をされるのかとヒヤヒヤせずに済むんだけど、からかい好きだからこれからもそうはいかないんだろうなぁって。

 

 

「じゃ、興が醒めたから帰るよ」

「えっ、そ、そう。今日はありがとう、買い物付き合ってくれて」

「別に。センセーとの進捗状況を聞きに来ただけだし」

「じゃあ予選の打ち上げ会、一緒にどうっすか! 明日やるので!」

「ゴメンだけどパス。スクールアイドルには興味ないし、そっちは今『ラブライブ!』の優勝だけに集中した方がいいでしょ。そのために英気を養っておいた方がいいよ。少しでも先生の側にいて、力を貰ったら? 私がいても邪魔になるだけだしね。それじゃあ」

 

 

 そういって七海ちゃんは帰ってしまった。

 最後はかなりさっぱりしてたけど、テンションが下がるといつもあんな雰囲気になる。あの七海ちゃんが本性なのか、それとも煽ってくる時が素なのか、相変わらず分からない人だ。

 

 

「七海先輩はよく分かりませんの」

「しっかりとアドバイスはしてくれたよな」

「悪い人ではないってことは分かるっす」

「不思議な人」

「うん。でも応援してくれてると思うよ、心の中では」

 

 

 自分の恋愛のためというのは第一前提だろうけど、それでも少しは私たちを応援してくれているんだろうってことは2年の付き合いからなんとなく分かる。

 人の恋愛を背負わされちゃったとは言え、向こうは期待してくれてるんだ、これはもうこれまでよりも一層恥じないライブを魅せないとね。

 




 七海は名前だけはモブキャラから借りて性格は肉付けの半分オリキャラと化していますが、こうして描くのは楽しいんですけど、どこまで物語に関わらせるか迷ったりもします。
 読者の方が見に来ているのはラブライブの小説なので、オリキャラは極力少なめにしようと思っているのですが、Liella編の女の子が全体的に内気思考なので、こういった物語に爆弾を落とすキャラが欲しかったんですよね(笑)
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