ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常2~   作:薮椿

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【最終話】WE LOVE !!(中編)

 『ラブライブ!』に優勝したとは言えども、流石に年を越して3学期にもなればその熱気も薄れ、いつもと何も変わらぬ日常に戻る。

 いつも通り授業をしている時もそうだし、いつも通りアイツらの練習している姿を見ると、決勝直前の忙しなかった毎日と本当に同じ間隔で時が流れているのかと疑ってしまうくらいだ。今の方が明らかに時の進みが遅く感じる。

 

 その現象を如実に表しているのは生徒会室。

 ここでは去年から変わらずいつも通り生徒会長である葉月恋が黙々と業務に励んでいた。

 

 

「結局、ここは相変わらずか」

「はい。むしろ来年度に向けた準備で忙しくなって、最近はスクールアイドルよりもこっちの方が本職かと思うくらいここに時間も多いです」

「あれだけの功績を叩き出したのに仕事は減らないって難儀だな」

「その減った分を誰かが代行してくれるわけでありませんし、やりますよ、好きなので」

 

 

 『ラブライブ!』に優勝したからと言ってその実績を振りかざすわけでもなく、ただ淡々と目の前の作業に取り組む恋。理事長に交渉すればある程度融通はしてもらえそうなのに、こういうところがお堅くて真面目な奴だ。決して甘えは見せないタイプだから、そういったストイックさはウィーンに似てるかもしれない。

 

 ちなみに他の生徒会役員は用事でいない。かのんときな子は次のライブに向けての練習メニュー作り、七草は単純に行方不明。どこかでサボっているのだろう。

 そうは言いつつも俺も特に何か用事があるわけでもなく、ただコイツの様子を見に来ただけだ。一応ここの顧問でもあるし、生徒会で恋の様子を見るのもあのポンコツ理事長に命令されてのことだしな。

 

 気付けば、なんだかんだ生徒会でコイツと2人きりになることが多い気がする。別に狙ってこの状況を作り出してるわけではないが、コイツとのパーソナルスペースといえばここと断言できるくらいだ。故に落ち着く。だから時間経過が遅く感じるのかもしれない。

 

 そんな中、恋が作業の手を止める。

 やることが終わったのかと彼女に顔を向けると、既に向こうが真剣な眼差しでこちらを見つめていた。

 

 

「先生」

「ん?」

「今度一緒にお出かけ……いえ、デートをしてくれませんか? 好きな人と、そういうことをしてみたいです」

 

 

 ド直球。変化球も一切ない。

 今まで何かにつけて言葉を濁して好意を伝えてきた恋が、初めてここまで素直になった。これまで他の2年生たちの誰よりも羞恥心に負けていたが、今回ようやくそれを乗り越えたのだろう。今の表情も恥に負けておらず、真っすぐ俺を見つめたまま。これまでで一番強い覚悟であることがそれだけで伝わって来た。

 

 もちろん、答えは1つ。

 

 

「あぁ、行こう」

「っ…………!? ありがとうございます!」

「なんで感謝すんだよ」

「いや、私からのお誘いなんて迷惑ではないかと……」

「んなわけねぇだろ。むしろこっちから誘おうかと思ってたくらいだ。でもお前が覚悟を持てるまで待ってたんだよ。そのせいで先に言われちまったけどさ」

「そ、そうですか……。ありがとうございます、楽しみにしています!」

 

 

 無邪気に微笑む恋。

 ゆったりとした時間にふとして現れる小さな幸福。彼女と過ごす時間は山も谷もないけど、こうした些細な安らぎを覚えることが多い。そして、それは恋も同じらしい。覚悟を決めて彼女のおかげで更に2人の距離が縮まった今であれば、お互いにその気持ちをもっと共有できることだろう。

 

 

「そういや、さっき好きって言われたような……?」

「そ、それは……!!」

「上手いこと他の言葉に紛れ込ませたな。まだ素直100%には行かねぇか」

「うっ……つ、次のお出かけの時にはしっかり言います!! 伝えます!!」

「あ、あぁ……」

 

 

 どうやら火をつけてしまったらしい。まあ1年生の冷徹生徒会長をやってた頃からコイツは不器用だし、そういった面もコイツの魅力だろう。

 

 変にやる気を出させてしまったからには、胸を抉るようなド直球な告白を楽しみにすることにしよう。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「お前、また写真撮ってんのか……」

「あっ、先生。またって、頑張って勝ち取った功績デスから、何回でも何度でも拝みに来マス! この優勝トロフィーを!!」

 

 

 各部活が取った賞状やトロフィーを飾ってあるガラスケース。その前に可可がベッタリと張り付き、『ラブライブ!』で獲得したトロフィーを眺めてウットリしていた。

 もうこうして何度目か。3学期に入ってからは減ったものの、2学期は終業式まで毎日ずっと数分はここで張り付いていた。それこそ頬の形が変わるくらいに……。

 

 

「どうして可可たちが貰ったモノなのに、こんなところに幽閉しておくのでショウ! 家に持ち帰って飾りたいデス!」

「お前のあのぐちゃぐちゃな部屋だとすぐどこか行きそうだけどな」

「今はもう片付けマシタ! ていうか、先生が一緒にやってくれたじゃないデスか!!」

「そうだっけ。ま、精々ガラスケースを割って盗み出すなんて真似はしないことだな」

「そこまでは流石に……多分」

 

 

 そこは言いきれよ。

 Liellaの中で『ラブライブ!』に一番執着していたのはコイツだ。執着というと聞こえは悪いが、スクールアイドルになるために上海から日本へ来たくらいだからあながち間違ってはないだろう。故に自分たちの手に入れたトロフィーを展示場から略奪したいって気持ちがあるっぽい。奪ったら奪ったでそれを枕にして寝るとか、奇想天外なことに使いそうだけどなコイツ……。

 

 そうやって他の奴らとは違って未だに優勝を引きずってハイテンションな彼女だが、実はやんごとなき事情を抱えたまま大会に臨んでいた。

 それがどうなったか聞こうとしたとき、可可が先に口を開いた。

 

 

「帰国の件デスが、無事日本にいられることになりマシタ」

「急に話題変わったな……。そうか。にしてはあまり喜んでないように見えるけど?」

「決まったのが年末に帰省した時なので、流石にもう喜びは冷めちゃってマス」

「さいで……」

 

 

 度々思ってたけど、コイツってテンションの高い時と低い時の差が激しいよな。割かし何でも興味をもって子供みたいに食いつくが、熱が上がらない、または冷めきったものに対しては辛辣と言えるほどの態度となる。あれだけ悩まされてた帰国問題ですら解決したらこれだからな……。

 

 

「これで、また先生と一緒にいることができるようになりマシタ」

「あぁ、そうだな」

「なので、これからはもっと積極的に、もっとアピールして、もっともっと先生に好きになってもらえるように頑張りマス! なんたって、可可の世界一大好きな人なのデスから!」

 

 

 いきなり告白してくるか……。

 1年生の頃からフレンドリーで距離が誰よりもバグっていた子。それに加えて感情がすぐ表に出るから何を考えているのか分かりやすい。だから自分へ向けられる好意の大きさも知ってはいたのだが、それを受け入れるのはコイツの中の(わだかま)りが全て消えた時と決めていた。そう、『ラブライブ!』の優勝、そして帰国の問題を。

 

 そして、今回その障壁を全て乗り越えた。ということは――――

 

 

「うん。これからもよろしくな。俺もお前にもっと好きになってもらえるよう頑張るよ」

「可可はもう先生のことを大大大好きデスけど」

「だったら俺はそれ以上――って、小学生みたいな言い合いになるからやめるか」

「ふふっ、そうデスね♪」

 

 

 無邪気な少女の素直な告白。元々距離が近かった俺たちだが、これから一緒にいる時間が増えることでより一層お互いのことを知ることができる。

 そして、いつの間にかもっと好きになっているだろう。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「うぃっす先生! 調子はどうだい? あぁでも先生はいつもダルそうにしてるか! あははっ!」

「酔っ払いみたいな絡み方すんなよ……」

 

 

 なんだか千砂都がすげぇ高いテンションで駆け寄って来た。校則破りなんてなんのその、俺の背中が見えた瞬間に全速力だったのだろう。真面目そうに見えて結構な掟破りちゃんなんだよなコイツも。

 

 

「で? 何か用か?」

「これ!」

 

 

 何やらA4用紙を見せ付けてくる。そこには見覚えのあるゲーセンの名前と、そこに設置されているダンスゲームで最高成績を収めた旨の文章が書かれており、そして、ダンスゲーム大会の招待状が同封されていた。

 

 ――――って、え??

 

 

「ダンスゲーム大会に招待? お前が??」

「はいっ! この前先生と一緒にいったゲーセンのダンスゲームでトップの成績を記録していたらしいんですけど、どうやら年間通して成績が1位の人に招待状が届いて、他のゲーセンで1位だった人たちと大会で争うらしいです」

「そんな地区大会みたいな方式あんのかよ……。いやこれが届いてる時点であるんだろうけど……。んで? 出るのか?」

「『ラブライブ!』も終わったことですし、次の目標としてはちょうどいいと思います! あっ、もちろん先生も来てくださいね! ていうか来い!」

 

 

 命令口調で人差し指をこちらに向ける千砂都。

 ホントにあのゲーセンデート以降から容赦がなくなったなコイツ。もう目上の教師相手というよりかは親戚のお兄さんのような友達感覚で絡んできやがる。まあ俺としてはそっちの方が接しやすいからいいのだが。別に生徒に呼び捨てされてもいいと思っている。

 

 

「私、先生のおかげで自信が付くようになりました。昔はスクールアイドルも部長も自分にできるのかって不安になって、他にも些細なことで心配症を発揮してましたけど、今はむしろ細かいことは気にすんな! って感じです! 先生が一緒にいてくれたからですよ、ここまで強くなれたのは」

 

 

 千砂都は見た目の活発さに反して意外と弱い人間だった。計算高い性格のせいで何事も始める前にあれこれリスクを考えてしまい、その心配が膨れ上がって中々一歩を踏み出させないこともあった。その慎重さのおかげで仲間は救われたこともあったが、肝心の自分の成長を妨げてもいた。

 

 そんな彼女が俺と過ごす間に悩みを共有するようになり、軽く相談に乗ってやったのを機にたちまちその欠点は解消されることになる。元々伸び始めたらひたすら伸びる凄まじい才能があるため、そこからはむしろ自信の塊と化して今に至る。スクールアイドルとダンスはもちろん両立し、更にどちらも結果を出してるんだからすげぇ奴だよ。

 

 文武両道でありながら、それを苦とせず笑顔で楽しむ。それが彼女の魅力で、俺の好きなところだ。

 

 

「あぁ、行かせてもらうよ。その代わりたっぷり見せつけてもらうからな、お前の輝きってやつを」

「もちっ! 先生がいるからなんだってできますよ!」

「むしろ俺がいないと何もできねぇみたいだな……」

「そうやって依存しちゃった方が私としては幸せだったり♪」

「何くだらねぇこと言ってんだ……」

 

 

 もう好き好きオーラが隠しきれてないぞ。他の奴らと違ってもう俺に好意を伝えることに躊躇はない。それは前のゲーセンデートからそうだったけどな。

 

 

「これからはずっと一緒ですよ、先生♪」

「ヤンデレも入ってねぇか……?」

 

 

 腕を組もうとしてきたので咄嗟に避ける。いやそこまで積極的に来てくれるのは嬉しいんだけど、流石に学校内でそれを見られると誤解されるからな……。

 ――――と思ったら、今度は手を握って来た。

 

 これくらいはいいかと、彼女からの愛を初めて肌で受け取った。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「モデルの仕事、継続依頼が来てるみたいだな」

「えぇ。『ラブライブ!』の優勝も響いてると思うけど、何より私の魅力が凄かったってことね」

 

 

 以前すみれのモデル仕事に付き添ったときを思い出す。確かに他の選抜された女の子たちも綺麗で可愛かったけど、身内贔屓抜きにしてもコイツの美麗さは群を抜いていた。それに加えて先日の大会優勝が影響してモデル業界の目にも留まったのだろう。わざわざ個人に依頼が来るなんて珍しく、その珍しさこそが彼女の突出した端麗さを際立たせていると言ってもいいだろう。

 

 

「1年生の頃はクソほどの人気もなかった無名のお前が、まさかここまで昇り詰めるなんて誰も思わねぇよ。名を売りたくて色々やってたみてぇだけど、全部空回ってたもんな」

「ま、あれも今の地位を築くのに必要な儀式だったってことよ。この世は成りあがったもの勝ち。ほら、動画の炎上商法だってそれで有名になって再生数が増えたりするでしょ?」

「なんつう例えだよ……」

 

 

 そりゃまあ空回りでも行動し続けて、いつか目立てば勝ち。それこそ泥を被る度胸が必要なくらいに。

 でもその例えだとコイツ自身が汚い手を使ったみたいに思える。まあ最初はスクールアイドルを踏み台にして芸能界に入ろうと目論んでたから汚い手という意味では変わらず、それで可可と喧嘩したりもしてたしな。

 

 そうやって増長してイキっているすみれだが、もちろんそれは表向き。心の奥ではLiellaの面々に感謝しかしてないだろう。本人がツンデレだからそう口には出さないだろうけど。

 

 

「感謝、しないとね」

「そうだな。アイツらに直接言ってやれ」

「それもそうだけど! その、アンタにも……。ありがとう……」

 

 

 簡単に口に出しやがった。いや本人の中で超絶な羞恥心をねじ伏せたに違ない。顔を背けているが頬が赤くなっているのは丸分かり。度々こちらを見つめては顔を逸らすため、簡易見返り美人みたいでちょっと艶めかしくも感じた。

 

 

「スクールアイドルを始める前、初めてセンターに立つ前、それからも、アンタに手を引っ張ってもらわなかったら私はここまで来られなかった。自分の力だけじゃない、あの子たち、なにより先生の力があってこそ。いつも私を気にかけてくれて、大きな暖かい手でこっちの手を握ってくれて、私を新しいステージへ連れて行ってくれた。感謝してもし足りない」

 

 

 いつもみたいに『俺自身のためだから気にすんな』と言ってしまいそうになるが、ここでその言い分は間違ってるだろう。承認欲求でもいい、ここは彼女の未来を照らしてあげたんだと自分を誇るべきだ。彼女もそれを望んでいる。それがお互い様だから。すみれは俺に感謝してるし、俺もスクールアイドルとモデルとしての輝きを見せてくれた彼女に感謝している。

 

 だからおあいこ。だから伝える、その口で。

 

 

「俺も感謝してるよ。もっと見せて欲しい。隣で、お前を」

「ちょっ、言おうとしてたこと先に言われた……。えぇ、いくらでも見せてあげるわよ。隣でも、前からでも後ろからでも上からでもどこからでも」

「いや後ろにいられても困るだろ……」

「鈍いわね。後ろにいてもアンタを振り向かせてやるって言ってんのよ」

 

 

 綺麗な得意顔。たまに根拠がない時もあるけど、その自信満々な表情が俺は好きだったりする。優雅にエレガントに堂々と、それが彼女の魅力だ。そういうところに俺は惹かれたのかもしれない。

 

 

「そうだな、好きな人を振り向かせたいってのは当然だ」

「だから私の言いたいこと言うんじゃないわよ! 好きって、いいタイミングで言えなかったじゃない」

「もう言ってるようなもんだけどな」

「ふんっ。いつか真正面から言って、アンタを赤面させて悶え苦しませてやるから覚悟しておきなさい!」

 

 

 最高のキメ顔。悶えてはないが、俺がその表情にとっくに惚れてるなんてコイツは思ってないのだろう。

 惚れてるのは、俺の方がよっぽど先だったんだよ。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 誰しもが青臭い悩みを抱えていたLiellaだったが、その中でも最も内に溜め込みやすいタイプはコイツだろう。

 他人のことであれば啖呵を切ってでも敵の前に出られるのに、自分のことになるとすぐ殻に閉じこもる。自己評価の低さはグループ内でも随一で、よく2年近くこれでスクールアイドルなんてやってこれたものだと感心するくらいだ。

 

 そんな彼女が抱えていたのが留学に行くか行かないか問題。仲間と離れる怖さ、そして何より俺と離れることの寂しさが募り、なんと『ラブライブ!』決勝直前にして気分が沈んでいた。

 ただ後輩のきな子が発破をかけてくれたり、俺と星を見ながらゆっくり感情を吐露したおかげで自分を見つめなおし、そして今に至る。

 

 見事に大会の優勝を飾った、澁谷かのんの答えは――――

 

 

「私、こっちに残ることにしました」

 

 

 そうらしい。真剣な表情を見る限り、以前みたいに甘えでその選択肢に流されているわけではないだろう。

 

 

「そうか。お前が考えて選び抜いた答えだったら、俺は何も言わねぇよ。元々言える立場でもねぇしな」

「そう、ですか……。てっきり甘えてるって思われるかと……」

「いいんじゃねぇの別に。仲間と一緒にいたいって気持ちが甘えなわけないんだから。それに、仲間と切磋琢磨しながら自分を成長させるって決めたから、その選択肢にしたんだろ?」

「はい。マルガレーテちゃんの学校でしか学べないことも多いと思いますけど、それ以上に、私にとって高校生活最後となるスクールアイドル生活をみんなと一緒に駆け抜けたいので」

「うん。お前がそう決めているのであればそれでいい」

 

 

 決勝戦直前の夜に星空の見える場所に連れ出し、その最中にやたらクサいセリフを吐いた気がするが、結局は自分のやりたいことを優先するで良かったんだ。あの時は自分で決めずに俺に決めてもらおうとしてたから助言しただけであって、そんな深く考えなくても簡単に答えが出る問題だったんだよ。

 

 

「先生は、こんな私でもまた指導してくれますか……?」

「あたりめぇだろ。相変わらず心配性だな、俺がお前から離れる要素がどこにあった」

「そ、そうですよね! 先生はいつも隣にいてくれる。私もいつだって先生の隣に……」

「言うようになったじゃん」

「えっ、あっ、ち、違うんです! 変な意味では……!!」

 

 

 もう普通に告白するよりも恥ずかしいことを言ってる気がするけど……。ナチュラルに男の心をくすぐる発言をする方がよっぽど天然タラシで、もはや『違う』と誤解を解こうとしているのが間違いだろう。もう『好き』を間接的に伝えている、全然間違いじゃない。

 

 

「変な意味か、俺はお前のこと好きなんだけどな」

「ふえぇえっ!?」

「なに今更驚いてんだよ。知ってんだろそれくらい」

「だ、だってそんな直接言ってくることなんてなかったじゃないですか!?」

「分かり切ってることをわざわざ言わねぇだろ」

 

 

 言ったら言ったでさっきみたいに赤面するし、言わなかったら言われてないって文句垂れるし、じゃあどうしたらいいんだよ……。

 ただ、この世は話さなければ伝わらない。察してくれなんて自分が臆病なことの押し付けだ。たった一言ですれ違ってしまう可能性はあるけど、何も言わないことでずっとすれ違ったままになる可能性もある。

 それに今回はお互いの心が惹かれ合って同じ気持ちを抱いているんだ。伝えないと勿体ないだろ。

 

 俺と同じ考えに至ったのか、かのんは落ち着いた後に深呼吸する。

 そして、俺と向き合った。

 

 

「好きです。1年生の頃から、ずっと」

「あぁ、知ってる。でも、伝えてくれて嬉しいよ」

 

 

 伝えてくれた。知ってはいたけど、本人の口から直接聞くことができたのは素直に嬉しい。女の子たちとこういったシチュエーションになるのは慣れてるけど、こうしてお互いに好意を伝え合うのは今でも心が躍ってしまう。好きなんだろうな、『好き』を共有することが。

 

 かのんは目を逸らしてしまうが顔を背けたりはしていない。湧き上がる羞恥心を何とか抑え込み、俺に伝えた好意が本気だと態度で示したいのだろう。

 自己評価が低く、それでも他人のためなら頑張れる。挫けたり泣いたりすることも多いけど、その(しがらみ)を超えて羽ばたける。小心者であり、頑張り屋。そんな健気で可愛い子が、俺も好きなんだ。

 

 

「来年度もよろしくお願いします。先生と一緒なら、もう一度あの舞台に立てるはずです」

「舞台に立つだけじゃない。もう一度見せてくれ、あの栄光を」

「はいっ! みんなと、先生と一緒に!」

 

 

 『大好き』で繋がって、未来の約束もする。

 かのんもすみれも千砂都も、可可も恋も2年間ずっと一緒にいるのに、また見ぬ新しい未来の扉が開いたことに多大なる期待と楽しみを抱いていた。

 

 

 

 

To Be Continued……

 




 これにて1期生組の物語としては一旦区切りです。
 みんなと恋人になるって結末にはしませんでしたが、流石に教師と生徒のロールがあるのでそこは弁えたということで(笑) それでもお互いに『好き』を伝えられたことで、関係性は大幅に前進したと言っていいでしょう。

 虹ヶ先の子たちも高校生ですが、あれは恋人というより彼女たちがそんな垣根すらもなくして言葉より身体で飛び込んでいるので、そこのところはあやふやだったり……



 次回は2期生たちとのお話+αで、Liella編第二章の本当の最終回となります。
 最後まで是非ご覧ください!

 投稿時間はいつも通りの時間に投稿予定です。
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