生徒会長と同じくらいだと思っていただければと。
突如として二度目の高校生活を送ることになった。
しかもただ学校に通えばいいわけではなく、スクールアイドル病なる問題を解決する必要がある。そのためにこうして背の縮む薬を盛られて中学1年生程度の身体になりつつ、ここ蓮ノ空女学院に潜入することになった。
理事長や自分の所属クラスの担任の先生に挨拶をし、先ほどクラスメイトの前でも自己紹介をしたのだが――――
「疲れた……」
「あのぉ……大丈夫ですか?」
「零クン、すっごく人気者だったね。みんなに揉みくちゃにされそうだったもん」
「いやあれはもうされていたような……」
疲労で机に突っ伏す俺を心配してか、さっき知り合ってクラスメイトでもある村野さやかと日野下花帆がやって来た。
まず、教室に入った瞬間の黄色い声が半端なかった。俺の顔を見た瞬間にほぼ全員の目が輝いており、転校イベントのお手本かのような質問攻め、部活勧誘、自己紹介でアピール等々、女の子たちに取り囲まれて危うく圧死しそうだった。自分の背が高校1年生の女子の平均身長より低いせいで、囲まれるとより相手の威圧感が増す。
ただ名門のお嬢様学校なだけあってか、生徒たちの容姿レベルは抜群に高い。女子ばかりとは言っても化粧や香水の匂いがキツイなんてことは一切なく、むしろ鼻腔をくすぐって男を
せめて抱き着かれまくって揉みくちゃになってなければ余計な疲労もなかったし、男の性が反応することもなかっただろう。背が縮んで中学男子相応に戻ったせいか、どうも思春期の頃の薄汚い欲求も甦りつつあるようだ。女子のフェロモンに対しては長年晒されて慣れているはずなのに、今はやたらと反応しそうになってんだよな……。
「でもみんなが盛り上がっちゃう気持ち、あたしは分かるなぁ~。だって零クン、超美少年だもん! ね、さやかちゃん」
「えっ、わたしに振るんですか!? それはまぁ、そうですけど……」
やっぱり女子高の生徒って男に飢えてんのか? 浦の星でも虹ヶ先でも結ヶ丘でもそうだったけど、どの学校の生徒も漏れなく俺に色目を使ってきた。それは年上のお兄さんポジションの男が来たからだと思っていたのだが、身体が小さくなったこの姿であっても黄色い声を浴びせられるから、容姿が整っていれば年上でも年下でもあまり関係はないらしい。
特にここは浦の星と同じく地方の学校だが、基本は学校敷地内での生活となるせいで出会いなんてものは存在しない。そんな中で美少年がやってきたら、そりゃ女の子たちのテンションが上がってしまうのも無理ないだろう。それでもあの迫り具合は男に飢えてると言っても過言ではなかったけど……。
そうやって揉みくちゃにされている中で会話に割り込んできたのがコイツらだ。俺に学校案内をするって名目で見事に場を仕切って事態の鎮静化を図った。
意外と影響力あるんだなコイツら。表立って喋ってた奴がもう1人いた気がするけど、これがクラスカーストの上位ってやつか。
とりあえず、俺の目的としてまずこの学校のスクールアイドルを探す必要がある。学校でアイドルをやってるなんて嫌でも注目されるので、校内で名が通っていないことはないはず。コイツらに聞いてみるか。
「なぁ日野下、聞きたいことが――」
「花帆でいいよ!」
「日野下」
「か~ほ♪」
「日野下」
「むぅ……」
どうして不貞腐れる……。
いるんだよな、こういう距離感バグってる奴。本来ならウザいだけだが、こういった積極的な奴ほど人生って成功するもんだ。それにしても女子高にいきなり転入してきた男に対して無防備過ぎる気もするけど。日野下が元々こういった性格なのか、それとも別の想いがあるのか……。
「気にしないでください、花帆さんはいつもこんな感じなので。気付いたら隣にいるどころか密着してくるくらいですから」
「だろうな。初対面の時から薄々感じてた」
「そうやってさやかちゃんとも仲良くなったんだよね。入学式の日にこの学校に向かう途中のバスで、既に友情が芽生えちゃったんだから!」
「いやいや、勝手に捏造しないでください! あの時はウザ絡みされ過ぎてかなり参ってましたよわたし!」
「それでも今は一緒にいるから、仲いいんだな」
「零クンとももう友情を育んでるから、さやかちゃんと同じくらい仲良くなったよ!」
なにこのコミュ強。むしろ誰にでも無自覚にそういうことを言って勘違いさせるタイプだから、そういった意味ではコミュ弱なのかもしれない。同性相手に言うのであればまだしも、同じ年代の思春期男子が日野下の明るい笑顔でその言葉をかけられた暁には即惚れだろうな。俺はこれまで幾多の女子高生を相手にしてきたから慣れてるけど、それでもちょっと心が揺れ動くくらいには強烈な攻撃だった。
「そういえば神崎さん、さっき何か言いかけていませんでしたか?」
「あぁそうだ、この学校のスクールアイドルって誰なのか知ってるか?」
「「…………」」
「え、なに? 変なこと言ったか?」
きょとんとした表情で俺を見つめる日野下と村野。
まさか知らない? 自分の学校にスクールアイドルがいるのであれば知らないってことはないだろうけど……。
それなりの静寂が流れた後、いきなり日野下が両手を掴んできた。目が俺と出会った時と同じくらいに輝いている。
「もしかしてファン!? あたしたちのファン!? ファンだよさやかちゃん!」
「いやそうと決まったわけでは……」
「待て。あたしたちってことは、まさかお前らが?」
「そうだよ! 蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブとは、あたしたちのことだ!」
「どうして自慢気なんですか……」
それなりの生徒数がいる学校なのに、まさか初対面で出会ったコイツらがスクールアイドルで、しかもクラスメイトだなんて中々の確立を引いたものだ。確かにコイツらの容姿の良さは他の生徒よりも群を抜いている。他の生徒のレベルも高いが、やはりスクールアイドルをやれる奴ってのは天は二物を与えられたかってくらい顔面偏差値とスタイルはいいらしい。俺が出会ってきたスクールアイドル全員そうだからもはや疑いようもない。
「実はね、このクラスにもう1人スクールアイドルの子がいるんだよ」
「さっき日直の仕事で日誌を職員室に返しに行ったので、そろそろ戻ってくるかと――あっ、そんなことを言ってたら来ましたね」
「おーいっ、
日野下が教室に入って来た少女に手を振る。
瑠璃乃と呼ばれた子がこっちにやって来た。日野下や村野と比べると小柄であるが見た目は派手だ。サファイアの瞳をしており、髪の量が多く、金髪で手前に短いツインテール、奥に長いツインテールのツーサイドアップ。それを蓮の花の飾りで留めており、毛先に水色のメッシュが入っている。見た目は結構活発そうな子だ。
「なになに? 花帆ちゃんたち、もう転校生クンと仲良くなったの?」
「もう完璧にお友達だよ! みんなに取り囲まれて潰されそうになってた窮地を一緒に脱出して、危機を乗り越えたことで友情を育んだんだから!」
「おおっ、ルリがいない間に小説一巻分くらい関係が進展してる……!!」
「そんなわけないです! 今日の花帆さん、やたらテンションが高くないですか……?」
村野が呆れながらツッコミを入れる。3人になっても苦労人ポジションは変わらずのようだ。
「瑠璃乃ちゃん、零クンはあたしたちのファンなんだって!」
「えぇっ!? まさかこんな美少年がルリたちの!?」
「んなこと一言も言ってねぇ。で? お前もコイツらと一緒のグループ、なんだよな?」
「うんっ! 大沢瑠璃乃、よろしくおなしゃーすっ!」
笑顔でこちらにピースサインを突き出す大沢。初手の挨拶にしてはやたら言葉が砕けてたな。まさかこの小柄にしてギャルだったりする??
「それで、花帆ちゃんとさやかちゃんは神崎くんのお守り?」
「なんで介護されてるみたいになってんだ……」
「だってさっきの自己紹介の時、みんなの目がギラギラしていて今にも食べられそうだったじゃん」
「そういえば瑠璃乃さんは日誌を返しに行ってたので、その後のことは知らないんですね。あの後はわたしと花帆さんで皆さんを止めて、その流れで先生から神崎さんへの学校案内を任せられたんです」
「なるほど。なんかアニメやゲームでよくある転校イベントみたいだね」
「なのでお昼休みや放課後のまとまった時間に校内を案内したいのですが、神崎さんはそれでいいですか?」
「あぁ、よろしく頼むよ」
こうしてスクールアイドルの子たちからこっちに来てくれたのは探す手間が省けたので助かる。特段自分がコミュ障とは思ってないが、転校初日にいきなり女子高でスクールアイドルを探す男って普通に怪しいもんな……。
ただスクールアイドルと惹かれ合うのは小さくなっても体質として残っているらしい。これまでも望んでないのに勝手にスクールアイドルの子たちと邂逅してたのだが、この特殊能力が発揮されて初めて助かったかもしれない。
そんなわけで二度目の青春で人生初となる転校イベントを経験した。もはや字面だけ見ると二度目だったり初めてだったり訳分かんなくなりそうだが、本当に大変なのはここからだ。
~※~
昼休み。日野下、村野、大沢に連れられて食堂で飯を食った。
その間にこの学校のことを色々教えてくれたのだが、日野下が文句を言っていた通りプライベート的な自由はかなり縛られた場所であることが分かった。
ここに来た時から何度か言及したが、学校以外に施設が全くない。山の中なので当然放課後や休みに自由にどこかへ出かけることもできず、しかも出かけようと思えば週に1回のスクールバスに乗るか、数本ある路線バスに乗るしかない。しかも勝手に外に出るのはNGで、学校へ外出申請を出したうえで許可を得る必要があるらしい。
ただ、そうやって縛りがあるのも相応の理由がある。この学校は芸術分野に秀でた学校であり、音楽や美術はもちろん、体育会系の部活も一定以上の成績を安定して残すくらいには技術が高い。また学業面の成績も良く、偏差値も全国でそれなりに高い模様。つまりその縛りは世俗に塗れず、自然豊かな地で純粋に芸術面や学業面の力を伸ばしてもらいたい意図があるのだろう。
しかし、これだと第一印象で牢獄っぽさを感じてしまうのも無理ねぇわな。創立100年を迎えたとか言ってたし、割と老害な考え方は残っていそうだ。
ま、郷に入っては郷に従え。自分を変に縛り付ける奴やルールが来るまではおとなしくしてるさ。
さて、学校の事情も知ったのでそろそろ本題に入らせてもらうか。
その前に、ここから早く立ち去らないと……。
「零クン、何だかそわそわしてない?」
「飯食ってる間も話しかけられるし、遠目からも注目されてるしで落ち着かないんだよ」
「女子高なのに男の子がいるってなったらそりゃそうっしょ。しかも神崎くん美形だから余計に気になるんだよ、しゃーなし!」
「それならば早めに校内案内を始めましょうか。ここだと話しかけられ過ぎて、時間がいくらあっても足りなくなりそうですから」
授業の合間の休憩時間もそうだけど、飯の最中も結構話しかけられて、しかもほぼ全員の目がきらきらしていたのでやはり圧が強かった。もちろん誰も取って食おうなんて思ってないのだろうが、こんな閉鎖空間の敷地に押し込められて相当異性が恋しかったのかやけに積極的な子が多い。ま、思春期だから当然か。
食堂から出たことで注目も収まった。
ここでやっと聞きたいことが聞ける。
「そういや、スクールアイドルってお前らだけなのか?」
「いいえ。他に先輩方が3人、合計6人のクラブです」
「6人か……」
「零クン、朝もそうだったけどずっとスクールアイドルのことを聞いてくるよね? やっぱりあたちたちのファン!?」
「ファンだったら6人いるって知ってんだから、わざわざ人数なんて聞かねぇだろ」
「あぁ、確かに!」
コイツ、もしかして歴代オレンジ髪と一緒でおバカさんなところがあったりする……? どうして笑顔が明るくて元気いっぱいな性格の奴ってみんな頭のネジどこか抜けてんだろうな……。
「今めぐちゃんたちに聞いてみたら、部室でお昼ごはん食べてるって。梢先輩と綴理先輩もいるってさ」
「全員揃ってるんだったら先に部室へ行こうよ! 零クンのこと紹介したいもん!」
「いや別に今じゃなくてもいいけど」
「でも今グループチャットの方でメッセージがあって、先輩方も神崎さんのことを一目見たいようです」
「一目見たいって、俺は珍獣かよ……」
「あはは……。スクールアイドルに興味があるみたいですから、行ってみますか?」
その言い方だと俺がスクールアイドルをやるみたいじゃねぇか。まあ中学生のこの顔立ちであればイケメン女子に見えなくもないので、騙せばスクールアイドルとして振舞えるかもしれないけども。
そんなことはさて置き、早々にクラブ全員の顔を拝める時が来た。部員は6人なので先代のグループより大所帯でないのは助かる。人数が多ければ多いほどスクールアイドル病にかかってる奴が誰なのか、探す手間も増えるからな。
「よ~しっ、じゃあ行こっか!」
「な゛っ!?」
日野下が俺と手を繋いできた。あまりにも突拍子過ぎて、そして自然な行動に女性慣れしてない男の情けない声が出てしまった。本来ならこんな無様な声は出さないのに……。
俺が驚いている理由が分からないのか日野下は首を傾げて不思議そうな顔をしているも、すぐに元に戻って俺を引っ張って部室へと駆け出した。そんな俺たちの後を追いながら、村野と大沢は俺と同じく目を丸くしていた。
「ねぇさやかちゃん。花帆ちゃん、なんか今日いつもよりテンション高くない?」
「わたしもそう思ってました。一体なにがあったんでしょう……」
~※~
「こんにちはーっ!」
日野下が部室と思われるドアを勢いよく開ける。校則違反かってくらいの速度で走りながら引きずり回されたせいで、無駄に体力を消費して若干息が切れてしまった。
少し遅れて村野と大沢もやって来た。2人もいきなり全速力になったためか若干疲れた表情を見せている。
そして、部室には先輩と思われる3人がこちらに注目していた。
「いらっしゃい。もしかしてその子が……?」
「おぉ~、本当に男の子だ」
「しかもすっごい美少年! 学校中が沸き立っていた理由が分かるかも……」
眉目秀麗でお淑やかな子が1人、おっとりしていて独特な雰囲気の子が1人、可愛いを体現したアイドル調な子が1人。今しがた飯を食べ終わった頃のようで、弁当箱を片付けている最中だったようだ。
この3人が日野下たちの先輩で、同じスクールアイドルの子か。やはり第一印象はどの子も顔がいい。毎回同じことしか言ってないような気もするが、同じ印象を抱いてるんだから仕方がない。アマチュアだが仮にもアイドルを関する部活動、その部員が可愛くて当然か。
俺は日野下に引っ張られてその先輩たちの前に突き出されてしまう。
そして肩に手置かれると、俺のことをペラペラと喋り始めた。
てか、さっきからボディタッチ多くねコイツ……?
「この子が転校生の神崎零クンです! まさかまさかの女子高なのに男の子! とっても惹かれる見た目で、朝の自己紹介の時やさっき食堂に行った時はそれはもうみんなに大人気だったんですよ!」
「なんだよその他己紹介は……」
何故か俺のことなのに自慢気に話す日野下。学校やスクールアイドルのことを教えてくれた時もそうだけど、やたら誇張してきやがるな……。
「初めまして。
「次は……ボクか。
「ハロめぐー! ってことで、スクールアイドルクラブのエース、
最後謎な単語が聞こえた気がするが、意味不明でツッコミすら入れられないから気にしないでおこう。
なんつうか、日野下たち以上に個性的なメンツが揃っている。乙宗は品行方正でお堅い喋り方をしていて典型的な箱庭お嬢様感があるし、夕霧は一人称を聞く限りボクっ子で不思議な雰囲気を醸し出してるし、藤島はザ・アイドルって感じの可愛い風貌だけどお調子者っぽい。どうしてどのスクールアイドルも手がかかりそうな奴らばかり集まってるかねぇ……。
そして、コイツら6人がこの学校のスクールアイドルか。
この中に秋葉が言うスクールアイドル病を患っている奴がいるんだよな。パッと見では体調が悪そうな奴はいないようだが、本人すらも自覚できない程って言ってたし、やっぱり俺自身が直接裸を見て確かめる必要があるってことか。初対面から始まる展開でその目標って難易度たけぇなオイ……。
「本当に中学生なんだよね……? ボク好みのお人形にして部屋に飾りたいくらいだ」
「えっ、そんな猟奇的なことすんのか……?」
「綴理先輩は表現がちょっと、いえ結構独特なので気にしないでください! 今のもお人形のようにカッコよくて可愛いいって意味で、決して血生臭い意味はないです!」
「うん、さやの言う通り」
「翻訳しねぇと伝わらねぇのかよ……」
雰囲気も異質であれば言葉選びも異質な奴だ。てっきり意識を失わせて人形状態にさせられると思ってたから身構えてしまった。てかこうやって通訳係にされているあたり、また村野の苦労人っぷりを知って同情するよ。
「それで、どうしてキミはスクールアイドルに興味を? まさか――――私のファン!?」
「だからちげぇって! 何回言わせんだ!」
「めぐちゃん、どうやらその話題は神崎くんにとって地雷みたい」
「地雷って、そっちが勝手に爆弾を作ったようなもんだけどな……」
山の中でスクールアイドルをやっていると直接ファンと交流することも少なくなるから、こうして直にファンっぽい奴を見ると舞い上がってしまうのだろうか。ライブも今や簡単に配信で見られるが故の弊害ってやつか。
「とにかく、ファンでもないしお前に興味があるわけでもないから勘違いすんな」
「ちょっとちょっと、先輩に対して口の利き方がなってないなぁキミぃ」
「自分が本気で尊敬できる人にしか敬語は使えない体質なんだ、生まれながら」
「それは可哀想にねぇ!」
藤島は横腹に手を当てながらぷりぷりと怒る。ガキ相手に本気で怒っているわけではないだろうが、確かに年下にこんな態度を取られたら気に食わないのは分かる。俺だって同じことをされたら同じことを思うだろうし。
スクールアイドル病の調査をするためにコイツらと仲良くなるのは最優先事項ではある。だけど自分を偽ってまで他人に敬意を払おうとは思わない。さっきも言ったけど敬うのは自分が本当にお世話になった人だけ。教師の立場としてなら生徒の親に敬語を使うが、それ以外では例え仕事上の上司でも尊敬に値しなければ扱いは自分と対等と見做している。
「それに、そんな失礼な態度を取ったらド真面目の鬼である梢が怒鳴り散らかしてくるよ」
「あなた、私をなんだと思っているのかしら……」
「だって花帆ちゃんが『梢センパイは体力と練習と正しさの鬼』だっていつも言ってるもん」
「め、慈センパイ! 流石にそこまでは言ってません!」
「2人共、放課後少し残ってくれるかしら」
「「ひっ!?」」
乙宗の笑顔が黒い。格式ばった話し方からして多少圧を感じられるので、コイツらが琴線を触発させて説教されるのがいつものパターンになってるに違いない。こうも長年女子高生を相手にしてきていると、1人1人がその集団内でどのようなポジションなのか一瞬で見抜けるんだよな。まさかその特技がこんな形で活かされるなんて思わなかったけど。
「転校初日だから別に怒ったりはしないのだけれど、言いたいことはいくつかあるわ」
「ん?」
「口調が威圧的で、人を見下していそうな態度が気になるわ。それに制服のボタンが開けっぱなしでシャツが丸見え、明らかに着崩しすぎよ。この学校の制服が着苦しいのは分かるけれど、初日なのだからもう少しこっちの規則に馴染んで――」
「えぇ~っ、でもカッコよくないですかこれ! イケイケ男子って感じであたしは好きですよ!」
「「「「「えっ?」」」」」
「へ?」
日野下の告白にみんなが驚き、その声で本人も驚く。
「花帆ちゃんて、もしかして不良系好き……?」
「神崎さんの顔を見た時も同じことを言ってましたし、意外と面食い……?」
「あ、あれぇ~? 変な方向に勘違いされてる?? 一般女子として普通の感覚だよこれは!」
「じゃあここにいる5人は一般ではなく異常ということなのね……」
「ボクも異常?」
「綴理は元から普通じゃないけどね……」
なんだよこの空気。女子トークでよくある好みの男性のタイプの違いで争うってやつか?
好みは人それぞれだから口に出しては言わないけど、今回に至っては他の奴らの方が正常だと思うぞ? 乙宗が言ったように初対面でいきなり口調が砕けて制服も着崩してる男なんて、それだけで不良かと警戒されてもおかしくない。
まあこんな異常な奴を好きになった女の子たちが過去にたくさんいたわけだが、全員が全員初対面で俺への印象がプラスだったわけでもねぇしな。コイツらとの関係も徐々に進展させていけばいいだろう。
「話が横道に逸れてしまったのだけれど、神崎君、どうしてこのクラブに?」
ただ、そのためにはスクールアイドルと共に行動する必要がある。
「手伝わせて欲しい。ここのスクールアイドル活動を」
あまりにいきなりの提案だったのか、全員が呆気に取られる。
とにもかくにもコイツらと一緒にいなければ病気の調査もままならない。だからこうやって――――
「もしかして零クン、スクールアイドルになりたいの!?」
「れい、美形だから女の子としてもやっていけるよ。応援する」
「性別を偽ってアイドルをするとか、ラノベ展開みたいでかっけーっ!」
「不良系男子だけど性別詐称でスクールアイドル。凄いキャラの子が入って来たね……」
「だから! んなわけねぇって言ってるだろ! ったく……」
「なんだか、すみません……」
「後でしっかり言いつけておくから気にしないでね……」
せっかく意気込んだのに急にこのクラブに入りたくなくなってきたんだけど、いいかな……??
To Be Continued……
そういえば女の子たちとの出会いから描いたストーリー展開はAqours編以来なので、零君への好感度が割と普通、または低い状態から始まるのは久しぶりだったりします。Aqours編ももう何年も前なので、もはや初めての感覚に陥っちゃいますね(笑)
それにしても瑠璃乃の芝居がかった喋り方や綴理の不思議ちゃん系の喋り方は文字の起こすのが難しい! これに関しては本家の会話構成担当様を尊敬してしまいます。
前回のアンケートで蓮ノ空のことを全然知らない寄りの方が多かったので、なるべくキャラ紹介や学校設定などの説明を多めに織り交ぜつつ、この作品のキャラの魅力をお伝えできればと思っています!
次回の投稿はいつも通りの時間に戻りまして、1月8日(月)0時となります。
それ以降もいつも通りの投稿頻度になる予定です。