次のライブはノーブラだと言い出したμ'sメンバーに、零と楓は度肝を抜かれる。
同棲生活11日目。
あと4日後に迫ったライブに向け、ある者は燃え、ある者は冷静で、ある者は緊張するなど三者三様の様子を見せている。同棲生活で衣食住、そして性を共にしたことでグループとしての一体感が高まり、絆がより強固となったμ's。しかも雪穂、亜里沙、楓の悩みもすべて解決したし、ライブの大成功は間違いなしだな。
ちなみに今回のライブはμ'sの単独ライブで、そこまで大きな会場で開催されるわけではないものの、だからと言って手を抜くような奴らじゃない。それに前回の『ラブライブ!』優勝チームということで注目もされるだろうし、なんせ新しく入った1年生組がかなりの人気だから、むしろ人がごった返して会場に収まりきらない可能性もある。今のμ'sはそれくらいのファンを獲得しているのだ。
だから学校にファンレターが来ることもままあって――――
「ほら楓、お前にファンレター来てたぞ」
「えぇ~またぁ~!?時間を掛けて目を通すこっちの身にもなってよね!!全く、人気者は辛すぎるよ♪」
「辛そうには見えないが……」
楓はファンレターをもらうといつもニコニコとして嬉しそうにする。
実はμ'sの中でも楓へのファンレターは特に多く。あの海未や真姫、絵里すらも敵わない。まるで彗星のごとく天から舞い降りた女神として、ここ数カ月で男性女性問わず人気を得ている。
だがしかし、こうして見るとコイツはファンからの声援を素直に受け取っているように見えるが、実は男からのファンレターは読まずにゴミ箱へポイしているという残酷な現実がある。楓曰く、お兄ちゃん以外の男からの声援はいらないそうだ。天から舞い降りた女神は世間を欺く仮の姿。本当の姿はファンを選ぶというある意味でアイドルのタブーを犯す悪魔なんだよ。
「とりあえずそれは置いてこい。夕飯の準備、手伝いに行くぞ」
「あっ、待ってよお兄ちゃ~ん!!」
楓は適当にファンレターを仕分けると、後で読むものだけを箱に戻し残りはすべてゴミ箱へ放り込む。
相変わらず躊躇なく捨てやがるなコイツ……いつ見てもえげつない光景だ。
そんな風にいつも通り楓の奇行に呆れていると、リビングから穂乃果の声が聞こえてきた。
『じゃあ次のライブはノーブラにしようよ!!』
「「はぁ!?」」
俺と楓の声が一斉にハモる。
たった今、あのバカはなんと言ったのか、いくら聡明な俺や楓の頭でも全く理解出来なかった。俺たちは口を開けたままリビングの前に佇んでしまう。このトビラに手を掛けることを躊躇するくらいの衝撃だ。
そして俺たちの脳に理解が行き届く前に次なる会話が繰り広げられる。
『そうですね。それもいいかもしれません』
『ことりもそれにさんせ~い♪』
「なん、だと!!」
穂乃果やことりがノーブラであることはもはや不思議でもなんでもない。周りが引くほどの変態を発揮する2人だ、ノーブラで歌って踊ることもあるかもしれない。だがそれがライブとなったら話は別になる。アイツらそこまで露出グセがあったかよ!?
そして極めつけは海未だ。彼女の言葉を借りるなら、アイツがこんな"破廉恥"な提案に乗るなんて考えられない。まさか海未の奴、穂乃果とことりに毒されてとうとう変態の道を……同じ変態仲間が増えるのは嬉しいが、アイツだけは健全でいてもらいたかった。
「お、お兄ちゃん!?手が震えてるよ、トビラ開けないの!?」
「このトビラの先って俺んちのリビングだよな!?別次元になってたりしないよな!?」
「落ち着いてお兄ちゃん!!確かに私も衝撃だけど……」
楓に言われて初めて自分の手が震えていることに気がついた。楓も平静を装っているが目の泳ぎは隠せていない。本当にこのトビラの先にいるのは俺の愛しの彼女たちなんだよな!?今リビングにいるアイツらが、平行世界から来たとかいうトンデモ現象は起きてないよな!?
そしてまだまだみんなの会話は続く。
『凛もノーブラで賛成だにゃ!!かよちんは?』
『うん、私もそれでいいと思うよ。真姫ちゃんは?』
『私も賛成。最近やってなかったしね』
「なにぃ!?!?」
おかしくなっていたのは海未だけではなかった。μ'sの中でも特に変態度の平均が低い2年生組までもが全員ノーブラに賛同している。しかもあの真姫が一切言葉を濁さずに、あんなエロい意見に真っ向から賛同するなんて……
「真姫先輩……最近やってなかったって言ってたよね?もしかしてそれ以前は……」
「ないない!!俺が知っている限り、真姫がノーブラでライブしてたことなんて一度も!!」
「でもお兄ちゃんがそう思っているだけで、真姫先輩は意外とノーブラ趣味があるのかもよ?」
「ま、まさか……」
真姫がノーブラを趣味に!?なにそれ興奮する!!でも彼氏として、彼女がライブをノーブラで踊っていることを注意した方がいいのではなかろうか?もしライブを見に来ている人に『あの子、胸の揺れ激しくね?』と思われたら、それが引き金となってノーブラがバレてしまうかもしれないからな。
そして困惑する俺たちにさらに追い討ちを掛けるかの如く、さらにノーブラの会話が続けられる。
『でもノーブラってジャンプする時が大変じゃない?にことしては結構体力奪われるのよね』
『確かに慣れるまでキツイかもしれへんけど、ウチはもう平気や♪絵里ちももう慣れっこやもんね』
『そうね。初めは少し恥ずかしかったけど、今は楽しむ余裕さえあるもの』
変態だ!!ここに度し難い変態がいる!!大学生になったからって盛りすぎだろ!!お前らの頭は万年思春期なのかぁあああああああああああああああ!!
「体力奪われる!?にこはジャンプしても揺れるものがないからそんな心配する必要ねぇだろ!!慣れっこ?お前らは日常生活でもノーブラなのかよ!?楽しむ余裕!?もう俺たち以上の変態じゃねぇか崇めるぞオラァ!!」
「お、お兄ちゃんがツッコミ死しちゃう……」
「アイツらがあんな会話するなんておかしいだろ。やっぱり別次元の穂乃果たちなんじゃねぇの?」
「お兄ちゃんがそこまでファンタジックだとは思ってなかったよ……」
ポンコツ更生プログラムを終えた絵里でさえもこの始末。日々μ'sの変態化が進んでいるのは知っていたが、まさかそれが既に達成されていたとはな。それも俺や楓がドン引きするような変態と化して……
「変態で負けるなんて俺のプライドが許さない。このまま終わってたまるかよ……」
「お兄ちゃんは何と戦ってるの……?」
「アイツらの変態力とだ。それにまだ負けたわけじゃない。雪穂と亜里沙だったらそんなことには慣れてないだろうから、全力で否定するはずだ」
しかし俺のプライドをさらに抉るように、みんなの会話は無慈悲に続けられていく。
『ノーブラですかぁ~お姉ちゃんに教えてもらいましたけど、あれいいですよね♪お客さんも盛り上がりますし』
『私もお客さんと一緒に楽しめるからノーブラは大好きだよ♪この前なんか柄にもなく興奮しちゃたしね』
「くっ……!!」
「お兄ちゃんが膝を折った!?あのお兄ちゃんが……負けた!?」
「あの雪穂と亜里沙までもが人前でノーブラだったとは……もうあんな痴女軍団、俺の手には負えねぇよ」
海未と並んであの冷徹な雪穂もめでたく変態の仲間入り。ことりと花陽が堕ちてしまって残り1人となっていた我が天使、亜里沙様もその羽が真っ黒に染め上がっていた。
興奮するってなんだよ……雪穂の奴、俺に散々変態変態言いやがってぇええええええ!!ブーメラン発言もいいところだぞお前!!
ここまでみんなが変わってしまうのはどうも変だ。もしかして誰かに性格を変えられた……?そうだ、アイツだ!!俺たちを発明の実験台にして影でほくそ笑むアイツのせいじゃないか……?
「そうか分かったぞ。秋葉の野郎、俺の可愛い彼女たちをこんな醜い姿に変えやがってぇえええええええええ!!どうせどこかで盗聴してんだろ!?今日こそはブチのめしてやるからかかってこいやぁああああああああああああああああああああああああああああ!!」
「待って待ってお兄ちゃん!!怒りの行き場がなくなってるからって花瓶を殴ろうとしないで!!」
俺は一心不乱に周りに拳を振りかざし、楓はこれまた珍しくツッコミ役兼制止役として俺の腰に抱きつき俺の暴走を抑止する。普段の俺なら抱きつかれた時に身体に当たる胸の感触を味わい興奮するのだが、今は楓の胸が俺の快楽を煽り、怒りをどんどん吸収してくれたおかげで冷静さが戻ってきた。
「私はどんなことがあってもお兄ちゃんの味方だよ♪それにノーブラで他の男の目線に晒されるなんて気持ち悪いし」
「楓……やっぱりお前は史上最強の妹だ!!」
「うんっ!!ありがとお兄ちゃん♪」
やっぱり持つべきものは兄を慕ってくれる妹だよな!!妹こそ兄の一番の理解者だ、このまま俺もシスコンの道を歩み始めよう!!そして妹と結婚して末永く幸せな日々を過ごすんだ。変態なアイツらになんかに構ってられるかってんだ!!
そしてまだまだ奴らの会話は続いていく。
『楓も賛成してくれるかな?』
『するでしょ。楓もノーブラの時はいつも楽しそうだし』
は……?は……?はぁああああああああああああああああああああああああああああああ!?!?!?
「キサマぁああああああああああああああああああああああ!!裏切りやがったなぁあああああああああああああああああああ!!結局お前も同類じゃねぇかぁああああああああああああああああああああああ!!」
「違う違う違う違う違う!!そんなこと全然知らないよ!!ノーブラなんてお兄ちゃんを誘惑する時以外にはしないって!!」
「俺とお前は同類だったはずなのに、もう俺の手の届かない境地へ行ってしまったんだな……」
「だから知らないって!!あの2人がデタラメ言ってるだけだもん!!」
もう俺には味方がいないのか……
姉や妹、そして愛しの彼女たちまで俺とは別次元に住居を構えてしまったようだ。もう俺から会いにいくことはできないだろう。遠くから無事を願って見守ることしかできない……
「お、お兄ちゃんとりあえず立とうよ。ずっと膝を折ったままだとカッコ悪いから……ね!!」
「触るなぁああああああああああああああ!!変態が感染る!!」
「いやお兄ちゃんがそれを言う!?」
俺の変態が発揮されるのは穂乃果たちの前だけだ。でも楓たちは舞台に上がりノーブラでライブをして、観客の目に晒されることに快感を覚えるほどの変態。そんな奴らと俺を同列に扱わないで欲しい!!
「もうっ!!アイツらのせいでお兄ちゃんに嫌われちゃったじゃない!!」
友達はまだしも先輩たちをアイツら呼ばわりした楓は、トビラに耳を当てさらに穂乃果たちの会話を聞こうとする。
もうそんなことをしても何も変わらん……μ'sが変態集団の集まりだという事実はな。
『そう言えば海未ちゃんも初めは恥ずかしがってたよねぇ~♪』
『もうことり!!昔のことはいいではありませんか!!』
『穂乃果はお客さんに見られてると思うとワクワクするよ♪』
もうダメだ……希望など一切ない。
でも穂乃果たち、昔からノーブラの趣味があったとは……これでも1年間濃厚なお付き合いをしてきたつもりだったんだけど、文字通り『つもり』だったんだな。それよりも今まで俺に『変態変態』と言ってきたことを謝ってもらいたい。
そしてまた廊下にみんなの声が漏れる。もうやめてくれぇえええええええええ!!
『ノーブラはテンション上げるのがいいけど、高揚した希にワシワシされるのがねぇ……』
『でもにこっちも興奮して気持ちよさそうやったやん♪』
『それはノーブラで興奮してんの!!アンタのワシワシのせいじゃないわよ!!』
「ノーブラでワシワシって……希先輩レズプレイ派なの!?私も貞操の危機!?」
「これは俺が今までアイツらにセクハラをして通報されなかった理由が分かったよ。だってアイツらの方が俺よりもずっと変質者だもん」
まさかライブ終了後にそんなピンク色の展開になっていたとは!?なんだかんだ言ってアイツらも、沸き立つ興奮を抑えられずに人目を忍んでレズプレイを嗜んでいたんだな。
なるほど、だから俺のワシワシもあんなに寛容に受け入れることができたのか。普通の女の子なら暴れたり叫んだりするはずなのに、穂乃果たちは顔を赤くするだけで抵抗する素振りを見せないからな。
「もう我慢できない!!こうなったら私が直接アイツらに問い詰めてやる!!」
「お、お前!!あの異次元に自ら飛び込むというのか!?行ったら戻って来られないかもしれないんだぞ!?」
「それでも私の純情な心を傷つけたアイツらを放っておけないの!!よし決めた!!」
「おい!!楓!!」
楓は遂に異次元へのトビラへ手を掛けた。
純情なのかはさて置き、もう知らねぇぞ俺は!!お前がアイツら同様ノーブラに恥じない痴女となっても!!そしてなった後で助けを求めても無駄だからな!!またあんな"非日常"みたいに地獄を渡り歩くなんてゴメンだ!!
そして楓はバタン!!とトビラを開け、勢いよくリビングへ飛び込んだ。
「アンタたち!!ノーブラノーブラって、私にも風評被害を被るんだからやめてくれない!?そんなにノーブラがいいなら自分たちだけでやれ!!この痴女軍団がぁあああああああ!!」
「「「「「「「「「「「ち、痴女軍団!?」」」」」」」」」」」
楓の心からの叫びに全員が目を丸くして反応したのだが、痴女軍団と呼ばれた瞬間、穂乃果たちの顔が一気に赤くなる。まるで自分たちがそれを自覚していなかったかのようだ。あんな会話をしておいて自覚なしっていうのも恐ろしいことだが……
「今更しらばっくれたって遅い!!さっきからノーブラノーブラ言って、私はもっとμ'sが健全なグループだと思っていたんだけど!?全員が変態だったら私の最強のアイデンティティが霞んじゃうじゃない!!」
「お前の怒りはそこだったのかよ!?それは今関係なくて、みんなが何で下着を着けずにライブをするのかっていう話だろ!?」
「「し、下着!?」」
「ん……?ことりちゃんこれって……」
「うん穂乃果ちゃん、多分これは……」
俺が『下着』というワードを出した時、海未や絵里の顔がさらに沸騰しているのが分かった。でも穂乃果たちは微笑ましい顔で俺と楓を交互に見つめ、ことりが海未に、穂乃果が絵里に何やら耳打ちをする。そして海未と絵里にもようやく事の概要が分かったのか、穂乃果たちは――――――
「「「「「「「「「「「アハハハハハハハ!!」」」」」」」」」」」
涙を流すほど大声で笑い始めた。
…………一体なんなの!?
~※~
「まさか、ノーブラがお前らの曲『No brand girls』の略だっただなんてな……」
一通り笑い終えた穂乃果たちにネタばらしをされ、俺と楓は力が抜けていた。
どうやらこの前のライブでノーブラならぬ『No brand girls』は歌ったのだが、今週末のライブでは歌わないため次にライブの機会があったら歌おうという話になっていたらしいのだ。そこへ俺たちが偶然話の途中から参戦してしまったため、こんな面倒なことになってしまったという経緯である。
「私も知らなかったよ……」
「どうして歌ったことのある楓が知らないのですか?」
「確かにこの前のアキバでのライブで歌ったけど、そんな略し方をしてるなんて知らないですって!!」
「そもそもそんなややこしい略し方すんなよ……」
『No brand girls』略して"ノーブラ"。確かに語呂はいいし言いやすい。なんかノーブラと略されるために生まれてきた曲みたいだな。名付けた奴の悪意を感じる……海未か真姫のどっちかか?
もう考えるのメンドくさい!!今日は疲れた!!
「あははっ!!穂乃果、こんなに笑ったの久しぶりだよ!!ネタばらしされた時の零君と楓ちゃんのキョトンとした顔ったら!!うぷぷぷ……笑顔健康法で元気になれそう♪」
「へーへーそりゃあよかったですねーー」
「ゴメンゴメン!!零君拗ねないでよ~♪」
こりゃあこのことを一生ネタにされるな……
一応タイトルには偽りなしですよね?(笑)
自分はラブライブのキャラは好きですが曲には全く興味がないので、実際に『No brand girls』が"ノーブラ"と略されているのかは知りません。それよりも外で"ノーブラ"と言っている人がいるのか知りたいです!
こういった言葉遊び回は、前作『日常』での"皆殺し""半殺し"回以来でしたから非常に楽しく執筆できました。しかし楓がかなり常識人になっていたところはとても違和感を感じましたが(笑)
ここから全く関係のない話なのですが、自分が投稿しているR-18小説『未来の日常』を削除する予定です。理由としては書く気がないという単純な理由ですが、いつか主人公を変えてまた書いてみたいと思っています。
もし保存したい人がいれば自分に声を掛けなくてもよいのでご勝手にしちゃってください(笑)
Twitter始めてみた。
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