ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常2~   作:薮椿

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スクールアイドルたちの夜想曲(ノクターン)(終曲)

 15年以上に渡り蓮ノ空のスクールアイドルたちに悲しき悪夢を見せ続けてきた張本人が遂に現れた。

 その姿は肩にかかる程度の白い髪と切れ目、鼻の形も良く綺麗な顔立ち。スタイルも良く、雰囲気はかなり荘厳で怖さを感じる大人びた姿。

 そして、蓮ノ空の制服を着こんでいた。

 

 霊魂が作り出した姿なので実態ではないはずだが、肉眼でもはっきりと分かるくらい本物の人間に見える。霊の力が高いと言われる愛莉ですら姿をここまで実態に近づけることはできないので、如何にコイツがこの世に未練があるのか分かるだろう。残留し年の集合体、とでも言うべきか。

 

 三津音(みつね)。それが彼女の名だ。

 15年前の旧スリーズブーケの1人で。活動期間中に病で倒れ、闘病の末に病死。残されたもう1人が書き記した日記に彼女の名前や当時の活動について書かれていた。日記には百合小説かと思うほど2人の濃密関係、そして楽しかったであろう思い出が描かれていたのだが、病死を期にその幸福も崩れ去ったようだ。

 

 その時に彼女の抱いた感情はその怒りの表情を見れば明らかだ。

 場の緊張は最大限に高まっている。さっき彼女が言ったこの言葉――――

 

『私を裏切った、アイツと同じスクールアイドルなんて……!!』

 

 大切なパートナーであった相方を今では『アイツ』呼び。相当な憤りが溜まっていたに違いない。

 病死の前に何かあったのは明白。スクールアイドルに、何より相方に恨みを抱いているのもそれが起因しているのだろう。

 

 

「裏切ったって、一体どういうこと……?」

「話す必要はない。ここにスクールアイドルを呼んだのは話し合いをするためではなく、もういっそのこと、スクールアイドルなんてまとめて消してしまいたいと思ったから……」

「そ、そんな……!!」

 

 

 攻撃的な目がこちらを貫こうとする。だが、怒りの感情の陰に悲しみの感情も垣間見える。日野下たちを自分のテリトリーに引きずり込んだのも、ただ恨みつらみで罵声を浴びせたかったからではないようだ。

 たが本人は問答無用で何も話すつもりはないらしい。だったら――――

 

 

「お前がスクールアイドルを恨んでいるのは、お前の相方が裏切ったから。そう思ってるからじゃないか?」

「えっ、神崎さん分かるんですか?」

「あぁ、コイツの相方が残したこの手帳を見て大体な。俺の想像もあるけど、思春期の感情的な思考回路を読み取るのは得意だから大体は察せるよ」

「何を分かったような口を!!」

「お前が話さないなら俺が明らかにしてやる。本当の想いってやつを」

 

 

 伝える必要がある、目の前の怒れる亡霊に。伝えてもらう必要がある、後ろのスクールアイドルたちに。

 だからこそここで真実を全て晒す。悲しき真実になるかもしれないけど、負の連鎖をここで断ち切ってやるために。

 

 

「お前が倒れてから、相方はお前の病室に通い続けた。それもスクールアイドルの練習すら放って。そりゃそうだ、1人になったらユニット活動はどうしようもないからな」

「…………そう。病気で()せったけど、あの子との毎日はそれでも楽しかった……」

「だけど病の進行は早かった。余命が告げられた上に、残された時間ももう僅かだった。それでも相方はお前のもとに通い続けた」

 

 

 2人の関係は日記の描写を見ればその深さが容易に感じ取れる。だからこそ大好きなスクールアイドルの活動すら捨てて、残り少ない時間を大切な人と過ごしたのだろう。別に間違ってはいない。むしろ普通に思える感情だ。

 

 

「日記にも、お前との時間を最後の最後まで楽しみたい。もう逃れられない運命だけど、それでも最後の刻まで笑顔でいて欲しい。自分が病室に通い続けてその願いが叶うのであれば、自分は何があっても一緒にいる。そんな思いが綴られてたよ」

「あの子は私に笑顔をくれた。ずっと病院のベッドの上で、いつ死ぬかも分からない絶望を払拭してくれた。あの子といる時間だけが幸せだった。なのに――――!!」

「ある時を境にアイツは来なくなった。お前のもとに」

「ッ……!!」

「「「「「「「!?」」」」」」」

 

 

 話の流れが変わったからか三津音の表情が険しくなった。同時に俺の後ろのいる愛莉や日野下たちにもより一層の緊張感が走ったのを感じた。

 三津音は俺を睨みつける。怒りをぶつける相手がいないからだろう。今にも刺し殺すかのような眼光をしている。

 

 

「そうだ! アイツは来なくなった! 何をしていたのか知ってるか!?」

「スクールアイドルの練習だ」

「練習? どうして……?」

「なんで今更スクールアイドルの練習なんてって思った! 私にはもうあの子しかいなかったのに!! あの子の笑顔が見られなくなって、私はどんどん病んだ……。死期が前倒しになっている、そんな予感もした。だからこそあの子が必要だったのに……!!」

「じゃ、じゃあ裏切ったっていうのは……」

「そっちの方が大切だったからだ!! 私よりもスクールアイドルの方が!! だから憎い!! スクールアイドルも、アイツも!! 私は絶望しながら死んだ理由がそれだ!!」

 

 

 歪んでいる愛、と言っても差し支えはないだろう。生きている俺たちから見ればそう見える。だがコイツは死にかけていた。もう自分の命が燃え尽きるのを待つだけの日々を、誰が精神を安定させて送ることができるだろうか。

 だからこそ相方は支えになっていた。手帳にも書いてあった。最後まで一緒にいて、笑顔であの子を見送ってあげようと。最後まで絶望させないように、と。

 そう書き記すほどに深い関係性なんだ、逆に自分のところに来なくなったら関係を切られたと思っても仕方がない。死ぬまでの唯一の希望こそその相方だったんだから。死ぬ間際、たった1つの心の拠り所が勝手に消えてしまって絶望に至るのも当然だ。

 

 そう、恨んでしまうのも無理はない。咎めはしない。

 だけど――――

 

 

「確かにその相方はお前の前から消えた。でも誰にも介入できないほど深い関係だったんだ。そう簡単に絆を絶つと思うか? 何も理由がなく」

「なにが言いたい……」

「スクールアイドルを練習をしていたのは、お前のためだ」

「私の、ため? そんな馬鹿な、私のためだったら私の病室に通い続けていたはず! これまでそうだったように! 笑顔を送り続けてくれたはずだ!!」

「いや、お前のためだよ。お前が会話の中でポロっと漏らしたそうだ。『あなたと一緒に次の大会で優勝したかった』ってな」

「あっ、まさかその相方さんが練習していた理由って……!!」

「あぁ、大会で優勝するためだ。その結果をお前に持ち帰ってやりたかったんだろうよ。残念ながら1回戦落ちで終わってしまったみてぇだけどな」

「それって幽霊騒動の調査しているときに出てきた記録に残っていた、大会の実績表のことですか?」

「そうだ」

 

 

 結果が伴わなかったのも無理はない。元々2人でやる予定のライブを1人で強行したんだ、パフォーマンス力も魅力も何もかもが半減する。そんな中途半端が評価されるほどいつの時代も甘くはない。

 ただ、俺の予想では結果なんてどうでも良かったんだと思う。自分たちのスリーズブーケが最後に輝いた、その証さえ残れば……。

 

 

「そ、そんな、大会に出るために……? でもあの子、そんなこと一言も……」

「そのあたりお前にどう伝わってたのかは読み取れなかった。手帳には伝えてあると書いてはあったけど、絆を切られて絶望していたお前の心には届かなかった可能性がある」

「あの子が、そんな……」

「その後、その相方さんはどうしたの?」

「書いてあったよ、思いの丈の全てがな。コイツが死んだ後に書かれたんだと思う」

 

 

 その相方が感情のまま書いたであろうページがあった。涙で紙がぐしゃぐしゃになっていたようで、文章も文法が一部おかしいところがあって如何にソイツ自身も追い詰められていたのかが良く分かる。

 

 

「ソイツはこう書いてたよ。間に合わなくてゴメン、一緒にいられなくてゴメン。でもあなたに届けたかった、最後に私たちがスリーズブーケである証を。結果は伴わなかったけど、それでも構わない。あなたと私で作った衣装、曲、振り付け……最後にライブでファンに届けたかった。でも中途半端で届けるわけにはいかない。だからたくさん練習した。そのライブ映像を見て、あなたと最後の時間を過ごしたかった。でもあなたは目を閉じてしまった。この想いが伝わることは永遠になくなってしまった。もう少し早ければ、あと1日、いや数時間、数分でもあれば一緒に最後の時間を過ごせたのに、それすらもできなかった。ゴメンなさい。謝っても許してくれないし、あなたは多分私を恨んでいる。笑顔を届けると言ったのに最後の時間にいなかった私のことを。どうすればよかったのか、これを書きながら後悔している。私にできる償いはせめてお墓を建てることだけ。あの秘密基地。あなたと一緒に夜遅くまで練習した、あの思い出の場所に……」

 

 

 相方の到着はコイツの命が尽きる刻に間に合わなかった。スリーズブーケとしての最後のステージは、コイツの目に映ることなく終わってしまったんだ。

 そして、コイツが現れたこの墓こそが相方の立てた墓。償いの1つだ。

 

 見れば、三津音は涙を流していた。とめどない感情が溢れ出しているのだろう。

 それは日野下たちも同じようで。涙でむせび泣く声や、鼻を啜る声も聞こえる。同胞のスクールアイドルとして共感できる気持ちがあったに違いない。もし自分たちが同じ状況に陥ったらどうするのか。嫌でも想像してしまうだろう。だからこそ俺よりもコイツらの方が共感できる。その悲しみを理解できる。

 

 

 そんな中、三津音は頭を抱えていた。

 

 

「私は……私はなんてことを……!!」

「お前の勘違いだったんだ。絆は断ち切れていなかった。相方はむしろより強く繋ごうとしていたんだ」

「そんな……そんな、あぁ……あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁあああああああああああああああああああああああ!!」

「なに!?」

「皆さん危ない!!」

 

 

 彼女から物凄い力が周りに拡散された。愛莉が咄嗟に俺たちと彼女の間に割り込んで防いでくれたことで難を逃れたが、それでも風のような何かが凄まじいパワーで俺たちの身体を叩きつける。少しでも踏ん張りを緩めれば部屋の端まで飛ばされてしまいそうだ。

 

 強風が吹き荒れる。鼓膜が張り裂けそうなくらいのうねり上げて。

 

 これも幽霊の力なのか。同じ幽霊の愛莉が何とか抑えているものの、限界はすぐに来そうなくらい険しい表情をしている。

 俺たちも風に飛ばされぬように踏ん張るだけで精一杯で、逃げるために足を動かすこともできなかった。俺たちの壁となってくれている愛莉も今にも飛ばされそうだ。

 

 

「この人、強い……!! このままだと私まで……!!」

 

 

 三津音は勘違いで恨んでしまっていたこと、自分のしてしまったこと、何より向こうから絶ったと思っていた絆を自分から絶ってしまっていたこと。その全てが絶望となってこの力を引き起こしているのだろう。もう自分で何かを考えることはできなくなっているようだ。15年以上も現世に留まり続け、アイツへの恨みがいつしかスクールアイドルへの恨みに変わるくらいに心が歪んでしまっていたんだ。

 その歪みがいきなり正されようとしたら混乱もする。仕方のないことだ。

 

 

 でもこの状況は打破しなければならない。

 その鍵を握っているのは俺じゃない。

 

 そのために、俺がやるべきことは――――

 

 

「お前ら、 風の音がうるさいけど聞こえるか!!」

 

 

 正直後ろを振り返っている暇もない。少しでも力を緩めれば吹き飛ばされそうなくらい部屋中に強風が吹き荒れているからだ。日野下たちも同じく飛ばされぬよう踏ん張るだけで精一杯だろう。

 でも伝えなければならない。前を向きながらありったけの大きな声で伝える。

 

 

「お前らも思ってることがあるだろ! それを今ここで全てぶちまけろ!! 届けるんだ、蓮ノ空のスクールアイドルとして!!」

 

 

 俺の緊迫感が伝わったのか、6人も大声で答える。

 

 

「で、でも全然心も頭も整理とかできてなくて!!」

「えぇ、(わたくし)ももうどうしたらいいのか……!!」

「どう伝えたらいいのか、伝わらなかったどうしようとか……!!」

「もう心がぐちゃぐちゃしていて、何も考えられない……!!」

「どうすれば、どうすればいいの!?」

「そんな悲しい過去を聞いて、私たちにどうしろって……!!」

 

 

「いいから伝えろ!! なんだっていい!! 心の内を全てだ!! 同じスクールアイドルのお前たちにしかアイツに届けられないんだ!! アイツは迷ってる! パートナーとの絆が本物だったのかどうか! でも同じユニットで活動してきたなら確かにあるはずだ! だから思い出させてやれ! お前らの想いで!!」

 

 

 日野下たちは渋る。

 そりゃそうだ。この暴風で上手く喋れない、その場に踏ん張り続けるしかないのは確かだが、相手の過去があまりにも悲しすぎた。

 もし同じユニットの仲間がもし病気で臥せって余命を宣告されたら? そんな未来に自分を置き換えてしまって、もう何がなんだから訳が分からなくなっている。自分の相方がいなくなってしまったら。そんな最悪の事態を考えてしまう。思うところはあるはずなのにその思考が邪魔をして何も言い出せない。

 

 そう、今の俺がやるのはコイツらの感情を、想いを引き出させることだ。

 

 

「伝えろ!! その想いを!!」

 

 

 伝えるんだ。俺の想いも乗せて――――

 

 

「花帆!! 梢!! さやか!! 綴理!! 瑠璃乃!! 慈!! 今は俺を信頼しろ!! 今までどう思っていたとか、今後どう思われようが、そんなこと今は関係ない! 俺が何とかしてやるから、伝えろ!!」

 

「「「「「「ッ!?」」」」」」

 

 

 心の鍵が外れたような音がした。

 今度はコイツらが届ける番だ。

 

 少し間があった。だが、後ろから凄まじい気迫を感じた。

 遂に心の準備ができたようだ。みんなは一歩前へ出る。我武者羅でもいい、自分を前に出す覚悟をしたってことだ。

 

 

「辛いことが起きるたびに泣いちゃうと思うけど、それでも前に進むのはやめたくない! あたしは、梢センパイと一緒に進む!」

「スリーズブーケの先輩方が残してくださった曲や振り付けは、今でも受け継がれています! その希望を胸に花帆さんと夢へ歩み続けます!」

「この先、迷うことも躓くこともたくさんあると思います! でも綴理先輩と一緒なら乗り越えられます! 絶対に!」

「さやがいてくれたから今のボクがいる。もうさやがいないライブなんて考えられない。だから、だから離さない……!」

「めぐちゃんのおかげでルリの毎日が楽しい! メンタル弱者のルリでもスクールアイドルができるのもめぐちゃんのおかげ! だから握られた手は絶対に解かない!」

「ルリちゃんと一緒に最強アイドルになるって決めたんだ! 握った手を更に強く握り返す!! 離れたりなんてあり得ないから!!」

 

 

「お前、スクールアイドルが好きなんだろ! だったら自分の後輩を襲うなよ!! 聞いただろコイツらの意志を!! お前が心配する必要はない!! コイツらは乗り越える!! どんな辛いことがあったとしても!! それはお前らも同じだっただろ!! お前の相方は最後までお前とスクールアイドルを貫いた!! お前もアイツを信じてたんだろ!! だったらそれを誇れよ!! いい相方に出会えたって!! 誇れよ!!」

 

 

 三津音は目を大きく見開いた。

 花帆たちの言葉が伝わったのかは分からない。彼女はそのまま硬直する。自分の中でどう折り合いをつけるのか、この問題が解決するのか最終的にはアイツの心が修復されるか次第だ。俺も愛莉も、花帆たちもアイツを黙って見守る。もし思いが届いていなかったらどうしようと、一抹の不安を感じもする。

 

 しかし、彼女はここで初めて『笑み』を見せた。(しがらみ)が消えた、純朴な笑みだ。

 次第に暴風も弱まり、ようやく身体も自由になった。

 

 そんな中で、彼女が口を開く。

 

 

「もしかしたら、心のどこかでスクールアイドルをやめさせようとしていたのかもしれない。私のような絶望を、後輩たちに感じて欲しくなかったから。あの子を恨んでいた私も私だけど、こんな悲劇を繰り返さぬようにすると願っていたのも私。怒りと悲しみの感情が混じりあっていたからこそ、この世に残っていたのかも……」

 

 

 勘違いだったけど、その怒りで15年以上もスクールアイドルを襲っていたのは事実だ。だけど時折悲しげな表情を見せていたのは、スクールアイドルたちにスクールアイドルに関わって欲しくなかったから、と彼女は思っているようだ。自分のユニットのパートナーが病死するなんて稀すぎるくらい稀だが、そんな極端でなくとも相方と深い関係なればなるほど絆が決裂した際のダメージは甚大となる。そんな未来から遠ざけようとしていた。その気持ちが気付かぬうちに心の片隅にあったのかもしれない。

 

 

「あの子が私よりスクールアイドルを選んだのかと思っていたが、違ったみたいだ。最後まで私を選んでくれた。私と共に歩んできたスクールアイドルで私の最後を看取ろうとした」

「あぁ。スクールアイドルこそお前らそのものだったんだろ? ちょっと意志疎通に失敗してたけどさ、相方の気持ちはずっとお前に向いていた」

「うん。キミたちスクールアイドルのおかげで気付けたよ、本当に大切なものが最後まで隣にいたことに」

 

 

 花帆たちの想いは届いて思い出したようだ。相方は最後の最後までスクールアイドルだった。スクールアイドルでいようとしたんだ、三津音のためにも。同じユニットで繋がった絆を最も示すにはスクールアイドルの活動しかなかったんだから。

 

 そうやって感傷に浸っていると、彼女の身体が薄っすらと消えかけていることに気が付いた。

 

 

「お前、その身体は……?」

「成仏が近づいているようです。幽霊が現世に留まるのは後悔があったから。それが消え去った今、あなたはもうここにはいられません」

「そ、そんな! せっかくお友達になれそうだったのに!」

「花帆さん……」

 

 

 花帆の奴、あんな目に遭わされた張本人に対していきなり絆を育もうとするとか、コミュ強も行くところまで行ったら異質に見えるな……。梢なんて驚いて唖然としてるぞ。

 

 

「そうか、成仏か……」

「はい。それが幽霊界隈のルールですので」

「そんな界隈あんのかよ……」

「じゃあ行くことにするよ。それにしても友達か、あの子以外の友達はいなかったな」

「同じスリーズブーケの先輩だったのに、色々と教わりたかったです……」

「ならば、今度は君たちが見せてくれ。私が叶わなかった全国大会の優勝。今では『ラブライブ!』と言うんだけっか。私たちが、君たちが好きなスクールアイドルを見せて欲しい。それぞれ、いいパートナーを持っているみたいだしな」

 

 

 三津音はこれまで見た中で一番いい微笑みを花帆たちに向けた。

 6人の返事は、もちろん決まっている。

 

 

「「「「「「はいっ!」」」」」」

 

 

 6人も今日一番の微笑みと共に返事をした。

 

 そして、三津音は現世から姿を消した。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 その後、俺の携帯をハッキングした秋葉によって俺たちの位置が割り出され、蓮ノ空地下ダンジョンからの脱出ルートを教えてくれた。

 別に迷宮になっているとかそんなことはなく、そもそも三津音たちが秘密の練習場として使っていた時点で帰宅ルートは存在していた。あの長い滑り台を遡っては戻れないから、どこかに帰り道くらいあるとは最初から踏んでたけどな。

 

 そして、俺たちは遂に地下から地上に脱出した。

 

 

「ぷはぁ~~っ!! 空気が美味いゼェ~!」

「るりちゃん、飲んでるみたいだよ……」

「一仕事した後に飲みたい気分ってこういうことを言うのかな?」

「花帆さんはお酒に飲まれそうだから、将来気を付けてね」

「みんなで飲みに行く?」

「行きませんよ先輩!」

 

 

 さっきまでの緊張感はどこへやら、いつも通りのゆる~い雰囲気が戻って来た。ただもう夜も夜、しかも日中は普通に授業があった日なので疲労感が半端ない。飲みたくなる気分が大いに理解できるな。

 そういやこのガキの姿で飲酒ってできるのか? 中身は成人だけど中学生の身体じゃ流石に無理か……。

 

 

「そういや、お前らにも感謝してるよ。ありがとな、秋葉、大賀美、愛莉」

「おおっ、零君が素直にお礼を言ってくれるなんて! その言葉だけでも手伝った甲斐があるってもんだよ」

「お礼するのはあたしの方だ。この学校の元スクールアイドルとして、生徒会長として、事件の解決に感謝するよ」

「零さんから感謝されるなんて、もう絶頂してホントに成仏しちゃうぅううううううううううううううううううう!!」

「はは……」

 

 

 愛莉の奴、そんなこと言いながら真の意味で成仏するためには俺との生の性行為が必要らしいからな。一生叶わねぇだろそれ。コイツもコイツで今回はカッコいいところを見せたのに、最後の最後は締まらねぇないつも通り。

 秋葉は今回自分にとっても不測の事態だったので、その私利私欲が暴走せず普通に協力してくれた。普段は悪魔と呼ばれる研究者だけどなんだかんだ頼りになるんだよな。だから憎むに憎めない。その飴と鞭がコイツの手口なのかもしれないけど。

 大賀美は素直に頭を下げて感謝を伝えてきた。俺としてもコイツの手助けがなかったら詰んでたから助かった。また困ったことがあったらコイツに頼めば何とかしてくれそうなので、お互いの信頼が深まったのは良かったかな。

 

 

 そして、その信頼が最も深まったと言えば――――って、さっきからやたらと見られてる気がする……。

 

 

「あんだよ?」

 

 

 暗いから表情は読み取りづらい。

 だけど、どこか緊張している様子は見受けられた。頬も少し赤くなっている気がする。

 

 

「零クン、今日はありがとう」

「花帆……。手を差し伸べるなんて普通のことだろ、って言っても納得しないだろうな。素直に受け取っておくよ、その気持ち」

 

 

 女の子の笑顔を見るため。その顔を消さないため。俺の原動力はそれだけだ。自分のためだからお礼を言われるようなこともないけど、今回だけは素直に受け入れていいと思う。その素直な気持ちこそ今の俺とコイツらの結びつきを強くしてくれるから。

 

 

「まさかあなたにここまで助けられるなんてね。ありがとう、カッコよかったわ――――()()

「わたしも、見直したと言ったら上から目線ですけど……助かりました、ありがとうございます――――()()()

「れい、今日は君がとても大きく見えた。みんなと同じくらいこれからも一緒にいたい、そう思ったよ」

「ルリもなんつーか……やっぱり面白いヤツって思った! それと同時に……カッコいいなって。ふふっ、ありがとね――――()()()

「最初はクソ生意気なガキだと思ってたけど、熱い思いを秘めてるんだね。ありがとう。伝わって来たよ、()が私たちを大切に思ってくれる気持ち」

 

 

 ようやく絆を両方から結ぶことができた。片方だけではとても繋げないもの。今回の事件は確かに悲しかったけど、みんなとの距離がこれまでと比べ物にならないくらい縮まったので結果オーライだ。事件の調査をしている間は必至でそんな打算的なことを考えてる余裕もなかったけどな……。

 

 そんな感じで無事に事件は終結した。花帆たちに二度目の夜を迎えさせることなく事を解決できたことが一番安心したかな。

 なんにせよ――――疲れすぎて腹減ったぁ……。朝からずっと調査してたから飯全然食ってなかったな。

 

 そんなこと考えていたからか、腹の音が聞こえた。

 あれ? でも隣から聞こえてきたような――――

 

 

「花帆さん、あなた……」

「ゴ、ゴメンなさい、 安心したらお腹空いちゃって……あはは」

「かほらしいね」

「この締まらなさがですね」

「えぇ~それはヒドくない!?」

「ていうか、もう夜遅いけど寮の食堂開いてる!? ヤバいじゃん!!」

「じゃあみんなで寮まで競争ね! よーいスタート!」

「えっ、めぐちゃん!?」

「あっ、ズルいですよ慈センパイ!」

「ボクも行く~」

 

 

 あんなことがあったのに元気だねぇ。若いってすげぇわ。

 でも、この元気な笑顔を見るために俺たちの日常を守ったんだよな。だったら今は全力でコイツらに付き合ってやるか。

 

 

「さやかも梢も、そんなとこでボサっとしてると飯全部食っちまうぞ」

「えっ、それは困りますよ零さん!」

「ちょっと、待ちなさい零君!」

 

 

 俺たちは寮に向かって駆けだした。その様子を見て微笑む秋葉たち。

 

 ここからが俺と花帆たちの本当のスタート。そしてスクールアイドル病という更に大きな問題を解決するための新たな一歩。

 だけど、とりあえず今はコイツらとの日常を楽しもう。育んだ絆を確かめ合うように、な。

 




 長かった幽霊騒動編がようやく完結しました!
 そして遂にお互いに名前呼びになったことでより絆も深まったことでしょう。
 虹ヶ先やLiella編が最初から名前呼びである程度の関係性になっていたので、今回はゼロから絆を結ぶのに時間がかかった気がします。でもこういった過程を描ける方が後の恋愛要素の説得力が高まるので、これはこの展開でアリな気がしています。



 次回からはまたいつもの日常パートに戻ります。
 今回で彼との関係性がグッと縮まったので、彼女たちが彼を見る目が少し変わってるかも……?


【キャラ設定集】
零から蓮ノ空キャラへの呼称(そのキャラへの印象)
・日野下花帆 → 花帆
・村野さやか → さやか
・乙宗梢   → 梢
・夕霧綴理  → 綴理
・大沢瑠璃乃 → 瑠璃乃
・藤島慈   → 慈

蓮ノ空キャラから零への呼称(零への好感度 0~100で50が普通)
・日野下花帆 → 零クン  (?→95)
・村野さやか → 零さん  (55→80)
・乙宗梢   → 零君   (50→75)
・夕霧綴理  → れい   (61→81)
・大沢瑠璃乃 → 零くん  (58→83)
・藤島慈   → 零    (39→74)
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