ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常2~   作:薮椿

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この学校には、エルフがいる!

 転入生活13日目、夕食後。

 俺たちは寮の食堂で飯を食い終わり、各々それぞれの部屋に帰ろうとしていた矢先の出来事だった。

 

 

「よ~しっ、これからVlog撮影に行くよ!」

「あん?」

 

 

 一番後ろを歩いていた慈が口軽やかに俺たちに声をかけ、みんなが一斉に振り向く。

 晩飯も終わり、後は風呂に入って個々人で好きな時間を過ごそうと心に決めていた時にこの提案。みんなはコイツが何を言い出すのかと不思議そうにするのと共に、余計なことに巻き込まれそうだとやや面倒そうな雰囲気を醸し出していた。

 

 

「めぐちゃん、もうこんな時間だよ? 今から動画撮影するの……?」

「今だからこそできるネタがあるの! 土曜の夜なんてみんな暇でしょ?」

「明日はFes×LIVEよ? あまり夜更かししてはライブに支障がでるわ」

「ライブは夜でしょ? だったら昼まで寝ていても問題ないから大丈夫大丈夫!」

「そういう日だからこそ規則正しい生活で体調を崩さないように――」

「いいじゃんいいじゃん。たまにはお堅いルールなんて破って盛り上がらないと、人生楽しくないよ?」

 

 

 とりあえず各々あの手この手で慈の提案を回避しようとするが、能天気なコイツには一切通用しない。むしろ向こうがこちらを言いくるめようとしてくる。みんなもコイツの巻込み癖を分かっているようだ。まあ出会って2週間の俺が理解してるんだ、既に長い付き合いのコイツらだったら当然か。

 

 

「それで慈先輩。その撮影のネタというのは……?」

「ふふふ、聞いて驚くなかれ! どうやらこの学校に――――エルフがいるらしいの!」

「はぁ?」

 

 

 慈の意味不明な発言に俺だけでなく他の5人も目を丸くする。どうやら俺たちはいつの間にかファンタジーの世界に迷い込んでしまったらしい。

 てかスクールアイドルなのにエルチューバ―みたいなネタで撮影するのかよ……。

 

 

「エルフって、よく小説とかに出てくる妖精のことですか?」

「そうだよ花帆ちゃん! なんとそのエルフがこの学校にいるんだよ!」

「エルフって、なに?」

「ファンタジーの世界によくいる種族みたいなものですよ綴理パイセン。ゲームやラノベだと珍しくもなんともないんですけどねー」

「今校内で噂になってるの。夜の廃倉庫にちっちゃいエルフが出るって。たまたま肝試しで近くを通りかかった生徒が、そんな可愛いエルフを見たって噂でもちきりだよ」

 

 

 おいおい、またスピリチュアル系の話かよ。つい4日前に幽霊騒動があったってのにまだこの学校に何かいるのか? どうせ何かの見間違えだと思うが、実際に幽霊がいたから確率ゼロではないのは確かだ。どうして俺の周りには科学で証明できないことが起きるかねぇ。今回はどうだか知らねぇけど。

 

 

「ちゅーわけで善は急げで今から行こうと思ってね」

「じゃ、あたしは宿題が溜まってるので、あはは……」

(わたくし)も練習メニューを考えないと……」

「わたしは、えぇっと、お弁当の献立を決める必要があって……」

「ボクはアリの行列の観察がある」

「むっ、じゃあ仕方ないか」

 

 

 信じたぞこの女。みんな何とか面倒事を避けようと必死過ぎる。もはや綴理なんて真面目なのかネタなのか分からねぇし……。

 ま、そういうことなら俺も――――

 

 

「よしっ! じゃあ『みらくらぱーく! with 中坊!』でエルフ探しにしゅっぱーつっ!」

「えっ!?」

「ちょっとめぐちゃん!? ルリも今日はFPSのランク上げをする予定が……」

「エルフは待ってくれないんだよ? それにみんなの気になることを解明するのが我らの『みらくらぱーく!』じゃん!」

「スクールアイドルだよルリたち!」

「そういうわけで零。あんたもボディガードよろしく~」

「マジ……?」

 

 

 俺も瑠璃乃も慈に手首をガッチリと掴まれて逃走を阻止されていた。いつもは慈のやることに興味を示す瑠璃乃も今回のアホなネタには難色を示している。そりゃそんなファンタジーのキャラがいるわけねぇって話だよ。

 

 ちなみに花帆たちはいつの間にかこの場から去っていた。まあこれ以上この話題の中で残ってたら飛び火するかもしれないし、当然と言えば当然か……。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 そうやって強制的に寮の外へと連行されて、エルフが出没すると噂される例の倉庫へと向かっている。

 実はそこへ行くのは初めてではなく、何を隠そう幽霊騒動のときに蓮ノ空の地下へ繋がる道が隠されていた倉庫だ。かなり昔から使われていない錆びれた倉庫で灯りもない怪しい場所のため、肝試しの舞台としてこれほど相応しい場所はないだろう。

 

 校舎から離れているためか、夜になると灯りがないのも相まって周りがほぼ見えなくなる。近くにいるならまだしも、ちょっとでも離れると誰がどこにいるのか容易には分からなくなるくらいだ。そんなところにエルフなんているのかよ……。

 

 そんな中、いつの間にか慈が動画を回して撮影を開始していた。

 

 

「ハロめぐー! 蓮ノ空スクールアイドルクラブの藤島慈だよ! 今日は学校で噂になっているエルフを探しに離れの倉庫にやってきました! どうやら小さくて可愛いエルフらしいから、是非とも捕まえて我らスクールアイドルクラブに迎えちゃおうって作戦を立ててるんだ! じゃあ今から潜入して周りの様子を確認していくね!」

 

「えっ、そんなぶっ飛んだ作戦考えてたのめぐちゃん。エルフを捕まえるなんて、ゲームの設定とかで良くあるエルフが人間たちから断絶して生きている理由みたいな……」

「こういう無自覚なヤツが人をこっそり傷つけるんだろうな」

「それだとめぐちゃんが何も考えてないみたいじゃん!」

「実際そうだろ」

「確かに……」

 

「おいそこ聞こえてるぞ!」

 

 

 いつも突拍子なく動画を撮ろうと言ってるのが丸分かりになるやり取りだなこれ。同じユニットの瑠璃乃もそれに振り回されてるんだろうが、本人はこういうのは結構好きそうなタイプなので普段はノリノリなのだろう。

 だが今回は飯を食ってあとは各々1人の時間だろうと暗黙の空気が流れていた。つまりそれをぶち壊されたから渋々付き合っているのだろう。

 

 そんな感じで慈1人で盛り上がる中、倉庫の前に到着する。

 もちろんここにも灯りはなく、倉庫の周りには中に置ききれなくなって剥き出しで置かれている体育用具や何かの機材などが散乱していた。以前の幽霊騒動で調べたとはいえ、やはり夜にここへ来るのは物々しい雰囲気がある。ただお化けが出そうってよりも床に無造作に落ちている何かに躓いてケガをすることも大いに予想されるため、そっちの危機感を抱いた方がいいだろう。

 

 

「でもエルフって綺麗な森や泉の近くにいるものじゃん? こんな真っ暗な廃倉庫にいるなんて思えないよ」

「そうなんだけど、夜に出るってことはもしかしたらダークエルフって可能性もあるよね」

「ダークエルフって、あの褐色肌の? よく負けて見世物にされてるアレ?」

「そうそう。エロ同人とかでよく見るやつね」

「お前ら知識偏り過ぎだろ……」

 

 

 仮にも蓮ノ空はそれなりのお嬢様学校。そんな奴の口からこんな話題が飛び出すなんて、学校の責任者が聞いたら泡拭いて倒れるぞ。実際に他の4人にこの話題を出しても何の話をしているのか理解できねぇだろう。サブカル漬けになってるオタクはこえぇな。

 

 

「とにかく、ちょっと調べて何もなかったらとっとと戻るぞ。前みたいにお前らが霊魂に拉致されるみたいなことになったら、また助けに行かなきゃいけねぇから帰るの遅くなっちまう」

「ふ~ん、助けてくれる気ではいるんだ」

「そのために俺を呼んだんじゃねぇのかよ」

「そのとーり! めぐちゃんの信頼を勝ち取ることができて良かったね!」

「そりゃどうも」

「最初はあんなに零くんのこと嫌ってたのにね」

「嫌ってはない。ただムカつくヤツだって思ってただけ。今もたまにそう思うけど」

「はは……」

 

 

 確かに最近は初対面の微妙な空気から一転し、もう何も気兼ねなく話ができている。別に最初が気を遣っていたわけではなかったが、向こうがやたら攻撃腰だったのは間違いない。まあ俺の言動も言動だったし、年下の中学生に生意気な態度を取られたらそりゃ怒るわな。

 

 そんな会話をしながら倉庫の中へと侵入する。相変わらず手入れもされてない体育用具や過去の文化祭で使われてたであろう小物や大物まで多数存在。見ようによっては完全に廃棄物が放棄されているゴミ捨て場なので、こんな汚いところにエルフがいるのかと疑わしくなってくる。いたとしてもソイツ自身が相当薄汚れているだろうから、俺たちのイメージにあるあの清廉潔白な姿とは程遠くなるな……。

 

 

「週に2回もこんなところに来るなんて、ルリ思ってもなかったよ」

「でもエルフを見つけたら私たち超有名人になれるじゃん! 離れと言っても学校の敷地内だし、来て調査する価値はあるよね」

「相変わらずポジティブだねめぐちゃんは――――わっ、あぶなっ!」

「おっと」

 

 

 暗くて足元が見えづらいためか、瑠璃乃は落ちていたパイプを踏んでしまって前に倒れ込んだ。幸いにも前に俺がいたから抱きしめる形で支えることができたのだが――――

 

 

「あっ、零くん……。あ、ありがと……」

「大丈夫か?」

「うん……。そ、その……結構近い……」

 

 

 ガキの姿になっているせいで背丈も縮んでいるせいか、抱き合うとちょうど瑠璃乃と顔が向かい合う体勢となる。まあ俺の方が少し背が低いのだが、それでも彼女は力が抜けて膝を折って状態なのでまるでキスしそうなくらいにお互いの顔が近づいていた。倉庫内の埃クサい匂いから一転、女の子特有の甘い香りが鼻腔をくすぐる。これだけで雰囲気最悪のこの場も一気に華やかになったような気がした。

 

 

「るりちゃん。もしかして急速充電されちゃってる?? モバイルバッテリーで充電しちゃってる!? ドキドキして過充電になっちゃってる!?」

「ち、ちげーやい! 煽るな煽るな!」

 

 

 瑠璃乃は後ろに飛んで俺から離れた。

 恥ずかしがっているのは間違いなかったようで、暗い倉庫内でお互いの顔が視認しづらい状況であっても顔が少し紅くなっているのは見て取れた。密着したから息が荒くなっていることにも気づいたし、それなりに意識はしてくれているようだ。俺がコイツのモバイルバッテリーと言われたあの時はまだ幽霊騒動前だったのだが、あの時から既に多少なりとも俺に近づかれることに特別意識を抱いているようだったので、幽霊騒動を経た今はその意識も強くなっているのかもしれない。

 

 って、完全に自惚れてるな俺。でもそうやって女の子が自分に向ける気持ちを知っていかなければ、到底スクールアイドル病を治療することはできない。元凶である傷の位置を確かめるため女の子の裸を見ないといけないからな。そのためにはお互いの信頼関係と好感度が必要だ。

 

 そうやって一悶着あった中、突然倉庫の入り口が謎の光に照らされた。

 小さな光だが揺らめいているため、どこかの灯りが勝手についたとかそういった怪現象ではなさそうだ。

 

 

「あの光、なんだろう?」

「まさかエルフ!? エルフが魔法で光を!?」

「んなわけあるか。あれは人工の光だ。誰か来る」

「「えっ?」」

「あの棚の後ろに隠れろ。早く」

 

 

 誰かが来る。そう察知した瞬間に瑠璃乃と慈を大きな棚の裏に誘導していた。

 音を立てないように自分も隠れて様子を見る。さっきまでわちゃわちゃしていたのがウソのように周りが静まり返り、懐中電灯と思われる光が少しずつ大きくなっていくのを棚の陰から視認する。徐々に足音も聞こえてきたので、誰かがこの倉庫に来ているのは間違いなさそうだ。

 

 

「エルフじゃないの? 本当に??」

「エルフが懐中電灯なんて使うかよ。誰か来てるんだ。でもこんな夜の廃倉庫に一体誰が……」

「もしかしてルリたちと同じで、噂を聞いて探しに来た人かも……」

「だといいんだけど。不審者とかじゃなけりゃな」

「「…………」」

 

 

 謎の緊張感が走る。この学校は外部から自由に出入りでき、警備員はいるもののガチガチに閉鎖された空間というわけではない。山の中の牢獄なので環境からして既に閉鎖されているという見方もあるが、学校自体の出入りはかなり緩い方だ。だから誰かが来てもおかしくないが、仮にそうだとしてこんな廃倉庫に来る意味が分からない。やはり瑠璃乃が言った通り噂を聞きつけた野次馬か誰かなのか……?

 

 

「もしかして、また幽霊とかじゃないよね……?」

「あれはもう解決したから違うと思うけど……」

「喋るな」

「「むぐっ」」

 

 

 瑠璃乃と慈の口を手で塞ぐ。ただでさえ静まり返った空間なんだ、小さな声であっても気付かれる可能性は高い。

 と、そう思っていると懐中電灯の光が消えた。

 

 

「き、消えた?」

「違う、気付かれたんだ。だから向こうも得体のしれない誰かに自分の場所を悟られないようにしたんだよ」

 

 

 咄嗟に自分の居場所を知られぬように光を消すなんて、どうやら結構察しがいい奴らしいな。エルフや幽霊とかやはりそういう類の奴ではなさそうだ。

 雰囲気的に1人しかいないっぽいし、噂を聞きつけてくるのであれば真っ暗ってこともあってグループで来そうなものだ。なのにこんな倉庫に単独で来たってことは相当度胸のある奴か、それとも生徒ではない怪しい奴か……。

 

 

「ここから少し離れたっぽいな」

「やっぱり不審者なの……?」

「それは分からない。だとしてもお前らだけでも逃がしてやるから、心配すんな」

「零……」

「零くん……」

 

 

 コイツらだけでも逃がしてやりてぇけど、さっきの奴が入り口に陣取っている以上鉢合わせになるのは確実。不審者だった場合にこのガキの姿ではどうにもならないし、最悪この大人に戻る薬を使うしかないか。俺の正体がバレちまうけどコイツらの安全を守るためには仕方がない。何かあった時のために一応ポケットに忍ばせているんだが、まさか今がその時になるのかこれ……。

 

 その時、一瞬相手の陰が見えた。

 かなり小柄であり、俺と似てるかそれより下の背丈だった。髪も長くて女性みたいだったし、まさかマジでエルフ……んなわけねぇよな。でも気になることがある。

 

 

「おい慈。そのエルフの話って夜にここでしか見かけないんだったよな?」

「えっ、う、うん。髪が長くて小柄な女の子の影が見えたって。日を変えて2回見に行ったみたいだよ」

「こんな倉庫に何日もいたってこと?」

「それって……」

 

 

 すっかり意識の外だったけど、この倉庫に関係があって髪が長くて小柄な女の子……。

 それってまさか――――

 

 

「瑠璃乃、慈。考えずにすぐに答えろ。できる限りはっきりとだ」

「えっ、急になに?」

「いいから」

「はっきりとの意味は分からないけど、うん……」

「質問。あなたが鬼退治を任されたらどう戦いますか?」

「「はい! 鬼ヶ島に遊園地と温泉とサウナを作って毒気を抜いて平和的解決を図ります!」」

「よし」

「「あ゛っ!?」」

 

 

 もはや隠れる気のない大きな声で俺の質問に返答する2人。反射的にノリ良く答えてしまったためか、回答したあとにこれまた大ボリュームで自分たちの失態に気付き声を上げた。

 ちなみにさっきの質問はコイツらの曲の間奏に挟まるやり取りの一部。自分たちの持ち曲でライブでも幾度となく披露しているため、もはや脊髄反射で答えてしまったのだろう。まあそれが狙いだったんだけどな。

 

 

「零!? こんな大声出したら気付かれるんじゃないの!?」

「そうだよ! その質問は口が勝手に動いちゃうから!」

「問題ねぇよ。だってそこにいる奴は――――」

 

 

 再び懐中電灯の灯りが点くと、今度はこちらをダイレクトに照らされる。あんなに大声を出したんだ、隠れ場所を特定されて当然だ。

 でもそれで問題ない。何故なら――――

 

 

「さっきのセリフ。まさかとは思ったけど、まさかキミたちだったのか」

「「さ、沙知先輩!?」」

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「まさかあたしがエルフなんて噂が流れてたとは、いやはや若い子の噂ってのは誇張表現されるものだねぇぃ」

 

 

 エルフの正体は大賀美沙知だった。確かに俺と同等くらいの小柄で髪が長い女の子、そしてこの倉庫に近づくような奴って情報を総合すると、もうコイツ以外に思い浮かばなかった。幽霊騒動の後にこの倉庫を綺麗にするって言ってたのを思い出したってのもあるかな。

 

 なんにせよ、不審者じゃなくて一安心だ。幽霊でもエルフでもなかったので余計な騒ぎになることもなかったが、人騒がせな噂を流した奴は流刑にしろ。おかげで貴重な休日の夜の時間が潰れたじゃねぇか。

 

 

「どうしてこんな夜に倉庫に来てるんですか? それじゃあ勘違いされちゃうのも無理ないですよ」

「幽霊騒動でこの倉庫の汚さを見て以来ここを片付けたいと思っていてね、まずどんなものが放置されているのか確認してたんだよ。ただ日中は生徒会の仕事とかあるから夜にしか時間が取れないんだ」

「働き過ぎ! 生徒会ってそんなにブラックなの?」

「忙しいけど苦とは思ってないからね。それにここはスクールアイドルの先輩たちが練習場として使っていた歴史があるから、こんな埃塗れな状態にしておきたくないんだよ。元ここのスクールアイドルとして先輩たちへの敬意は忘れないさ」

 

 

 何事も一切の妥協をせずに突き進むのが大賀美沙知だったな。コイツにとってはここの掃除なんて仕事でもボランティアという意識はなく、単に自分のやりたいこと、趣味の範疇なのだろう。だからこんな夜であっても自分のため、もうここにはいない先輩のために動くことができる。自分の大好きなスクールアイドルの歴史を紡いでくれた先輩たちのために。いい奴すぎるだろ。

 

 

「それにしても少年、どうして歌詞で自分たちの存在を証明しようとしたんだい? 普通に声をかけてくれればいいじゃないか」

「そっちの方がお前の張っていた気も緩まるかと思ってさ。安易に顔を出して、俺たちのことを不審者だと思って先制攻撃してきてもイヤだったしな」

「流石にそんな猟奇的じゃないよあたしは」

「お前が元スクールアイドルなら、あの方法が手っ取り早く安全にこっちの存在を知らせることができるってことだよ」

 

 

 俺が大賀美のことを察知しても、向こうはこっちの正体を知らなかったからな。張り詰めた空気の中で顔を出すともし不審者撃退用の武器とか持たれてたら危なかったし、その空気を壊す意味もあったんだ。まあぶっちゃけ半分くらい遊びだったけどさ。

 

 

「あ~あ、でも動画のネタなくなっちゃったなぁ~。こうなったら先輩にエルフの格好をさせて、なんなら穢れた倉庫にいたか弱いエルフを助けたって筋書きにするか」

「おいおいマッチポンプはよしたまえよ。それにそんな恰好あたしには似合わないって」

「動画のタイトルは『エルフはまさかの生徒会長!? 助けたら同棲することになった件』。これでどう?」

「今流行りの長いタイトルの小説だ! でもセンスねぇよめぐちゃん!!」

「慈はあたしにどんなキャラを求めてるんだ……」

「ちっさいなりに背伸びして頑張ってる大先輩。そんな健気な先輩はエルフにぴったり!」

「ちっさい言うな!!」

 

 

 もはや先輩をイジリの対象としか見てねぇのかコイツ。まあ大賀美って意図の読めない行動をする飄々とした性格だけど、小柄ってだけでそんな性格が可愛く思えるくらいだしな。からからかいたくなる気持ちは分かる。

 

 慈の貪欲な探求心は泊ることがないけど、変な捏造で動画が炎上しないように見張っておいた方がいいのかもしれねぇな……。

 

 

「そんなこと言ったら、さっき懐中電灯を向けた時に少年に抱き着いているキミたちの方がよほどちっちゃい子に見えたぞ。よほど彼を信頼してるように見えるねぇ」

「「だ、抱き着いてない!!」」

「写真撮っておけばよかったなぁ~なんてね」

 

 

 なんだよ無駄な煽りあい。ま、どっちもどっちだな……。

 




 実際に夜の倉庫に懐中電灯を持って歩く小さな女の子がいたら、それはそれで怖いので噂が立つのも無理ない気がしたりしなかったり……




【キャラ設定集】
零から蓮ノ空キャラへの呼称
・日野下花帆 → 花帆
・村野さやか → さやか
・乙宗梢   → 梢
・夕霧綴理  → 綴理
・大沢瑠璃乃 → 瑠璃乃
・藤島慈   → 慈

蓮ノ空キャラから零への呼称(零への好感度 0~100で50が普通)
・日野下花帆 → 零クン  (95)※今回変化なし
・村野さやか → 零さん  (80)※今回変化なし
・乙宗梢   → 零君   (75)※今回変化なし
・夕霧綴理  → れい   (81)※今回変化なし
・大沢瑠璃乃 → 零くん  (83→85 ※ちょっとカッコよかった)
・藤島慈   → 零    (74→76 ※やっぱり頼りになるじゃん)
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