ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常2~   作:薮椿

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あなたがいる、それだけで(後編)

「聞きたいのだけれど、(わたくし)はどうしてあなたの部屋にいるのかしら……?」

「逆に俺と話をするのに場所を選ぶ必要があるのか?」

「その理論だと別にあなたの部屋に移動しなくとも、部室で話せばよかったのではないかしら……?」

「ここなら誰の邪魔も入らねぇし、都合がいいんだよ」

「都合がいい……? い、一体何をするの……?」

「何考えてんだ。んなことしねよバーカ」

 

 

 なんだ? コイツ意外とそういった知識もあるのか?

 と思ったが、好きな男にいきなり本拠地に連れ込まれたら誰でもそう思うか。そんな桃色の想像ができないのはマジで知識がなさそうな綴理くらいだろう。いくらお嬢様とは言えども学校で最低限の性教育くらいは学んでいそうだしな。

 

 転入生活20日目。

 部の雑務が午前中で粗方終わって、ついでにコイツの悩みも勝手に解決したので今度は俺のターンだ。

 正直この時をずっと待っていた。スクールアイドル病を治療するには少なからず相手の服を脱がす必要があるため、2人きりになれる時間と空間がどうしても必須だ。コイツのスクールアイドル病の原因たる身体の傷を見つけたのは3日前の楓襲来のジェノサイド事件で、傷を見つけたからには早く治療する必要があると思って2人きりになれる機会を窺っていた。ただコイツは部長として、そして謎に背負い込む責任感が故に常に何かの作業をしており中々接触する機会がなかった。しかも機を待っている間にも大賀美と椎葉含む生徒会のいざこざに巻き込まれたし、だから今のこのタイミングこそ絶好のチャンスなんだ。

 

 

「てかなんでそんな緊張してんだよ。一回来たことあるだろ、夜食のときに」

「そ、それはみんなの勢いに流されてしまったと言うか、みんなと一緒に食べる深夜のからあげが意外と美味しくてそんなことを意識すらしていなかった言うか……。改めて同年代の異性の部屋、しかも今2人きりというのは結構緊張するものね……」

「同年代って、一応俺の方が4つも年下だけどな」

「そうなのよね。でもあなたって背は低いけど全然年下に見えないわ。むしろ年上にしか思えなくて……」

「もしそうだとしたら、どうする?」

「へ? そ、そうね……敬語を使うようにする、とか?」

「それは堅苦しいからやめてくれ」

「ふふっ、普通に考えたらありえないから無意味な想像だったわね」

 

 

 まあ本当なんだけどな。しかも普通に考えたらって、俺と出会ってからというもの尋常ではないイベントばかり発生して、しかも自分自身がメインで巻き込まれたことも多いのに呑気な奴だ。ただ確かに成人男性が幼児化するなんてアニメや漫画じゃあるまいし考えもしねぇよな。むしろ疑われたら誤魔化すのも大変なので、何事もなくスルーされた方がこっちとしても安心ではある。

 

 梢の様子を見るに緊張は解れたようだ。アイスブレイクのために軽くトークを仕掛けてやったが上手く行ったみたいだ。これで本来の目的に話を移行できる。ぶっちゃけコイツにはもっと身も心も解放的になってもらう予定なんだけどな。

 

 

「連れ込んだのはこれを観せてやろうと思ってさ」

「これって――――μ'sのライブBlu-ray!? しかもとても人気で購入が抽選になって、更にその倍率が高すぎて流通量も少なく、ファンの間では喉から手が出るほど欲しいと10年近く経った今でも言われているあの!? ま、まさか……!!」

「説明ありがとう。あぁ、そのまさかだよ。お前がμ'sのファンだって花帆から聞いてさ、せっかくだし見せてやろうと思ってさ。外部の人間がほとんど来ない監獄みたいな学校で、まさかμ'sの知り合いだった奴と出会う。そんな奇跡がお前に起こってんだ、それを利用しない手はねぇだろ」

「あなたがまさか自分からこっちに踏み込んで来るなんて……。どこかしらからシグナルが鳴らないと動かないと思ってたわ……」

「基本は面倒事を避けたいからそうしてるけど、別にそんな薄情でもねぇって」

 

 

 そりゃ自分の考えを第一にして動いているが、何のデメリットもなく相手を喜ばせられるのであれば俺だって自分から動く。それに今回はそんな純粋な思いの他にスクールアイドル病の治療のためという名目もあるからな。一石二鳥になるのなら動かない手はないだろう。

 

 

「あなたがこれを持っているということは、やっぱり関係者特権なのかしら……?」

「俺がこんなのに興味があると思うか? 楓のだよ。ほら、前に学校を荒らしてた。アイツが持ってるのを知ってたし、アイツもいらねぇっつってたからどうせなら有効活用できる奴に渡した方がいいだろ」

「不要って、楓さんもμ'sとしての楽しい思い出がこのライブにたくさんあると思うのだけれど……」

「ま、考え方は人それぞれだから」

 

 

 これは俺たち内輪のメンバーしか知り得ないことだが、楓はμ'sに特に思い入れはない。俺の気を引くために始めただけであって、その手段として利用していただけだ。だからライブで振りまく笑顔は虚像であり、ファンのことはもちろん同じメンバーのことすらどうでもいいと思っているくらいだ。なのにウソだけであそこまで人気を獲得できるのは、やはり海外で女優として活躍する母さんの遺伝を俺たち兄妹の中で一番色濃く受け継いでいるからだろう。人を惹きつけるパフォーマンス力は例え偽りの姿であっても他を魅了する。

 

 アイツが唯一スクールアイドルになって良かったと思ってるのは雪穂と亜里沙の2人と親友になれたことくらいで、ファンからファンレターを焼くくらいにはアイドル活動が適当だったからな。こんな事実は流石に言いふらせない。コイツみたいにμ'sのファンが大量に増えてきた昨今ならなおさらな。

 

 そんな背景があるから関係者が特別にもらったこのBlu-rayも不要の産物であり家の倉庫に眠っていたのだが、コイツなら有効活用できるだろうと思って秋葉に持ってきてもらった。というのがここまでの経緯だ。

 

 

「じゃあ早速観るか?」

「えぇ、是非!」

 

 

 感情が昂ってもそれを表情にも声にもあまり現れない梢だが、今は明らかに顔にも声にも高揚感が溢れているのが見て取れる。目を大きく開いたり声も落ち着きがなかったりと、まるで花帆がはしゃいでいる時のようだ。同じユニットのパートナーだから似てきたのだろうか。なんにせよコイツが無邪気な反応をするのは珍しい。μ'sのファンってことは知ってたけど、まだライブ映像も観ていなくて話に出しただけなのにここまでとは……。

 

 Blu-rayを何故か部屋に置かれている8Kテレビで再生する。寮内の俺の部屋だけ高級ホテル並みの家具家電が揃っているのは秋葉のせめてもの慈悲なのだろうが、別に普段から何かをじっくり観ているわけではないのでそんなハイスペックを置かれても豚に真珠状態だ。

 

 そんな感じで最新つよつよスペックテレビに過去の遺物の映像が映し出されたわけだが――――

 

 

「感極まる、という言葉はこういう場面で使うものなのね。μ'sの皆さんの眩い気高さが自分の喜々を更に昂進させ、心の奥に眠る狂熱に燃料を与えられて感応する。こんな素晴らしいものを無料で、しかもこれから何度も観て良いだなんて望外の喜びだわ」

「そんな語彙力発揮するなら俺を褒める時ももっと捻って――――って、なに泣いてんだよ……」

「ほ、本当ね……。あまりにも感情が揺さぶられてしまって……」

 

 

 興奮のあまり泣き出すってどれだけ熱狂的なんだよ。これまでもμ's好きの奴には何人か会って来たけどコイツはその中でもトップクラスのファンだ。

 ただコイツが感動するのも分かる。聞くところによると幼い頃からスクールアイドルをやりたいと夢見てたのもμ'sの活躍を見てきたからであり、そんな奴らの秘蔵とされてきたライブ映像が見られるとなったらそりゃ有頂天にもなるわな。μ'sのライブ映像はそこらにいくらでも転がっているけど、その映像化された全てがネットで観られるわけじゃない。無料で観られたりサブスクで観られたりするものもあれば、反面こうして市場流通が少ないDVDやBlu-rayもある。コイツのような熱狂的ファンならその全てを瞳に映したいと思うのは当然だろう。

 

 

「あなたは随分と暇そうにしているのね。これほどまでに情熱が灯るライブだというのに……」

「何回アイツらのライブを観てきたと思ってんだ。普通に飽きるだろ」

「あっ、観て! 絢瀬絵里さんのパフォーマンスと歌唱力! やはり雄大さの中にもしなやかさがあって、手の先から足の先まで川の流れの様な自然な動きは惚れ惚れするわね。それに瑞々しくも迫力のある歌声は高潔さが籠められていて、いつ聴いても私を鼓舞してくれるわ」

「感情ぐっちゃぐちゃだなお前……」

 

 

 泣いてたかと思えば冷静にツッコミを入れてきて、そのあとにまた興奮して仕舞にはうっとりしている。こんな姿を他の奴らに見せたら驚くだろうな。ここまで無邪気で子供の様にはしゃぐコイツなんて見たことがないだろうし、恐らく本人も見せたくはないだろう。

 ということは、俺になら子供っぽいところを見せてもいいと思っているのだろうか。今の梢は部室で俺がアドバイスした通り、自分に課された責任や重圧を全て忘れ、過去も未来にも目を向けず『今』を全力で楽しんでいる。もしかしたら俺の言葉が影響したのかもしれない、ここまで解放的になっているのは。

 

 話は変わるが、コイツが絵里について言及していたのも理由がある。確かにアイツはμ'sの中でも特にパフォーマンスも歌も上手いけど、その高邁(こうまい)な姿でファンを魅了に堕とす。梢もその1人と聞いた。噂によるととある曲をライブで披露する時は、絵里と同じ髪型にしているのだとか。俺はその姿を見たことはないが、大賀美曰くかなり似てるらしい。

 

 ライブ映像も前半が終了し、特典映像として舞台裏の様子が流れ出す。

 そこで梢から映像を止めて欲しいと言われたので止める。そしてテレビに釘付けで前のめりになっていた彼女はソファに腰を深く掛け直した。

 

 

「ふぅ。午前中の作業よりも何倍も体力を奪われたわ……」

「あれだけはしゃいでたら当然だ」

「恥ずかしい姿を見せてしまったわね……」

「んなことねーよ。あれがお前の本物の感情ってのなら隠す必要ないだろ。むしろ抑圧しっぱなしだと身体に毒だ。今みたいに定期的に発散しないとな」

「そうね。でも、今あんな姿を見せられるのはあなただけよ」

「別に見せる必要はねぇけどさ、1人で感情を爆発させる燃料は用意してやったからこれから思う存分に使え。ついでにライブの勉強もできるだろ」

「もしかして、最初から私のためにこのライブの映像を? だとしたらBlu-rayを家から手配する時間を考えれば、前々から私のために動いてくれていたということかしら……?」

「さぁ、どうかな」

「そう……。ありがとう、零君」

 

 

 これだけ多くの思春期女子と関わってきた人生だ、誰がどんな悩みを抱えているかなんて見ただけで分かる――――とまでは行かないが、話さなくても本人の様子や周りの声から察しが付くことはある。コイツの場合は明らかに過重労働だったから編入してすぐに気付いたけどな。

 

 梢は大きく深呼吸を繰り返している。相当はしゃいでいたので息絶え絶えになっているようだが、見たところそれなりに汗をかいている。もう冬も近くて外もかなり寒くなっているから部屋に暖房を入れていたのだが、あれほどまでに熱狂して火照った身体にはまさに火に油を注ぐようなもの。暑さで顔もそれなりに赤くなっていた。

 

 

「わりぃ、暖房消すよ。なんなら冷房入れるか?」

「えぇ、ありがとう。でも平気よ、制服を脱げば大丈夫だと思うから」

「脱ぐのか? 女子の制服ってセーラーワンピじゃなかったっけ? 上下セパレートになってんのか?」

「流石にそうなってるわ。興奮して正気を失っていたとは言っても他人の前でスカートを脱ぐなんて暴挙、絶対にしないわ。綴理じゃあるまいし」

「アイツはするのかよ……」

 

 

 ガードは緩そうではある。というより貞操観念があまりないのだろう。ただ俺に脱がされた時はそれなりに恥じらいを持っていた気がするので、意外と女の子としての一般的な羞恥心は獲得できたのではないかと思っている。悪い言葉で言えば俺と出会ってメスになった、と言えるか。

 

 それにしても、梢の奴やっぱりスタイルいいな。上を脱いでいてシャツ1枚だからか胸の大きさが如実に出てるし、女子高生にしては背も高く腕も脚も長い。コイツや綴理といると俺の背の低さが際立ってよりガキっぽく思えてしまう。

 しかも身体が火照っていて汗をかいているせいか、息も艶めかしく色気が増している。脱がせること自体は俺の作戦通りなのだが、まさかここまで男の情欲を煽るような蠱惑さを出してくるとは思わなかった。本人にその気は全くないだろうが本来の目的を見失いそうになるくらいには男の目を奪ってくる。思春期時代の俺だったら問答無用で飛びついていただろうな。今は流石に女のカラダに慣れてるからそんな淫らな思考にはならないけど。

 

 ここでふと視線を感じたので梢に顔を向けて見ると、向こうからもこちらをじっと見つめられていることに気が付いた。

 さっきライブ映像を観ていたときとはまた違う熱の籠った目。どこか儚げでもあり何かを求めているかのよう。子犬が物を欲しそうに潤んだ目でおねだりするような、愛の熱を感じる目だ。

 

 

「ねぇ零君。またその……あまえてもいいかしら?」

「え、別にいいけど。また胸に飛び込んでくる気か?」

「いいえ、むしろ抱きしめさせて欲しいの」

「へ?」

「いいと言ったわよね? それではお言葉に甘えて――――」

「お、おいっ!!」

 

 

 なんとこちらの有無を聞かずに梢は俺を自分の胸に抱き寄せた。いや有無は言ったのだがやたらと強引に押し切られてしまった。

 コイツ自身が興奮で熱を帯びていたためか、抱きしめられるとまず広がったのはその温もり。どうして女子の暖かさって男のむさ苦しさとは違ってこんなに柔らかいんだろうな。梢自身に母性があるからってのもあるかもしれないが。コイツの胸に頭を乗せている状態になっているのに変な色欲が湧いてこないのも、俺が慣れてしまっているのとそんな淫猥なムードではないからかもしれない。

 同時にフローラルな香りが鼻腔をくすぐる。脳を停止させてこのままあまえたくなるくらいの心地よさだが、あまえているのは俺ではなくコイツの方。抱き枕に抱き着く感覚なんだろうけど、いくら年下とは言えども異性にここまで密着するのは極限までの信頼と愛情があってこそだ。

 

 

「ここまで安心できるものなのね。あまえることって」

「じゃあ疲れたと思ったら他の奴らにやってもらったらどうだ」

「いえ。あなただからこそよ。あなたがここにいる、それだけで安寧を与えてくれる」

「俺がいなくなった後はどうすんだよ」

「今ここでたっぷり補充しておくから心配ないわ」

 

 

 何を補充するんだよ……。

 あまえ具合が部室の時よりも上がっている。俺を抱きしめながらも自分も目を瞑って俺の頭に自分の頭を預けており、もはや俺の前では完全に吹っ切れたようだ。

 つまり今のコイツには隙がある。物理的にもそうだし心にもだ。今なら許しを得られるかもしれない。

 

 俺は抱き着かれながらも手を梢の横っ腹に添える。すると梢は一瞬身体をぴくりと反応させるも特に何か言ってくることはなかった。

 そしてその手を徐々に上げ、シャツの裾を捲るように押し上げていく。俺に集中していると言えども流石にこんなことをされたら気付くようで、小さい声で呟いた。

 

 

「零君……」

「わりぃ、暑そうだったから」

「いいわよ。あなたになら……」

 

 

 今の行為を承諾と受け取る。暑そうだったからいきなり女の子の服を脱がそうなんてとんでもない所業だが、判断力が鈍っているとは思えないので、相手が俺だからこそ行き過ぎた行為も許せるということだろう。思えば出会った頃は俺の汚い口調も気崩した服もコイツの目に余ることは逐一注意されてきたけど、今ではそれも一切なくなった。もう俺を隅々まで受け入れているのだろう。でなきゃ抱き着いてなんてこないし、抱き寄せたりもしない。脱がされることを承諾したりもしない。

 

 俺は少しずつ梢のシャツを捲り、遂に胸元にあるスクールアイドル病の元凶たる傷を外界に晒す。楓の薙刀の衝撃波によって制服が破れた時にたまたま見つけた傷。花形の蓄音機のような傷で相変わらず奇抜な形。色がかなり赤くなっているので、もしかしたらコイツが感じている身体の熱さはスクールアイドル病の影響も多少あるのかもしれない。

 

 なんにせよ俺のやることはいつも通り1つだ。

 傷の位置を改めて視認し、右手の人差し指でその傷に触れた。

 

 すると他の奴らの傷と同様に赤みがかった色はすぐに消え、傷口も短時間で閉じた。いつも思うけど傷口治療はあまりにもあっけないので達成感がなく、むしろこの結果に辿り着くまでの過程の方が大変だとしみじみ感じる。まあ治療に苦痛が伴われるより何もなく一瞬で終わった方がマシではあるけども。

 

 

「おい、身体の熱さは収まったか?」

「う~ん、あなたを抱きしめてるからまだかもしれないわね。今は外面的な熱さというよりも、心から温かくなっていると言った方がいいかもしれないけれど」

「汗は収まってるからそうみたいだな」

 

 

 となるとスクールアイドル病による熱は最初からなかったようだ。でも放置していたら間違いなく重症化しそうな赤色だったから、事前に対処できたのは僥倖だっただろう。

 

 傷口が閉じても梢は俺を抱き寄せたままだった。部室で俺に抱き着いてきた時よりも明らかに密着時間が長い。もう俺のことを慰安スポットとでも思っているのだろうか。それでメンタルが回復するのであればいくらでも抱き着いて来ていいけどな。当たり前だが男として女の子に密着されるのは悪い気分じゃない。

 

 

「私、零君に出会えて良かったわ」

「なんだよ急に」

「価値観が変わったの。前の自分よりもっと前向きになれた、そんな気がするわ」

「そりゃ良かったな」

「あなたがいてこそよ。だから、もう少しだけこうしていてもいいかしら……?」

「なるほど。ったく、そんな前振りは必要ねぇよ。お前が満足するまでいくらでもそうしてろ」

「ありがとう、零君」

 

 

 俺にこうしてあまえる理由として前段に設けていたので、まだ完璧に何の制約もなくあまえるってことはできないのだろう。でも自分の安らぎすらも拒んでいた頃と比べると大きな進歩だ。

 後ろを振り向くのはナンセンスだが立ち止まるのは問題ない。過去の因縁と未来への不安を忘れ去り、こうして何も考えずに今だけを見つめるのが心の安寧に繋がる。コイツはもう余計なプレッシャーに苛まれることはないだろう。少なくとも自分の道を迷ったりはしないはずだ。

 

 更にもっと自分に素直になってもらうためにも、もう少しコイツの好きにさせておいてやるか。ぶっちゃけこのまま寝てしまいそうなくらいの暖かさだが、それもまたお互いの休息になって些末な重圧を取り除くことができるだろう。

 

 俺もスクールアイドル病の治療に必死になっていたから、今日くらいはゆっくり休むとしよう。

 




 梢の個人回の後編でした。
 個人回はそのキャラがあまり見せない一面を描きたいと思って今まで描いてきたわけですが、梢が今までのキャラよりもそれが如実だったかもしれません。幼い頃からスクールアイドル好きという公式の設定もあるので、それではしゃぐ彼女の姿も公式で見て見たいなぁとか思っています。


 次回は花帆の個人回です。零も蓮ノ空での最後のミッションとなります。
 そして遂に最終回の一歩手前に迫りました。是非最後まで応援していただけると嬉しいです!




【キャラ設定集】
零から蓮ノ空キャラへの呼称
・日野下花帆 → 花帆
・村野さやか → さやか
・乙宗梢   → 梢
・夕霧綴理  → 綴理
・大沢瑠璃乃 → 瑠璃乃
・藤島慈   → 慈

蓮ノ空キャラから零への呼称(零への好感度 0~100で50が普通)
・日野下花帆 → 零クン  (96)
・村野さやか → 零さん  (94)
・乙宗梢   → 零君   (90→97)
・夕霧綴理  → れい   (95)
・大沢瑠璃乃 → 零くん  (96)
・藤島慈   → 零    (93)

スクールアイドル病の治療状況
・日野下花帆 → 傷の位置未特定
・村野さやか → 治療済
・乙宗梢   → 治療済
・夕霧綴理  → 治療済
・大沢瑠璃乃 → 治療済
・藤島慈   → 治療済
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