村野さやかです。
零さんが蓮ノ空を去った翌日。零さんがいない日常の初日。全校生徒に人気があったと言っても過言ではない彼がいなくなって学校の雰囲気もどんよりしているのかと思いきや、意外といつもの日常と変わらぬ雰囲気が広がっていました。彼の夢は女性の笑顔を見ることであり、その夢を色んな人に語っていたこともあってか、その夢に感化された人たちが『自分の悲しい姿を見せないようにしよう』と思っているのでしょう。本人はいなくなっているのにこの影響力、改めて彼の凄まじい存在感が伝わってきます。
ただ、彼の影響を最も大きく受けたわたしたちスクールアイドルクラブのメンバーは、そう簡単に割り切れないところもあるみたいで――――
「ねぇねぇ今度この新作ハンバーガー食べに行こうよ! ねぇ零クン――――あっ、もういないんだった……」
「花帆ちゃん、もう今日だけで何回幻想の零クンに話しかけてるの……? 周りから虚言癖だと思われるよ……」
「そういう瑠璃乃ちゃんだって、さっき体育ではしゃぎすぎて充電切れた時『モバイルバッテリー零くんプリーズ……』っていもしない人に縋ろうとしてたじゃん!」
「それはまぁ、充電切れになると思考が回らなくなるから……。でも花帆ちゃんはシラフっしょ?」
「遠回しにバカにしてない!?」
やはり零さんと一緒にいることが多かった花帆さんや瑠璃乃さんは、まだ彼がいなくなったことに対し自分の意識をアップデートできていないようです。綴理先輩も今朝起こしに行ったときに『今日は零とお昼寝の約束……はしてなかった』と記憶を捏造していたので、スクールアイドルクラブには彼の面影が今なお根付いているようです。
「全く、おふたり共しっかりしてください。
「さやかちゃんはさっぱりしてんねぇ。そういう思い切りの良さ羨ましいぜ~」
「あたしなんて今も零クンがいるような気がして、零クンがいた席を何度も見ちゃうもんね!」
「それは錯覚どころか病気を疑われるレベルなのでは!?」
零さんの席は空席のまま残されており、確かにそこに目を向ける人多いですが花帆さんレベルまで行くと流石に……。
寂しい気持ちは分かりますが、このまま奇行に走り続けられても止めるわたしが困りますし、しっかりして欲しいものです。
「それでは、わたしは綴理先輩にお弁当を渡してきます」
「ん? さやかちゃん、どうしてお弁当3つあるの?」
「えっ? 自分の分と綴理先輩の分と、あと――――あっ!?」
零さんと一緒にお出かけして以降、彼にお弁当を作るのが日課となっていました。とは言っても彼がここを去るまでの1週間程度だけでしたが、それでもわたしにとっては大切な日常となっていたのです。だから無意識のうちにお弁当を用意して……。
花帆さんと瑠璃乃さんが過去最大級のニヤけた顔つきでこっちに近寄ってきて――――
「『しっかりしてください』だっけぇ~??」
「本人がいないのに愛妻弁当を欠かさず用意するとは、もうお嫁さん気分なのかなぁ~??」
「うっ、うぅううううううううううううううううううううっ!!」
こんなに顔が熱くなったのは零さんと一緒にいた時にも感じたことがなく、あまりに羞恥心に今にも全身が破裂してしまいそうでした……。
~※~
「なるほど、それは中々に重症ね……」
放課後、スクールアイドルクラブの部室。ミーティングの前の雑談で2人にわたしの醜態を暴露されてしまいました。その仕返しと言わんばかりにわたしも2人の奇行を白日の下に晒したら、梢先輩に苦笑されてしまい哀れみの目を向けられる始末。もうこれをネタに一生揺すられると思うと本当にやってしまったなと思っちゃいました……。
ただそれは2人も同じで、さっきからそっぽを向いて襲い来る羞恥を我慢するので精一杯のようですが……。
「恥ずかしがることないよ~。梢だって、みんなが来る前にティーカップ7つ用意してたんだから。なんなら零の好きなコーヒーまで淹れちゃってね」
「め、慈!? それは内緒だって言ったでしょう!!」
「後輩にだけ恥辱に塗れさせるのは先輩としてどうかなぁ~と思って」
「だったらあなた自身が身を差し出しなさい!」
「へっへ~ん! 私は梢みたいに無様を晒してないもん」
「でもめぐ、れいの使ってた下駄箱とか、そこのソファとか、れいのいわくつきのところをよく目で追ってるよ。まだ面影残っちゃってるんだね」
「つ、綴理!? ぐぬぬ、その自慢の観察眼くり抜いてやろうか……!!」
「所詮慈も慈ね」
「所詮とはなんだ!?」
どうやら先輩方もわたしたちと同じ症状に陥っていたようです。それはそうだなと思いました。先輩方もわたしたちと同様に零さんに絶大なる影響を与えられましたから、いきなりいなくなったこの現状をそう簡単に割り切れる物ではないのでしょう。
でもこうしてメンバー全員で黒歴史を抱えることになったので、刺したら刺され返されると思えばお互いに掘り返したりはしない……はず? だといいんですが……。
「でも困ったわ。このままだと練習に身が入らない。かと言ってこの程度で休むのは自分たちを甘やかしすぎよね……」
「零クンに『頑張る!』って言ったばかりですもんね。でもあたしは未だに零クンのボイスが脳内に響いちゃって集中が……」
「それは重症すぎると思うのだけれど……」
零さんは常にわたしたちと共にいると言っていましたが、まさかこうなることを予期していたのでしょうか……? それは心と心が繋がっているという比喩表現であって、まさか錯覚を引き起こすという意味での『共に』では流石にないと思います。
このままだと練習なんてまともにできないので何かしら対策を考える必要があります。時間が解決してくれる問題ではあるのですが、梢先輩の言う通り体調不良でもないのにこの程度で練習を休むわけにはいきません。だったら一体どうすれば……。
その時、ノックもなしにいきなり部室のドアが開け放たれました。
この礼儀も知らない無作法な開け方は、まさか――――
「や、みんな元気?」
「「「「「「秋葉先生!?」」」」」」
零さんかと思いましたが、お姉さんの秋葉先生でした。
なにやら大きな荷物を抱えていますが部室に一体何を? というかどうしてここに!?
「あれ、秋葉先生ってここの先生辞めたんじゃなかったでしたっけ?」
「辞めてないよ。ちょっと確かめたいことがあるから私だけ残ったんだ。そんなことより、みんな零君のことが忘れられないような顔してるね~」
それってどんな顔なんでしょうか??
でも雰囲気であればわたしたちが寂しいオーラを放っていたことを他の人も感じられたらしく、椎菜さんたちにもそれを指摘されてしまったのでよほど露骨だったのでしょう。そして今の秋葉先生の指摘のように図星で自分の気持ちを当てられてしまうと、今度はそのことで恥ずかしくなってどんどん内気になっていく負のスパイラル。なんとか脱却したいですがどうすればいいのか……。
「キミたちの顔を見ただけで察しがついたよ。まあ今日はその悩みを解決するために来たんだけどね」
「えっ、先生そんなことできるんですか!?」
「若干荒療治だけど、キミたちも四の五のは言ってられないはずだよ。このままじゃ練習に支障が出るし、いつまでも負のオーラを巻き散らしてると周りにも迷惑がかかるしね。どう、この話に乗ってみる?」
実際に何をするのかは不明ですが、このまま零さんの面影に囚われて足踏みをしていては前には進めません。それに他の皆さんに迷惑がかかるのも秋葉先生の言う通り。立ち止まったり後ろを向いたままというのは零さんが一番嫌っている人生の歩み方。それに感化されたわたしたちは、何としても現状を打破したい意志がある。
答えは決まり、みんなで秋葉先生の提案に乗ることにしました。
「よし、じゃあこれを装着してもらおうかな」
「なにそれ? ヘルメット?」
「VRとASMRが同時体験できるゲームだね。ほぼほぼフルダイブと思ってもらっていいよ」
「えぇっと、つまりどういうことでしょうか……?
「自分がゲームの世界に直接降り立てるってこと」
「でもそれと零さんにどういう関係が?」
「これを使えばあの子に会える。つまりあの子に会いたいという欲求をこれで満たすことができるんだよ」
仮想空間で零さんと会えると言うことでしょうか。ただ本物ではないはず。あくまでゲームの世界でAIのようなものだと考えられますが、それでも零さんとお話しできるのであれば幻想を求めている怪しい自分たちも生まれ変われるはずです。
ちなみに零さんの声をそこまで求めているのは、彼の連絡先に連絡してもメッセージが届かなくなったことにあります。電話をしても繋がらず、メッセージもエラーで届かない。零さんは自分のことを周りに言いふらさないようにわたしたちにも念押ししていましたから、この学校から去った以上その関係者であるわたしたちとの連絡も絶たれた、ということでしょうか。
そのせいで寂しさがより加速しているのですが、恐らく彼は次の行き先でも誰かを助けているはず。その邪魔をしたくないと思い、そのことについては追及しないようにわたしたちの中で決めたのです。
ただ、決めたとは言えども声を聴きたいと思うのはワガママは本心としてあります。例え音声だけでもその声が聴けるのならと思ってしまうあたり、わたしも相当末期なのかもしれません。
「はいはいっ! 最初にあたしがやりまーすっ!」
「おっ、やる気だね。じゃあ早速装着してあげるから動かないでね」
まず花帆さんが先陣を切りました。思い入れの度合いで上下を付けたくはありませんが、零さんへの好意の強さで言えば花帆さんが一番でしたから、ここで真っ先に手を上げるのも頷けます。
そして秋葉さんはゲームのヘルメット、そしてVRゴーグルをてきぱきと花帆さんに装着しました。
重そうに見えましたが花帆さん曰くかなり軽いようで、装着感も良いことから違和感はほとんどないようです。
しかし、わたしたちの悩みをわざわざ解決しに戻ってきてくれるなんて、秋葉先生っていい人なのでは? 零さんが『アイツは人間ではない』、『ゲームや漫画で出てくる悪役の方が優しく見えるくらいの悪魔』、『性格が終わっている』など散々ひどいことを言っていたのですが全然そんなことはありません。幽霊騒動やジェノサイド事件のときも積極的に解決に貢献してくれましたし、保険医として生徒からの評価も高い。少なくともわたしは先生の性悪なところは見たことがないので、零さんの言葉には違和感しかありません。
「装着完了! じゃあスタートするよ。たっぷり楽しんでおいで」
「楽しみ~ワクワク!」
そして花帆さんがVR空間へとダイブしました。
するとすぐにその世界で零さんと出会えたらしく、まるで目の前に本物の彼がいるかのように楽しそうに会話を繰り広げています。
「苦労して零君の声素材を集めた甲斐があったよ。子供バージョンから大人バージョンまで収録してるから、気分によって切り替えるもよし、自分の状態に応じて自動で切り変わる機能を利用しても良し。最高のおもちゃだよ」
「大人バージョン? れいが大人になるの?」
「あっ、いやぁ~あの子供の零君が大人になった想定でって意味だよ」
なんだか歯切れが悪そうでしたが、どうやら零さんと会話できるあらゆるシチュエーションがあのゲームには詰め込まれているようです。今流行りのAIと会話できる機能を更に進化させたバージョンと言うことでしょうか。でも花帆さんが何の違和感も抱かずに会話をしているあたり、ゲームに登場する彼はそれだけ本物に近いのでしょう。
ただ、花帆さんの様子が少し変化してきました。
何やら素っ頓狂な声を上げた瞬間――――
「ひゃっ!? れ、零クンそれはダメ……!! あっ……!! 耳がくすぐった……そんなに囁かれたら……!!」
「えっ、花帆ちゃん凄いエッチな声出してるんだけど!?」
「言ったでしょ。ASMRも兼ねてるって。でも本当はそれだけじゃなくて、脳に特殊な信号を送って全身が快感で震えるようになってるの」
「それってVR技術超えてませんか!?」
「視覚や聴覚だけじゃない。五感をフル活用して彼を感じることができる。究極のVR型ASMRなんだよ」
「全身で零を感じられる、究極の……!!」
わたしたちは息を呑みました。これを使えばずっと零さんと一緒にいられるのと同義だと。
邪道なのは重々承知しています。こんな形で零さんと一緒にいてもそれはまやかし。でもこれに縋りたくなるくらいにわたしたちの中で零さんの存在は大きい。例えまやかしでも一度でいいからあのVRとASMRを経験すれば、今わたしたちが抱いている零さんの幻想を見ることもなくなる。
「零クンいつの間にか大人に……!! カッコいい――――って、そこは触ったら……!! やっ!!」
突然床にのたうち回る花帆さん。普段の天真爛漫な花帆さんからは想像できないような淫靡な声と蕩けた表情。身体は小刻みに震え、脚を絡ませたり伸ばしたり忙しない反応を見せています。息も絶え絶えで床を転がる。キャラが壊れてしまうくらい零さんとの交流が激しいと身をもって示しています。
本来なら止めた方がいいのでしょう。でも花帆さんがあまりにも気持ちよさそうにしていること、そして何故か思考回路が上手く回らないこともあり、零さんに愛されるのであれば他に何も必要ないと言わんばかりの興奮状態になっています。さっきから部室でアロマのようなものが焚かれていますが、それと何か関係があるのでしょうか……。
しばらくして、喘いでいた花帆さんが落ち着きを取り戻しました。とは言っても快感の余韻に浸っているだけでまだ現実世界と仮想世界の狭間を彷徨っているようです。
そして、秋葉さんによりゴーグルとヘルメットが取り外されました。花帆さんの顔色は赤く染まっており、まさに男性と致した直後にホテルから出てきたような妖艶な雰囲気を漂わせています。
「どうだった花帆ちゃん?」
「も、もうなんか言葉にならないくらい凄かった……。イケボな声で囁かれながら、五感を徹底的に攻められて、そのせいで脳をとろっとろに溶かされてもう……もうっ!!」
「でも満足できたでしょ?」
「はい……。それはもう十分に……」
「もう他に欲しいモノなんてなくなるくらいでしょ?」
「そうですね、零クンさえいればいいと思うくらいには……。あっ、でもパンツ欲しいです。ちょっと濡れたので……」
「用意してあるよ。はい」
「ありがとうございます……」
用意してあるんですか!? ということは秋葉先生は最初からこうなることを予想してこんな荒療治を……。
それにしても、花帆さんの感想を聞く限りでは本当に満足できる時間だったようです。これで零さんの幻想を見る事象から脱却できるのであれば同じ体験をしてみてもいいかもしれませんし、何より……零さんと触れ合い体験ができるというだけでちょっと興味が湧いてしまいます。
「じゃあ次は誰にする? って思ったけど、面倒だから一気にやっちゃおっか。ここで渋られても時間の無駄だし、次は2年生のキミたちね」
「ちょ、ちょっと待ってください。
「ボクは、ちょっとやってみたい」
「綴理!?」
「さっきからいい匂いがして頭がぼぉ~っとする。やりたい欲求が抑えられない……」
「慈は?」
「ま、まぁやってもいいかなって。仕方なくね仕方なく。梢も期待してるんでしょ? 顔真っ赤だよ」
「そ、それは……」
先程からアロマによって高揚感を煽られているような気がするわたしたち。綴理先輩の積極さには驚きですが、梢先輩まで楽しみにしているとは思いませんでした。これも零さんの影響力が故、または香りによって思考が誘導されている……?? 原因を考えようとしますが、謎の力により抑えられてしまいます。
梢先輩の決心がつかないまま、秋葉先生は先輩方3人にVRゴーグルとヘルメットを装着させました。
そして電源ボタンを押し、早速先輩たちが仮想世界へダイブします。
わたしと瑠璃乃さんが固唾を飲んで見守る中、早速各々が零さんと出会ったようで会話を開始しました。こうして見ると現実では全員同じ空間にいるのに、それぞれがただ独り言を喋っているように見えて少し不気味……。
そんな中、真っ先に様子が変わったのは綴理先輩でした。
「んっ!? ん~~~~ッ!!」
なんと綴理先輩は両手で口を押さえ、その場で屈みこみ花帆さんと同じく身体を震わせました。でも顔だけは上げており、その表情は惚けているの一言。目を全開に見開き、声が出ないように頑張っていますが漏れ出す声は淫猥そのもの。頬も赤くして身体をビクビクさせています。花帆さんと同じ体験をしているのでしょう。
「つづパイセンやべーよ! あんなガンギマリしてるところ見たことないって!」
「いつも表情変化が少ないからギャップが……」
普段では見られない綴理先輩の痴態に思わず口を押えて見守ってしまう瑠璃乃さんとわたし。
ただその痴態を晒しているのは他の先輩たちも同じで――――
「零君いけないわ、そういうことをしたら……んっ、ぐぅ……!!」
「そうのはスキャンダルになるからいけないの!! そ、そこはっ!! もうあんた上手すぎ……!!」
もう全身を嬲られているかのような反応。耳元で愛を囁かれるだけでなく、ヘルメットから脳に流し込まれる快感のせいで全身を弄られていると誤認させられるその快楽……どれほどのものなのでしょうか。もはや本当の零さんがいる前提でみんな喋っているあたり、今自分がいるところが仮想空間だと考え直す暇もないのでしょう。
梢先輩は普段のお淑やかさはどこへやら、もう湧き上がる快感を外に放出することだけに集中して乱れに乱れています。慈先輩も口では抵抗しつつも身体をくねらせてどこか期待しているようであり、危うく自分の胸や秘所を弄ろうとしているのは自分の欲求不満を抑えられなくなっているような……。
「さやかちゃんヤベーよアレ。本当に気持ちいいのかな? 本当に零くんにやってもらえるのかな……?」
「そ、そうみたいですけど、まだ決心が……」
「じゃあ次は瑠璃乃ちゃんね」
「ふにゅっ!!」
なんと瑠璃乃さんは背後からゴーグルとヘルメットを無理矢理装着させられました。
抵抗する間もなく、秋葉さんによって電源が入れられます。するとすぐに瑠璃乃さんはバーチャル零さんと対面したようで、まるで過去の日常が戻って来たかのように会話を始めます。その声色は無邪気な彼女そのものであり、さっきまで花帆さんたちの痴態を見て驚いていたのは何だったのか、流暢な日常会話が繰り広げられています。あまりの変わりようにそこまで現実と違わぬ世界と零さんが存在しているのでしょうか。
ただ、その平穏が崩れ去るのはこれまで見てきた通り。瑠璃乃さんもあっという間に零さんのASMRと五感共鳴の餌食となってしまいます。
「ひゃいっ! 零くん、ルリそれは恥ずかしいよ……。えっ、零くんに任せておけばいいの? だったら優しくして欲しい……」
バーチャルの相手に身も心も許してしまっている瑠璃乃さん。顔も体も火照ってきているようで汗が物凄いです。もはや男性に羽交い締めにされ、何もかも諦めた女性のようにおとなしくなっています。
花帆さんは未だにトリップしたまま、先輩方もまだバーチャル零さんに嬲られ中、瑠璃乃さんも今からまさに快感を叩き込まれようとしています。
確かにこれはストレス解消になるかもしれません。でも客観的に見るとVRとASMRで己の欲求を満たす痛い人たちにしか見えず、本当にこの方法で気を紛らわせていいのかと疑問に思ってしまいます。アロマで思考回路を停止させられていましたが、5人の痴態が衝撃的過ぎてその香りの効力を上回るほどの電流が脳に走ります。
思考が復活してようやく冷静になりました。このままだと全員が腑抜けてしまい使い物にならなくなってしまうので、ここは無理にでもあのゴーグルとヘルメットを外した方がいいのではないでしょうか。
秋葉さんに頼もうとしましたが、いつの間にか姿を消していました。一体どこに……?
「てなわけで、最後はさやかちゃんだね」
「い、いつの間に後ろに――――んぐっ!!」
「はい装着かんりょー! ほいスイッチオン!」
「えっ!? そんないきなり!?」
背後から秋葉さんに無理矢理ゴーグルとヘルメットをつけられてしまい、外す間もなく電源スイッチが押されてしまいました。
すると目の前がわたしの寮の部屋に変わり、そこには大人になったと思われる零さんがいて――――
その後は自分が淫靡な存在だと認めてもいいくらいに乱れてしまいました。
零さんに耳を甘噛みされるのではないかと思うくらい近くで愛を囁かれ、ベッドに押し倒された挙句、カーディガンも制服も何もかもが脱がされ、更にその先まで――――
全身に走る電流のような快楽と骨抜きになるくらいの優しい攻め。普段の男らしさも見惚れるほどですが、今の彼はまさにオス。オラオラ系の系譜を感じられ、それがわたしの淫らな欲求を刺激して脳も心もトロトロにされてしまい、もう零さんが成すこと全てに肯定をし続けて身を委ねてしまいました。声も情けなく艶やかに叫んでいたと思います。
そして、いつの間にか気を失ってしまいました。
その頃、部室では――――
「やっぱり零君の出力強かったか。もうちょいパワー抑えないと、ストレス解消どころかこれにハマちゃって廃人になっちゃいそう。完全に麻薬だこりゃ。商品化するにはまだまだ改良を加えないとダメだね。女の子の人生簡単に破壊できちゃうし。ま、この子たちがマゾだっただけかもしれないケド」
そして、秋葉さんはわたしたちの頭に替えのパンツを1つずつ乗せると、そのまま部室から出ていきました。
「実験モルモットにしては良く頑張ったよみんな。じゃ、やることもやったしこの学校の教師は辞めるから。またどこかでね♪」
~※~
足腰が立たなくなったわたしたちですが、なんとか全員の意識が回復。床を拭いたりなど部室の掃除をしている中、ある人にこの光景が見つかってしまい―――
「椎菜ちゃん違うのこれは!! あたしたちは被害者なの!!」
「問答無用。この匂い、女性同士でヤっていたに違いありません。神聖なる学院内でレズプレイなど言語道断。生徒会権限により、スクールアイドルクラブは本日から3日間活動停止です」
「そんな~っ!! もう踏んだり蹴ったりだよ~!!」
まあ制服が乱れていたり、色々濡れていたり、下着が転がっていたりとあんな現場を見れば勘違いされるのも無理はないと言いますか……。
ちなみに、零さん分をたっぷり補給できたわたしたちは無事に幻覚を見る症状はなくなったのでした。
一応結果オーライ、なんですかね……?
蓮ノ空編では日常回は少なかったこと、そしてこういった系のネタがなかったので特別編として描いてみました。別に特別感は一切ないですが(笑)
こんな穢れたネタでしたが蓮ノ空編はこれで終わりです。
次回も何もなければいつも通りの時間に投稿予定なので、また是非読みに来てください!
【付録:蓮ノ空編時系列】
1日目(月):転入初日(1~3話)
2日目(火):スリブ回(4話)
3日目(水):ドルケ回(5話)
4日目(木):みらぱ回(6話)
5日目(金):夜食回(7~8話)
6日目(土):わからせ回(9話)
7日目(日):-
8日目(月):沙知初登場回(10話)
:モバイルバッテリー回(11話)
9日目(火):幽霊騒動(12~16話)
10日目(水):絆と恋の自覚回(17話)
11日目(木):高咲侑登場回前編(18~19話前半)
12日目(金):高咲侑登場回後編(19話後半)
13日目(土):梢と機械さん回(20話)
:綴理とABC回(21話)
:絆の強化回(22話)
:エルフ捜索回(23話)
14日目(日):さやか回(24~25話)
15日目(月):ナイトプール回(26~28話)
16日目(火):綴理回(29~30話)
:瑠璃乃回(31~32話)
17日目(水):楓襲来回(33~34話)
18日目(木):慈回(35~36話)
19日目(金):生徒会回(37~38話)
20日目(土):梢回(39~40話)
21日目(日):-
22日目(月):花帆回(41~42話)
23日目(火):最終回(43~44話)
24日目(水):特別編(45話)