ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常2~   作:薮椿

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 今回からLiella編の第三章がスタートします!
 また引き続きよろしくお願いします!

※時系列はLiella編の第二章の後(アニメ3期時点)、蓮ノ空編よりも前となっています。

※一部キャラ設定がアニメとは異なっています。今後描写する可能性もあるため後書きにて相違点を補足します。



Liella編3
THE・有頂天結ヶ丘


 結ヶ丘女子高等学校。

 表参道と原宿と青山という3つの街の狭間に存在する、かつて存在した『神宮音楽学校』の伝統を受け継ぐ高校。設立者である葉月恋の母はこの学校の出身であり、廃校となった旧音楽学校の復興を目的として結ヶ丘は新設された。現理事長は旧音楽学校の伝統を受け継いで欲しいと言われているようであり、この学校が音楽関係の授業や部活、催し物に特に力を入れているのはそのためだろう。

 結ヶ丘は新設されたと言ったが、恋は結ヶ丘を『母の作った学校』『母の遺した学校』と言っている。なので厳密には再建と言うべきなのだが、恋の母は既に故人であるが故に学校を開校することはできず、生前に学校法人を設立し開校準備をしてきた。学校名も変わって所属する法人も変化、校舎も使いまわしだがほぼ建て直されて綺麗になったため新設と表現しているのだろう。

 

 こう歴史を辿ってみると新設のくせして意外とバックグランドが厚い。今年度で開校して3年目。ようやく3学年の生徒が全て揃ったのだが、新米学校としての青臭さを感じさせないくらい古臭さも残っている。古い校舎を建て直したとは言っても所々に当時の意匠が残されており、旧学校に通っていた人が今の学校を訪れて懐かしむ光景を見るのも珍しくない。昔の音楽性を伝統として引き継いでいる部活もあるようで、いい意味で今と昔が融合した味のある雰囲気が他の学校にはない魅力だろう。

 

 しかし、現在の結ヶ丘はそんな魅力を一瞬で塵にするほどの未曾有の大事件が起きていた。

 

 

「ヒッヒッヒ……! マニーマニーマニー……! 1年前、マニーに脳を支配されていた頃の私に戻った気分みたいですの! でもその時と違うのは、ガチのマジでマニーを手に入れる目前まで来ていること!! やはり夢は持つもの! ここまで昇り詰めたのも夢を諦めずスクールアイドルを頑張り続けてきた結果! もう少しで報われるときがきますの!!」

「なんいいコト言ってるみてぇけど、背景考えたらただのクズだからな」

「なにを言っていますの!? 先生がいるからこういう事態が引き起っているのではありませんの!?」

「俺は巻き込まれただけだ。なんだよこの――――スクールカーストポイントって」

 

 

 まず魔法の言葉で今の状況をより鮮明に伝えて納得させてみせよう。そう、秋葉のせい。

 突如として自分のスクールカーストの順位によってポイントが振り込まれるようになり、そのポイントで様々な買い物ができるという謎のシステムが導入された。何の前触れもなくいきなりだったけど、アイツが為すことはいつも唐突なのでそれだけでは驚かない。でも俺以外の奴らに対して常識改変が行われているのか、このシステムを学校中の人間が何の違和感もなく受け入れている。元の性格が変わったりはしていないので、単にこのシステムに対する説明を省くために強制的に学校関係者に知識を植え付けたのだろう。どんな手を使ったのかは知らないが、アイツの発明も進化してるな……。

 

 ちなみにカースト制度と言ってもヒエラルキーの差で上位者が下位者をイジメたり等、そんな陰湿なことは起きていない。あくまで学校の秩序は守ったうえでの常識改変だ。いやもう集団洗脳の類だから犯罪っちゃ犯罪だろうけどさ。秩序なんてあったものじゃねぇな……。

 

 そのカースト上位者だが、俺と関わりのある奴らが特にヒエラルキートップに位置している。つまり俺が顧問をしているスクールアイドル部はヒエラルキーのトップ中のトップ。学校からはほぼスターみたいな扱いを受けている。それ故に振り込まれるポイントは多く、それで豪遊なんて余裕も余裕。学生の金銭感覚を破壊するのには十分なインパクトであり、今部室で騒ぎ立てている夏美がその典型的な例だ。

 

 

「姉者、はしたないですよ。何でも手に入れられるポジションに立ったからこそ、投資と浪費を計画的に行わなければすぐに破産してしまいます」

「冬毬は相変わらず頭カッチンですの。そう言いながら、自分だってさっき性能がアホみたいに高いタブレットやパソコンを躊躇なく選んでたくせに……」

「必要経費です。スクールアイドル活動には動画撮影や編集、視聴も重要なファクターで――――」

「あーあーこんな有頂天でいい気持ちなのにお小言は聞きたくなーい!」

 

 

 夏美は両耳を塞いでノイズをシャットアウトする。

 夏美と話しているのは鬼塚冬毬(とまり)。苗字の通り夏美の妹である。

 

 冬毬は新入生として今年度この学校に入学した。ツリ目でミントグリーンと白の髪、姉より高い身長。夏美とは髪のグラデーションのかかり方と目の色以外の見た目は似ておらず、俺も苗字を見るまではコイツらが姉妹だと気づかなかった。

 

 性格はリアリストの完璧主義者。極限まで無駄を省き、発言には確固たる証拠が必要、行動にはスケジュールや資料に沿った行動を厳守しようとする辺り現実主義者の中でも上位のリアリストだ。夢見がちな姉の夏美とは真反対な性格なのだが、この性格になったのも過去に夏美と色々あったからな模様。ただスクールアイドル関連のごたごたで仲は改善したので、今は良好な姉妹関係を築いている。まあ姉のエルチューブ活動は夢がなさ過ぎるとか辛辣な言葉を投げかけているので、それだけは快く思ってないようだが……。

 

 口調は常に敬語で、ビジネス用語を多用して話す。また四季同様に表情変化が乏しい傾向があるが、ステージでは笑顔を作れているので日常生活では単に必要ないから表情を変えてないだけらしい。最初にコイツを見た頃はAIロボットかと思うくらい堅苦しかった記憶がある。たまに今でもそう思う時があるけど……。

 

 

「姉妹で性格が違うっつっても、お前も交換リスト見ながら目が血走ってたし、同じ類の血が流れてることには変わりねぇんだな」

「ち、血走ってなどいません! 姉者のような穢れた貪欲さなど持ち合わせていないので!」

「誰が汚いって誰が!?」

「だったらアイツを見てみろよ。ま~ったく興味なさそうに本読んでるぞ」

 

 

 親指で部室の隅を指さす。そこにいるのは冬毬と同じく今年度この学校に入学したウィーン・マルガレーテだ。

 オーストリア人の音楽一家の娘。歌とパフォーマンスの天才であり、ステージ上で観る者を圧倒して魅了し倒すスタイル。容姿は紫色がかったロングのウェーブヘアに薄緑色の瞳、去年まで中学生だったと思えないくらい顔が整っている美人顔。背も高くてスタイルも良く、神から二物どころか大量に寵愛を与えられた奇跡の子と言わざるを得ない。

 

 性格はクールの一言。自信家であるもののそれを鼻にかけず相手を見下したりせず、自分の実力と魅力で周りを引っ張る。故に周りと衝突までとは言わないが、気軽に同調することもない孤高のお嬢様タイプ。しかし冷たいわけではなく、周りへアドバイスする時は静かに諭すなどグループとしての仲間意識は持っているようだ。ちなみに美味いモノを食ってる時や滞在先であるかのんの家の喫茶店で接客をしている時は温和な表情を見せるので、氷の女王ってほど堅物ではないみたいだ。

 

 実は俺と因縁が深い『虹ヶ先チルドレン』と呼ばれる子たちの1人。過去に色々あって生まれた時から秋葉の教育を受けてきた影響か、自分の人生を歩む理由が『神崎零のため』になってしまった子たち。同時に俺への愛も刷り込まれてしまったため、俺と添い遂げることが人生の最大目標となっている。コイツも漏れなくそうであり、スクールアイドルを始めたのもその目的のためだそうだ。詳しいことはまたいつか話そうと思う。

 

 

「お前は興味ないのか? 当然お前もカーストトップにいるんだから、ポイントは最大まで振り込まれてるはずだろ?」

「どうでもいい。そんなポイントで本当に欲しいモノが買えるわけないから」

「本当に欲しいモノってなんですの?」

 

 

 その瞬間、マルガレーテの視線は俺の顔へ向けられる。夏美と冬毬もその視線を追って俺の顔へと視線を移す。

 まあそうだろうなと誰しもが思った瞬間だった。

 

 

「私がこの学校に来た理由、スクールアイドルをやる理由、自分を磨き続ける理由。それくらい分かるでしょ?」

「相変わらずの先生LOVEですね。そんな澄ました顔で愛を伝えても重いと思われるだけですよ」

「あなたも同じじゃない。この部活にいるってことは少なからず先生に好意があって入っているってことだから」

「えっ、なにそれそんな部活だったのかここ?? もっと純粋な気持ちでスクールアイドルやれよ……。なぁ冬毬?」

「まぁ、マルガレーテの言い分も一理あります」

「あるのかよ……」

 

 

 もしそうなら俺がお気に入り生徒を囲っておく部活みたいになって、逆に俺こそ諸悪の根源みたいに思われるじゃねぇか。スクールアイドル活動は表の姿で裏ではヤることヤってんじゃないのとか言われそう。まあ大体俺が関わったスクールアイドルグループはそう思われがちだけど……。

 

 にしても、冬毬がマルガレーテの問いかけに肯定するとは思っていなかった。多少なりとも俺に気があることは分かっていたけど、どちらかと言えば恋愛に関しては素直になれない部類の子なので意外だ。とは言え普段は相手からどのような評価を受けるのか気にせず自分の意見を通すタイプなので、恋愛を学んで知識さえあればいつもの調子にはなるだろう。典型的な頭脳派タイプだしな。自分の知らないことには対応しづらい性格なのは必然か。

 

 それよりマルガレーテはこの部活にいる奴らを『俺のことが好きだから部に入った』と思っているのか。これはコイツの人生観が先ほど言った通りぶっ壊れているだけで、みんなスクールアイドルをやりたいという気持ちが先にあったってことだけは勘違いされぬよう。コイツが特別なだけで冬毬は違うからな。多分。

 

 そんな会話が繰り広げられている中、部室のドアが開け放たれた。目が痛くなるほどやたらとアクセサリーを身に着けた奴らが現れる。

 

 

「可可先輩最高だなカーストトップ! まさか絶版のスクールアイドルグッズまでポイント交換できるなんて!」

「最高過ぎて全身が弾け飛びそうデスよ! グッズ交換しまくったせいでまた部屋が狭くなりますが、増築すらもポイントで賄えるのでモーマンタイ!」

「じゃあこの世に存在する全スクールアイドルのライブ映像を収めた映像保管庫も作れるってことか!? 最高だ!」

「推したちに囲まれるだけでなく、推しの全てを筒抜けにするくらいの秘蔵映像もポイントで交換し放題デス! 夢ってこんな急に叶うものなのデスね!」

 

 

 可可とメイが見たこともないくらい爆上げテンションで部室に乱入してくる。もはや有頂天を通り越して自分たちの趣味の世界に入り過ぎているのか、その騒がしさで周りを圧倒していることにすら気付いていない。堪能し過ぎだろカースト制度。もう幸せで笑顔がゆるゆるになっており、顔面が溶けそうなくらいだ。

 

 

「お前ら浮かれ過ぎだろ。最初はこんな楽な道に逃げない、夢は追いかけるものとか言ってなかったか?」

「利用できるものは利用して活用する。冬毬の理念に則った結果なんだよ。なぁ先輩?」

「はいっ! もちろん夢を追いかけるのは辞めマセン。でも目の前のチャンスをみすみす見逃す人はホモサピエンスなのか? それは否デス!! 可可たちは人間! 大なり小なりの欲望があるのデス!」

 

 

 もう完全に酔ってるな……。まあ自分の欲しいモノを際限なく手に入れられる状況になったらそりゃこうもなるか。所詮まだ子供だしな。

 

 そして、コイツらに引き続き部室にぞろぞろと部の面々が集まって来る。

 まずすみれとかのんが顔を出した。

 

 

「全く騒がしいったらありゃしないわ。これだから贅沢を知らない庶民はイヤなのよね~」

「とか言いながらすみれちゃん、ブランド物のバッグや服を交換して着込んじゃってるけどね。十分堪能しちゃってるじゃん」

「私はショウビジネスの世界に咲くギャラクシー女優になる女よ! むしろこれくらい当り前! アンタこそ、そんな機能いる??みたいな無駄に高性能なヘッドホンとか、謎に高級素材でできた性能度外視したクソ高いギター交換してたじゃない!」

「こ、これは作曲で必要だから……。ほら、冬毬ちゃん曰く必要経費ってやつ……?」

「だったら私も自分を全世界にアピールするためにコーディネイトしてるだけだから! 必要経費よ!」

 

 

 冬毬理論を振りかざせば何でもアリだと思ってねぇかコイツら……。

 まあコイツらは浮かれるだろうなって思ったよ。すみれは性格的に言わずもがなだし、かのんも浮かれ気分に流されやすい性格なのでこのシステムの格好の餌食だ。社会実験の都合のいいモルモット過ぎるなコイツら。

 

 そんな騒がしさの中、次は2年生になった四季ときな子が現れる。

 

 

「いいモノが手に入った。世界のあらゆるシステムをハッキング可能なスマホ、ドローンで木の幹に穴を開けられるくらいスピードを出せるモーター、ツチノコのホルマリン漬け。どれも最高」

「最後のなんっすか伝説の生き物!? 怖いっす!?」

「きな子ちゃんが交換したのはじゃがいも、カボチャ、トウモロコシ? ふるさと納税でも貰えそうな物だけどそれでいいの? 年がら年中無限に収穫できる闇の品種改良された野菜の種とか、動物の喋る言葉をAI音声として出力するデバイスとか色々画期的な物もあったけど」

「それが怖いんすよ!! 得体の知れないものばかり交換リストにあって現実感ゼロで……!!」

 

 

 そもそもこのカーストによるポイント制度自体を非現実だと思わないあたり、秋葉の仕掛けた常識改変の効果が非常に強いことが分かる。ただその中でもこの制度を上手く利用するか、それとも控えめにするかは性格によって分かれるようだ。きな子の欲望度合いが低いのも元々が内気な性格が故だろう。

 

 てかそれ以上に交換リストの一部商品が現代を生きる人には到底扱えないオーバーテクノロジー過ぎて、それもそれでインパクトが強い。そんな江戸時代に核兵器を解き放つような真似をこの世で起こしたら間違いなく世界は崩壊する。世界の命運いつもアイツに握られてんな……。

 

 そして、最後に千砂都と恋が入って来た。

 

 

「千砂都さん、目が血走っていますけど大丈夫ですか……?」

「ふふふ、この『なんでも丸くできる光線銃』を使えば、あの憎き『おにぎりは三角』派閥の異教徒たちを黙らせることができるんだ……。同時にあの丸みを帯びていない不揃いに角ばっている『たけのこ』を支持する派閥も一掃できるんだ……」

「『きのこ』もたいして丸くないと思いますが……」

「ん?」

「いえなんでも……」

「そういう恋ちゃんもゲームソフト大量に交換して、みんなの模範となる生徒会長とは思えないほど私利私欲を連発してたから、私のことを非難させないよ」

「こ、これは……必要経費です」

「いやそれはちげーだろ……」

 

 

 無理矢理な冬毬理論に思わず声を入れてツッコミを入れてしまった。あまりにも言い訳が下手過ぎて、有頂天だった千砂都も一瞬真顔になってたじゃねぇか。

 そしてその千砂都は相変わらず丸に執着してもはや宗教レベルで信仰しているが、今回のカーストポイント導入でその欲望がより増長させられたのだろう。主に負の面で。

 

 こうして部室にLiella総勢11名、全てのメンバーが揃った。揃ったのだが一部を除き有頂天になり過ぎてバブル時代のディスコみたいになっている。各々自分の欲しいモノをピンポイントで手に入れることができてホクホクのようだ。

 あまりに都合のいい展開。恐らく秋葉がコイツらを舞い上がらせるために趣味に合うモノを用意したのだろう。人に際限なく欲望を満たさせたらどうなるのか、あまりにも闇の深い社会実験だ。実際にはコイツら以外の生徒も同じポイント制度の恩恵を受けており、カースト下位でもポイントを溜めさえすればコイツらが交換したものと同じのを入手できるため損する奴は誰もいない。そのおかげでカーストのヒエラルキーによる争いをシャットアウトしているんだろうけど、常識改変によってそもそも厄介事は起こらないようにされてるんだろうな。このイベント自体が厄介だとは誰も思わずに……。

 

 ちなみに、コイツらスクールアイドル部以外の生徒でただ1人だけ同じくカーストトップの奴がいる。今ここには存在しないが、アイツならこの状況を存分に悪用して自分の地位を更に高めるとかやってそうだ。これ以上余計なことに巻き込まれたくないからわざわざ止めるようなことはしないけど。

 

 

「醜いこと。これが去年『ラブライブ!』を優勝したグループなの? やっぱり私1人でスクールアイドルをした方が良かった気がするわ」

「器の小さい奴らを欲望漬けにしたらこうなるっていい例だな。凡人が宝くじで大金を手に入れても1年くらいでほぼ使い切っちまうらしいし、それと同じことだろ」

「どうするの? いつもみたいに颯爽と事件を解決するところを見せてくれる?」

「そうしたいのは山々だけど、秋葉の遊び心なら効果はすぐ切れるよ。俺が動くまでもない」

 

 

 マルガレーテは小さくため息をつく。俺が活躍してるシーンがそんなに好きなのかよ……。

 

 アイツの実権は悪質なものばかりだが、良心的なのはその効果が長続きすることはほとんどないこと。大体は短い時間、長くても1日あれば地球が滅びようが何もなかったかのように元に戻るので何の問題もない。

 てかこの考えって、DVされている女性が『今日は彼氏に殴られなかったから幸せな日』とか言って脳がマヒしてる現象みてぇだな。本来は殴られない方が普通なのに。本来ならこんな実験で世界の法則が捻じ曲げられること自体がおかしいんだよな……。

 

 

「マニーに交換できればそれが一番良かったのですが、ここは仕方ないので高そうなものを片っ端から交換して貯蓄し、後で売り捌きますの」

「それでしたら姉者、この部室を出て階段を降り、廊下の左手奥に進むと景品交換所があります」

「三店方式かよ。闇深すぎだろ……」

 

 

 パチンコ店で主に使われている方式で、客と金銭をやり取りするのは法律違反だから、景品交換所と卸売業者を設置して直接の金額取引を回避する仕組みだ。それがまさか校内で行われているとか思った以上に好き勝手やってんなアイツ。音楽学校の歴史を現代に復活させようとして頑張って再建させようとした恋の母さんが泣いてるぞ。

 

 ま、有頂天になって学校の理念すら忘れてるようなこんな奴らにどのみち再建は無理だろうが……。

 

 

「えっ、かのんちゃんそんなにフクロウグッズいる!? スケール8倍人形なんて置く場所ないでしょ?」

「だってポイント超余ってるし……。ちぃちゃんだってダンスシューズそんなに集めて、コレクターだっけ??」

「だってポイント超余ってるし……。考えてることは同じか……」

「無駄遣いし過ぎよアンタたち。デキる女は持ち物もスマートなのよ」

「そんな高級品ジャラジャラ見つけて、すみれの身の丈にあってないデス!」

「アンタだって缶バッチたくさんカバンに付けて、ギラギラし過ぎて目に悪いのよ!」

「み、皆さん落ち着いて……。欲望塗れのスクールアイドルなんて汚らわしいですよ」

「「「「超高いピアノ交換してた人が言わないで!!」」」」

「ひっ!?」

 

 

 お互いに牽制し合うも欲望には抗えず、逆に相手の欲望を上回ろうと必死だな。凡人が突然富を得てしまうと満たされるためのベースラインが上がってしまい、以降は生活水準を落とすことは難しいって聞くからな。恋が欲望に駆られながらもまだ落ち着きの色を見せてるのは元がお嬢様だからだろう。

 

 

「今ここで欲に浸るのではなく、将来へ投資することこそ賢い戦法ですの。一過性の満足など翌日には飽きて空っぽになっていること間違いなし、皆さんのはしたなさっぷりには呆れますの」

「お前は色んな意味でいつも通りだよな。私なんて心が燃え上るくらいに気分が熱くなってるよ。まさかこれがお前がいつも夢見てたマニーの欲望だったのか……」

「夏美ちゃんががめつくなる気持ちが分かった気はするけど、きな子は贅沢ってどうしたいいのか今でも分からないっす」

「せっかくのビッグウェーブ。自然のまま身を任せて乗ればいいよ」

 

 

 2年生も2年生で舞い上がっている。そもそも欲望への忠誠心がないきな子は普段とあまり変わらないが、それでもポイント交換を積極的にしているあたり有頂天になっているのは間違いない。ただ他の3人は今のシステムを大いに利用して贅沢を貪っているので、もはや俺から止めたとしても無駄だろう。贅沢ってのは一種の麻薬だな。

 

 そんな盛り上がりを見せている中、突如として耳障りなモスキート音が響く。俺よりも若いコイツらはより響いたようで各々頭を抑えるが、その瞬間に全員のスマホに帯電し出す。漏電かと思い全員が携帯をテーブルに置いて手放すが、その時、ホーム画面からポイント管理のアプリが強制的に削除された。

 

 

「えっ、アプリ消えちゃいマシタ!? どういうことデスか!?」

「どうやらハッキングされて消されたようです。秋葉先生の仕業でしょうか――――って、姉者、どうかしましたか?」

「マ、マニーが……!! ポイントがロストしてますの!!」

「あれ、私たち何をやってたんだっけ……」

「とんでもない醜態を晒した気がします……」

 

 

 夏美の携帯の画面を見てみると、そこには『サービス終了しました』のメッセージが。どうやらアプリの削除と共にこのカースト制度もポイント制度も全てがサ終したらしい。かのんたちの反応を見るに常識改変も解けた模様。もう社会実験のデータは取れたから用済みってわけか……。

 

 しかも、コイツらの受難はそれだけではなく――――

 

 

「あっ、三角派閥の思考を矯正する光線銃が……消えた!?」

「ツチノコのホルマリン漬けも、ただのホルマリンだけになっちゃった」

「せっかくかき集めた限定のスクールアイドルグッズがぁああああああああああああああああああ!!??」

 

 

 ポイント交換したモノは漏れなくその場から消え去った。強制的に夢を見させられていたわけだが、まさか手に入れたものすらも幻想だったとは。上げて落とすこの一連の流れひでぇな。これ後悔が残り過ぎて夢見ることを諦める奴出てくるだろ……。

 

 冷静なのはさっぱりと割り切れる性格の冬毬と、最初から贅沢に塗れなかったマルガレーテくらいか。

 

 

「いい話には裏がある。初めて経験しました。インプットしておきます」

「全く。そんな簡単に夢を見られるわけないじゃない」

「ま、地道にスクールアイドルを続けるのが夢への近道ってことだな」

 

 

 急に現実に引き戻され、有頂天から一気にいつもの日常に落とされたスクールアイドル部。所詮簡単に手に入る贅沢なんてすぐ浪費して失ってしまう。地に足がついてないから幻想なんだよ。

 それを身をもって感じて嘆きながらも、スクールアイドル部は二度目の『ラブライブ!』優勝のため、新メンバーを含めまた一歩一歩と地を踏みしめながら歩んでいく。こうしてLiellaの挑戦は再スタートしたのだった。

 

 そして、部室の隅で――――

 

 

「野菜だけは消えずに残ってたっす♪」

 

 

 唯一地に足がついた欲望を持っていた奴は、身の丈に合った対価を得たようだった。

 

 




 そんなわけでLiellaの第三章がスタートしました!
 久しぶりのLiellaですが三度目なので流石に雰囲気が懐かしいとはあまり思わないですね。むしろメインキャラが更に増えたことで新鮮な感じがします。でも11人を同時に描くのは誰が話しているのか区別をつけるのが大変すぎる……(笑)

 前回の蓮ノ空編から引き続き来てくださった方、久しぶりに来てくださった方、今回初めて来てくださった方(そんな珍しい人がいるか不明ですが)、今後もいつも通りの時間と話のノリで投稿していくので何卒よろしくお願いします!

 以下、前書きで言っていた設定の補足です。
 既に知ってるよって方はスルーするか、もう知ってるって古参アピールしてください(笑)


【アニメとの相違点】
・神崎零
 教師生活3年目。スクールアイドル部の顧問。

・澁谷かのん
 アニメでは留学の依頼を受けて結局中止になったが、この小説では最初から依頼は断っている。(高校生活を最後まで仲間と一緒に駆け抜けたいため、そして零の隣にいるため)

・ウィーン・マルガレーテ
 アニメでは高飛車で負けん気が強い狂犬のようなキャラだが、この小説では今回で語られていたようにクール系でミステリアスな雰囲気。ただ年相応な表情も見せるようになっている。虹ヶ先チルドレン(下記参照)

・神崎秋葉
 零の姉。悪魔と呼ばれる研究者。何でもアリ。でも物語を異質な方向へ動かすためには必要な存在。

・結ヶ丘女子高等学校
 設立したてなのに早速廃校の危機だったが、秋葉により零が新任教師として送り込まれたことで生徒たちのやる気が活発化。いくつもの部活が大会で結果を残したため、その功績が認められ生徒数も増え、学校の廃校も阻止された。

・虹ヶ先チルドレン
 過去にとある育児施設で火事があり、火の中から零によって助け出された子たちの総称。そのほとんどが後に虹ヶ先出身となるが、マルガレーテと他もう1人だけはまだ母親の胎内だったので入学時期がズレて結ヶ丘の出身となる。

・他もう1人
 結ヶ丘出身の虹ヶ先チルドレンのもう1人。今回スクールアイドル部以外で唯一カーストトップだった存在。今回は姿を見せてないようだが、果たして誰でしょう()
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