ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常2~   作:薮椿

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偽恋人とその先輩とその妹

「ったく理事長のババア、休日なのに呼びつけやがって。何が事件だからすぐに来てだよ。まあ午前中で片付いたから良かったけどさ……」

 

 

 とある休日。朝っぱらから理事長に電話で呼び出された。

 かなり慌てた様子ですぐに学校に来て欲しいとのことなので何事かと思って向かったのだが、その内容は『ミステリー好きの恋の父さんが残した謎の箱が理事長の棚の奥深くから出てきた。開けたいけど鍵の暗号が分からないので解読して開けて欲しい』とのこと。あまりのくだらない私的な理由に思わず顔面を殴りそうになったのは言うまでもない。

 

 結局それはあっさり解決したのだが、別に開けるくらい次の出勤日にして休日に呼び出す理由はないと主張したところ、『だって開けられないとストレスでシワが増えるかもしれないでしょ』と返答されたのでシバきそうになった。学校を新設したのにすぐ経営難に陥らせるわ、自分勝手な理由で教師をこき使うわ、ホントにこの理事長で将来大丈夫なのかよって疑いたくなる。

 そんな奴だからそれなりに年上なのにも関わらず俺はタメ口だし、向こうは俺を『君』付けで呼ぶ馴れ馴れしい仲。しかも俺のことを息子みたいだと思っている始末。もしそうだとしたら教え子の母の友人の息子って微妙にややこしい立ち位置になるから、その解釈はやめて欲しい。

 

 そんなわけで現在は帰宅している最中だ。昼には解放されたと言っても無給なので晴れ晴れしい気持ちにはなれない。むしろ腹の虫がおさまっていないので、腹いせにここは何か甘いモノや辛いモノなど極端に振り切ったモノを食べたい気分だ。今日は妹が家に不在なのでどのみち昼飯はどこかで調達する必要があるしな。

 

 1人で食うのもアレだし、誰か呼ぶか? Liellaの誰かか侑か。俺のことをもっと知りたがっている冬毬やマルガレーテが有力か。でも冬毬は茨城から呼びつけることになるので現実的ではない。マルガレーテもかのんの家に居候していて喫茶店の手伝いがあるだろう。となると会ったばかりだけど侑を呼びつけるしかないか。

 

 そんなことを考えている矢先、後ろから誰かに話しかけられる。

 

 

「あれ、先生? 神崎零先生ですよね?」

 

 

 俺のことを先生と呼ぶのは結ヶ丘の関係者しかいない。でもその声は聞き覚えはあるが馴染が深いわけではない声だった。そして俺のことを他人行儀に名前呼びで本人確認するってことは、学校関係者であるにも関わらず普段は顔を合わせてないってことだ。

 こんな推理をするくらいだったらとっとと振り返ればいいだけのこと。それに一瞬誰だか分からなかっただけで、正体はすぐに見破っている。

 

 

「ありあか」

「はい、澁谷ありあです。姉とマルガレーテちゃんがいつもお世話になっています」

 

 

 正体は予想通り、かのんの妹であるありあだった。丁寧に頭を下げる。

 今年から高校生でマルガレーテとは同級生。進学した学校は異なるものの、共同で喫茶店の新メニューを開発したりしているので仲は良い。普段は年上にすら堂々と物申す態度で高校一年生とは思えない程のマルガレーテだが、コイツと絡んでいる時は年相応に見える。やはり人間は同級生ってだけで安心してしまう心理的な緩みがあるのだろう。

 

 

「休日の昼前にお一人でお出かけですか? いつも女性と一緒にいるイメージがありましたけど、珍しいですね」

「なんでちょっと煽り風なんだよ……」

「いやぁ~そんなことないですよ。マルガレーテちゃんからよく先生のことを聞いているので、ちょっと気になっちゃって」

「広めるならもっと俺のいいところを広めろよアイツ……」

 

 

 ありあの奴、少しだけど侑と同じ片鱗を見せ始めたな。笑い方とか煽り方とかモロそっくりだ。つい先日水族館でやられたから実感できるよ。

 それにマルガレーテの奴、俺のことをまた変な風に広めてやがる。今はほぼほぼ誤解は解けたが冬毬も俺に対してかなり偏見を持っていたこともある。同級生と仲良くして俺の話をするのは良いけど、もっと褒めるべきところを厳選して欲しいな。

 

 

「俺は仕事だ。とは言っても午前中で終わったから帰ってる途中なんだけど……お前は?」

「実はこれからスイーツ作りの勉強のために、とあるカフェに行こうと思いまして」

「ライバル店への潜入調査ってわけね。てかお前も1人かよ。人のこと言えねぇじゃねぇか」

「1人じゃないですよ。お姉ちゃんとマルガレーテちゃんもいます。今そこの店で買い物を――――あっ、ちょうど出てきましたね」

 

「あれ、先生? どうしてここに?」

「彼の周りには常に女が集まる。私たちは無自覚にオスのフェロモンに惹きつけられているのかもしれないわね」

「通りかかったのは俺の方だけどな……」

 

 

 近くのアクセサリーショップからかのんとマルガレーテが出てきた。どうやら喫茶店組で買い物をしていたらしい。

 そして第一声が相変わらず偏見塗れなマルガレーテ。こりゃこんなヤツと一緒にいたら冬毬やありあが俺を誤解するのも無理ねぇわな。

 

 2人が合流したところで改めて俺がここにいる理由を話す。理事長のことを知っている2人からは流石に同情を得られた。それだけでも俺の心は救われたよ。

 こっちの事情が把握されたところで今度はコイツらの目的を聞くことにした。

 

 

「ありあがカフェに行くって言ってたけど、お前らも行くのか?」

「はい。スイーツが可愛く美味しくSNS映えするって有名なんですよ。だからウチの喫茶店でも参考にできることがあるんじゃないかと思って」

「だったら先生も呼べばいいんじゃない? だってあのカフェ、カップルで行ったら割引も適用されるから連れて行かなきゃ損よ」

「割引券扱いかよ……」

「それはついでよ。今カップルフェアをやっていて、カップルしか食べられないメニューとかあるみたいだから連れて行かない手はないわ。それに人気になってるのはそのメニューみたいで、男と一緒でないと私たちだけでは拝むことすらできないのよ」

 

 

 カップル専用とかなんというハードルの高さ。ちょっとでも心に陰を抱えてる奴が入ったら、陽キャ&リア充の雰囲気に飲み込まれて気絶しちゃいそうだ。

 

 

「ということは、お姉ちゃんかマルガレーテちゃんのどちらかが先生と恋人ごっこをするってこと?」

「え? ありあはいいの?」

「いやいや流石に恋する乙女たちに譲るでしょ」

「じゃあかのんね。こういう機会でもないと積極的になれないでしょ」

「えぇっ!? そんないきなり恋人だなんて……。マルガレーテちゃんの方がそういうこと慣れてるでしょ……?」

「私が他の男と遊んでいたとでも言いたいの?」

「違う違う! マルガレーテちゃん堂々としてるし、恋人ごっこであってもポーカーフェイス貫けるんじゃないかと思って……」

「そうじゃないからあなたが練習するんでしょ。さぁ先生、行くわよ」

「お前らがいいならそれでいいけどさ……」

 

 

 別に誰と誰が恋人かだなんて証明する方法ないし、わざわざ聞かれないだろう。気になったのは歳の差だが、幸いにもその差をあまり感じられないくらい若いと自負しているので多分問題ない。バレそうになった際はカップルではないが兄妹や親戚とか言っておけばギリ許してもらえるだろう。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 例のカフェに到着。少し並んだあとに案内されて店内へ。

 想像通り陽キャ&リア充の巣窟だったわけだが、俺たちには気がかりなことが2つあった。ありあがそのことについて切り込む。

 

 

「外で列整理をしていた店員さん、先生のことを睨んでましたけど心当たりあるんですか?」

「実はここ、人を変えて何回か来たことがあるんだよ。その時もカップル系のフェアをやってたんだけど、何回も来るのに女の子は毎回違うからとっかえひっかえしてると思われてる……」

「あぁ、そのせいで顔を覚えられちゃったんですね……。あっ、だから今回も!」

「そう。また違う女を連れてるって思われてんだろ……」

 

 

 間違ってはいないがとっかえひっかえしているわけではない。全員を受け入れているので勘違いするな……とは言えねぇよな流石に。

 この店は虹ヶ先の奴ら何人かと来たことがある。もちろん毎回2人きりなのだが、まさかその時に対応してくれたあの女性店員がまだいたとは。まあ今は外の列整理の係をしているっぽいので、店内で険悪なムードになることはないのは助かったけどな。この店に行くって言われた時はハラハラしたぞ。

 

 そして、気がかりなことのもう1つは――――

 

 

「どうしてマルガレーテちゃんが恋人枠に!? 私とっっっっても心の準備してたのに!?」

「騒がしいわね。成り行きでこうなってしまったのだから仕方ないでしょ」

「案内してくれた店員さん、何も迷わずマルガレーテちゃんを先生の恋人だって決めつけてたよね」

「そのせいで私はこの子の先輩ですって答えるハメになって。絶対に店員さんに『カップルの片割れの先輩と言えども、妹を引き連れて他人のデートに参加するか普通? 頭おかしいんじゃないの?』って思われてるよ!」

「そんなわけないでしょう……」

 

 

 店内に入ると案内係の店員にマルガレーテが恋人だろうと即判断されてしまった。男は俺1人だからいいとしてもどうしてコイツだと断定したのか。恐らくこの女子3人の中だと一番大人っぽく、コイツらよりも年上そうな俺とカップルを組ませるならマルガレーテだと思い込んだのだろう。そのせいでさっきかのんが言った通り、男とその恋人、そしてその先輩とその妹という奇妙な組み合わせでデートしているシチュエーションになるので、それを怪しまれたわけだが……。

 

 そんな感じで微妙な空気感の中での入店となった。

 ただ注文は問題なく受け付けてくれて、しばらくして各々頼んだスイーツが運ばれてきた。

 

 

「凄い……! クリームが綺麗な渦巻き状で周りにたくさん! それにイチゴも花が満開みたいな感じに盛り付けられていて華やかだし、やっぱりSNS映えで高評価取る店は違うなぁ~」

「でもこれと同じ豪華さの盛り付けをウチの喫茶店でやるのはちょっと時間がかかっちゃうね。ウチはアルバイトもいないし、お客さんが多くなる時間だと手が回らなくなりそう」

 

 

 かのんが普通のショートケーキ、ありあがチョコケーキを頼んだ。確かに見た目は映えを意識しており、これだけ若者が集まる理由も納得だ。

 対して俺とマルガレーテに運ばれてきたのは1つのパフェ。コイツが勝手に頼んだもので、カップル用が故かモノは1つだ。ケーキよりも豪勢にはできなかったのかあまり映えるような見た目ではないが、付属しているこの長めのスプーン2つがカップル用であることを想起させ、それだけで写真映えはしそうだ。リア充アピールにもなるしな。

 

 

「ほら、グズグズしてないで早く食べさせなさい。フリとは言えども彼氏なのだから、彼女を楽しませるのが責務だわ」

「相変わらず高圧的だな……。分かったよ、ほら」

 

 

 細長スプーンでパフェから適当に(すく)ってマルガレーテの口元に向ける。食べさせ方に風情もムードもあったものじゃないが毎回こうだから。

 そしてマルガレーテはスプーンに乗ったアイスとイチゴを口にする。軽く咀嚼し飲み込むが、その瞬間に今までまり見たことのない表情を見せた。あまりの美味さに舌鼓を打ち、目じりを下げ頬を緩めてその味を堪能しているようだ。コイツがこんな表情をするところを初めて見た気がする。そういやかのんが言ってたな、甘いモノが好きでケーキとかパフェとか食うとこんな顔になるって。

 

 

「いい味ね。あなたの愛情のおかげで相乗効果が半端ではないわ」

「別に俺が作ったわけじゃねぇけどな」

「雰囲気よ雰囲気。言ったでしょ、フリでも恋人なんだからムードくらい無理矢理でも作りなさい」

「俺に食わせてもらってるだけ幸せだろお前なら」

「ま、それもそうね」

 

 

 それで納得するのもどうかと思うが……。

 ただ歴代の他の奴らも同じであり、基本何かしらのアクションに対して喜びを感じるよりも『神崎零』と何をした、『神崎零』に何をされたかの方が重要だったりする。だからぶっちゃけデートする必要はなく、ただ俺と一緒に同じ空間にいるだけで楽しいと思ってる奴らばかりだ。俺はこれまで普通の恋愛をしたことがないからそれがデフォルトなのかは分からないけどさ。

 

 

「ほら、次はかのんにやってあげなさい」

「えっ、私!? 恋人役でもなんでもないよ!?」

「別にいいじゃない。店の客はカップルばかりで自分たちだけの時間に夢中。店員もこれだけの客を捌くのに手一杯で店内を見まわす余裕もない。だったら恋人役が変わっても誰も気づかないわよ。そもそも男1人に女3人なんて、周りからはカップルなんて思われないだろうしね」

「そ、そうなのかな……。じゃあ先生、お願いしてもいいですか?」

「お前がいいのならいいけど、お前が1年生の時にもやっただろこれ」

「今でも恥ずかしいから覚悟がいるんです! でも、やって欲しい……」

「ったく……」

 

 

 既視感があると思ったら、かのんが1年生の時に他の奴ら含め全員に同じことをしたことがあった。ただ今でも恥ずかしがっているところを見るに、その頃から羞恥心はあまり変わってないらしい。まあ自分が恥ずかしいと思うことにそう簡単に耐性ができるものでもないか。

 

 マルガレーテの時と同じくアイスとイチゴの量が均等になるようにスプーンで掬い、かのんの口元にやった。少し緊張の色を見せたものの、割とすぐにスプーンを口に咥えた。その後はこれまたマルガレーテと同じく頬を緩めて舌鼓を打つ。いくら緊張があると言ってもスイーツの美味しさを口にすると忘れてしまうようだ。幸せそうな表情をしている。

 

 てかコイツらパフェを一口食っただけでそんな顔になるなんて、そんなに美味いのかコレ。俺まだ食ってねぇけど。

 

 

「2人共、一口食べさせてもらっただけで幸せそうだね。そんなに美味しかったの?」

「それもあるけど、先生と恋人ごっこができたってだけでも私にとっては夢成就の一歩なのよ」

「たったこれだけでも? お姉ちゃんも嬉しそうだし、好きな人に『あ~ん』してもらうのってそんなにいいんだ……」

「手っ取り早くお互いの心が繋がっていると確認できるからよ」

「でも先生ちょっとやる気なかったくないですか?」

「いつも気ダルそうにしてるからね。むしろそういうところがカッコいいんだよ、先生は」

 

 

 それは気ダルそうなやる気なし男が好きなのではなく、好きな男であればダルそうにしてる姿も好きってことだろ。意味合いが逆転してる。

 

 

「気になるならあなたもやってもらいなさい」

「えっ、私も!? 私と先生はミリもそんな関係じゃないし、それに先生も仲良くない女の子にそんなことをするのはイヤですよね……?」

「別にいいけど。ただ餌付けするだけだし」

「言い方! でもタダでやってもらえるのならやってもらってもいいかも……」

「あ~あ、これでまた1人先生の虜になってしまったわね。この人を好きになると自分の中の男のベースラインがこの人になってしまって、他の男なんかとは絶対に付き合いたくなくなるわ。ま、この人が男の頂点だから他の男には一切見向きもしなくなるでしょうね」

「マルガレーテちゃんが煽ったのになんて言い草……」

 

 

 もはや俺と関わることが洗脳みたいになってるじゃねぇか。催眠モノの同人誌じゃあるまいし、それに俺と関わっても靡かなかった奴は何人もいる。でもコイツがそんなことを自信満々に広めるからみんなが余計に俺のことを意識しちゃうんだろうな。いややっぱり洗脳じゃん。

 

 

「で? やるのかやらねぇのか?」

「やります。せっかくなので……」

「そうか。じゃあ、はい」

 

 

 三度スプーンでアイスとイチゴを掬い、今度はありあの口元へ持っていく。

 これまでそこまでの関係ではなかった男から急に恋人みたいなことをされるこのギャップ、違和感を抱きまくりだがありあも同じだろう。戸惑っていたものの、意を決したのか小さな口でスプーンを咥える。するとやはりコイツも姉と同じ反応を見せた。美味しさのあまりか少し嬉しそうな唸りを見せ、直後に俺に食べさせてもらった反動で恥ずかしさがこみ上げたのか頬がほんのり赤くなる。さっきの2人の時もそうだけど、俺がずっと見つめているからというのもあるのだろうか。

 

 口の中を全て飲み込むと、ありあは満足そうにしながらも僅かにしおらしくなっていた。いきなり若い男に恋人っぽいことをされて思うところがあったのだろう。

 

 

「思ったよりは恥ずかしくないけど、ドキドキはする……かも」

「これで姉妹揃って先生堕ちね。姉妹で同じ男を好きになるとか苦労するわよ」

「いやだから煽ったのマルガレーテちゃんだよね……」

「それに好きとかそういうのじゃないから。でも若くてイケメンの先生に『あ~ん』されるのはちょっとクセになりそうかも……」

「結局お前も一口食っただけでコイツらと同じかよ」

「それだけ特別感があるってことです。これだけで友達に自慢して回れますよ!」

「あまり俺のことを広めるのはやめてくれ……」

 

 

 楽しそうにするのはいいけど、あまり俺のことを言いふらされるのは困る。また俺の知らないところで勝手に恋に落ちて、初対面の時には既に好感度100近くまで溜まってるとかザラにあるから。

 

 そんなわけで代わる代わる恋人ごっこで食べさせ合い(俺が餌付けしていただけだが)をした。食わせてやっただけで惚れる要素があるのかとも思ったが、コイツらは嬉しそうにしていたので特に問題はないか。

 でも好きな男、気になる男に面と向かってそんなことをされたら舞い上がるものなのかもしれない。俺も女の子のデートにそこまで耐性がなかった頃はこんな感じだったかもな。贅沢だけど今は慣れすぎちゃったよ。

 

 ただ、いつになっても思うのが恋人同士だけの空間ってのは居心地がいい。いちゃつきの度合いが天井突破して周りに迷惑をかけるくらい濃厚なのは俺もダメだが、お互いに目と目を合わせて食わせ合う程度であればムードがあって割と好きな部類だったりする。気ダルそうにやってたけど、内心は俺も結構嬉しかったんだ。そりゃ美少女たち相手にしてるんだ、そんな子たちが自分に好意を持ってくれてせがんで来るんだから受け入れるに決まってるだろ。

 

 

「じゃあ次は写真を撮るわよ。女が3人いるから先生とのツーショット3回分で。店にも飾ってもらえるらしいわ」

「待て、3枚の写真に別々の女の子が映ってるのに男が1人だけって、それ超疑われるだろ」

「あら、私はあなたの王者っぷりがアピールできるから良いと思ったのだけど」

「自分の価値観を押し付けがちだよなお前……」

「お姉ちゃん、今日のマルガレーテちゃんウッキウキだね」

「先生と一緒にいる時はいつもこんな感じだから。夢にまで見た先生と日常を共にできるのが嬉しいんだよ」

 

 

 去年まだ結ヶ丘の学生ではない頃のコイツはどちらかと言えば寡黙系だったのに、今年度入学してからというもの舌回りがキレッキレだ。ここまで喋る奴とは思わなかったが、やはりかのんの言う通り俺に会うことが夢の第一歩だったから、それが叶ってテンションが上がっているのかもしれない。それにしてももう半年以上経つからそろそろ抑えて欲しいところだが、生まれてから15年間の抑圧は相当なものだったのだろう。

 

 

「かのんも撮るのよ」

「私は別にいいけど、ありあは……?」

「私は……。先生だったらまぁ……アリ、かな」

「罪な男ね、あなた。教え子の妹までこんな顔をさせるなんて」

「だから言い方……」

 

 

 このあと実際に写真は撮った。ただ飾ったのは俺とマルガレーテの写真だけで、浮気してる最低野郎と思わせる証拠を残すことだけは避けられた。

 ただ帰る時に列を整理していた店員に青筋を含めた笑顔で『ありがとうございました』って言われちゃったけど……。もう来れねぇだろこの店……。

 




 マルガレーテと澁谷シスターズの回でした。
 この章からのマルガレーテはボケ役(本人は至って真面目ですが)になれるので、話を動かす役目として重宝しています。そのせいか何気に1話目から皆勤賞です。今まで新キャラが登場してもここまではなかったかも。アニメ3期で物凄い良いキャラとして描かれていたので、私も愛着を持ってしまったのかもしれません。

 ちなみに今回彼らが訪れたカフェですが、虹ヶ先編で本当に何人かと行っています。どの話かは忘れたので探してみてください!



 次回からは恒例っぽくなってきた長編シリーズが始まります。いつも通り零と女の子たちの関係が大きく前進する回となる予定です。話数は4~5話程度、新年一発目からスタートします。


 さて、今年の投稿はこれにて最後になります。
 今年は蓮ノ空編の第一話から始まり、秋に完結、その後にLiella編の第三章がスタートしました。今年も週一投稿ながらもたくさん書いたなって自分を褒めたくなります(笑)
来年ももちろんいつも通り続ける予定なので、またよろしくお願いします!


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