ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常2~   作:薮椿

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終わらぬ夢から目覚めて(悪夢)

「その顔つき……。なぁ~んだ、もうちょっと塞ぎ込んでるかと思ったのに」

 

 

 校内の秋葉先生の実験室。そこに七海ちゃんはいた。

 何やら小さな機械を指で弄りながら、目を細めて口角を上げ皮肉を飛ばす。明らかに裏の顔であり、この一瞬だけでも彼女が私たちと同じく元の認識を保ったままだってことが分かった。

 

 いや、保ったままと言ってしまうと被害者扱いとなるため語弊がある。

 その理由は――――

 

 

「七海ちゃんなんだよね? この状況を作り出したのって……」

「そうだよ」

 

 

 あっさりと認めた。もうバレてるから隠す必要はないってことなのかも。

 私たちが知りたいことは二つ。どうしてこんなことをしたのかと、元の認識の世界に戻せるのかということ。自分たちの人生が『スクールアイドル』だけだなんて思ってはないけど、今年もやっとの思いで『ラブライブ!』まで漕ぎ着けられたんだ、こんな形でみんなとの努力と思い出を奪われたくない。

 

 

「みんなのその顔、私に色々聞きたいって表情してるね。それもそうか。でも最初に聞かせて、どうして私の仕業だって分かったの」

「ただの消去法よ。そもそもこんな世界改変ができるのは秋葉(あのひと)だけ。でもあの人は海外の仕事が多忙でこんなことをする余裕がない。自分で蒔いた種がどのような災厄を呼び起こすのかを間近で観察して愉悦を感じる性悪女だけど、海外にいたらその悦びを味わえないから今回は犯人候補外。だったら残るのはあなただけ。おおよそあの人が作りかけていた発明品とデータを元に、自分の都合のいいように認識改変の装置でも完成させたってところかしら」

「お~っ! 流石は我が幼馴染――――って、それくらい誰でも分かるか。でも候補だったらあなたもそうだと思うけど?」

「あなたと一緒にしないでくれる? 日頃の行いの差が歴然なのよ」

「相変わらずキッツイなぁ~」

 

 

 自分の仕業だと暴かれても七海ちゃんは一切動揺していないみたいだ。もしかしたらバレることは最初から想定済みだったのかもしれない。

 だとしたら目的は一体なんなのか。バレることを前提にしているってことはその目的こそが重要で、『スクールアイドル』の概念を消した結果のことは今回の話題にはあまり関係がないように感じる。

 

 

「ななみんのせいだとして、どうしてこんなことをしたのデスか? 『スクールアイドル』の概念を消すだなんて、ここまで可可たちをたくさん手伝ってくれたのにどうして……」

「消したと思ったら私たちだけには残ってるんだもん。それも気になるかな」

「結論を急ぎ過ぎるねぇみんな。こちとら長い間練っていた計画が思ったより上手く行き過ぎて、勝利の美酒の余韻にゆっくりねっとり浸ってるってのにさ。ま、ここまで早く再起するとは思ってなかったからそこだけは予定外だけどね」

 

 

 可可ちゃんとちぃちゃんの質問もお得意の軽口で受け流す。

 いつも通りのマイペースで、このままだとこれまたいつも通り七海ちゃんに会話の流れを掴まれてしまいそうだ。だけど今は舌を回してもらって喋らせた方がいい。どのみち『スクールアイドル』を取り戻すには彼女の真意を知る必要があるから。

 

 七海ちゃんは座ったまま指で弄っていた小さな発明品か何かを物静かに見つめる。

 さっきまでのお調子者の雰囲気はどこへやら、どことなく哀愁が漂うムードとなった。七海ちゃんは何を語るのか、私もみんなも固唾を飲んで見守る。

 

 

「結局さ、八つ当たりなんだよ。つまりそういうこと。自分でも分かってる」

「えぇっと、どういうことでしょうか? それが最終的な結論だとは思うのですが、流石に過程を聞かないことにはさっぱり……」

「先生にどうアタックするのか考えれば考えるほど、内なる自分の闇が噴き出してきたって感じかな」

「いや抽象的過ぎるわよ説明が。もっと明解に納得できるように話しなさいよ」

「慌てない慌てない。私にだって心の整理ってものがあるんだから。ずっと溜め込んできたこの気持ちを、遂に外に出す時が来るんだって思うとね」

 

 

 恋ちゃんとすみれちゃんが言った通りだけど、七海ちゃんはかなり慎重に言葉を選んでいるみたいだ。一言一句丁寧に自分にも言い聞かせているようにも感じる。

 裏の顔の彼女は先生曰く『メスガキ』っぽいから、もしかしたら今回の概念消失もただのイタズラの可能性があるんじゃないかと少し疑っていた。でも今の様子を見る限りだとむしろ大きな理由がある気がする。私たちが想像するよりも心の闇が深く根付いているようだ。

 

 

「聞きたいんだけどさ、みんなはこの世界で先生との絆が失われたと知った時にどう思った? そうだな、一番立ち直れないだろうと思っていた桜小路ちゃん、どう?」

「なんかいきなり馬鹿にされたっす!? えぇっと、それはやっぱり寂しかったっす。先生との関係がただの教師と生徒になって、ほぼ他人のような繋がりになってしまったことが悲しくて……」

「そうだろうね。スクールアイドルではなくなって、あなたたちは先生にとって特別な存在ではなくなった。そう、私と同じ立場になったってことだよ」

 

 

 きな子ちゃんの回答に対してあらかじめ用意していたであろう言葉で軽やかに返答する七海ちゃん。

 彼女と同じ立場になったという意味は何となく理解できる。スクールアイドルの概念が消えたこの世界、私たちは先生の繋がりは他の生徒たちと同じくただの教師と生徒の関係。もちろん自分たちが他のみんなより先生との関係性が上だとか優劣を誇示する気はない。だけど『スクールアイドル』であることで先生と特別な絆を紡いでいるとは思っていた。ここ、あくまで過去形だけど。

 

 

「七海先輩と同じ立場になったってのは分かるけど、今回の件とどんな関係があるんだよ? まさか私たちを貶めるためにわざとこんなことをした、ってことじゃないだろうな」

「おっ、鋭いね米女ちゃん。そうだよ。あなたたちは先生と一番近しい存在で、『スクールアイドル』という肩書のおかげで特別な存在になっている。でもこの時期になっても一向に関係は進展していない。去年頑張っていたかと思えば、今年は一歩も進んでない。それでイラついちゃったんだよね。この子たち、もしかして自分が特別な立場にいることを忘れているんじゃないかって。今の関係性が心地良いとか思ってるんじゃないかって」

「じゃあ先輩が八つ当たりって言ってたのはまさにその通りだったってこと? 私たちが足踏みしていることに業を煮やして……」

「その通りだよ若菜ちゃん。嫌がらせだったんだよね、結局のところ。先生との距離を頑張って進展させようとしている私の苦労を思い知って欲しかったんだよ。それだけ」

 

 

 メイちゃんと四季ちゃんの指摘は図星だった。七海ちゃんもあっさりとそれを認める。

 ただ、内に秘めた負の感情はそれだけじゃないような気がした。あの七海ちゃんが所業バレしただけでここまで淡々と薄情するとは思えなかったからだ。これまでの回答は上っ面で、実はまだ何かを隠している気がする。

 それを聞くのは自ら爆弾の導火線に火を点けてしまいそうで怖い。でも何もかもを明らかにするためのこの場でそんなことは言っていられないか。

 

 

「それだけって、今のが七海ちゃんの本当の気持ちなの?」

「そうだよ。それにしてももっと絶望の淵に追い込まれて、なんなら渦に飲み込まれてワンワン泣き叫ぶみんなの姿を見たかったなぁ。復帰が超早くて拍子抜けだよ」

「私はもっと聞きたいよ、七海ちゃんの本音」

「は? だからさっきから言ってるじゃん」

「全く、じれったいわね」

「マルガレーテちゃん?」

 

 

 マルガレーテちゃんは腕を組んだまま私たちより前へ出る。七海ちゃんのじれったさに歯がゆさを感じているんだと思う。

 マルガレーテちゃんのキツイ物言いは七海ちゃんの爆弾を簡単に起爆させちゃうかもしれないけど、幼馴染同士だから何かを打ち明けてくれる可能性もある。ここはマルガレーテちゃんに任せることにして私はあまり喋らないようにしよう。

 

 

「嫌がらせのためだけにわざわざ概念を消し去るなんて大掛かりなことするわけないじゃない。溜め込んでいるくせに、私たちを悲壮に陥れたいとまで考える恨みを、並々ならぬ嫉妬を」

「…………ったく、言葉選びにホント容赦ないなぁ」

 

 

 七海ちゃんは舌打ちをして目つきを鋭くさせる。

 マルガレーテちゃんが想像以上に攻撃的な言葉をぶつけて驚いたけど、これくらいしないと真の本音は聞き出せないと判断したのかもしれない。

 

 

「そうだよ、恨んでもいたし嫉妬もしてる。だって、容姿も能力も先生への想いも全てあなたたちに勝っている。なのに特別な関係になれたのはそっち。なんで……なんでなの!! 私は物心が付く前、生まれる前からずっと先生のことが好きだったのに! どうしてスクールアイドルってだけでここまで差をつけられなきゃいけないの!? 先生との接触は高校生になるまでお預けされて、やっと入学したと思ったら今度は裏でみんなのサポートをするまで恋愛禁止にされて、それをずっと監視されて、そして去年の文化祭でようやく自分という自分を先生に知ってもらうことができた。入学からそこまで約一年半、その間に澁谷ちゃんたちだけじゃなくて後輩ちゃんたちまでもが私より先生との距離を縮めてるし、そりゃ恨むでしょ! 嫉妬もするわ!」

 

 

 七海ちゃんが声を荒げている姿を初めて見た。表の顔は明るく人懐っこくて、裏の顔は余裕綽々な態度を見せる。だからここまで感情的に表情を崩す姿を見るのは一緒にいたこの三年間で初めてのことだ。

 

 彼女の出自はマルガレーテちゃんと同じで特殊。まだ生まれる前、お母さんのお腹の中にいた頃にまだ子供だった先生がそのお母さんを火事現場から助け出したことに由来する。

 そのあとはどういう因果か先生のお姉さんである秋葉先生の英才教育、もとい半ば洗脳じみた教育を受けて育ってきた。二人が頭の回転が速くあらゆる能力が高いのはその教育が故だ。物心がついた時から先生に対する崇拝教育を受けてきたためか、秘める先生への愛情は私たちとは比べ物にならないくらい肥大化している。

 

 自身の人生が『先生のため』と定義づけられている以上、ぽっと出の私たちが先に先生と仲を深めることに苛立ちを覚えるのは仕方がないことだ。だって自分の全ては『先生』であり、それ以外は何もいらないと常識からそう思っている人なんだから。

 

 ちなみに二人には秋葉先生より先生と恋愛をするためのルールが設定されており、それを厳守させられていたらしい。守らなかったどうなるかは知らないけど、自分の第二の育ての親であり世界をひっくり返す力を持つ秋葉先生には逆らえなかったんだと思う。

 ただそのルールについて、マルガレーテちゃんはスクールアイドルで結果を残すこと、七海ちゃんは私たちと先生の仲を及第点まで進展させること、だったはず。去年の時点で二人の目標は既に達成されているような気がするけど、それでも七海ちゃんは私たちに業を煮やしているようだった。恨みや嫉妬を抱く相手の恋愛サポート、そのためのスクールアイドル活動のお手伝いをするなんて気持ちのいいモノじゃない。当事者ではないけどこうして言葉にしてみると気持ちはよく分かる。

 

 

「去年にちょっと背中を押してあげたのに、今のこの体たらくはなに? ダラダラと毎日を過ごすだけ! 先生との距離は一歩でも縮めたの!? 私が先生にアプローチしようにもあなたたちがずっと道を塞いで邪魔をしてる! ただ立ち往生するだけで何もせず、私なんかよりも何倍も近道で先生との距離を詰められたはずなのにそれをしていない! 何もしないんだったら道を譲ってよ! 私にはもう時間がないんだ! 青春を三年間フルで使えるそっちとは違う、私は去年自分の正体を明かしてからの一年半しかないんだから! 私の夢の邪魔をしないでよ! 適当な覚悟で道の上に立つな!!」

 

 

 心の奥の叫び。初めて聞くことができた。

 正直そんなことを考えているなんて知らなかった。私たちにイタズラや嫌味を言ってくるのはそういう性格だからと思い込んでいた。もしかしたらそうしていたのは多少のストレス発散も兼ねていたのかもしれない。私たちの歩みが遅すぎるせいでストレスが溜まるけど、表の顔のメンツもあって堂々と怒りをぶつけることはできない。非常にもどかしかったのだろう。

 

 

「それじゃあ『スクールアイドル』の概念を消したのは、私たちに自分の立場と苦労を知ってもらいたいのと同時に、私たちをその道から排除したかった、ってこと?」

「そう。だって苦痛を受けたのならやり返さないと気が済まないでしょ。最初に言った通り、ただの八つ当たりだよ。ヤケになったとも言えるかな。十分に我慢したよここまで」

「でも、今の先生は元の世界の先生ではないですの。こんな形で先生との距離を詰めるなんて、それでいいのかと思ってしまいますの……」

「鬼塚ちゃんが正攻法を語るなんて変わったね。去年までは裏の手ばかり考えつく子だったのに。でも、もう正攻法とかどうでもいい。このストレスから脱却できて、あなたたちを私の道から除外できればね。『スクールアイドル』の概念が消えた今、それで繋がっていた関係は断ち切れた。もう道に復帰することはできないはずだよ」

「それは……」

 

 

 どうやらこの世界を元に戻す気はないらしい。

 私たちが絶望から再起したと言っても、スクールアイドルで繋がっていた先生との関係性を今から再構築するなんて無理な話で、その点スクールアイドル関係なく先生にアプローチしていた自分が圧倒的に有利。もう誰も自分の道の邪魔をされることはない。そう考えているんだと思う。

 

 多分七海ちゃんは分かっていない、私たちが立ち上がることができた理由を。

 その時、横にいた冬毬ちゃんが私を見つめていることに気が付いた。どうやら何か言いたい様子。ここはマルガレーテちゃん同様にストレートにモノを言える彼女に任せようと思い、アイコンタクトでその旨を伝える。

 

 そして、冬毬ちゃんが主張した。

 

 

「勘違いされているようですが、私たちは『スクールアイドル』で先生と繋がっているわけではありません」

「へ……?」

 

 

 七海ちゃんの雰囲気が変わった。今まで話の流れを牛耳っていたのにあっさり奪われて戸惑っている顔。

 さっきのように怒りに身を任せている間はこっちの主張は聞き入れてもらえなかっただろうけど、心に隙ができた今なら分かってくれるはず。論破しようとしているわけじゃないけど、この世界を戻すためにはこのチャンスに賭けるしかない。

 

 冬毬ちゃんが続ける。

 

 

「確かに私たちと先生はスクールアイドルを介して知り合いましたが、これまでに築いてきた関係は決してスクールアイドルのものだけではありません。むしろそれはただのきっかけです。私たちが先生に向ける想いは神崎零先生だからであり、そこに自分たちがスクールアイドルであるかどうかは無関係。したがって、あなたは私たちと先生の絆が断ち切れたと仰いましたが、それは間違っています」

「そう、それが再起できた理由か……。でも当の本人からはあなたたちが語る絆が消えている。あなたたちの想いはスクールアイドルとは関係ないかもしれないけど、出会いのきっかけが消えたからには繋がりも消滅したことに変わりないよ。それとも私を油断させるためのはったり? 負けを認めさせて世界を元に戻してもらおうと思ってる?」

 

 

 強がっているけど、明らかに焦りの感情が見え隠れしている。ようやく自分の道から私たちを排除できたのに、また立ち塞がってきたから狼狽えているのだろう。

 ただ、私たちの目的は相手を言い負かすことじゃない。相手の主張を尊重しつつも、こっちの主張も理解してもらうことだ。お互いに認め合わないとこの事件は解決しない。

 

 

「あ~あ、もう面倒になっちゃった。悲しみに打ちひしがれる姿を見たくてみんなから『スクールアイドル』の概念を残したけど、鬱陶しいから消しちゃおうかな。うん、それが手っ取り早い」

「え、そんなことできるの!?」

「そりゃこの発明品を再構築したのは私だからね、今は私こそが世界の神様……なんつってね! だからこの悪夢を終わらせる。ようやくいい夢を見られるんだ……」

「そ、そんなのダメだよ!!」

「必死だね澁谷ちゃん。そうそう、そういう顔が見たかったんだよ!」

 

 

 このままだと私たちからも『スクールアイドル』の概念が消し去られてしまう。そうなったら最後、私たちが先生との出会いを忘れてしまい、そもそも先生のことをただの教師としか認識しなくなってしまうに違いない。そうなったらもう先生との関係は復帰不可能。今は私たちが覚えてるからいいものの、お互いに忘れてしまったら当然再び手を繋ぐことなんてできなくなってしまう。

 

 そうなる前に何とかしないと……!!

 そのためには七海ちゃんを説得するしかない。でもスクールアイドルがなくても先生との絆は切れていないと主張しても後には引かなかったし、一体どうすれば……!!

 

 このままだと本当に消されちゃう。どうにかしないと!! どうする?? どうする……!?

 

 

 

 

「やめとけ。自分を上げるんじゃなくて、相手を下げることで満足感を得るのは悪趣味だぞ」

 

 

 

 

 突然部屋の入り口から男性の声が聞こえてきた。

 この学校の関係者で男性はたった一人――――――

 

 

「「「「「「「「「「先生!?」」」」」」」」」」

 

 

 マルガレーテちゃんと七海ちゃん以外のみんなの声がハモる。

 先生は()()()()調()()だ。そう、()()()()。困っている時に都合よく現れる、まさに主人公(ヒーロー)さんだね。

 

 ただそれは、私たちが確信していた通りだった。

 

 

「あなた、さっきから外で聞いてたでしょ?」

「バレてたか。でも最初から顔を出したらコイツらの本当の気持ちが聞けないだろ」

「敵を騙すにはまず味方からのあなたの方が悪趣味よ」

「やっぱりそれもバレてたか」

 

 

 え、外で聞いてたの?? それだけは知らなかったよ……。

 そして、この状況で一番唖然としているのは当然七海ちゃんだ。先生が突然現れたと言うよりも、どうして先生が元の認識のままなのかが最もな疑問だと思う。そりゃそんな反応にもなるよね……。

 

 

「ちょ、ちょっと待って! 先生がいつも通りって……えっ、どういうこと!? スクールアイドルを知ってるの??」

「バーカ、俺が忘れるわけねぇだろうが」

「そ、それはどうして……?」

「さぁ。秋葉はなんだかんだ俺のことを溺愛してるから、想いの人の記憶は操作したくないんじゃねぇの。俺への影響だけはどんな手を加えても改良できなかったとか」

 

 

 全く納得感がない説明。でも先生や秋葉先生に常識を疑う時点で負けな気がする。そんなチートスキル系の主人公じゃないんだから……。

 

 

「でもお前ら、俺が気付いてるって気付いてたのか。まああれだけヒントを出して気付かないんだったら脳年齢を測ってもらった方がいいけどな」

「は? みんなも気付いてたってコト!? 先生が元の認識を保ってるって……。それにヒント……?」

「えぇ。職員玄関で凹んでいるかのんたちに先生がなんてアドバイスしたか覚えてる? かのんの歌えないトラウマ解消の経緯や可可先輩がこの学校に入学した動機を引き合いに出した」

「あっ、もしかして……」

「そう。どちらもスクールアイドルが起因よ。スクールアイドルの概念が消えていたとしたら、先生からその話題が出ることなんて絶対にない。覚えてない限りは、ね」

「直に伝えてくれればよかったのではないですか……?」

「それでも良かったんだけどさ、俺にだって考えが合ったんだよ。でもお前らをずっと心配させたままにしてはおけない。だからヒントって形でお前らにだけ伝わるようにしたんだ。まあ普段の七草ならこんな違和感すぐに気付けただろうけど、あの時のお前は計画が成功して油断しまくってたから、あの程度のヒントならスルーされると思ってたよ」

 

 

 ここへ来る前、みんなで校舎裏に集まって話していた内容がまさにこのことだった。

 マルガレーテちゃんと冬毬ちゃんは既に先生の会話の違和感に気が付いていて、先生が元の認識を保ったままではないかと私たちに伝えてくれた。先生との繋がりが消えて落ち込んでいた私たちにとっては朗報以外の何物でもなく、それで一気に希望が息を吹き返した。

 

 私たちが再起した理由はまさにそれが原因なのと、もう一つさっき冬毬ちゃんが主張してくれたことにあった。

 さっきは七海ちゃんにそれをぶつけてたけど、それは二回目。最初にぶつけた相手は私たちだった。

 

 

『皆さんはスクールアイドルだから先生のことを好きになったのですか? 話を聞く限りだと違うと思います。先生が素敵な男性だから、女性として好きになったのではないですか? だとしたら、そこにスクールアイドルは無関係ではないでしょうか』

 

 

 冬毬ちゃんの言葉は私たちに大切なことを思い出させてくれた。

 だからこそ、先生への想いと好意を伝える覚悟は決して欠如しているわけではないと七海ちゃんに伝えたい。もちろん足踏みをしちゃってるのは本当。そこは認める。自分たちの先生への想いの強さは肯定し、踏みとどまっているところは反省する。誠実な対応で七海ちゃんに私たちの気持ちを届ける。

 

 さっきはダメだった。でも今回は先生もいる。

 取り戻すんだ、『スクールアイドル』を。そしてまた元の関係に戻りたい、七海ちゃんと。七海ちゃんの心の叫びを受け止めて、お互いに分かり合いたい。

 

 二兎を追う者は二兎とも取れ。先生から教わった理不尽だけど最高のハッピーエンドを作るための言葉。スクールアイドルも親友も、どちらも失うわけにはいかないから。

 絶対に笑顔で終わらせる。恨みと嫉妬から引き起こされた、この悲しい事件を。

 

 

 

 

To Be Continued……

 




 Liella編は他のグループと比べて内部時間で三年間と長いので、必然的に彼と彼女たちの関係は最後まで引き延ばす必要がありました。それをメタ的に代弁してもらったのが七海です。常識改変した動機は褒められませんが、言ってることはダラダラと長続きしているラブコメを見ている視聴者っぽいです(笑)

 それにしても七海は一応アニメ原作キャラなのですが、ここまでキャラ改変していいのだろうかと今更疑問に思っています(笑) アニメを観るとギャップが凄い……

 次回は解決編です。ようやく主人公も登場したので、あとは終わりを見届けるだけ!
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