ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常2~   作:薮椿

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真夏の情熱と真冬の未練

「わぁ~っ!! 来たかったんだよねスクールアイドル資料館!」

「えぇ。なにかと忙しかったから、ようやく来られたわね」

 

 

 今日は珍しい組み合わせ。Sunny Passionの二人、聖澤悠奈と柊摩央とでスクールアイドルの歴史が連なる資料館へと来ていた。

 どうしてコイツらと一緒にこんなところに来たのか。数日前にお誘いがあったからだ。東京に来たからにはどうしても行きたい場所があると熱望され、どこかと聞けばここだった。なぜ俺を誘ったのかまでは訊かなかったが、わざわざ呼び出すってことはワケありだろうから直接訊けばいいと思い、その誘いを承諾した。そして今に至ると言うわけだ。

 

 ちなみにコイツらは今年度から大学生であり、共に東京の大学へと進学している。だからこんなところ来ようと思えばいつでも来られるはずだが、色々とタイミングが合わずに訪れる機会がなかったらしい。

 俺は他の奴らと何回もここに来ているので新鮮味は皆無だが、スクールアイドルの奴らからしてみれば全国の輝きが集まる聖地。ここへ来るためだけに遠征してくる奴らもいるほど人気の施設となっている。コイツらもその人気にあやかったのだろう。ま、コイツらの場合はもうスクールアイドルは引退してるから『元』だけどな。

 

 

「にしても、久しぶりに連絡を寄こした思ったらこれかよ。お前らもう東京住みなんだからいつでも来れるだろ」

「いつでも来れるからこそ『後でもいいか』ってなるものじゃないですか? それで後回しにしていたんですけど、この前の『ラブライブ!』決勝を観たらもう居ても立っても居られなくなっちゃって!」

「そういや会場にも来てたんだっけ?」

「はい。Liellaの二連覇をしかとこの目に焼き付けました。もうスクールアイドルの関係者ではないのでその場で直接祝福はできませんでしたが、後でビデオ通話でお祝いもしましたよ」

 

 

 一応大学でもスクールアイドルはできる。ただ高校生とは違って公式によるオファーなど特別な招待が必要であり、スクールアイドルとして公式のライブに出ることもできない。まあ真似事として勝手に名乗って非公式でサークル活動しているところもあるが、それはファン活動として公式からは黙認されている。だからコイツらも事情がない限りはスクールアイドルとは名乗れず、結果をいくら残していようが今や一般客に過ぎない。待遇はちょっと厳しいかもしれないが、これだけ規模が大きくなったらルール整備もない無法地帯ってわけにもいかないからな。

 

 ちなみに特例を認められたことがあるのがμ'sであり、一度スクールアイドルフェスティバルの招待を受けて再結成したことがある。結局それは秋葉の陰謀だったわけだが、少なからず例が存在する証明となった。

 

 

「もしかしたらここにLiellaの功績も飾られるかもしれないね! μ'sやA-RISEみたいにおっきなスクリーンにライブ映像が流れるかも!」

「二連覇なんて前代未聞でしょうから当然だと思うわ。あの会場で受けた衝撃はこれまでにないほど熱くて、迫力も煌めきも満点だったもの。公式側としてもこれほどまでにスクールアイドルというコンテンツを盛り上げてくれるグループはいないでしょうから」

「かのんちゃんたち凄かったもんね~。私もスクールアイドルを辞めて長いのに、まだあそこまで情熱を感じられるだなんて想像もしてなかったなぁ」

「辞めて長いって、まだ一年も経ってねぇだろ」

「いやいや、大学生と高校生って全然違いますよ? スクールアイドルのみんなを我が子のように思えちゃいますから!」

「考え方が年老い過ぎだろ……」

 

 

 ただ気持ちが分からないでもない。大人になってからの一年よりも子供の一年の方が圧倒的に長く感じる。やはり成長期だからこそ自分の精神年齢も上がったように思えるからか。実際に俺も大人になって色んなスクールアイドルの奴らと接してきたけど、客観的にも一年生の方が三年生よりも幼く見えるのはその成長期の差だろう。まあ中には最上級生のくせに器が小さい奴もちらほらいるけど……。

 

 そんな他愛もない雑談を繰り広げながら資料館を進む。

 俺は何度も連れられて来たことがあるが、展示されている情報は定期的に更新されていくので新しいスクールアイドルを知るきっかけにもなる。まあ普段はこの界隈の情報収集をしないのでむしろここへ来た時にしか知識がアップデートされないのだが、そのたびにあらゆる都市や地方でたくさんのスクールアイドルが活躍していることを現実として知らされる。群雄割拠しているのは数年も前からのことだけど、これからも都心部だけでなく地方の学校からもどんどんスクールアイドルが生まれる。コンテンツは盛り上がるだろうが、大型大会の出場のハードルは上がっていく一方なんだろうな。

 

 そんな感じでスクールアイドルの歴史と今後に触れていく中で気付いたことがある。

 スクールアイドル専門の資料館と言えども全てのスクールアイドルに触れているわけではないのは承知だが、明らかに実績があるのに展示されていない奴らがいる。

 

 

「なぁ、お前らのはないのか?」

 

 

 素朴な疑問をぶつけた瞬間、先を歩いていた二人の肩がピクつく。

 もしかして禁句の話題だったか……? この資料館に展示として載ること自体が名誉なことだが、それに抜擢されなかったから落ち込んでいたりするのかも。いやだったらわざわざ俺を誘ってこんなところへは来ないだろう。そもそも栄誉をプライドにしていた奴らではないはずだ。

 

 じゃあ何が琴線に触れたんだ……?

 明らかに二人の雰囲気が変わったから何か思うところはあるのだろう。

 

 

「もしかして俺を呼んだ理由と何か関係があったりするのか?」

「えっ……!? あ、あはは、相変わらず察しがいいですね先生は……」

「そりゃここへ来るのに俺を呼ぶ必要なんてねぇしな」

「とりあえず場所を移しましょうか。ここだと人目も多いですから」

 

 

 やっぱり俺に何か言いたいことがあるようだ。ようやく誘われた理由が判明しそうだが、コイツらのさっきの反応を見る限りネガティブ方面であることは間違いなさそうだ。

 

 そんな不穏な予告をされた上で場所移動することになった。

 しかし、コイツらはスクールアイドルを引退したとは言えまだまだ有名人。そんな奴らがスクールアイドルの聖地とも言われる資料館にいたら――――

 

 

「あそこ! あれってSuuny Passionさんじゃない!?」

「こんなところで会えるなんて感激です! サインください!」

「ご迷惑でなければ一緒に写真を撮ることってできますか!?」

「引退されましたけど、また公式のライブに出る予定とかあったりしますか!?」

 

「ちょっ、ちょっと落ち着いてみんな……」

「ここは館内ですから。せめて外で……」

 

 

 変装もあまりしてないからそりゃファンなら気付くよな。だからあっという間に囲まれてしまった。ただそんな大変な状況にも関わらず外に出てファンサしようという心意気は凄い。これこそ地元だけでなく全国、果てに世界にまでファンを獲得できた理由か。実際に可可がそうだったしな。

 

 ただやっぱり気になる。ここまで人気のある奴らがどうしてこの資料館に一切情報がないのか……。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「ふぅ、やっと捌けたねぇ……」

「引退してからあそこまで囲まれるのは久しぶりね。最近はかなり落ち着いてきたと思ったけれど……」

「スクールアイドル資料館だしね。スクールアイドルが好きな人しかいないわけだから仕方ないよ」

 

 

 悠奈と摩央は水を飲みながらベンチに座ってリラックスする。あれだけファンにサービスしてやったんだから当然だ。それに絡まれるのが久々ってことはファンサも久しぶりだっただろうし、そりゃ疲れるわな。

 

 少し休憩した後にようやく本題に入る。二人の前に立って話題に切り込んだ。

 

 

「じゃあ話してもらおうか、俺をここに呼んだわけを。まさかとは思うけど、自分たちが資料館に展示されなかったからその憂さ晴らしとかじゃ……ねぇよな?」

「えぇっ!? もちろんそんなことないですよ! だって私たちにも話が来ていましたから! この資料館にSunny Passionの歴史を展示してもいいですかって!」

「えっ、そうなのか?」

「悠奈、もっと段取り良くお話しする予定だったのに……。そうです、先生をお誘いした本当の理由はそのことに関連があるのです」

 

 

 真っ先に思ったのが、歴史を展示されることに何か後ろめたいことでもあるのかってことだ。自分たちの活動が公式に記録されるわけだから、思い出の観点としても展示を承諾しない理由がないように思える。

 ただコイツらの深刻そうな雰囲気を見るとそうではないのだろう。

 

 

「資料館に自分たちの活躍が公開されるというのはとても名誉なことで、通常であれば申し出を拒否することはありません。私たちもそう思っています。公式からの依頼が来たときは私も悠奈も大変嬉しかったです」

「だったらなんでそんな顔してんだよ……」

「実は私たち、スクールアイドルの人生の中でちょっとした後悔があるんです。地元の神津島(こうづしま)の発展に貢献できたのかなって」

「そういやそんな目的だっけか。その悩みがあるってことは島の奴らに糾弾されたりでもしたか?」

「いえそんなことはありません。皆さんとてもいい方々ですから」

「むしろ私たちが盛り上げてくれたおかげで島の魅力が伝わって、観光に来る人もたくさん増えたから感謝されています」

 

 

 Sunny Passionの結成の目的は本人たちがスクールアイドル好きだってこともあるが、何より島おこしのためだった。

 ただ本人たちは悩んでいるが、現にその目的は達成しているように思える。可可が上海で憧れを抱いた時には既にコイツらは有名であり、一度かのんたちが島に誘われて行った時も島のムードはサニパ一色だったそうだ。島全体で悠奈と摩央のサポートをしており、もはやサニパは自分たちだけのグループではなく島全体としてのグループだと言い張っていたくらいである。

 

 だから話が見えない。どこに貢献したのかと悩む要素があるのかと。俺たちがコイツらの存在を知った時には既に島おこしとしては成功していたからだ。

 

 

「前提は分かったけど、お前らが貢献できたのかと悩む理由は?」

「スクールアイドルとしての活躍はしばらくの間いい流れに乗っていましたけど、最後の方はあまり結果を出せていなかったなって」

「いや『ラブライブ!』を優勝してただろ。かのんたちがまだ一年生で発達段階だったとは言え、お前たちのパフォーマンスは圧倒的だった。それの何が不満なんだよ」

「あの時はもちろん嬉しかったです。私たちが注目されれば当然島にもスポットライトがあたり、その影響で観光客も増えたと連絡がありました。その時は間違いなく順風満帆な流れだったと思っています。ただ――――」

「ただ?」

「その後の活躍は横ばいか、落ちていくいく一方でした。やはり今の世の中、流行りは一過性のものに過ぎません。スクールアイドルとしての最後の一年は優勝の勢いを落とさずに頑張ろうと意気込んでいました。でもその勢いというのは本当に短い間だけで、島への影響も徐々に落ち込んでいくことになります。もちろん、スクールアイドルをやる前よりは観光客も増えてはいますが。ただ一度落ちる様子を見ると心に来てしまうのは致し方ないのです」

「でも公式が島の宣伝をしてくれなかったとか、他の魅力的なスクールアイドルが現れて私たちの邪魔をしたとか、全然そんなことは思ってないですよ! あくまで私たちの問題です!」

 

 

 なるほど、一度でも頂に到達した者の悩みということか。島の期待を背負っていた以上、今までよりも更に島を盛り上げることに躍起になっていたのだろう。自分たちの人気は島の人気。だから自分たちの注目が落ち着き始めると島への影響を懸念する。楽しそうにやっているように見えたが、意外と自分たちの責任にプレッシャーを感じていたのかもしれない。

 

 

「スクールアイドル最後の年の『ラブライブ!』は出場をするどころかその予選で負けちゃって、私たちの意気込みも虚しく間もなく引退になっちゃいました。もちろん同じ予選グループだったマルガレーテちゃんのステージが私たちを遥かに上回っていたっていうのもそうですけど、最後の最後で悔いが残ったのがやりきれなくて……」

「じゃあお前らが資料館への返事を迷っているのは……」

「はい。最後に満足できる結果が残せず、島への貢献も私たちの山場であったスクールアイドル二年目で打ち止めだったからです。最後は輝かしく優勝、とまでは行かなくとも何かしら心残りがなければ返事も変わっていたでしょうけど……」

 

 

 考え過ぎだ、と言っても慰めにはならないだろう。島の期待を背負っておきながら最後に何も残せなかったことを悔やんでいるんだから。もちろん島の人たちはみんな感謝しているだろうし、やはりコイツらの考え過ぎではあると思うのだが折り合いをつけるのは難しいところだ。ていうかコイツらも後悔しても今更どうにもならないことくらい分かっているだろう。ただ、だからと言って嚙み砕けるかと訊かれたらそれは別問題だけどな。

 

 俺を呼んだ理由も大体分かった。なんとか未練を断ち切りたいのだろう。もはや過ぎてしまったことと分かっていても心の隅では僅かな後悔が残されている。部屋の角だけ異様に汚れていても生活はできるが気にはなるように。

 雑念を振り払い、この迷いに決着をつけたいに違いない。だが自分たちでは解決できないから俺を呼んだってところか。

 

 ったく、俺はカウンセラーじゃねぇんだよ。

 ま、やるけどさ。

 

 

「島の注目を継続させたかったって気持ちは分かるけど、ずっと人気なものなんてねぇんだよ。白いたい焼きとか高級食パンとか、それこそタピオカとか全部すぐに消えただろ。だからそんなものなんだよ、人気が出るってのは」

「で、ですよね……」

「ただそれでお前らが納得するとは思ってない。結局は自分が成したことに対する成果が欲しいんだよな。承認欲求が満たされれば意外と心の折り合いはつくぞ」

「そんな、私たちはそんなことのためにスクールアイドルをやっていたわけでは……」

「そうですよ! それだと島が二の次で自分たちのため、みたいになっちゃうじゃないですか!」

 

 

 これくらいの反発は来るだろうと予想していた。そりゃ島のために悪戦苦闘していたコイツらにとって、それを否定されずとも一番は自分たちのためだと指摘されたら眉をしかめるのも当然だ。

 ただ、承認欲求なんて誰にでもあるものだ。もし結果が振るわなくても、そこまでの努力を認められれば多少は救われた気がするだろう。気がするだけでもいいんだよ。些細な悩みでずっと心に重りを乗せているよりかはずっといい。気休めでも問題ない。そう、今のコイツらに必要なのは気休めだ。それに結局島のためになったかどうかなんて俺には決められないしな。俺からかけてやれる言葉なんてたかが知れている。

 

 

「スクールアイドル、楽しかっただろ?」

「え、いきなりなんですか……?」

「楽しかったんだろ。だからここに来た。ここはスクールアイドルたちの名誉と栄光、なにより楽しかったって感情が詰まってる。だからお前らもそれを求めてここに来たんじゃないのか? ここなら迷いの答えが見つかるかもって」

「それは……はい」

「だったらお前らはやるべきことを果たした。だって島の人はお前らを利用して島おこしをしたいだなんて微塵も思ってないだろうし、なにより見たかったのはお前らの笑顔だったと思うんだよな。ま、それは島の人に直接訊かないと分からないからただの妄想に過ぎないけどさ。だけど島のために最後に結果を残せなかっただなんて誰も思ってねぇと思うぞ」

「それはまぁ……そうですね。分かっているつもりです」

「だろうな。だったら俺を呼び出してまで悩んだりしないから」

 

 

 直接訊けとは言ったが、実際に気恥ずかしくてそう簡単にはいかないだろう。

 だからこそコイツらの中で溜まり続けていたんだ。自分たちの活動が島のためになったかどうかを。

 

 

「ここからのアドバイスは有料――――ってのは大人げないから、とっておきの策を教えてやってもいい。かのんたちが悩んでいても一発で解決できる言葉があるんだ」

「えっ、そんなのあるんですか!? 是非!!」

「そうですね、この一年の憂いを晴らせるのであれば。でも先生と言えどそんなことができる――――あっ」

「あっ……」

 

 

 別に大したことではない。ほんの些細なことだ。

 俺は二人の頭に手を置いた。撫でるようなことはせず、優しく、それでいて包み込むような感じで。

 

 

「お前らは走り切ったんだ。よくやったよ」

 

 

 かけた言葉はたったそれだけだった。

 でもこれでいい。さっきも言ったけど結局は自分が成したことを誰かに認めてもらう。これ以上に安心できることはない。誰の目も気にせず自分だけで納得できる奴はいるだろうけど、そんな奴でも誰かに褒められたら嬉しいはずだ。承認欲求とは言ったが、最初から別に誰かに評価してもらおうって気持ちで動き出す奴は少ないだろう。でも褒められたら嬉しい。人間だから。たったそれだけで自分がやってきたことに対して自信が持てるってわけだ。

 

 そしてそのことをコイツらも現在進行形で感じていることだろう。

 島の人たちが自分たちに感謝していることは分かっていた。最後の最後で負けて尻切れトンボのような気持ちになってしまったのも自分たちの整理がつかなかっただけ。それでも納得できず心に曇りができていた。

 でも自分を認められたら気休めでも安心できる。コイツらに必要なのはその安寧だったんだ。

 

 耳の付け根まで茹でられたかのように真っ赤になる二人。しばらく何も喋らなかったが、時折分かりやすく吐息をしているところを見ると落ち着いてはいるようだ。どうやら自身の中で未練と格闘している最中だろうが、どうにか決着がつけられそうな雰囲気を感じる。

 

 頃合いを見計らって手を頭から離すと、悠奈と摩央は頭を上げた。

 その晴れ渡った表情を見るに折り合いはついたようだ。

 

 

「凄いです先生! まさかあの言葉だけで人の迷いを解決するなんて!」

「たまたまだよ。お前らの悩みが単純だっただけだ」

「そうであったとしても、少し話を聞いただけで最短経路で最速の回答を導き出せるのは素晴らしいと思います。やはり相談して良かったです」

「そりゃどうも」

「でも私たちの悩みが、まさか自分たちのスクールアイドル活動を誰かに認めてもらいたいだなんて思わなかったですよ。むしろ自分のためじゃないって考えていましたから」

「スクールアイドルとして上位にいたからこそ、更にその上から褒めてくれる奴も少なかったんだろ。責任を背負い過ぎるのが悪いとは言わないけど、ただ純粋に褒め言葉に浸るのもいいんじゃねぇか。でないと疲れちまうしな」

 

 

 むしろ誰かのために頑張って来たのに褒められないとか嘘だろ。島の人から感謝はされているしそのために突っ走ってきたわけだけど、単に自分を認めてくれる人がいるとそれはそれで嬉しくなる。人の心なんて単純だからたったそれだけでも救われるんだよ。

 

 

「そういえば先生、さっきかのんちゃんたちが悩んでも一発で解決できる言葉って言ってましたよね? でも聞いた限りだと普通の言葉だったんですけど、かのんちゃんたち関係あります?」

「あぁ、それは……」

「それは……?」

 

 

「言葉そのものより、俺に褒められたから嬉しい……ってことかな」

 

 

「「えっ……?」」

 

 

 二人は言葉に詰まる。

 つまりは言葉の意味にそれほどの価値が眠ってはいないと悟ったのだろう。

 

 そして――――

 

 

「あははっ! かのんちゃんたち先生のこと好きすぎでしょ! でもそうか、好きな男性に褒めてもらえたらそりゃ嬉しいし悩みも吹き飛ぶかぁ~!」

「そういうことだったのですね。確かに短い言葉での説得力と言うよりも、先生のお言葉というところが重要だったのですね。ふふっ……!」

「おいあまり笑ってやるな……」

 

 

 言葉の重みより発言した人の方が重要だとはコイツらも思わなかったのだろう。単調思考だと大爆笑されてるぞかのんたち……。

 

 

「まあでも私たちもかのんちゃんたちと同類かもね、摩央」

「そうね悠奈」

 

 

 と言って再び俺を見上げると同時に立ち上がった。

 なんにせよ一年近くも抱えていた枷を外すことができたのでこれで良かったのだろう。もしかしたらコイツらのスクールアイドル人生は、今この瞬間に完結を迎えたのかもしれない。

 




 サニパは二期でマルガレーテに負けてからほとんど出番がなく、三期では一言しかセリフがなかったのでもうちょい描写が欲しかったとアニメ当時は思っていました。
そのため今回の話はそんな考えから構想を練ったものです。まあメインキャラが11人いて1クールでサブキャラまでピックアップした話はできないでしょうから、せめてこの小説くらいではスポットライトを浴びせたい! と思っていたので描けて満足しています(笑)


 次回からはまた個人回に戻る予定で、投稿は5/2(金)の0時になると思われます。
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