卒業式が終わった。
式の前に感情が揺れ動くんじゃないかとか、ナーバスになって意外と言葉が出なくなるとか、色々と予想はしてたけど特にいつもと変わらぬ平常心で淡々と時間を潰していた。アイツらが卒業証書を貰う姿を見て感動するとかもなく、強いて挙げれば卒業式に参加するのは学生のとき以来だから久しぶりとか余計なことを考えていたくらいだ。自分でもビックリするくらい暇を持て余していて、会場にいた誰よりも早く終わることを望んでいただろう。
俺は変わらぬテンションだが、学校を包む暖かい雰囲気はその穏やかさを増していた。
式が終わって友達や後輩たちと写真を撮ったり談笑をしたり、家族に和やかに迎えられたり、教師にお礼を言ったりと様々な最後を送っている。中には哀しさで泣いたりする者もいるが、それは決して負のムードを漂わせているわけではなく、むしろ卒業式という笑顔と涙で構築される多幸感に一役買っている。涙もまた卒業というイベントを彩る要素だろう。雲一つもない青空の下、桜がゆったり舞い散るシチュエーションは卒業生を見送る最高の彩となっていた。
そして、俺はその様子を学校の屋上から見下ろしていた。
やはりこの場所はいい。校庭で蠢く子たちの様々な表情を一気に捉えることができる。喜びと悲しみがここまで融合した雰囲気が漂うのが卒業式って感じだ。中々みられる光景じゃないし、それにもうすぐしたら校庭からも人もいなくなるだろう。だから今の間に堪能しておかなければ。
一通り眺めてみたのだが、Liellaの奴らの姿はどこにもなかった。もう帰ったのか建物の陰にいるのか、それとも校舎内か。11人でいられる時間も残り僅かだ。三年生や一年生は泣いてはないだろうが、二年生たちは先輩といた時間も長いし涙脆いから涙止まんねぇだろうな。容易に想像できる。
俺から何か声をかけなくていいのかと思われるかもしれないけど、各々に告白された時に気持ちは伝えたので今は特にない。さっき教室でも俺の受け持つクラスの連中には最後の言葉を伝えた。俺から生徒に向ける激励は満足するくらいに届けたし、俺も生徒たちから感謝の気持ちを受け取った。だから後腐れは一切ない。
ただ唯一、強いて挙げるとすればないことはない。ただあまりにプライベートなことなので公の場で話す内容ではない、ってことだ。
自分の中で決着がついたそのあること。真っ先に誰に伝えようかと迷っている。一応俺の初陣となる教師生活を見守ってくれた理事長や秋葉か。
いや、そんなの考える暇もなさそうだ。俺が黙っていてもいつも誰かが周りをウロチョロしやがる。こうやって一人でいても頼んでもないし求めてないけど群がってきやがる。
屋上の扉が開く音が聞こえた。
誰なのかは振り向くまでもない。
「今日だけでももう何度も会ってるだろ。また来たのか?」
事前に皮肉を飛ばしたうえで振り向く。
屋上に来たのは予想通りかのんたち三年生。はっとした様子で俺のところへ駆け寄って来た。
「最後にみんなで集まろうって言ってたのに、先生だけどこにもいなかったから探してたんですよ」
「とは言っても、先生ならここにいるだろうって検討はついてマシタ。可可たちの先生理解度テストの点数、ナメてもらっちゃ困りマス!」
「三年間ずっと一緒でしたから、先生が私たちのことを分かっているように、私たちも先生のことを熟知しているつもりです」
かのんも可可も恋もお見通しと言った様子。どうやらピンポイントで俺の居場所を射抜いたようだ。まあ卒業式で人が集まっている学校の敷地内で一人になれる場所、もうここしかないよな。ここなら見晴らしも良いので感傷に浸るにもピッタリの場所だ。
「で? ここで何をしているのよ。まさか本気で泣きそうになってたとか? でも涙を見られたくないから屋上来た、ってところかしら」
「バーカ。んなことで泣くかよ」
「そういえば先生って涙を見せたことないですよね。この三年間で一回も見たことないかも」
「そういや最後に泣いたのいつだったっけな。生まれた時か?」
「いやいやそれはないですよ……。え、ないですよね??」
「記念すべき私たちの卒業に感動しないなんて、感情が欠如してるんじゃないの?」
千砂都とすみれは俺が涙を見せたことがないことに驚いているようだ。
つうか泣くなんて感情を抱いたことがこれまであっただろうか。別に悲しみを感じない鋼鉄のハートの持ち主、ってことはない。哀愁を感じる時はしっかり感じている。今だって割とそうだしな。
「先生はここで何をしていらっしゃったのですか? 浅慮ながら、あまり良い表情をしているとは思えませんでしたが……」
「そう見えたか? ま、俺もお前らが来るのを待ってたってところかな」
「私たちのことを?」
「あぁ。いい機会だ、俺のことも話しておこうと思ってさ」
「先生自身の、おはなし……」
「純度100%のプライベートだ。それでもいいか」
「はい。むしろ是非!」
かのんの言葉と同時に全員が頷いた。
そう、理事長にも言われたけどこれを機に振り返っておいてもいいと思った。来年度から働く場所は変わらないものの今まで受け持っていたクラスはなくなり、そして新しい生徒たちが入学してくる。人間関係の環境が大きく変化するんだ。だからここが節目であり、しかも俺にとっては最初の転換期だ。
じゃあその総括を誰に向けて披露するかと言われたら、それは俺の教師生活を最も長く、最も近くで見てきたコイツらだろう。まあコイツらがそんな話を聞いても面白くないだろうけど、黙って聞く構えには入っているのでどうやらこのまま続けてもよさそうだ。もしかしたら話している最中に俺のボルテージが上がってしまい、コイツらに聞いてもらう意味のある語りになるかもしれないしな。
「この三年間、お前らだけじゃなくて俺自身も成長したって思うよ。天才肌で何でもすぐに身に着けるって思われがちだし、実際にそうではあるんだけど、ただ社会人は甘くなかった。新人なのにいきなりクラスを持たされるわ、新人だからって挨拶運動とか生徒会の監督にも駆り出されるわ、お前ら部活の顧問に勧誘されるわ、それだけ忙しいのに普通に事務作業がのしかかって残業させられるわ、これが社会人の厳しさかって痛感させられたよ。ま、今では慣れて疲れることもなくなったけどな。慣れたら手の抜きどころも分かってくる。やったことない仕事も勘所でサボれるタイミングを把握できる。だからこそその勘がない一年目は大変だったよ」
社会人の責任ってものもある。クラスを受け持つ都合上何十人の面倒を見なきゃいけないし、生徒会や部活を持つならソイツらに対しても同じだ。たくさんの女の子を統括するのはこれまでもやってきたことだけど、やはり好き勝手に振舞えた学生時代とは違って自分の言動は責務に基づく必要がある。誰かを導くのは当たり前として、立ち止まって話を聞いたり、後ろ向きの奴の姿勢を正したり、そういったマイナスをゼロに戻す作業すらも仕事の内だ。学生時代にも何気なくやっていたことで、しかも一度や二度ではないから慣れている部類ではあったけど、やはり仕事となると己の言動にかかる重みが違う。微量ながらも仕事だからってプレッシャーを感じるんだ。
とは言え、慣れてきた今はそういった負荷があってこその教師生活だと自分の中で確立している。だから余計な重荷を背負うこともなく、むしろ手を抜けることが何よりの成長の証だ。精神的な負担を感じていたら暇なんて見つけられねぇしな。
「慣れたのは三年間もあるからそりゃそうかってのもあるけど、一番の理由はお前らに出会えたことだ」
改めて5人と目線を合わせる。同時にみんなの肩がピクっと動いた。俺が最も伝えたかったことは自分の話もそうだけど、それ以上に出会えたことによる奇跡。コイツらもそれを察したのだろう。目が輝いていた。
やはり最初にコイツらに伝えるのは正解だったようだ。
「お前らの教師として顧問として、生徒から多くのことを学んだ。指導方法とかメンタルケアとか、各家庭との関わり方、スクールアイドル部の顧問として対外とのやり取り、教師スキルの向上という意味では挙げ出したらキリがない。だけど俺が最も成長したと思えるのは仕事にまつわることじゃなくて、人間的にもっと逞しくなれたことだよ。Liellaのメンバーは誰一人として同じ性格の奴らがいない。だから接するのは大変だったけど、それ故に思い出がどれも色濃く残っている。その1つ1つが自分の成長の証なんだ。スクールアイドルとしてひたむきに努力するみんなを顧問として間近で見守って、その情熱に触発されるように俺もお前らを支える力を養った。一人一人の我が強い個人と接し合いながらも、ソイツらが集まる集団をまとめあげた。自信がついたんだ。自分が持つ人を支える力、そして人と人を繋ぐ力。そのどちらも俺の中でしっかり根付いているんだって」
学生時代とは違う。責任を持ってコイツらを支えてきたからこそ分かったことだ。μ'sやAqours、虹ヶ先でやってきたことと同じように見えるけど、ここまで誇りを持ったことはない。今まで当たり前のようにやってきたことが教師としても存分に力を発揮できたことで、これまで自分が培ってきた人との絆を育む力は俺の真の武器となったんだ。これは教師として顧問として、責任を持って最後までやり遂げたという達成感を得たからこそ感じたことだろう。
「今まで無意識でやっていたことを意識して行動するようになって、それがお前らの笑顔に繋がった。それは俺にとって一番の成長実感だ。お前らは俺が夢を叶えてくれたって言ったけど、お前らも俺の夢を叶えてくれたんだ。お前らだからこそ、Liellaとして『ラブライブ!』の優勝を目指してくれたからこそだ。俺の学生時代はスクールアイドルと共にあって、そこで積み重ねた力をお前らで発揮できた。だからみんなと出会って、そしてLiellaの顧問として支えてきたからこそ実感できたことなんだ。だからお互いにとって奇跡だったんだよ。決して片側だけ、そっちから俺に光を結んでいたわけじゃない。俺だってみんなに結ばせてもらった。その心に俺の存在を。ありがとな、俺と一緒にここまで道を歩んでくれて」
だからみんなの心に俺の印象が強く残った。つまりそれくらい俺がコイツらにもたらした影響は大きく、更にそれつまり自分のやってきたことが正しかったんだという証明になる。別に学生時代も己の信念に基づいて行動していたのは間違いないけど、やはり教師という責任を伴うなって初めての成果を出せたって意味ではこの功績は誇れるものだ。失敗から学べる成長もあるけど、人間なにより成功体験こそ目覚ましい成長を生むからな。
話す内容に区切りがついたので改めてかのんたちの様子を注視する。
自分が話すことに集中していたので今まで気が付かなかった。コイツら、涙を流している。卒業式の前も式の途中でも、終わった後も一切泣いていなかったのに。それだけコイツらの精神が強くなったんだと少し感心していたのだが、まさかこのタイミングでの涙。やはり知らず知らずのうちに悲哀の感情を溜め込んでいたのか。
「せ、先生からお礼を言われるなんて……高校生活で初めてかもしれません!」
「んなわけねぇだろ……」
「泣いているところも誰かにお礼を言うこともない……。やっぱり感情が欠如してるじゃない!」
「でもそれが先生らしいです。感情に左右されず我を貫くその姿勢こそ、私たちを光ある未来に導いてくださった存在です」
「泣くのか驚くのか感謝するのか、ぐっちゃぐちゃだなお前ら」
「このタイミングで先生から素直にお礼を言われるなんて、珍しすぎて心に響きますよ!」
いや普通にお礼くらい言うって。でも感謝される方が圧倒的に多いから相対的に言ってる回数が少なく感じる現象はあるかもしれない。それでも素直に感謝を伝えることでここまで感動してもらえるなんて、これも会話の武器として使える……のか??
ただお礼を言い出したのであればここで言い切るべきだろう。そもそも伝えるのであればもうこの時間をおいてこれ以外にない。
少し緩んだ雰囲気から襟を正す。
「そんな俺を成長させてくれたお前らが、今度は別のステージで新しく自身の成長の道を進む。そんな嬉しいことはないよ。だけど困ったり迷ったり、挫けそうになったり、別にただ顔を見たいってだけの理由でもいい、いつでもこの学校に戻って来い。ここがお前たちの母校だ。告白で一度は気持ちを受け取ったけど、なんでもいい、また何か伝えたいことがあれば会いに来い。何度でも受け止めてやる」
「先生……」
「そして俺が繋いでやる。仲間を、絆を、愛を。俺がみんなの心の架け橋になる。だから寂しがることはない。俺たちはずっと一緒だ」
感情の高ぶりが最高潮に達したのか、かのんたちの流す涙の量が多くなってきた。やはりいくら成長しようとも涙脆いところは変わらない。こっちも貰い泣き……はしないけど、巣立っていくコイツらがここで見せる最後の感情表現と思うとしんみりする気持ちはある。
でも最後まで伝えきる。
そして、これが本当に最後の言葉だ。
「卒業おめでとう」
肝心なことを言っていなかった。最後がこれかよと思われるかもだけど、これには自分自身に対する激励も込められている。だからこの状況を締め括る言葉としてこれほどピッタリな言葉はない。
だが、その威力が高かったのかかのんたちの涙腺の防波堤があっさりと崩れ落ちた。さっきまでは涙を流しながらもなんとか暴走を抑えてはいたが――――
「「「「「先生!!」」」」」
「お、おいっ……!!」
なんと涙を滝のように流す5人から抱き着かれた。溜め込んで抑え込んでいた感情が遂に暴発したらしい。悲しがる後輩たちを前にして、せめて自分たちだけは笑顔で見送られようと思っていたのだろう。屋上に来るまで悲しげな表情を一切見せていなかったので相当無理をしていたに違いない。
だったら俺はそれを受け止めるまでだ。何度でもって言ったけど、早速その一回をここで使うことになるとはな。
でもむしろ安心した。最後の最後で名残惜しいと思ってくれていることに。これからも無理をして一人で抱え込むことはせず戻って来てくれることだろう。それが確かめられただけでも俺は嬉しいよ。またいつか、生の笑顔を見られるその時が来ることを――――
~※~
校庭に戻って来た。かのんたちは身体の水分を全て放出するくらいの涙を流しきったと言っており、そのせいかここへ戻ってくる頃には何食わぬ表情であった。まあまだ目尻が赤いからそこを指摘されたら逃げようがないが、後輩たちの前では悲しみを見せないスタンスは5人共変わってないようで頑張って誤魔化す気らしい。これが先輩の最後の務めってやつか。果たして上手くいくかな。
そんな中、集まっていたLiellaの後輩たちと出くわした。
俺たちの存在に真っ先にマルガレーテが気付く。
「あら、すっきりしたような顔ね。我慢は全部吐き出したのかしら」
「え、えぇ~? なんのことかな~?」
「…………そういうことにしておいてあげるわ」
「うぐっ……!!」
あっさりバレてやんの。マルガレーテ相手に隠し事は通用しないってか。目もまだ少し赤いし、俺と一緒に校舎から出てきたことを考えれば察しはつくか。
「あなたも言いたいことは全部伝えられたようね」
「…………なぜ分かった」
「式の前、あなたずっとそこら辺を一人でチョロチョロしていたじゃない。考え事をしている時は一人の世界に入る、あなたの癖よ」
人のことを言えなかった……。
でも知っていてなお誰にも何も言わなかったのか。本人にすらも指摘しなかった。まあ背中を安易に押すのはコイツの性格じゃないか。最後の最後までマルガレーテは至って自分を貫き冷静だ。でもコイツも自分の卒業式になったら涙腺が決壊したりするのかな。楽しみだけどあまり想像つかねぇ……。
「先生と先輩たちだけの時間を作ることも大切だと、敢えて何も言わなかっただけですよ」
「冬毬……。てかお前も気付いてたのかよ」
「はい。ただ先生が感傷的になるのはかなり珍しいので、私も一度この目に焼き付けたかったです。冷静さを失って感情任せになるそのお姿を」
「心配しなくてもいいわ冬毬。私たちの卒業式こそLiellaの真の解散になる。つまり集大成となる言葉をこの人から聞けるのは私たち。それこそかのんたちへの言葉より、もっと情熱的で心を揺さぶられるセリフをね」
「なるほど。それでは楽しみにしておきましょう」
「卒業式なのに調子変わんねぇなお前ら」
そのあと二人揃って『自分たちの卒業式ではないから』とこれまたいつもの淡々としたテンションのまま言い放った。
先日気持ちを伝えてきた時の『先輩たちとは違って自分たちにはまだ二年ある』発言もだけど、聞かれたら先輩たちが泣いちゃうセリフを容赦なく突き刺すこの二人。やはりその鋼鉄のメンタルには世話になった先輩たちの卒業ごときでは何の影響も与えられないようだ。あまりにも逞しすぎるだろコイツら。最後の最後まで強キャラ感が満載だ。
対して二年生たちは今まさに三年生たちの前で涙を見せている。そりゃ二年間も一緒にいたわけだし、スクールアイドルとしても人間としても成長できたのは先輩たちの指導があってこそだろうしな。別れが惜しくなる気持ちも分かる。それに冬毬やマルガレーテと比べて圧倒的に人懐っこくて、先輩たちに可愛がられていたってのもあるかもしれない。ただそれはその二人の方が歳相応離れしているせいだからコイツらのせいではないのか。
二年生もひとしきり涙を出し切った後、そろそろ卒業式の終わりも迫っていた。もうすぐで片付けの時間となるため校庭にいる奴らは解散する必要がある。
俺たちもお暇しようとしたその時、きな子が生徒会のカメラを持って俺たちに提案する。
「みんなで写真を撮るっす! 最後の最後、先輩たちと一緒に!」
「あっ、そんな大切なことを忘れるなんて! 撮ろうぜ撮ろうぜ!」
「最後の思い出、いい響き。部室に飾りたい」
「じゃあみんなであそこの桜の木の下に集まりますの!」
そういや今日Liellaが全員集合するのは今が初めてか。写真なんててっきり式の前に済ませているかと思ったが、あの時はきな子が送辞の練習の追い込みで大変だったし、冬毬とマルガレーテもコサージュの受け渡し係だったから時間がなかったのだろう。
最後の思い出、か。これがLiella11人での最後の活動。だったら俺が綺麗に撮ってやろう。
「カメラ貰うぞ」
「あっ、先生」
「俺が撮ってやるから、お前も行け」
きな子からカメラをひったくる。
ただその瞬間、横から別の誰かに奪ったカメラを更に奪われた。
「えっ? 七海!?」
「センセーもあっち側でしょ。私が撮ってあげるからさ」
「あ、あぁ……」
カメラを奪ったのは七海だった。最後の最後で謎に気遣いを見せてくるが、この優しさも最後だからだろう。
とその時、今度は七海の手からカメラが捕らわれた。
「えっ!?」
「秋葉か……」
「七海ちゃんも行っておいで」
「いやでも私はLiellaじゃないし……」
「七海ちゃんも一緒に写ろうよ! Liella活躍の後押しをしてくれた一番の貢献者だもん、もはやLiellaみたいなものだよ!」
「澁谷ちゃん……。全くもう……」
俺も写真に写るのはそこまでノリ気じゃないけどな。まあ最後だから許してやろう。
だが――――
「なんで俺が前列の真ん中なんだよ。昔からいつもそうだ。どいつもコイツも俺を目立たせやがって」
「そりゃ先生デスから!」
「意味分かんねぇ……」
と愚痴を溢しながらも、このメンバーで撮る最初で最後の写真と思うと込み上げてくる暖かい感情に頬も緩む。なんだかんだ卒業式の雰囲気に俺も飲み込まれてしまったのかもしれない。特にさっき自分の気持ちを解き放った際に心の窓が全開になって、そこからコイツらが放つ嬉しさも悲しさといった感情を吸収してしまったみたいな。
暖かいと感じるのもここまでの旅路に一区切り、そしてこの先の未来の光を目視できる安心感があるからだろう。今の居場所とこの先の道がどちらも明瞭であればそれほど安心できることはないからな。
だが最後と言えどもまだ終わらない。在校生たちはまだまだ走るべき道があるし、俺も支える奴らがいる。卒業式は別れの季節でもあるけど同時に未来に期待を馳せる行事でもあるんだ。屋上で思い出を語っている時にそれを感じて、あの時は柄にもなく熱くなっちゃったな。
ともあれ、今は一時の休憩。
この学校から旅立つ者、残って輝き続ける者。今まさに最高潮に達したその絆の強さを感じながら、この平穏なる時をゆったりと堪能することにしよう。
夢の終わりと新たな夢の始まり、それを告げる春の息吹を感じながら。
Liella編の第三章、これにて完結です!
ここまでお付き合いいただき誠にありがとうございました!
語りたいことは色々ありますが、まずはキャラのお話から。
途中で別の章が挟まったとはいえ、Liella編の第一章が4年くらい前になるのでLiellaメンバーともかなりの付き合いでした。主人公たちが進級していく過去にないパターンのシリーズでしたが、逆にそれがキャラの成長を感じられるようになってとてもいい構成だなと思いました。
この小説ではキャラの成長よりも恋愛に重きを置いていたのでそちらがメインだったのですが、最後にはどのキャラも個人回で大団円を迎えられて私としてはかなり満足のいく締め方ができたと思っています。
冬毬とマルガレーテはこの章だけがメインの活躍の場となりました。ただ最初から強キャラに設定しておくことで恋愛面もスピーディに話が進んでいくなど他の子たちに後れを取らないよう対策した結果、こちらも無事に良い締めを迎えられたかと。ただやはりこれだけ魅力的なキャラをこの章だけの活躍にしておくのは惜しく感じますね(笑)
キャラの話で言えば、七海。彼女は一応アニメ出身キャラでありつつこの小説ではほぼオリキャラっぽく仕上げていました。それでも話のスパイスとしては丁度良くネタの幅も大きく広がるので、今後もこういった原作キャラを着色して出演させる方式は取っていこうかなと思います。なんせ、原作キャラは良い子ちゃんたちが多すぎてスパイスが控えめになることがあるので(笑)
次は三章全体の話について。
三章は冬毬とマルガレーテの話を多めに入れつつ、中盤からは告白リレーと呼ばれるほど個人回を連発する流れでした。私も多少マンネリを感じたので途中でサブキャラ回を挿入したりしましたが、飽きずにここまで来られたでしょうか(笑)
蓮ノ空編の第一章でもそうですが、中盤以降の個人回連打は私は構わないのですが単調な展開になる傾向があるので、次回以降はもっと日常回やネタ回など増やしていければと考えています。
次は読者の皆様へ向け。
改めてここまでお付き合いいただきありがとうございました。
毎回各章が始まった時は『これ終わるのいつだろうなぁ』と先を見据えるだけでも気が遠くなりますが、毎回最終回でこの後書きを書いていると『終わるの早かったな』と年寄りみたいな気持ちをいつも抱きます(笑)
長年読んでくださっている方はもちろん、この章から読み始めた方も最大級の感謝を。Liellaのキャラがメインで活躍するのはこれで終わりかと思いますが、また特別編やゲストで登場することにご期待ください!
次回以降について。
次回以降ももちろんやります。来週のいつも通りの時間に投稿する予定です。
特に特別編を挟む予定はないので、新章にてまたお会いしましょう!
それではLiella編はこれにて。ありがとうございました!