ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常2~   作:薮椿

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 本日から蓮ノ空編(104期編)がスタートします!
 時系列はリンクラの活動報告104期でラブライブを優勝した後の話となります。

 戻って来た蓮ノ空編に新キャラを加えて再スタートとなるため、この章も是非お楽しみください!



蓮ノ空編2
いきなりピンチ!?危険な再会!(前編)


「なんで俺がスクールアイドルのイベントの手伝いをしなきゃいけねぇんだよ……」

「だってバイトの子が風邪で休んで欠員になっちゃったんだもん。運営も昨今の人手不足で火の車だからね、足りない分を補充しないと回らなくなっちゃうの」

「だからって俺を巻き込むなよな。せっかく久々の休みだっつうのによ……」

 

 

 最近まで色々あって久しぶりに一息つけることになったから、今日は昼まで寝るぞと意気込んでいた矢先にこれだ。俺の姉、秋葉に叩き起こされて半ば強制される形で車に連れ込まれた。

 どうやら都内でスクールアイドルのイベントがあるようで、そこの応援に駆り出す気らしい。しかもそのイベントは既に開催中であり、よって欠員となった会場スタッフの補充は早急の要件らしい。スクールアイドルの運営の裏の顔として暗躍しているコイツのことだ、喜んで俺を推薦したことだろう。今度は何を企んでいるのやら。

 

 しばらくしてイベントの会場前に辿り着いた。

 車を降りるとその壮麗なドームが目に映る。流石にスクールアイドルの最高峰のイベントである『ラブライブ!』の会場には劣るが、それでも巨額を投じたであろう立派な建物が昼の明るさにも負けないライトアップでこの土地の一帯を支配していた。こんな建物があったことすら知らなかったが、最近は忙しくて界隈の動向を追えていなかったから仕方ない。それにスクールアイドルは年々その人気を爆発的に伸ばしており、それに伴いイベントに力を入れようと思えば専用の施設の建設くらい造作もないか。秋葉の息がかかっている界隈だしな、コイツがいれば何でもアリだ。

 

 だったらバイトで欠員が出たくらいで焦るような体制を何とかしてほしいものだが……。

 

 

「じゃあ零君、あとは頑張って!」

「はぁ? お前は行かねぇのかよ?」

「私は私でやるべきことがあるからね。まあ自分の責務をしっかりと果たしてくれたまえよ」

「たかがバイトに何が責任だよ。こちとら気持ちよく寝てたところを叩き起こされて今でもストレスが消えてねぇっつうのに、真面目にやってられっか」

「そう言いなさんなって。羽を伸ばせる機会は久しぶりでしょ? それに君の大好きな女の子の笑顔が集まる場所だからね。バイトの立場だろうけど楽しめると思うよ?」

「ったく都合のいいこと言いやがって。で? 先に事務所へ行けばいいんだよな?」

「そうそう。そうだ、スタッフのカードを渡しておくね。このカード入れに入れてストラップを首にかけておけばいいから」

 

 

 顔写真入りのスタッフ証明カードとストラップ付きのカード入れを受け取る。

 てか俺のこの写真、いつ撮ったんだ? 覚えがないけどまた偽造されたか。俺がどこかへ潜入するときは決まってコイツが顔写真を用意してくれるため、今回もその延長線上だろう。犯罪行為が日常茶飯事すぎてどこからが赤信号ラインか俺の中で分からなくなりそうだ。

 

 そして秋葉はそそくさとどこかへ行ってしまった。やるべきことがあるっつってたけど、恐らく俺をここへ送り込んだ理由もそっちのタスクの方がメインだろう。羽を伸ばせるとかなんとか言ってたけど、また何か起こりそうな気がして気が気じゃねぇよ全く……。

 

 そんなローテンションのまま事務所へ向かうためライブ会場の外を練り歩く。

 外では食い物の屋台も数多く出店しており、『ラブライブ!』がガチの大会だとすればこっちはかなりカジュアル寄りのお祭りのようだ。それなりの規模のイベントだからか人の往来が激しい。こんな喧騒なところで人混みに揉まれでもしたら、ただでさえ溜まっているストレスが更に肥大化する。遠回りにはなるが屋台ゾーンを避けて迂回しよう。迂回ルートも人の行き来が多いと思うけどここよりは幾分かマシだろう。

 

 その途中でイベントのパンフレットが配布されていたので受け取る。

 どうやら建物の中と外のどちらでもライブが行われており、それなりの数のスクールアイドルが参加しているようだ。しかもスクールアイドルを目指す未来の子供たちのため、なんとバックダンサーとして参加させるライブもあるそうだ。全てのグループのライブに参加させるわけではないものの、ガキの頃からスクールアイドルの卵を育成するってこの界隈がどれだけビッグなのか実感させられるな。

 ちなみにそのパンフには各グループのライブの時間や屋台マップまで細く記されていた。ご丁寧に参加グループの写真まで掲載されているため、これだけでもグッズとして重宝できるだろう。

 

 詳しくは後で確認しようと思い、パンフを丸めてズボンの後ろポケットに突っ込む。あと事務所へ向かうまでに来場者にスタッフだとバレて仕事を振られないよう、ストラップを首から下げたままカード入れは胸ポケットに隠すことにした。

 

 しばらくして迂回ルートに到着する。

 ただ屋台ゾーンからやや離れているとはいえ人は多い。秋葉からメッセージで受け取った仕事内容、および事務所までの道のりを確認しながら歩く。

 

 スクールアイドルの祭りで唐突に思い出したのだが、アイツらは『ラブライブ!』を優勝できたんだろうか。別れてからもう一年半くらい前になる。だから順当であれば『ラブライブ!』にはこれまでに二回挑戦できたはずだ。アイツらと別れて以降はかなり忙しかった。故にスクールアイドル界隈の情報を追っている暇もなかったのでアイツらの動向も知らない。ただこれからしばらくはゆっくりできそうだし、アプデが溜まりまくっているスクコネを久々に開いて確認しておくか。俺の正体バレを避けるため、アイツらとの連絡は秋葉が完全にシャットアウトしてるからこれくらいしか確認方法がないんだよ。

 

 なんか思い出すと懐かしいな。まさかガキの姿にされて二度目の高校生活を送るとは思わなかった。制服は久々だったけどシャレたデザインだったから俺は割と好きだったぞ。

 そうそう、今目の間に飛び出してきた臙脂(えんじ)色の――――って!?

 

 

「わわっ!? す、すみません! 徒町よそ見をしていました!!」

「大丈夫か? 思いっきりぶつかりそうだったけど」

「はいっ、全然問題ありません! えぇっと、お兄さんは……?」

「俺も大丈夫だ――――ッ!?」

 

 

 女の子が横から俺に突撃しそうになったが、ギリでブレーキが間に合ったおかげで踏み留まれたようだ。

 黄色がかったセミロングヘアー。髪の左端に1房飛び出たアホ毛が特徴の小柄な少女。それ以上に俺が気になったのはその制服。それは間違いない――――蓮ノ空女学院のものだ!

 

 ここで憶測が連鎖して生まれる。

 まずこの制服を着た奴がスクールアイドルイベントの会場にいるってことは、間違いなくアイツらがここにいるってことだ。コイツがスクールアイドル本人なのか応援で来ているのかは定かではないが、アイツらがいることは確かだろう。

 そしてアイツらがいるとなるとこの姿でいるのはマズい。ガキから元の姿に戻っているとはいえ、秋葉の薬の力で大人に戻っていることに変わりはない。そしてその薬、正体がバレた暁には俺の身体が溶け落ちるという謎の副作用を持っている。だから目の前のコイツならまだしも、アイツらにこの姿で出くわすのはヤバい。大人の姿は一度も見せたことはないけど会わないことに越したことはないだろう。向こうには察しのいい奴もいるしな。

 

 

「お兄さん? さっきから難しい顔をしていらっしゃいますけど、本当に大丈夫ですか? はっ、やっぱり徒町のせいでどこかお怪我を!? だったら医務室! 医務室へ行きましょう!」

「いや実際にぶつかったわけじゃねぇから、大丈夫だって」

「そ、そうですか……。だったらお詫びを! 徒町のお小遣いでは高いモノは買えませんが、屋台の食べ物であればどれでも! ご馳走します!」

「いやいいから! 俺も考え事をしながら歩いてたし、両成敗ってことで」

「うむむ……お優しい」

 

 

 すげぇ慌ただしい奴だな。いかにも後輩キャラっぽく謙遜が凄まじい。リボンの色が黄色ってことは一年生か。大賀美が同じ色のリボンをしていて、卒業と入れ替わりで入学したと考えれば間違ってないだろう。

 

 おっと、こんなところでグズグズしている暇はない。早くここから離れないとコイツの()()が来ちまう。

 しかしコイツがタダで帰らせてくれなさそうだから困ってんだよな……。

 

 

「小鈴!」

「あっ、吟子ちゃん!」

「『吟子ちゃん!』じゃないでしょ。もう、勝手に走り出したら危ないよ!」

「屋台エリアからいい匂いがするから、誘われる気持ちも分かるけどね~」

「姫芽ちゃんも!」

「いきなりいなくなっちゃうんだもん。ビックリしたよ~」

「ゴメンね。お腹ペコペコでつい……」

 

 

 なんかお仲間がわらわらと集まって来たぞ。

 黒髪のおかっぱでつまみ細工の髪飾りをつけている子と、ピンク髪で玉ねぎを連ならせるような髪型にアレンジしている子。どちらもこの小柄な奴よりも背は高く、黒髪の方は体格が良く、ピンク髪の方はすらりとした体型で二人共スタイルが良さそうだ。

 

 面倒事に巻き込まれないためにもこのままこっそりエスケープした方がいいだろうか。逡巡していたらこちらがどんどん不利になっていくばかりだ。

 

 だが、時すでに遅し。さっきやって来た二人の視線は当然俺に向けられる。リボンの色が同じなのでコイツの同級生だろう。友達が成人男性と一緒にいるところを目撃して気にならない奴はいない。しかも黒髪とピンク髪の二人に比べてコイツは一回り小柄だ。そんな小さな子が男と共に何をしているのか。犯罪の臭いがしても不思議ではない。一応今朝叩き起こされて車で連行されてきたとはいえども、突貫工事ながら身なりは整えてきたので卑しい奴だとは思われてない……はず。

 

 

「えぇっと……小鈴ちゃん、こちらの方は?」

「さっき知り合ったお兄さんだよ! 徒町がぶつかりそうになっちゃったから、何かお詫びがしたくって……。だから屋台で一品ご馳走することになったんだ!」

「えっ、それってカツアゲされてない……?」

「んなわけねぇだろ。むしろ俺は両成敗で済ませてやるって言ってんのにコイツが納得しねぇんだよ」

「あっ、そういう。小鈴って律儀すぎるところあるもんね……」

「お兄さんもこう言ってくれてるし、ここはお互いに身を引くってコトで折半でいいんじゃないかなぁ~?」

「う、うん……。お兄さんすみません、ご迷惑をおかけしてしまって」

「別にいいよ」

 

 

 空気になってあわよくば逃げようと思ってたけど、カツアゲ犯にされそうだったら思わず口を挟んでしまった。そのせいで話の輪の中心に返り咲いてしまい退路を断たれてしまいそうになったが、ようやく話題も終わりそうだ。

 

 しかし、我が身に巣食う巻き込まれ体質の本領はこんなものではなかった。

 

 

「吟子ちゃーんっ! 小鈴ちゃーんっ! 姫芽ちゃーんっ!」

「あっ、花帆先輩の声」

「えっ!?」

「こっちです先輩方!」

 

「あっ、あっちに集まってますよ――――梢センパイ!」

「ちょ、ちょっと、あなたまで迷子にならないでね――――花帆」

 

 

 これ自分からフラグを乱立しまくってないか? いつもこうだよどうしたらいい……??

 少し離れたところからこちらへ向かってくる、コイツらと同じ制服を着た6つの人影。日野下花帆、乙宗梢、村野さやか、夕霧綴理、大沢瑠璃乃、藤島慈。かつて俺が蓮ノ空に潜入していたときに交友を深めた連中だ。まあそのときはガキの姿だったからこの格好の俺ではないけどな。だからこそ一刻も早くここから立ち去りたかったんだよ。

 

 無理矢理この場から離れようと思っても、いい感じに植木や人通りの波に阻まれる位置にいて、更に目の前には一年生たちがいるため逃げようにも逃げられない。

 そうやってまごついている間に花帆たちがこちらに合流してしまった。

 

 まさかこんなところで再会するとは想像もしていなかった。しかもここは都内、金沢でしかも山奥の学校のスクールアイドルがこんなところにいるなんて――――と思ったが、今やスクールアイドルは全国どころか全世界規模でその数を増やしている。だからどこの出身だろうがスクールアイドルのイベントならばコイツらがいてもおかしくないか。

 

 

「気付いたらわたしたちから離れていたので驚きました。てっきり人混みに飲み込まれてしまったのかと……」

「さやか先輩、心配をおかけしてすみません! 徒町、勝手に舞い上がっちゃいました!」

「これだけ大きなイベントだもんね。周りのパリピテンションにつられてルリもアガちゃってるよ。花帆ちゃんもずっと目キラキラさせてたしね」

「だってさっきのグループのライブがとっても凄かったんだもん! なんかこう、観客の心の炎に薪をくべるのが上手いというか、ハラハラドキドキしちゃったよ!」

「ふふっ、バックダンサーの子供たちから伝わる情熱にも燃やし尽くされそうでしたもんね、花帆さん」

 

 

 花帆たち一年生、じゃなかった、二年生は変わりないようだ。背は残念ながらあまり変わってないか。平均したら一年生の奴らより低いんじゃねぇか? ただ先輩になったからか顔付きが少し大人っぽくなったかもしれない。

 って世間話をしたい気分が湧いて出るが、当然ながら発言することはできない。さっきも言ったが大人の俺が子供の俺だってバレるのはご法度だ。つうか大人の俺が元の自分なのに、これじゃあ子供の俺の方が元の自分みたいでややこしくなるな。しかも蓮ノ空関係者以外に対してはその考え方が逆になるので、生きてるだけでこの倒錯した思考を常に意識せざるを得ないのが悩みの種だ。

 

 

「めぐちゃんもテンションが上がる気持ち分かるよ。だって私ら『ラブライブ!』優勝校だからね! 至るところから声をかけられて鼻が高い、みたいな!」

「それは自分自身に使う言葉ではないのよ。でも注目されるというのは悪い気分ではないわね。それだけ(わたくし)たちのライブを観て応援してくださる方がいるということだから」

「他のスクールアイドルの仲間もたくさん増えて、子供たちの輝きも感じられて、ボクもこのイベント楽しいよ。もっと色んなステージを観てみたい」

 

 

 三年生も変わらず元気そうだ。最上級生になったからか歴戦の猛者を感じさせる貫禄が出ている気がする。

 それにさっき疑問に思っていたコイツらの『ラブライブ!』優勝について、会話を聞く限り夢は叶ったようである。去年と今年どちらで達成したのかは分からないが、『ラブライブ!』の話題を前向きに語れるあたり今年に成したのだろう。祝福してやりたいところだが、もちろんこの姿なので安易な言動は慎むべきだ。窮屈だねぇ俺の立ち位置って。

 

 

「吟子さん。一緒にいるこちらの方はお知り合いかしら……?」

「あぁ、実は小鈴が走ってる最中にぶつかりそうになった方です」

「そうだったの。申し訳ございません、(わたくし)たちの仲間が失礼なことを……」

「いや十分に謝ってもらったからいいって。じゃあ俺はもう行くから」

「はい~。あ、もしよければアタシたちのライブ観に来てくださ~い」

「時間があったらな」

 

 

 話を振られたが、話題を広げられる前に流れを断ち切って離脱を選択。気になっていたコイツらの様子も確認できたことだし、あとはスクコネなりネットなりで情報収集すればここまでの軌跡を辿るには事足りるだろう。『ラブライブ!』の優勝校であれば流布されている情報も多いだろうしな、足跡を辿るのは簡単だ。

 

 心の中で別れを告げながらコイツらの間を無理矢理突っ切ろうとした、そのときだった。

 突然手首を掴まれる。振り向いてみると、綴理がいつもの純朴な瞳でこちらを注視していた。

 

 

「れい……?」

 

 

 心臓が飛び出そうになる。

 確かにコイツは考えるより感覚で物事を読み取る人間だ。でもそんなピンポイントで正解を射抜くなんてこちらの想像の範疇を超えている。

 ただ、俺の身体に特に変化はないようだ。バレたら身体が溶け落ちる薬の副作用があるがまだ発動していない。つまり綴理の中でもまだ半信半疑の状態で、今からそれを確かめる段階に踏み込むに違いない。それはなんとしても阻止しないと……!!

 

 つうか秋葉の奴、イベントの関係者だったらコイツらが来ていることくらい知ってただろ。だったら最初に言っとけよな。もしかしたら面白がって知っているのに伝えてなかった可能性もあるけど……。アイツの性格からするとそっちな気がしてきた……。

 

 

「綴理先輩!? その方は零さんではないですよ! 雰囲気は似ていると思いますが……」

「あたしもちょっと思ってた。なんだか零クンの匂いがするなぁ~って」

「花帆ちゃんまでそんなことを……。でも花帆ちゃんとつづパイセンの直感は鋭いからなぁ」

「でもこの人は大人でアイツは子供じゃん。まあ顔立ちとか似てるところがないといえばウソになるけど、全然別人でしょ」

「あなたたち失礼よ。申し訳ございません、(わたくし)たちの知り合いに似た風貌の子がいるものでして……」

 

 

 コイツら鋭すぎるだろ……。

 流石に大人と子供の差のおかげで今の俺が『神崎零』だと断定されてはいないものの、それでも雰囲気とか風貌とかでニアピンしてくるのはやめてくれ。心の臓に悪い。ほんの少しこの姿の俺と会話しただけで真相に近づいてくるんだ、楓が蓮ノ空に襲来したあの事件のときにアイツらの前で大人に戻らなくて良かったな。疑惑を確信に変える手がかりを残しちまうところだったから。

 一応慈と梢が否定してくれているから、全員が真相へ一挙に押し寄せることはないだろう。ないと信じたい。

 

 そんな中、一年生たちがこそこそと話をしているのが聞こえる。

 

 

「小鈴、姫芽。さっき先輩たちが言っていた『零』って、もしかしてよく話に出てくるあの……?」

「そうっぽいねぇ~。見た目は似てるけど、あの人は大人で写真で見た人は子供だから全くの別人のような気もするけど……」

「でもどちらも凄くイケメンさんだよね! 蓮ノ空で起きた事件もその人に頼めば全部解決するスーパーヒーローって先輩たちが言ってたし、写真のあの人もさっきの方も同じような感じがするかも!」

「会ったことがないからその人の雰囲気は知らないけど、蓮ノ空を牛耳る王とか呼ばれてたらしいから、そんな風格のある人だったら会った瞬間に『この人だ』って分かるかもね」

「あと女(たら)しで色欲に惑わされる女子生徒が多かったって話もあるよね~。吟子ちゃんのいう通り、そんな獰猛なオーラを持つ人に会ったらすぐに確信できちゃうかも」

「それだけ凄い人が蓮ノ空にいたなんて、徒町一度でいいから会ってみたいなぁ~」

 

 

 目の前にいるけど……。

 つうか花帆たち、コイツらにあらぬ情報を吹き込みやがったな。スーパーヒーローなのはいいとしても後半の二つは捉え方によっては悪口だろ。まあ思春期女子が集まる学校ってのは得てして噂話が豊富だ。悪事千里を走る。三週間しか滞在していなかったのに俺の噂が誇張拡大されて広まっていたこと、今でも鮮明に覚えてるよ。それがコイツらの世代になっても語り継がれているとは思わなかったけどな。

 

 それはともかく、後輩たちにまで俺の印象が伝わっているとなると早急にここから退散しないと。

 

 

「ボク見たことあるよ。ぶいあーるで」

「VRですか? それっていつの――――あっ! もしかして零さんが去った翌日のあの……!?」

「え゛っ!? それってルリたちが後で生徒会にみっちり怒られたあれ!?」

「確かに! そこで出てきた人に似てるかも! でもそのVRは結局そのとき一回こっきりだったし、もう一年半前であまり覚えてないなぁ。感覚だけは今でも手に取るように分かるけど……」

「あのときのことはあまり思い出したくはないのだけれど……。麻薬のような刺激だったから……」

「私たちあまりに乱れ過ぎて、しばらくの間生徒会に監視されちゃったからねぇ……。いや思い出したらまた身体が疼いてきた!! このめぐちゃんのハイパーボディを好きにできるとは幸運者めぇ!!」

 

 

 なんだか頬を紅くしたり遠い目をしたり、一体コイツらに何があったんだ?? 俺が知らないところで大人の俺イコール子供の俺と結びつけられる証拠を得た事件があったってことか??

 気になるけどもしそうだとしたらこの場から去るのは一刻を要する。さっきまでは逃げたい気持ちとコイツらの様子が気になる気持ちが混在していて尻込みしていたが、もう迷っている暇はない。

 

 俺は未だ手首を握っていた綴理の手の指を優しく解く。

 

 

「わりぃ。用事があるからそろそろ行くよ。じゃあな」

 

「あっ、行っちゃった……。零クン……じゃないよね、流石に」

 

 

 久々に会えたのでもっと話したい気分ではあったのだが、それはもし今後ガキの姿になる機会があったらにしよう。兎にも角にもまず我が身を守らないとコイツらと心から再会することも叶わないからな。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 アイツらと別れた後はスタッフの仕事を淡々とこなした。

 スクールアイドルと子供たちの誘導やケータリングの準備などの裏方作業がメインだったので、特にこれといった出来事も起こらず無事に責務を果たせそうだ。秋葉が何をやっているのかは不明だが、とっとと終わらせてとっとと帰るに限る。大人の姿でアイツらに会う可能性を減らしつつ秋葉が仕掛ける面倒事も回避できるからな。

 

 それにしてもイベントに参加しているスクールアイドルのグループ数が多い。しかもアイドルの衣装に詳しくないせいか似たような色やデザインの衣装も多い印象を抱く。だから誘導対象のグループとは別のグループに声をかけそうになってしまったことがあった。可愛い系、カッコいい系、クール系等々、衣装のデザインとしては既に飽和している気もするな。まあこれだけグループの数が増えれば仕方のないことだし、人気グループの衣装を真似て作る奴も多いだろうから似るのも尚更か。

 

 なんにせよ俺の仕事はもう終わりそうなので関係のないことだ。このまま何事もなく穏便にやり遂げたい。

 そんなことを祈りながら建物内の関係者通路を歩く。このあたりはスクールアイドルたちの控室や更衣室が並んでいるため男があまり近づいてはならない場所なんだろうが、俺は仕事でここにいるんだから仕方がない。そもそも女の子の肌なんて見慣れてるし、女の子側も女性ばかりの関係者通路だからと言って恥ずかしいと思われる格好で闊歩するのが悪い。だから気を払う必要はない。

 

 あとはもう少しでライブが終わる奴らの誘導を済ませるだけ。それさえ何事もなく完遂すれば晴れて自由の身だ。

 帰ったら何をしようか考えながら控室の近くを通りかかる。

 

 すると、その中から聞き慣れた声が聞こえてきた。

 

 

「どうしましょう梢センパイ!? あたしの衣装が――――なくなっちゃいました!」

「えぇっ!?」

 

 

 巻き込まれ体質、容赦なく発動。

 あぁ、どうやら穏便には終わらないみたいだ……。

 

 

 

 

To Be Continued……

 




 蓮ノ空編(104期編)がスタートしました!
 まず103期編では描かれることのなかった大人零君と花帆たちの出会いから。再会なのか初対面なのかよく分からない感じになっちゃってますね(笑)

 更にこの章からは新キャラとして一年生の3人を加え、前回よりもパワーアップしたお話を展開できると思うので是非毎週の投稿を楽しみにしていただければと思います!
 なお、いつものことですが設定は公式からお借りしていますが、この小説で繰り広げられるお話は全編オリジナル展開となります。一応裏では本編の活動報告の話が進んでいると考えていただければと。

 蓮ノ空での新しいストーリー。いつまで続けるかはまだ決めていませんが、皆様これからよろしくお願いします!
 また新章を機にご感想や評価をいただけると励みになります。
 ここまでで感想・評価をしてくださっている方、ありがとうございます。感想はもちろん評価も高低含めコメントは全て拝見しています!




↓↓次回予告↓↓
 蓮ノ空のライブ直前、花帆の衣装が消える事件に遭遇した零。
 行方は早々に見当がついたものの、大人の姿では彼女たちに会うことができない。
 彼女たちの前に堂々と現れるための唯一の方法は、やはりアレしかない!

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