ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常2~   作:薮椿

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はじめましてと久しぶり!

「改めまして、蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ1年生の徒町(かちまち) 小鈴(こすず)と申します! 何卒、よろしくお願いします!」

「同じく蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ1年生の安養寺(あんようじ) 姫芽(ひめ)です! よろしくお願いしま~す!」

「同じく百生(ももせ) 吟子(ぎんこ)です。これからよろしくお願いします」

「神崎零。コイツらから聞いてると思うけど、これでも一応高校二年生だ。全然先輩には見えなくてどう接したらいいのか分からないと思うけど、各々楽な方法でコミュニケーションしてくれたらいいよ」

 

 

 蓮ノ空のライブは無事に終了した。

 花帆の衣装が消えるトラブルがあったものの迅速に解決したおかげで事なきを得た。その代償として俺がまたガキの姿になったわけだけど、これも再びコイツらに感染したスクールアイドル病を治療するためだから仕方がない。ただ久しぶりに子供になったからまたこの身長差に慣れないとな。大人の自分と比較するのもそうだけど、女の子側からナチュラルに見下ろされるこの低身長は違和感が半端ない。

 

 スクールアイドル病の早期治療のため、子供になったその足で即日蓮ノ空へ向かうことになった。そのためイベントを終えたコイツらと一緒にあの山奥の監獄に帰ることになったわけだ。

 そして、イベント会場を去るタイミングで一年生たちとようやく初顔合わせ。まあ俺は大人の姿で一度会っているんだけど、当然その事実を明かせるはずもなく今は初対面を装っている。ただ大人の姿で会ったときに花帆たちに子供の俺と雰囲気が似ていると感じられてしまったので、もう安易に元の姿に戻ることはできねぇなこれ。子供の姿の俺をコイツらにより印象付けて怪しまれないようにしないと。

 

 印象といえば、俺から見た一年生の初印象は『いい子たちっぽい』だ。この僅かな時間であっても話しただけで分かる正統派な後輩感。イタズラ好きだの小悪魔系だの手の焼ける奴らではなさそうだ。俺が関わってきたスクールアイドルやその周辺人物って大抵誰かは狂ってたから、ここまで先輩に従順そうな奴らばかり集まっているのは初めてかもしれない。思えば花帆たちや梢たちの年代も同じだから、やはり外界との接続を絶たれる箱入りお嬢様学校の生徒ってことか。

 

 

「どうどう吟子ちゃん! 生で見る零クン、とてもカッコ可愛いでしょ!」

「それは写真で見るよりかはですけど……」

「惚れちゃうよね~!」

「そ、そこまで言っとらん! 一目惚れ自慢する花帆先輩がおかしいだけだから!」

「花帆は零君と出会ったその日から話す話題が彼ばかりになったものね。でも自分の価値観を他人に押し付けてはダメよ」

「え~? でも梢センパイだってデレデレだったじゃないですか! 零クンがいなくなった後もティーカップ用意しちゃうくらい喪失感あったって聞きましたよ!」

「そ、それは彼がいることが日常と化していただけで、急にいなくなったらそれに適応するのにも時間がかかるのよ!」

「日常化している時点で割と拗らせてる気も……」

 

 

 なるほど、百生は結構苦労人ポジなんだな。ナチュラルに会話の板挟みにされる奴だとさっきの会話を聞くだけで分かる。

 

 百生吟子。真面目でしっかり者っぽく、和のイメージがありお淑やかそうだ。たださっきの会話の通り周りに流されやすい優柔不断な面もあることが窺える。

 容姿は黒髪のおかっぱでつまみ細工の髪飾りをつけており、体格はかなり恵まれている。身体の凹凸がはっきりしているばかりか花帆たち二年生の誰よりも背が高く、二年先輩の梢と綴理に追従するほどだ。

 

 

「まさか先輩たちの憧れの人と相見えることができただなんて、徒町このイベントに来られて一番実りがあったことかもしれません!」

「すず、れいにずっと会いたがってたもんね。どう? れいは凄いんだよ」

「まだ会ったばかりなのに『どう?』と言われても、小鈴さんが困っちゃいますよ!」

「いえ、なんとなくタダモノではない雰囲気を感じ取ってます! 先輩方があれだけ尊敬されているお方ですから、是非たくさんお話を伺ってみたいです!」

「れいはね、勉強もできるし運動もできるし、頭の回転も速いし、りーだーしっぷ? もあるよ。あっ、あと一緒にいるといつもドキドキするんだ」

「おおっ! もう何でも持ってるじゃないですか! そんな先輩だったら徒町が学ぶことも多いはず!」

「それはそうかもしれませんが、基本はゆったり過ごしたい方なのでご迷惑ならないように気を付けてくださいね!」

 

 

 コイツら家族みたいだな。さやかがママなら徒町は見た目も話し方も性格も子供っぽい。そんなこと言ったら綴理も同じようなものだけど。

 

 徒町小鈴。ハキハキと大声で喋る元気っ子。ただ緊張や気合の入れすぎで余裕が無さそうな喋り方をしている。パワフルであるが故に空回りするタイプか。なんとなく舎弟キャラっぽいな。

 容姿は黄色がかったセミロングヘアーで、髪の左端に1房飛び出たアホ毛持ち。眼は見開いていて丸く溌剌な印象を受ける。ただ背は低くて瑠璃乃とどんぐりの背比べ状態だ。まあ今の俺が言えたことではないが……。

 

 

「れいせんぱいって二次元にいそうなイケメンショタですよね~。なんか変な癖が生まれそうになりましたよ~」

「えぇっ!? ひめっちってそっちの趣味あったの!?」

「いやぁ~どちらかといえば物珍しさですかね~。だって創作の世界でしか存在しないと思ってたキャラが、まさか現実で見られるなんて思ってなくて」

「私は何となくその気持ちわかるよ。最初は生意気なクソガキだったけど、中身を知れば知るほど男らしさが滲み出てきたっていうか……」

「芸能界時代に男泣かせだっためぐちゃんが、まさか年下の男の子に惚れちゃうなんてねぇ。この世の中なにがあるか分かりませんな~」

「そんなこと言ったらルリちゃんも零に抱き着いてるときだけ急速充電できるじゃん! モバイルバッテリーとか言っちゃってさ!」

「う゛っ……!!」

 

 

 コイツらは二人のときも騒がしかったが、安養寺が加入したらもっとやかましくなったな。本人はマイペースな性格だと思うのだが、よくコイツらと同調できたもんだ。

 

 安養寺姫芽。穏やかな様子で話し方もどこか眠気を誘われるほどゆったりしている。だが熱くなりやすい性格ではあるようだ。俺を見る目がちょっとギラついてたから……。

 容姿はピンク髪で玉ねぎを連ならせるような髪型にアレンジしている子。垂れ目だが端正な目鼻立ちなので美人寄りにも感じられる。背は高く脚も長く程よく引き締まっている。ふわふわ感のある印象だが意外と運動は得意なのだろうか。

 

 以上が一年生3人の初印象。まだちょっと会話しただけだがスクールアイドルである以上は交流も増えるし、コイツらのことを知る機会はたくさんあるだろう。ていうかスクールアイドル病の調査のためにもその機会が増えてくれないと俺が困るんだけどな。

 

 

「そういえば、零師匠はどうして蓮ノ空に?」

「それはまぁ、色々あるんだよ。てかなんだよその呼び方」

「零先輩の武勇伝は先輩方からたくさん聞きました。幾度となく降りかかるチャレンジを軽々と乗り越える勇猛なお姿、まさしく徒町のチャレンジ精神を鍛えてくださる方だと勝手に思い込んでいます! だから敬意を込めて、弟子入りを込めて師匠と呼ばせていただきます!」

「楽な方法でコミュニケーションしてくれたらいいって言ってましたもんね~。言質は取ってありますよ、れい()()せんぱ~い!」

「俺がガキっぽいからその呼び方に決まったのか……?」

「ありていに言えばそうですね~。先輩でありつつもカッコ可愛いせんぱいにはピッタリかなぁ~って」

「ま、どんな呼び方でもいいよ。それに敬語を外す外さないもどうでもいい。お前らの好きにしろ。代わりに俺も好きにさせてもらうから」

 

 

 昔から誰にどう呼ばれようが特に気にしてない。だって俺も先輩や目上の人に向かっては基本タメ口だから、相手にだけ強要させるのはおかしいだろ? だから不名誉な呼ばれ方以外は許容するようにしているし、別に何と呼ばれようがストレスは溜まらない。だってコミュニケーションなんて特別な事情がない限りは遠慮なんてしない方がいいからな。ただそのせいで初対面は不遜で失礼な奴だと思われることがよくある。実際に梢や慈はそうだったし。

 

 ちなみに敬語を使うのはお世話になった人を相手にするとき、主に高校時代の恩師にあたる人に限る。あとは教師という仕事上、生徒の親と会うときだ。流石に生徒の親御さん相手にタメ口はマズイからな。ビジネスにおける作法は最低限弁えてるよ。

 

 

「さてさて、吟子ちゃんは零クンのことをなんて呼ぶのかな?」

「なんでそんなに期待してるの……。別に普通でいい。神崎、先輩で……」

「あぁ、お前が呼びやすいのでいいよ」

「他人行儀だなぁ吟子ちゃんは」

「お前が馴れ馴れし過ぎるんだよ。あのときは初日からベッタリくっつきやがって……」

「花帆さんは誰相手でもそうですけど、零さんのときは最初からスキンシップ激しかったですもんね……」

 

 

 コイツと綴理は初対面なのに距離感は目と鼻の先くらい近かったな。そういった意味では徒町と安養寺の距離の近さもコイツらに通ずるものがある。男に対して警戒心が薄いのか鈍感なのか、それとも俺がガキだからナメられているだけなのか……。

 

 ライブも成功に終わった余韻か未だに和気藹々とした雰囲気を保ち続けている蓮ノ空メンバー。

 ただ、三年生は一緒に盛り上がりつつもどこか物静かさを漂わせていた。嬉しさの中に静穏さがあって、今はそっちの方が表に出ているような気がする。他の奴らは気付いていないようなので俺がツッコミした方がいいのだろう。

 

 

「なんだよお前ら。急にしんみりしやがって」

「えっ、そう見える? 確かにあんたと再会できたことに安心しちゃってるかも……」

「やっと会えたね。よかった、ボクたちがいなくなる前にこうして再会できて」

「いなくなる? あぁ、卒業の時期が迫ってるって意味か」

「えぇ。(わたくし)たちはずっとあなたに会いたかったの。でも連絡手段は絶たれ、自分たちではどうしようもなかった。それでもあなたに会いたい気持ちは日に日に増していき、もし卒業までに会えなかったらどんな手段を使ってでもあなたを探してみせると三人で画策していたくらいだもの。六次の隔たりを信用するに値するか、まさに証明するところだったわ」

 

「さやかちゃん、六次のなんたらってなに?」

「六次の隔たり。全ての人や物事は6ステップ以内で繋がっていることです。つまり今回の場合、知り合いを6人たどることで世界中の誰とでも間接的に知り合いになれるという意味になります。梢先輩たちはあらゆる人脈を駆使して零さんを探し出す予定だったらしいですね」

「そんな! だったらあたしの人脈も提供したのに!」

 

「そっちかよ……」

 

 

 まず先輩たちが中々の強硬手段に出ていることに驚けよ。加担するな。

 それにしても、コイツらがそこまで俺を渇望していたとは。スクールアイドル病を治療するためとはいえ、お互いの心を短期間に急接近させたが故の寂しさを与えてしまったかもしれない。三週間しかいなかったのにあれだけ関係が進展したんだ、俺の印象はコイツらに深く刻み込まれたに違いない。だからこそ俺を追い求めたいって欲望も生まれたのか。ま、恋に堕ちるってのはそんなものだけどな。

 

 

「そうか。でも俺だってやることがあったんだ。それは分かってくれ」

「分かってるよ。どうせまた誰かを助けてたんでしょ。それも私たちへと同じくただのお手伝いとかではなくて、その人の心を救うような、ピンチから救うような……そんなカンジ。全く、どれだけヒーローなのやら」

「ボクたちもそれが分かっていたから敢えて探さなかったんだよ。でも卒業が迫ってきたからちょっと焦っちゃった。だから再会できて嬉しいんだ」

「そうね。でもあまりに突然だったから、喜ぶというより驚きとやっと会えたという安心感が強いの。だからしんみりしているように見えたかもしれないわね。でも実際にはそんなことないから安心して」

「そうか。じゃあお前らの最後の高校生活、俺の存在で彩ってやるよ。どうやらそれをご所望みたいだしな」

「ふふっ、相変わらず自信満々ね」

「寂しくさせて申し訳なさそうにしないのも零らしいわ」

「ごーいんぐまいうぇい、だね。うん、いつものれいだ」

 

 

 俺はいつだって誰相手にだって自分のやり方を貫き通す。寂しく思わせてしまったのも、俺の正体が下手にバレないようにと秋葉が一応気を遣って連絡を遮断させたからだ。俺のせいではない。それに俺だってそう簡単に誰かに連絡を取れるような状況じゃなかったしな。そのせいでむしろかえって余計な心配をかけさせるから、結果的に再会できたことも加味してこれでよかったのだろう。

 

 

「も~うっ! センパイたちとだけカタルシスに浸るなんてズルいよ~っ!」

「相変わらずうるせぇなお前。別にお前とはまだ時間あるだろ」

「あたしたちだって話したいことたくさんあるの! ねぇさやかちゃん! 瑠璃乃ちゃん!」

「なんか巻き込まれた!? そりゃまぁ、一年以上も離れ離れだったわけだからあるっちゃあるけど……」

「そうですね……『ラブライブ!』を優勝するくらいまで成長できたこと。これがまず報告したいことでしょうか」

 

 

 そういや大人の姿で話してたときにそんなこと言ってたな。スクールアイドル界隈の情報を追っている暇がなかったのでさっきのさっきまで知らなかったのだが、どうも俺と関わりのある奴らは一定の成績を残すようだ。本人たちの実力なのか俺のおかげなのかは分からねぇけど。

 

 

「『ラブライブ!』に優勝できたのも、零クンが人と繋がる絆を教えてくれたおかげだよ! 後輩もできて、みんなで仲間を信じることができたから勝てたんだよ! 零クンの信念は今でもずっと語り継がれているんだから!」

「そうか。そりゃよかったな」

「零くん、いつも通りさっぱりしてんねぇ……」

「俺は別にお前らに『ラブライブ!』を優勝させてやるために蓮ノ空にいたんじゃねぇし、そもそも俺にとっては『ラブライブ!』なんて知ったこっちゃないからな。こっちはこっちのやるべきことがあって、俺の信念を伝えたのもそのためだ。だからそれを武器に『ラブライブ!』を優勝したってのなら、それは紛れもないお前らの実力だ」

「独善的ではありますが、虚飾に塗れているわけでもご自身の功績に増長するわけでもない。やはりいつもの零さんです。お変わりないようで安心しました」

「お前らもな」

 

 

 二年生組は俺と同学年だったので一緒にいた時間が長かった。故に俺への理解度もかなり深い。それは俺もそうで、お互いに些細な会話だけで相手の様子を汲み取れる。たった三週間しか一緒にいなかったのにここまで絆を育むことができているのも、それだけコイツらといた毎日が濃密だったからだろう。プライベートで部屋にいるとき以外は誰かと一緒にいることが多かったしな。まあそれはスクールアイドル病の影響で不調が表に出ないか監視していた、って事情もあるけど……。

 

 

「ふぇ~っ。れいくんせんぱい、これだけ先輩たちに慕われてるの凄いね~」

「うんっ、先輩たちが師匠に会いたがっていた理由が分かる気がするよ。それだけ大切な人なんだね!」

「二人はどうなの? 神崎先輩の印象……」

「徒町は驚いてるよ! 背は徒町より小さいのに、オーラが高くそびえ立っていて見上げると首が取れちゃいそうなくらい!」

「アタシはまぁ、興味を惹かれる人だから楽しくなりそうでいいかなぁって思ってるよ。吟子ちゃんはそんなことない? あっ、もしかして男の子と話すのは苦手とか~?」

「そ、それは……今まで同年代の男子と話したことなんてないし、話し方も威圧的で梢先輩たちにも馴れ馴れしいし、ちょっとまだ接しにくさはあるかなって……」

「多分大丈夫だよ! 頼りにならない徒町センサーによると、師匠はいい人だから!」

「自分で信頼度下げてない!?」

 

 

 一年生たちはまたコソコソ集まって話している。内容は聞き取れないが、いきなり現れたガキが先輩たちと親し気に話している様子を見て多少は怪しんでいるかもしれない。何の目的で蓮ノ空にいたことがあって、どんな理由で花帆たちに近づいたとかう情報が全て伏せられてるからな。そりゃ警戒もするわ。

 徒町はさて置き、百生と安養寺はまだ俺と一定の距離を置いているようだ。百生は見るだけで言わずもがな、安養寺は俺をフレンドリーに呼んだりしているため一見ノーガードのように思える。現にさっきまではそう思っていた。だが女の子との付き合いに慣れている俺なら分かる。体裁だけは溝を発生させないため仲を深めているように装いつつ、裏では距離感をじっくり図っているのだと。過去に人間関係のもつれがあったタイプだろうな。

 

 そんな感じではじめましてと再会の会話を繰り広げていたが、そろそろ会場に人も少なくなってきて帰り時となったので俺たちも切り上げることにした。

 

 

「零君、そういえば秋葉先生はどちらに?」

「もう蓮ノ空に向かってるよ。お前らのライブをやる前からな。向こうで俺を編入させる手続きなり住む場所なりを用意してるんだと」

「本当に今日から蓮ノ空へ行くのね……。あなたは大丈夫なの? 反応を見る限りだとあなたも聞かされたばかりのようだけど……」

「これも俺の仕事だからな。ま、またしばらくよろしく頼むよ」

「実は零くんの部屋、ルリたちが定期的に掃除してたんだよ! いつ帰ってきても住めるようにって!」

「マジかよ。ありがたいけどよくやるな……」

 

 

 あれから一年以上も経つのに、いつ帰って来るかも分からない奴のためにそんなことまで……。俺の帰還を心待ちにしていたってのは会話を聞いてるだけで強烈に伝わってきたが、その気持ちはどうやらこちらの想像を遥かに超えていたようだ。そこまで俺への感情が膨れ上がっていると俺がいない状況で問題に直面した際に挫折する懸念もあっただろうけど、コイツらは見事『ラブライブ!』に優勝している。もちろん途中で何度か壁に衝突しただろうが、俺抜きでもそれを乗り越えられるくらい精神的に成長したってことか。いい傾向だな。

 

 

「じゃあそろそろ蓮ノ空に戻ろっか。蓮華祭の曲もそろそろ考えないとだしね」

「そうですね。あまり話し込んでしまうと向こうに着くのも遅くなってしまいますし……」

「矢継ぎ早に今度は蓮華祭の準備……気張るしかない! ちぇすとーっ!!」

「ははっ、小鈴ちゃんライブの疲れも知らず気合たっぷりだねぇ~」

 

 

 徒町の謎の掛け声に驚いたが、周りの奴らが一切指摘しないところを見るとこれがアイツ自身の闘魂の注入方法なのだろう。気合を入れるのはいいけどその準備に俺を巻き込むのはやめてくれよ。いやサボりとかではなく、こちらにはこちらのやることがあるからさ。

 

 

「れいにとっては一年半ぶりだね、蓮ノ空」

 

 

「一年半ぶり……? いやお前らと別れてからはそうだけど、学校へは途中で一回行ったぞ。大賀美の卒業式の日にな」

 

 

「「「「「「えぇっ!?」」」」」」

 

 

 二年生と三年生が目を丸くして驚嘆する。

 コイツらと別れたのは一年半前だと言ったが、それ以降蓮ノ空に訪れていないとは言っていない。大賀美の卒業式の日に一瞬だけアイツだけと会った。別れるその日にそれらしい約束もしたしな。

 

 

「沙知先輩の卒業式に!? あんた来たのならこっちにも声かけてよ!」

「そうだよ! なんでわざわざ来たのに!」

「言ったろ、俺は忙しいんだよ。お前らと会ったらいつ帰してくれるか分からねぇだろうが」

「それでも何かしら連絡をくださってもいいじゃないですか!」

「ルリ、零くんのちょっとエゴイストっぽいところはよくないと思いまーすっ!」

「本当に、我が道を行く性格は変わらないわねあなたは……」

 

 

「あのぉ先輩方、そろそろ帰りませんか……って、聞いてない」

「あはは、まだ時間かかりそうだね……」

「まあせっかく再会できたんだし、もう少しその余韻に浸らせてあげてもいいかもね~」

 

 

 相変わらず騒がしい奴らだな。ただなんだかんだ再会を喜んでいる自分もいる。大きな案件を片付けてようやく休めることに安堵していたのに、今度はスクールアイドル病の治療だなんて面倒事を押し付けられつつもコイツらの日々にまた楽しみを抱くとは、やっぱり俺は女の子がわちゃわちゃしている環境に身を置くのが似合っていて落ち着くらしい。

 

 それに新しい子とも知り合いになれた。まだ出会ったばかりだから心の距離は全然だけど、仲良くなっていくのはこれからでいい。なんだかんだ笑顔を見ることのできる身近な女の子が増えるのは、俺の夢にとってはプラスでしかないからな。

 

 とにかく、俺の蓮ノ空の生活が再び始まる。

 なによりもまず事件とか起きずに穏便に事が済むことを祈るばかりだ。

 




 今回は初対面&再会のご挨拶回でした。ていうかこれだけで1話使うとは思わなかった……!
 ようやく吟子、小鈴、姫芽と子供零の初邂逅です。昨年度からずっとこの子たちと彼の絡みを色々考えていましたが、やっとこさそれを描写できるスタートラインに立てました(笑)
 ただ開始して3話経ってもまだ蓮ノ空の現地にはいないという……。次回からは舞台がしっかり蓮ノ空に戻る予定です!


 そういえば巷では102期生の卒業ライブが行われたそうで、3Dアニメも決定したので界隈が盛り上がってますね。
 当時に卒業の喪失感もあると思いますが、この小説では104期がスタートしたばかりなのでむしろ今からが本番です! 皆さんの102期ロスを埋められるように頑張ります!



【キャラ設定集】
零から蓮ノ空キャラへの呼称
・日野下花帆 → 花帆
・村野さやか → さやか
・乙宗梢   → 梢
・夕霧綴理  → 綴理
・大沢瑠璃乃 → 瑠璃乃
・藤島慈   → 慈
・百生吟子  → 百生
・徒町小鈴  → 徒町
・安養寺姫芽 → 安養寺

蓮ノ空キャラから零への呼称(零への好感度 0~100)
・日野下花帆 → 零クン   (100)
・村野さやか → 零さん   (100)
・乙宗梢   → 零君    (100)
・夕霧綴理  → れい    (100)
・大沢瑠璃乃 → 零くん   (100)
・藤島慈   → 零     (100)
・百生吟子  → 神崎先輩  (30)
・徒町小鈴  → 零師匠   (55)
・安養寺姫芽 → れいくんせんぱい(40)


スクールアイドル病の治療状況
・日野下花帆 → 治療済
・村野さやか → 治療済
・乙宗梢   → 治療済
・夕霧綴理  → 治療済
・大沢瑠璃乃 → 治療済
・藤島慈   → 治療済
・百生吟子  → 傷の位置調査中
・徒町小鈴  → 傷の位置調査中
・安養寺姫芽 → 傷の位置調査中
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