ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常2~   作:薮椿

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突然10人同棲生活!?(後編)

 秋葉の策略により突発の同棲イベントが開幕した。

 花帆たちの部屋は寮からこの家に移されており、どうやら家具の配置まで瓜二つなのでまさに今からでも生活を開始できる状態だ。ちなみに俺の部屋の家具や必需品は既に秋葉が揃えてくれているため、こちらの新生活の準備も万端。つまり全員が初日から何不自由のない生活が送れるわけだ。

 

 ただ今日は色々ありすぎて疲れたし、コイツらもイベントのために日帰りで遠征していたので家の片付けや模様替えなどは後日行うことになり、まずは晩飯を食うことになった。

 寮の食堂に行ってもよかったのだが、せっかく家の中に大きなキッチンがあるのだとさやかがやる気になっているので任せることにした。しかし彼女一人で10人分の飯(秋葉は帰ったのでノーカン)を作るとなると労力が半端ないため、他の奴らも協力を申し出て、シェアハウス生活初の共同作業が始まる。

 

 いや、始まろうとしていた。

 

 

「で? お前らは何をしてんだよ?」

「ボク? ボクは待つ係」

「徒町は余計なことをしない係です!」

「あたしは食べる係だよ!」

「なにバカなこと言ってんだ! お前らもやるんだよ!」

「ひゃんっ!」

 

 

 ソファでふんぞり返ってる奴らのケツを軽く蹴って無理矢理キッチンに立たせる。実際に料理はしなくてもテーブル周りの掃除や皿並べくらいはできるだろう。せっかくの10人シェアハウスなんだ、使える人員は積極的に動員させないとな。俺が楽をするためにも……。

 

 そうやってサボり魔たちに仕事を割り振る中、さやかたちが冷蔵庫の中を見て驚いていた。

 

 

「秋葉先生、わたしたちの部屋の冷蔵庫の中身もここへ移してくれたみたいですね。そのせいで凄くごちゃごちゃしていますが……」

「おーおーたくさん入ってんねぇ。このエナドリ軍団とか絶対にひめっちのじゃん!」

「だったらこのスイーツ軍団はかほせんぱいのですかね~」

「ひ、姫芽ちゃん! そんなことを公にしたら……!!」

「花帆、申告された購入量と冷蔵庫の中身の数に乖離があると思うのだけれど……」

「ひぃ!? 吟子ちゃん!」

「私に助けを求めないで! 共犯だと思われるでしょ! でも共同生活をすると隠し事がバレる危険性が高まるんですね……」

 

 

 そりゃお互いの距離感も近くなるし、顔を合わせる機会も多くなる。相手のいい面も悪い面も勝手にインストールされてしまう。それが故に隠し事が露見するかもしれないし、逆に長所を知る機会も増える。シェアハウスってのは諸刃の剣だ。この人と一緒にいたいからと軽々しく実行に移していいものではない。まあ今回の俺たちにはその選択肢すら与えられなかったわけだが……。

 

 

「大丈夫だよ花帆ちゃん! 私が同じ屋根の下にいるからには、悪魔梢の代わりに最カワ天使のめぐちゃんが守って癒してあげるから!」

「やったーっ! 慈センパイ神!」

「天使だっちゅーの」

「なんなん……」

「共同生活だと逐一このノリに巻き込まれないといけないのね……」

「でもほら、勉強会が開きやすくなるとかいい面もたくさんあるとルリ思います!」

「へへーん! 私はもう宿題もテストないもんね! これからもたっぷりと苦しむがいい!」

「慈センパイの裏切り者! 悪魔!!」

 

 

 神だったり悪魔だったりどっちだよ……。

 ただみんなで集まりやすいってのはやはりメリットだな。これから蓮華際ってイベントもあるみたいだし、それに向けて104期スクールアイドルクラブの集大成となる準備をしているらしいから、必然的にコミュニケーションは密になる。それを踏まえれば1つ屋根の下でゆったりと話し合える機会があるのはいいことかもしれない。ま、それも良くも悪くも公私混同しちゃうけどな。

 

 

「あとでもいいけど、揉めないように生活のルールくらいは決めておけよ」

「ルール、ですか?」

「あぁ。最初は合宿みたいで楽しいけど、プライベートな空間にまで一緒にいると嫌でも相手の粗を知っちまうからな。そうならないようにお互いに守るべき共通のルールを作るのがシェアハウスの基本だ。例えばゴミの出し場所、洗濯の頻度、掃除の担当といった生活必需のことから、冷蔵庫の中のモノには自分の名前を書くとか何時以降は大きな音を出さないとか、お互いにストレスと与えないための些細なことも決めておくといい」

「なるほど、他人が私生活に絡んでくるからこそ事前に争いの種は潰しておくのね」

「あぁ。結婚前に同棲をしろってよく言われるのがそのためだよ。結婚前は仲睦まじかったのに、いざ結婚して一緒に住み始めたら相手の一挙手一投足が自分の癇に障って仲が険悪になることもある。そりゃそうだ、これまでは自分の価値観だけで生きてきたんだからな。パーソナルスペースにいきなり他人が入り込んできたときのストレスったら、慣れてないと半端ねぇぞ」

「れいくんせんぱい、まるで経験者みたいですね~」

「ま、お前らよりはな」

 

 

 かなり前だけどμ'sの連中と俺の家で同棲生活をしたことがあるし、それ以外でも女の子が家に来たり俺から行ったりもするから、他人がプライベートに侵食してくることには慣れている。つうかそれが日常になってるから自然と相手とのズレを許容したり矯正させることができる。ただコイツらの場合はいきなり10人での共同生活だから、あらかじめ釘を刺しておいた方がいいと思ったんだ。

 

 

「じゃああれを作りましょう! あれ!」

「小鈴?」

 

 

 徒町は自分の部屋に駆け足で戻ると、すぐにリビングへと帰ってきた。手には画用紙とコンパス、色鉛筆を持っていた。

 

 

「すず、何か作るの……?」

「はいっ! 画用紙を円の形に切って、そこに皆さんの名前を書きます。そして外側の画用紙には担当する当番を書いて――――」

「あっ、毎日その円を回して担当が変わっていくってやつだね! あたしの家でも親のお手伝いのために妹たちと作ったことあったよ!」

「あぁ~あれか~! ルリも幼稚園とかでそういうのあった記憶があるよ」

「古典的ですけど、パッと見で自分の担当が分かるのはいいかもしれませんね」

「徒町は姉妹が多いので、お母さんがいつもこれで徒町たちのお手伝いを管理していました! 今回それを流用できると思います!」

 

 

 すげぇ懐かしいものを作ろうとしてるな。ただ俺の家ではルーレットの項目が親の手伝いではなかった。妹の楓が性的なことに初めて興味を持ち始めた幼稚園入園前、あまりにも俺の寝込みを襲おうとするものだから制約をつけた。それは一日一回だけ俺に好きなことをしていいと妥協させたうえで、アイツが項目に『お兄ちゃんと裸で抱き合う』だの『お兄ちゃんとお風呂に入る』、『お兄ちゃんと禁断×××』だのルーレットに書かせ、それを守らせること。矢印が向いている箇所の行動を1日に1度だけ取ることが許される。ただそれすらも幼い俺たちにとって刺激が強いってことで、母さんに禁止されちまったけどな。

 まあ、禁止されたのにも関わらず今の関係になったわけだが……。

 

 

「円が9等分になるように線を引かないとだね。梢センパイ、よろしくお願いします!」

「どうして(わたくし)なのかしら……」

「なんかそういうの上手そうなので!」

「9等分ってかなり難しいわよ。奇数だから一本も真っすぐな線を引けないもの。基準となる線がないとね……」

「40度が9個あればいいんだよ、こず」

「さっすがは綴理! 計算早いね!」

「えっ、360度÷9をするだけでは? 普通に割り切れますし……」

「めぐちゃんの尊厳を破壊しないであげて、さやかちゃん! 卒業前だからこそ何卒!」

 

 

 なにやってんだよコイツら。1つ話をしたらそこから連携して10に広げやがる。いや集団コミュニケーションとしては正しいけど、俺は早く飯を食いたいんだよ。だから早く作ってくれないと困るが、ルール策定の提案をしたのは俺だから微妙にツッコミづらい。

 

 ただ、何か言いたそうにしているのは隣にいる百生も同じようだ。出会ってからの会話の流れを見るにコイツがツッコミ役と思われるので、俺の飯のために頑張って話の主導権を取り戻してほしい。

 

 

「ん? 吟子ちゃんどうしたの? 訝しげな顔して……」

「花帆先輩……。いや、どうして9等分なのかなって」

「「「「「…………」」」」」

「えっ? あたし、さやかちゃん、瑠璃乃ちゃん。吟子ちゃん、小鈴ちゃん、姫芽ちゃん。梢センパイ、綴理センパイ、慈センパイ、で合計9人だよ」

「…………」

「吟子ちゃん?」

「えっ、神崎先輩は!? ていうか、先輩たちどうして黙っているんですか!?」

 

 

 どうやら俺の思惑は外れたようだ。全く別のことを考えていたらしい。

 そして、百生の主張は最もだ。10人で同棲生活するんだから全員で協力して家事をするべきで、さっき俺自身が教えた共同生活における教訓に従い全員でルールも守るべきだ。普通はな。

 

 

「俺がそんな雑用をやると思うのか? 家事はお前らに任せたぞ」

「えっ!? やらないんですか!? 自分で言っておきながら!?」

「出たぁ~っ!! これが零くんのご主人様属性なのだ! 部室では打ち合わせをしてるのにも関わらずソファにふんぞり返り、紅茶やコーヒーをこずこずパイセンに淹れさせ、他の女の子から貢がれたお菓子を摘まむ。自分で動かぬとも周りがお世話してくれる、まさにご主人様気質!」

「るりちゃんせんぱい楽しそうですね~。そういえば、れいくんせんぱいの威光気質語りをするときはいつも急速に充電が回復しますもんね」

「もう抱き付かずとも充電できんのかよ……。てかそれだと俺がただのクズみたいじゃねぇか。ちゃんとプラマイゼロになるように語り継げよ」

「最終的にゼロでいいんですね……」

 

 

 そりゃ好感度ゼロからプラスにするのは簡単だが、マイナス、つまり嫌悪感がある状態からプラスにするのはちょい面倒だからな。

 ただ今にもそのマイナスになっていそうなのが百生だ。きっちりしている性格の奴らは俺を怪しむ傾向があるんだよな。梢だってそうだったし。

 ちなみに徒町は目を輝かせており、安養寺は興味深そうにまじまじと見つめてくる。これから百生と親密な関係になるためには先にコイツらと仲良くなって、コイツら経由でお近づきになった方がいいかもしれない。

 

 家事の話をスルーしそうになったが、元から俺にその能力はない。というより、育まれなかったと言った方が正しいか。身の回りの世話は基本妹の楓がやってくれたし、アイツがいないときは他の女の子を呼び出していた(主に緑のアイツ)から家事スキルを伸ばす機会がなかったんだ。高校の間は少しだけ一人暮らしだったけど、真面目に家事してたかといわれたら間違いなくノーだ。

 

 

「零師匠すごいです! この偉大なる先輩方を相手に頂点に立ってしまわれるとは! 大上段に振りかぶるそのお姿、例えクズでも徒町は尊敬します!」

「お前がクズ言うな!」

「でもそんな不遜な態度を許してしまうくらい、(わたくし)たちは零君に助けられているの。確かに最初は失礼な子だと思っていたけれど……」

「このめぐちゃんのアイアンハートを動かすくらいだから、人望の厚さと頼り甲斐は信用していいと思うよ!」

「そ、そうですか……」

「俺はコイツらの評価に対して否定も肯定もしない。お前ら一年生とはまだ今日出会ったばかりなんだ、これから相手を知っていけばいいさ。お互いにな」

 

 

 せっかく一緒に住むんだから、最初からギスギスしてちゃ未来が暗い。まだ不信感を抱かれているというよりは『この人と上手く付き合っていけるか』に不安を感じていると思うので、そこは日々の対話や花帆たち先輩たちのフォローに任せるなどで解消していくとしよう。

 

 

「よし、じゃあようやく飯の時間だな。さやか、全体の牽引を任せたぞ」

「それはもちろん。ところで、零さんは何を?」

「部屋に戻って電話をな。いきなり連行されたから向こうで待たせちまう奴らに連絡しておきたいんだよ。でないとまた――」

「また?」

「いや別に。じゃあ飯の用意、頼んだぞ」

 

 

 またバーサーカーモードになった楓が襲来して蓮ノ空を壊滅に追い込まれないように保険をかけておかないと。それに他の奴らにもそう簡単に会えなくなることを連絡しておく必要がある。少なくとも第二第三の破壊神になっちまいそうな奴らには……な。

 

 

「待ってください師匠!」

「なんだよ」

「綺麗に9等分する方法を教えてください!」

「そんなことで呼び止めるなよ……。ったく、時計を想像してみろ。中心から12時、8時、4時の方向に切れば3等分できる。そのそれぞれなら円より面積も小さいし、更に3等分しやすいだろ」

「おおっ、確かに! さすが師匠!」

「お前、俺と出会ったばかりで何も知らねぇのによくそんな尊敬できるな……」

「すずはボクたちかられいのお話を聞いてるとき、ずっと楽しそうにしてたからね」

 

 

 じゃあ俺の唐突な登場は夢見ていた有名人に突然会えたみたいな感じか。ただコイツの性格的にやたらと自己評価が低いので誰にでも憧れそうな気がする。だが師匠と呼ぶくらいだから俺への敬意は相当なものだろう。会ったことがないのにここまで好感度があると逆に警戒してしまいそうだけどな。だってほら、スクフェスの準備期間中に虹ヶ先の連中と出会ったときがまさにそうだったし……。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

『ちゃんとご飯食べないとダメだよ! あと無茶しないこと! そして女の子をたくさん連れて帰ってこないこと! 聞いてる、お兄ちゃん?』

「聞いてる聞いてる。分かってるよ」

 

 

 自分の部屋にて大人の姿に戻り電話しておくべき奴らに片っ端から連絡をしている。数が数なのでメッセージで済ませたい気持ちはあるのだが、俺がいきなり消えて心配させないようにするためには生の声を聴かせるのが一番だ。これでもただ手当たり次第に女の子と関係を持っているわけではなく、こうしてどちらかが新天地に赴いて直接会えなくなるときはこまめに連絡を取り合うことが多い。恋人以上の関係になったのに、そのときだけの付き合いだなんて寂しいもんな。

 

 ただ、今まさに通話しているのは妹の楓だ。どんな付き合いのある女の子よりもコイツが俺の不在を一番心配し、そして一番憤る。だからこうして俺が別の場所に身を置くたびに心配攻めをしてくるわけだ。その優しさを受け止めつつも、再び破壊神となって蓮ノ空を地の塵に返さぬようメンタルケアをさりげなくするのは忘れない。

 とはいえ今回は事前に秋葉から連絡を受けていたようで、予想したよりも全然怒っていなかった。以前は楓の了承なく秋葉の手より寝てる最中に無理矢理連行された。そのせいでバーサーカーモードになってしまったわけだが、流石にアイツもあの事態を重くみたようだ。

 

 ちなみに電話するときは大人の姿に戻っているのは、子供とは声帯が違うため正体バレを防ぐ目的がある。テレビ電話で顔を見せることもあるからだけど、やっぱりいちいち元に戻るのはメンドくせぇな。ガキの姿にするのは最悪いいけど、二度目なんだから正体バレの副作用は解消するか軽減して欲しかったものだ。

 

 

『それで? 次はいつ帰ってこられるの?』

「分からない。でも時間がかかりそうなら定期的にそっちに帰ってやっから、また暴れんじゃねぇぞ」

『あれはお姉ちゃんのせいだから……。それより帰ると言えば、ちゃんと帰りを待ってくれる人はいるの? ほら、前は部屋に一人でいたって言ってたじゃん? 出迎えてくれる人がいないとお兄ちゃん無茶しそうで心配なんだよ』

「大丈夫、今度は一緒に住む奴がいるから」

『もしかして女? ソイツ、お兄ちゃんに不自由を感じさせないくらい家事できるの……?』

「できるから安心しろ。俺の生活は安泰だよ」

 

 

 ちょっと声色が低くなったからキレたのかと思ってヒヤヒヤしたけど、それとない返答で危なげなく回避に成功した。学生時代は家に女の子を連れてくるだけで嫌な顔をしていたが、ここ数年は大人になったのか寛容になった気がする。だが俺に家事をさせるような女の子だけはいつまで経っても許せないようだ。今回は9人もいるから問題ないんだけど、それだけたくさんと同棲生活をするなんて伝えようものなら向こうから何を言われるのか分かったものではない。だからさりげなく一人だと匂わせておいた。

 

 

『はぁ……お姉ちゃん、私に文句を言わせないような環境をお兄ちゃんに用意してるみたいだね』

「前回のアレがアイツにとっても相当効いたんだろ。だから心配すんな。とっととやること終わらせてやっからさ」

『約束だよ。時間がかかるなら一度帰ってきてね』

「あぁ。じゃあまた連絡するよ」

『うん。くれぐれも身体に気を付けてね』

「ありがとな」

 

 

 電話を切る。直接連絡をするのはコイツで最後だが、やはりみんな心配の声が先に来る。そりゃ事前に何も言わずに目の前から消えたらそうもなるか。前回ここへ来たときも頻繁に連絡を取っていた方ではあるが、それでも心配されていたからもっと回数を増やした方がいいかもな。ただ声質を戻すために大人になる必要があるから、花帆たちと距離感が近くなったシェアハウス内だと不意に部屋のドアを開けられてバレる可能性も無きにしも非ずだ。やっぱ同棲生活ってのはデメリットも多いな。

 

 ただ今からメリットを享受しに行こうと思う。

 結構な時間電話をしてたからそろそろ飯も出来上がっている頃だろう。イベントから帰ってきてみんな疲れてるから、今日は簡単なものだけにするって言ってたしな。手が込んで時間がかかってるってことはあるまい。

 

 部屋から出ると早速いい匂いが充満していた。

 廊下を進みリビングのドアを開けると、10人で囲めるほどの大きなテーブルに並べられていたのは――――

 

 

「えっ、これお前ら作ったのか?」

「はい。皆さんが各々作りたいものを協力して作っていたら、いつの間にか料理がたくさん出来上がっていました……」

「零クンの復帰祝いパーティでもあるからね! あたしも腕を振るっちゃったよ! 零クンがいなくなってからそれなりに勉強してたんから!」

「ボクも勉強したよ。ちょっとだけ」

「あなたが戻ってきたときのため、みんな割と本気でおもてなしの準備をしていたのよ」

「ほら零、こっち来て! めぐちゃんが直々にあーんしてげるぞ!」

「ルリとめぐちゃんで作った特別TKGだよ! ほらほらこっち!」

「お、おいっ!」

 

 

 慈と瑠璃乃に手を引かれてソファに座らされる。両隣は幼馴染組にガッチリ固められ、目の前には特性TKGと銘打たれた飯に卵やら海苔やら明太子やら、飯に合うトッピングが大量に乗せられている謎のどんぶりが鎮座している。これもうTKGどころの話じゃねぇだろって量だが、テーブルにはそれ以外にもハンバーグなり湯豆腐なりサラダなり、皮をむいたリンゴなりケーキなりラムネなりその他諸々が置いてあったりと、もはや料理か怪しいものもある。てかこれだけ人がいるのに主食作ってるのはさやかだけかよ……。

 

 

「あっ、瑠璃乃ちゃんも慈センパイもズルい! あたしも零クンの隣に座りたかったのに!」

「慌てない慌てない! 零ってばこんなにちっちゃいんだから、これだけの美少女たちに取り囲まれたら一瞬で昇天しちゃうよ」

「ボクも後で変わって」

「承知っす! つづパイセン!」

 

 

 確かにこの身長で女の子に群がられると窒息の危険性があるな。これも秋葉の仕業なのか、前よりも身長が低くなっているようだ。瑠璃乃より僅かに小さいくらいだった気がするのに、今回は明らかに拳1つ分以上は余裕で差がある。そのせいで今もシレっと瑠璃乃に手を乗せられてるし、あまりにも扱いがガキすぎねぇか? 秋葉の奴、俺がこの姿だと自分も若返って見えるからとか言ってたけど、アイツの見た目って俺が高校時代の頃から一切変わってねぇからな。不老不死の薬が既に完成しているのかもしれない。

 

 

「ほぇ~やっぱりれいくんせんぱい人気者なんですね~。これがイケメンショタの魔力……」

「はい、いつもそうですよ。そのせいで本人は静かに過ごしたいのに、いつの間にか囲まれて輪の中心になっちゃってますけど」

「徒町もいつか師匠に並び立てる存在になれるでしょうか! いやなります!」

「小鈴のそれは先輩たちとちょっと違うような……。でもあんなに小さいのに貫禄はありますよね。態度が大きいだけかもしれないですけど……」

「普段は蚊帳の外にいるのに、何かあったら率先して前線に立つ。小さいけどその背中は見惚れるほど頼りになる姿。それが彼なのよ。ああやってふんぞり返っても許されるほどの魅力が、あの子にはあるわ」

 

 

 サイドの会話も聞こえてくるが、ショタだの小さいだの一言余計なんだよ……。ま、こんなガキに惚れてるコイツらもコイツらだけどな。

 ただ男の欲望の観点だけに絞れば、小さいことでこうして女の子に全身から取り囲まれる機会が増えるってのはメリットかもしれない。だって男なら誰しも美少女に愛されたいじゃん? 一年生も相変わらずだが美少女だらけなので、ソイツらと同じ空間で生活できるってだけでも男の性が疼くこともある。それに俺はそういった環境に身を置くべき運命にも愛された人間だから、楽園が目の前にあるのに楽しまなきゃ損ってものだ。

 

 そうだな。せっかく男なら誰もが羨むシチュエーションに突入したんだ、堪能しながら例のミッションを完遂させよう。スクールアイドル病は現状俺しか治せない都合上、避けることは許されない。だったらアイツが用意してくれたこの環境に浸りながら病原の調査を遂行する。ストレスなんて溜めても仕方ない。新しく入った子たちも含め、またコイツらと一緒に過ごせる日々を楽しませてもらうとするか。

 

 

「でも気を付けてね小鈴ちゃん! 零クンはDV彼氏だから!」

「なんと!」

「まだ引き摺ってんのかよそれ!!」

 

 

 急にコイツらと上手くやってけるか怪しくなってきた……。

 




 こうして見ると、蓮ノ空編の零君ってかなり俺様気質な言動が多い気がします(笑)
 Liella編で教師をやっていた頃と比べるとその変化がよく分かります。大人姿と子供姿の違いはあれど、女の子との関係性や立ち位置が変わることで彼の印象も変わりますね。


 プロローグ的なお話が続いていましたが、次回から本格的に蓮ノ空出の生活が再開します!




【キャラ設定集】
零から蓮ノ空キャラへの呼称
・日野下花帆 → 花帆
・村野さやか → さやか
・乙宗梢   → 梢
・夕霧綴理  → 綴理
・大沢瑠璃乃 → 瑠璃乃
・藤島慈   → 慈
・百生吟子  → 百生
・徒町小鈴  → 徒町
・安養寺姫芽 → 安養寺

蓮ノ空キャラから零への呼称(零への好感度 0~100)
・日野下花帆 → 零クン   (100)
・村野さやか → 零さん   (100)
・乙宗梢   → 零君    (100)
・夕霧綴理  → れい    (100)
・大沢瑠璃乃 → 零くん   (100)
・藤島慈   → 零     (100)
・百生吟子  → 神崎先輩  (30)
・徒町小鈴  → 零師匠   (55)
・安養寺姫芽 → れいくんせんぱい(40)

スクールアイドル病の治療状況
・日野下花帆 → 治療済
・村野さやか → 治療済
・乙宗梢   → 治療済
・夕霧綴理  → 治療済
・大沢瑠璃乃 → 治療済
・藤島慈   → 治療済
・百生吟子  → 傷の位置調査中
・徒町小鈴  → 傷の位置調査中
・安養寺姫芽 → 傷の位置調査中
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