ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常2~   作:薮椿

653 / 703
イケメンショタに寝取られたるりめぐ

 蓮ノ空編入生活リトライ2日目。

 今日は日曜日で休暇なのだが、明日の編入に向けてこの学校の理事長に再び挨拶をしたところだ。秋葉が話を通しておいてくれたので突然の編入に驚きもされず、むしろ歓迎してくれた。どうやら俺がいると秩序が1つにまとまるらしい。以前は生徒会役員の1人に秩序を乱す者として追放されそうになったが、どうやら俺が消えてからも歪んだ規律は整然とならなかったようだ。花帆たちの言う通り、俺がこの学校の奴らにもたらした影響は計り知れないらしい。故に1つにまとまるってか。必要悪ってこういう奴のことを言うんだろうな。

 

 ただ挨拶はついでだ。今日は『みらくらぱーく!』の練習に付き合うのがメインミッションである。

 一年生たちがスクールアイドル病を患っているかを確かめるため、その証拠である身体の傷の有無を確認する必要がある。なければないでいいのだが、あった場合は早急に対処しなければならない。その傷は本人すらも知らず知らずのうちに広がり、やがて全身に至り四肢が崩壊。それを未然に防ぐのが俺の役割だ。

 ただその傷は外部から視覚できる部分には存在せず、胸や股など普段は隠されている局部にある。しかも俺にしか視認できない性質があり、他の奴らからは何も見えないらしい。そのため俺が自身でその傷を確認し、指で触れることでようやくスクールアイドル病を完治させることができるんだ。しかもその病気に罹っていることが本人にバレてしまった場合、傷は瞬く間に全身に走る厄介な性質もある。だから俺の潜入の理由は誰にもバレてはいけない極秘の任務なんだ。

 

 傷が局部にできることから、当然女の子を裸かそれに近い状態にする必要がある。ただ寝ている間など本人の意識がないときに裸に引ん剝くのは俺のポリシーに反する。いくら命の危機が迫っていようともだ。つまりコイツらの意識がある状態、すなわち俺が目の前にいるのに半裸以上になってもいいと思われるほどの人間関係になる必要があるわけだ。したがって、コイツらとの仲を深めるのは必須事項。その対象として今日は安養寺に狙いを定めた。

 

 だから今日はまずコイツのことを本人から、そして同じグループの先輩から聞き出して情報収集しようと思ったんだけど――――学校に顔を出したらたくさんの女の子たちに見つかって囲まれてしまった。

 

 

「零くんおかえりーっ! まさかまた会えるなんて!」

「零君このお菓子好きだったよね! あれからたくさん練習して更に美味しく作れたんだ! はいあげる!」

「あ~この感覚この感覚! ぎゅってしたときに程よく身体に包み込めるこの温もり! サイコー!」

「また部活のお手伝いをしてもらってもいいかな! 部員みんなでおもてなしするよ!」

「え、えっと、私は今年入った一年生です! 先輩たちからずっとお話を聞いていて、カッコいいなって……」

「零さんってまた一人暮らしで大変だよね? 日用品とかたくさん持ってきたから使って使って!」

 

 

 囲まれるだけではなく身体的接触も上等な奴らばかりだ。しかも俺と会ったことすらない一年生までいるが、今の今まで俺の噂話が絶えなかったのだろう。人の噂も七十五日とは言うが一年以上伝播しっぱなしじゃねぇか。俺が学校に来たってことが既に知れ渡ってるため、やはり山奥の閉鎖空間な学校だからこそ話の流布も早い。にしても昨日の今日でまだ土日なのにこの早さだから驚きだ。

 

 それに長期間いなかったのに何故かみんなの好感度MAXが保たれている。俺が返事をすればそのたびに黄色い声が上がるレベル。これ平日になって学校に生徒が集結したら大変なことになるんじゃないか……。

 

 

「はいは~いっ! 残念ながらここから先は有料で~すっ! 零とのお喋り1秒500円! お支払いは『みらくらぱーく!』まで!」 

「めぐちゃんそれだと零くんがホストみたいだよ!」

「え~いいビジネスになると思ったのに」

「みんな冗談だからね冗談! さぁ零くん、ルリたちの練習を見てくれるんだよね早く行こ!」

「あ、あぁ。今日は先客があるんだ。また明日な」

「あ、じゃあこれだけでも持ってって!」

「れいくんせんぱいだけだと持ちきれないので、アタシが代わりに持ちますね~」

 

 

 なんとか揉みくちゃにされるまえにみらぱの3人より救出される。同時にみんなから日用品や食い物を渡された。再びここで生活をするために秋葉が事前に色々用意してくれたのだが、もはやコイツらの貢ぎ物だけでも生活できるレベルだな。自分の部屋がなくても生徒全員の部屋をはしごすれば一年中手ぶらで生活できそうな気がするぞ……。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 みらぱの練習場である屋上にエスケープした俺たち。ただ軽く校内を歩いていただけなのにあの囲まれ具合だから、実際に明日から登校し始めたらそもそも教室に辿り着けるか怪しいぞ。そのときはまたクラスメイトになる花帆たちに護衛を頼むしかないか。ここまで身体が小さいと女の子相手でも力負けするから情けねぇな。

 

 とはいえ、過激なのは否めないがあそこまで歓迎されることに悪い気はしない。そりゃだって女の子たちに笑顔で迎えてもらえるなんて男なら嬉しいに決まってる。ただ久々にここまで黄色い声を浴びたから身構えてしまっただけだ。

 

 

「それにしても、聞いていた通りれいくんせんぱいは大人気ですね~。アタシの両手、せんぱいの貢ぎ物で塞がっちゃいましたよ~」

「前もそうだったからね。廊下を歩くたびに取り囲まれてたから、私とるりちゃん、風神雷神ペアでSPになってコイツを守ってたんだよ!」

「みんな男の子に容赦なく抱き着くから、生徒たちの貞操観念が下がったって問題になりかけてたよね……」

「うは~もうスクールアイドルよりもよっぽど人を惑わすアイドルじゃないですか~」

「別にスクールアイドルは誰も惑わせねぇだろ」

「いつも狂わされてますよ! みらぱを見てるといつも脳内麻薬ドバドバですから!」

「ひめっちもみらぱだからね!!」

 

 

 みらぱの話になると眼がガンギマリする安養寺。

 昨晩ちょっと話して分かったのだが、どうやらコイツはみらぱとゲームが好きらしい。みらぱの強火オタクのくせに自分が加入するなんて後方腕組み勢の名が廃る気もするが、スタイルや運動神経が良く、それでいて顔もいいため慈に見定められたようだ。

 ゲームは聞いた話によるとプロとして活動した腕前とのこと。eスポーツ部門での一芸入試で入学したようで、それよりもこの学校でゲームが芸術として認められていることに驚いた。古臭い学校だから伝統に縛られているのかと思ったが、意外と漸進的な姿勢はあるようだ。もちろん中学時代からプロチームに入って活躍してたコイツも凄いけどな。とんでもない奴がメンバーになったもんだ。

 

 

「れいくんせんぱいを守ってたって言ってましたけど、昨日の晩御飯のときは2人で密着して取り囲んでいたじゃないですか~。アレもお守り隊の使命が故なんですかね~」

「あ、あれは……ただ零の隣にいたかったというべきかなんというか……」

「久しぶりに会えたから、また隣に行きたいなって……」

「な、なんですかその乙女チックな顔!? アタシの入学前に何があったんですかーっ!? まさか、さっきの人たちみたいにお互いに密着し合って同衾を……!! いや流石にそれは――――」

 

 

 慈と瑠璃乃の表情がいわゆるメスの顔に変わる。実際に部屋で2人きりになったりデートしたこともあるし、なんなら本人の同意を得て半裸に剝いたこともある。まあそれはスクールアイドル病の治療のためだが、もはや俺に肌を晒すことに一切の躊躇がなかったあたり惚れこみ具合は相当なものだろう。ただそのせいでコイツらを崇め奉っている安養寺はショックを受けているようだ。

 

 

「やっぱりエッチなことしたんですか!? アタシは信じたくないですよ!! 我が女神のるりめぐがイケメンショタに堕とされていたなんて!! こんなの寝取られですよ!! 脳が破壊されますよ!! ていうか現在進行形でされてます! 妄想の中で!」

「あぁ、ひめっちが過去に類を見ないほどの暴走モードに……」

「姫芽ちゃんどうどう! 妄想の中の私たちどうなってるの!」

「ライブや配信では眩しい笑顔をファンに向けておきながら、裏ではイケメンショタのデカ棒に堕とされて、本当の自分はあなたにしか晒さないって甘く囁いてれいくんせんぱいの支配欲を満たしてるんですよね!? アタシやファンにとっては壮絶な寝取られですよ! でもこの脳内麻薬の快楽は……まさかアタシ、寝取られモノが好きだった!? れいくんせんぱいのせいで性癖歪んじゃいますよ!」

「なんで俺が切っ先を向けられてんだよ……」

 

 

 勝手に被害妄想を広げて勝手に自爆してやがる。でもなんとかしようにも俺の言葉が全てスパイスとなりコイツの脳を焼き切ってしまいそうだ。まあ本人は意外と快楽を得ているのでこのままでいいのかもしれないが。

 

 それにしても、普段はゆったりとした喋り方で雰囲気も緩いのに、自分の好きなことになるとここまで壊れるのか。傍観者の立場としては見ていて楽しいが、慈と瑠璃乃の立場を考えると苦労を察するよ。なんたって自分たちのファンが入ってきて、しかもソイツが熱烈な自分たちのオタクなんだから。これまでも幾多の暴走を止めてきたに違いない。ただ今回はワケが違うようだが……。

 

 

「あのね、私たちはまだ処女だから! 純潔純真のめぐちゃんるりちゃんだから!」

「まだってどういうことですか!? まさか再会したのを機に……!!」

「売り言葉に買い言葉! 今のひめっち、隙を見せたら的確に突いてくるなぁ……」

「そもそもるりめぐは2人でちゅっちゅしてるものとばかり思ってたのに、まさかノンケだったなんて……」

「そりゃ付き合うなら男でしょ普通。ねぇるりちゃん」

「ま、まぁ……ね」

「やっぱり男なんだーーーーっ!!」

「姫芽ちゃんは私たちをレズだと思ってたの!?」

「普段から隠れて乳くりあっていたのかと……」

 

 

 そんなことしてたらドン引きだわ。俺が言うのもおかしいけど。

 スクールアイドルは顔がいい女子ばかりが集まっている都合上、ファンからは百合認定されることがままある。動画などで日常風景を投稿し、そこで仲睦まじい様子を見せている奴らも増えているのでなおさら誤解されるだろう。ただ実態はこれだよ、夢を崩して申し訳ないが。

 

 

「百合の間に挟まるイケメンショタ……。そしてまんざらでもないめぐちゃんせんぱいとるりちゃんせんぱい……。まさかヘテロだっただなんて……」

「ひめっちの暴走で勘違いしそうになるけど、ルリたちって至って真面目な恋愛観持ってるよね……?」

「安心しろ。百合カプ崇拝者は過激だからな。現実を突きつけて絶望させるに限る」

「あんたのそういう言動が姫芽ちゃんをおかしくしてるんじゃないの……?」

 

 

 でも困ったな。今日は安養寺と交流を深めるつもりでコイツらに付き合ったのに、これだと逆に俺への好感度がどんどん下がっていく。とはいえこちらが悪いわけではなく、コイツの勝手な思い込みで勝手に暴走しているのでどうしようもない。慈と瑠璃乃が誤解を解いてくれるのを待つか。でも俺たちが何を言っても曲解してくる厄介な状態になってるので、これ最初に交流するのは徒町にした方がよかったかもな。ただアイツはアイツで俺への崇拝が半端ないから、話が通じやすそうな安養寺を先にしたんだけど……人は見かけによらねぇな。

 

 

「おい、いつになったら練習始めるんだよ。お前らがやらないなら他の奴らのとこに行っちまうぞ」

「いややりたいのは山々なんだけど、ひめっちの機嫌が直らないことにはなんとも……」

「そうですよ! アタシの気が済むまで練習はできません!」

「じゃあどうすりゃいいんだよ」

「取り返します。るりめぐをれいくんせんぱいから! それにおねショタの組み合わせでショタ側が逆転する展開、アタシはNG派なので! その派閥の代表としてプライドを賭けます! だかられいくんせんぱいも寝取り側陣営の誇りを持ってかかってきてください!」

「いや普通に純愛派だが?」

 

 

 言ってることはメチャクチャだが、ここでコイツの考えを矯正しておかないと後々変な噂を流されてしまいそうだ。以前ここにいたときもあらぬ噂が瞬く間に広まったから、出所が分かっているのであればあらかじめ潰しておくに限る。

 それにだ、コイツと真っ向から対面できるいい機会かもしれない。俺の性格が原因でもあるのだが、初対面では中々向き合ってくれない奴も多いからな。暴走しているとはいえ所詮はチワワ、手懐けるのは簡単だ。

 

 

「姫芽ちゃんは勝負事が好きだからね。それで? 何で対決するの?」

「安養寺が得意なことでいい。でないと俺が余裕で勝つ」

「強気ですね~。じゃあアタシがプロ時代から続けてるFPSの対戦モードでどうですか~?」

「あぁ。じゃあ家に戻るか」

「淡泊ですね~。めぐちゃんせんぱいはアタシと練習するってなっただけで震えあがるのに」

「なんとかなるだろ。いつもその精神で乗り越えてるから」

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 ゲームで対決するため安養寺の部屋に招かれた。

 中はまさにゲーマーというべき部屋で、ゲーミングPCやらデスク周り、一部の壁紙がオーロラに輝いていて目がチカチカする。こういう風景を見ていつも思うが、ここまで発光させてたら目が悪くなりそうだけど大丈夫なのか……?

 

 ゲームで勝負するとなった途端に元気になった安養寺。やはり元プロが故の自信なのか、それで慈と瑠璃乃を取り戻せると思っているらしい。そもそも寝取った覚えなんてないし、なんならコイツらから俺に擦り寄ってきているのだが、それを伝えたらまた癇癪を起しそうなのでやめておこう。

 

 

「でも零、大丈夫なの? 前るりちゃんとやったFPSとはまた違うゲームだよ? 操作性もかなり違うらしいし……」

「問題ない。今から覚えればな」

「なんかめぐちゃんせんぱい、れいくんせんぱいを応援していませんか……? やっぱり女の友情を捨てて男に走る気なんですね!?」

「最初からそうだって言ってるでしょうが! いやそもそも、プロvs操作も知らない初心者だったらそりゃ後者の心配するよ普通!」

「まあそれもそうですね~。ていうか、ホントにいいんですか?」

「あぁ。この世界は俺を中心に回っているから、運命が俺に傾くようにできてんだ」

「なるほど、これがれいくんせんぱいの本性ですか~……」

 

 

 やっぱりガキの姿になると身長に反比例して態度が大きくなっちまう。周りが同年代だってこともあるだろう。むしろ教師の立場が自分の本性を抑えつけていたと言ってもいい。かのんたちには見抜かれているだろうが普段はここまで尊大にならないからな。そう考えると結ヶ丘にいたときの俺は比較的おとなしかった気がするよ。

 

 そしてそんな俺の本性に驚く安養寺。最初は子供がイキってるだけの可愛い姿と思われていただろうが、直属の先輩たちがマジになって持ち上げるから段々と威圧を感じているところだろう。

 

 

「ただなんの策もなしに挑んで勝てるとは思わない。だから練習させてくれ」

「イキってる割には殊勝ですね~。そういうことなら1週間後とかにしますか? もっと後でもいいですよ。一方的にボコすだけだとつまらないですしね~」

「そんなに待てるか。こちとらやることがたくさんあるんだよ。練習は2回で十分だ」

「え、それだけですか……?」

「1回目で操作を覚える。2回目で勝ち方を覚える。そして3回目で勝つ。それ以降は全て俺の勝ちだ」

「キターーーーッ!! 零くんの3回理論! ルリそれ好きなんだよね」

「自分がボコボコにされたのにかよ」

「るりちゃんは零が俺様系を発揮するところが大好きだからね」

 

 

 瑠璃乃は見た目が派手だからパリピ系のように見えて意外と繊細な性格だ。周りの人間が盛り上がっていても、その中で一人でも蚊帳の外にいたらソイツに気が散ってしまう。そうなるとルリポイントなるものが削られ、挙句の果てには本人曰く充電切れ状態になってしまいダンボールの中に塞ぎ込む。

 だが、俺がいることでその悩みは一気に解消される。俺の求心力により場が統制され誰もが俺に目を向けるようになる。そうなれば蚊帳の外に追いやられる奴はいなくなるのでコイツも何も考えずにその場を楽しめるってわけだ。だから俺の傲岸不遜な態度が好きなんだよ。

 

 

「分かりました。一応訊きますが、男に二言はないですよね~?」

「あぁ。いいからさっさと始めるぞ」

「待っててくださいねめぐちゃんせんぱいるりちゃんせんぱい! また2人で乳くり合う時間をアタシが取り戻してみせますからね~!」

「だからそんな関係じゃないって言ってるでしょうが!」

 

 

 そんなわけで開戦。

 1回目の練習で操作方法を俺に教えているときの安養寺はかなり余裕な様子だったが、2回目の練習で対戦したときは俺のセンスを褒めつつもちょっと表情に曇りが生じていてた。

 そして運命の3回目。慈と瑠璃乃を取り戻す(奪ってすらないが)ために闘志を燃やし、目の前の敵を叩き潰すために正義を振るう安養寺。瑠璃乃が相手だったときは違ってコイツは元プロ。たった2回の練習で挑むなんて普通結果は火を見るよりも明らかだ。普通はな。

 

 

「ま、負けた……。このアタシが、2回しか練習していない素人ショタに……!!」

「もしかしたらこうなるんじゃないかと思ってたけど、まさかプロのひめっちにも勝っちゃうなんて……」

「憎たらしいほどに何でもできちゃうからね。もう対抗しようって思わないくらい」

「ぐっ……!! るりめぐをイケメンショタから取り戻すこと叶わず!! しかもアタシは一生脳を破壊されながら生きていかなきゃいけないなんて!!」

 

 

 後々のことが面倒だからわざと負けてもよかったんだけど、それは俺のプライドが許さなかった。例え相手の誇りを傷つけようとも自分を強く魅せたい性格はこんな状況でも変わらないらしい。それに全力でコイツにぶつかるって言ったしな。事の経緯はなんにせよ、出会って2日目なのにここまで交流できたのは僥倖かもしれない。

 

 安養寺は嘆きに嘆いた後、暴れ疲れたのかコントローラーを床に置いてその場で脱力する。桃色の上着を脱ぎ、シャツのボタンも上だけ外す。その姿はあまりにも無防備で、まるで勝負に負けて屈服した女戦士のように襲ってくださいと言っているようなものだ。

 

 

「なんだよ急に黙って……」

「えっ、だってアタシは負けたんですよ。だかられいくんせんぱいの好きにしていい、って意志表示です。せんぱいのことですから、アタシも手籠めにするんですよね……」

「んなことするかよ」

「アタシは負けました。だからめぐちゃんせんぱいとるりちゃんせんぱいも好きにしていいです。ほら、そこのベッドを使ってください。ヤるんですよね……? アタシは部屋の隅で一人で寂しく自分を慰めてますから……。こんなに近くにいるのに、ショタのデカ棒に屈服する推したちを守るどころか見てることしかできないなんて……」

「もし仮にヤるとして、どうしてお前が見てる前でやらなきゃいけねぇんだよ……。やるなら自分の部屋に連れ込むっつうの」

「「えっ!?」」

「お前らもなに想像してんだよ。仮だっつってんだろ……」

 

 

 おい、もしかしてここには思春期を拗らせた奴しかいねぇのか……? 安養寺も何故か上着を脱いで変に臨戦態勢になってるし……。脳内ピンク色になりかけてるけどピンクなのはその髪の色だけにしておけ。しかもさっきから勝手にデカいことにされてるし……。

 

 ただこのままコイツを放置して終わりっては締まりが悪い。コイツのことを知ることができたいい機会ではあったが、俺への印象がどちらかと言えば悪い方向に進んでしまったような気がする。まあ一緒に暮らしているわけだし、挽回する機会はいくらでもあるか。ここは可能な限り穏便に事を済ませよう。

 

 

「おい安養寺」

「れいくんせんぱい……。やっぱりアタシとやろうってことですか~……?」

「バカ。服くらいちゃんと着ろ」

「ふぇ……?」

 

 

 脱ぎかけのシャツのボタンを留め、上着を着させてやる。

 安養寺は俺の行動に驚いたのか、さっきまで目を虚ろにして自分を差し出していたのに突然その瞳に光が戻った。

 

 

「ホントに何もしないんですか……?」

「だから最初から何もしてねぇっつってるだろ。それにもしチャンスがあったとしてもがっつかねぇよ。()()()()()()をするのは相手が心の底から同意してくれたときだけだ。女の子の裸を見るならなおさらな」

「せんぱい……」

 

 

 どうして俺が介護しなきゃいけねぇんだよ。でもここまでの暴走によって冷静さを失い判断力も失っていただろうから、早まらないように静止してやるのが俺の務めだ。いるんだよな、恋愛的にも性的にも距離間がバグってるやつ。ただコイツも平時なら問題ないだろうし、俺が止めなくても慈と瑠璃乃がストップをかけていただろう。

 

 これで好感度がプラマイゼロくらいになったらいいが、流石に夢見過ぎか。

 

 

「あれ~? 姫芽ちゃん、顔が赤くなってるよ~!」

「そ、それは急にイケメンを発揮されたので戸惑っちゃって……!! ていうかこれだとアタシ、ショタ好きみたいじゃないですか!!」

「いやそこまで言ってないけどね! でもひめっち、結構取り乱しちゃってる?」

「そ、そんなことありませんよ! れいくんせんぱ~いっ! せんぱいたちがイジメてきます~!」

「今度は俺に縋り付くのかよ。敵と味方が入れ替わってんじゃねぇか……」

 

 

 コイツ、もしかしてチョロい寄りだったりする? ただ冷静さを欠いているから単に油断していただけかもしれない。俺の見立てでは人間関係には割と敏感な方だと思っているからな。過去になにがあったのかは知らねぇけど。

 なんにせよ嫌われているわけではない、ということが分かっただけでも収穫かな。可愛い一面も見られたから今日の成果としては上々だろう。

 

 

「姫芽ちゃんも乙女だったか~!」

「うわぁ~んっ! アタシにイケメンショタ好きの性癖が刻み込まれるぅ~っ!!」

 

 

 なんつうかコイツ今後、俺のことをイケない目で見てきそうでちょっと怖いな……。

 




 姫芽がみらぱ推しなキャラだと分かった瞬間から、零が現れたらこんな展開になるんだろうなと一年も前から思っていました! まあここまでR指定のワードが飛び交うのはこの小説特有ですが(笑)

 今回は暴走している一面ばかり取り上げましたが、本来は過去の出来事から対人関係に慎重な子でもあるので、その部分で彼とのストーリーが純粋に繰り広げられることをご期待いただければと思います!



【キャラ設定集】
零から蓮ノ空キャラへの呼称
・日野下花帆 → 花帆
・村野さやか → さやか
・乙宗梢   → 梢
・夕霧綴理  → 綴理
・大沢瑠璃乃 → 瑠璃乃
・藤島慈   → 慈
・百生吟子  → 百生
・徒町小鈴  → 徒町
・安養寺姫芽 → 安養寺

蓮ノ空キャラから零への呼称(零への好感度 0~100)
・日野下花帆 → 零クン   (100)
・村野さやか → 零さん   (100)
・乙宗梢   → 零君    (100)
・夕霧綴理  → れい    (100)
・大沢瑠璃乃 → 零くん   (100)
・藤島慈   → 零     (100)
・百生吟子  → 神崎先輩  (30)
・徒町小鈴  → 零師匠   (55)
・安養寺姫芽 → れいくんせんぱい(40→43)

スクールアイドル病の治療状況
・日野下花帆 → 治療済
・村野さやか → 治療済
・乙宗梢   → 治療済
・夕霧綴理  → 治療済
・大沢瑠璃乃 → 治療済
・藤島慈   → 治療済
・百生吟子  → 傷の位置調査中
・徒町小鈴  → 傷の位置調査中
・安養寺姫芽 → 傷の位置調査中
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。