「れいくんせんぱい、噂に違わぬ大活躍でしたね~。まさか光るモノ好きのイタズラ猫の居場所を突き止めて、行方不明になってたトランペットのパーツを回収するとは……」
「まさに迅速果敢ですね。ブラスバンド部の人たちもみんな感謝していました」
「言ったろ、あの猫は以前も同じことをしてたって。だから足取りはすぐ掴めたよ」
蓮ノ空編入生活リトライ5日目。
今日も放課後にスクールアイドルクラブの連中の練習に付き合――――ってはおらず、とある依頼でブラスバンド部の事件の調査に向かっていた。以前にも出没した光るモノが大好きな猫の仕業により、トランペットなど光沢のある楽器の部品が盗まれる事件が発生。そこで俺の実力を知っている部員たちが助力を求めてきたのだ。
ついでにそのブラスバンド部に友達がいる安養寺と百生も同行し、コイツらがあれよあれよとしている間に事件が解決。さっきも言った通りあの猫は前科があるので、住処を移動しようがその行動パターンからどこにいるのかはすぐに分かった。だからあまり賞賛されるような言われはないのだが、あまりのスピード解決だったので俺の活躍を実際に見る位置先生たちは驚いていた。先輩たちから俺の噂を聞くだけ聞いてその実力については半信半疑だっただろうが、これで立場を保つことはできたかな。
そして無事に楽器の部品を取り戻し、現在は帰路に着いている。
「今更だけど徒町はどうした? アイツなら喜んで事件に首を突っ込みそうなものだけど」
「小鈴は職員室に呼ばれています。まさか変なチャレンジでもして注意されてるのかな……?」
「あはは……それはありそうだけど、最近はスクールアイドルもお勉強も頑張ってるし、それは先生も知ってるから大目に見てくれるんじゃないかにゃ~」
「なんにせよ、俺が来て早々厄介な火種を持ち込まなければそれでいいよ」
俺の勇姿を見られるのであれば地獄の果てまで追従してきそうなアイツだが、どうやら教師の呼び出しには逆らえなかったらしい。流石にそこまで無法者にはなれなかったか。やっぱりアイツにアウトローは無理だな。この程度で師匠に付き従わないなんて自称弟子とはいえ失格だ。
そんな中、廊下の向こうから当の本人が物凄い勢いで走ってこちらに近寄って来るのが見えた。
「ししょーっ! 吟子ちゃーんっ! 姫芽ちゃーんっ!」
「ちょっと小鈴! 廊下をそんな全速力で……!!」
徒町は息を切らしながら俺たちと合流する。
そしてその息切れを整わせぬまま手に持っていたA3程度のサイズの紙を広げて見せつけてきた。
「じゃーんっ! これはなんでしょーか?」
「これは……地図?」
「しかも普通の地図じゃなくて、ゲームの世界の地図みたいかも……」
どうやらこの地図を俺たちに見せたかったらしい。廊下の速度基準をオーバーするくらい興奮していたのか、息絶え絶えにも関わらずその興奮でコイツの勢いは全然止まってないようだ。
徒町が見せ付けてきた地図は安養寺の言った通り普通のではなく、ファンタジー系のRPGによく見られるようなものだ。ところどころにダンジョンの名前のような記載と、そのシンボルと思われるイラストが描かれている。現実の存在する場所なのかも怪しいが、地図の左下の隅っこに見たことのある建物の絵があった。
「これ、蓮ノ空か?」
「はいっ! どうやらこれ、蓮ノ空の裏山に眠る宝物の地図らしいんです!」
「「た、宝物!?」」
「一気に胡散臭くなったな……」
どうせアレだろ。たくさんの宝石やら埋蔵金やら眠ってるって噂があるやつだろ。夢を見るのは自由だけど、ありもしないお宝に目がくらむくらいな練習でもしてろと言いたくなる。ただツチノコ探しが公式に定期開催されてるように、こういうのは見つけるのが目的ではなくアドベンチャー感覚で楽しむのが肝なのかもしれない。ま、わざわざ現実を突きつけて夢を壊す必要はねぇか。
ただイヤな予感がする。さっきも言った火種を持ち込み俺を面倒事に巻き込む、そんな予感が……。
「小鈴。そもそもその地図、どこで手に入れたの?」
「職員室に呼ばれたときに秋葉先生から貰ったの! 『小鈴ちゃんはチャレンジ好きだから、お宝探しなんてどう?』ってね!」
「秋葉かよ。ますます怪しくなってきたな。てかアイツが作ったんじゃねぇの?」
「どうやら違うみたいです! 秋葉先生、とある空き部屋を研究室にしようと思って掃除をしていたらしいんですけど、そのとき残されていた古い書類の中から見つけたと仰っていました! 恐らく卒業した誰かが残したモノだろうって!」
ホントかよ……。
まあこの学校は歴史が古く、今は使われてない教室や建物もあるので残置物があってもおかしくはない。その地図が本物だと断定はできないが、逆に偽物だと証明する方法もない。つまり今すぐにでも宝探しに飛び出しそうなコイツを引き留める手段はないってことだ。
それすなわち、どういうことかというと――――
「行きましょう、師匠! 吟子ちゃんと姫芽ちゃんも!」
「やっぱりそうなるよな……」
「私は興味がないわけじゃないけど……姫芽は?」
「興味ある! なんだか面白そう!」
ほら見たことか。やっぱり俺は巻き込まれる運命らしい。
ただゲーム好きの安養寺はともかく百生まで興味を惹かれるとは意外だ。この中では警戒心が一番強いと思ったのだがお宝とかに目がないのだろうか。読書好きだからフィクションのようなネタに心を躍らせている、とかあるかもしれない。
俺は特段興味はないが、このままコイツらだけに行かせるのは何かあったときに監督責任を問われる。コイツらと直前に一緒だったのが俺だとバレればなおさらだ。だから気は乗らないけど一緒に行くしかないようだ。あまり面倒なことにならなければいいが……。
「それじゃあ準備して4人で宝探しに行きましょう! ちぇすとー!」
「お~っ!」
「お、おーっ……」
徒町がお得意の掛け声でみんなの士気を上げる。ただ俺は拳を突き上げないと読んでいたのか、俺の手首を掴んで一緒に振り上げた。背が低いことでこんなことにも簡単かつ強制的に付き合わされるのか。悲しいねぇ……。
~※~
家に戻って各々動きやすい服装と必要な装備を整えた後、宝の地図が指し示す裏山の入口へとやって来た。
服装は各自練習のときに着ている服だろうか。百生は青のパーカーに黒の薄型ロングパンツ。徒町は白のシャツの上に緑のジャージ、下はトレッキングスカートと肌色のレギンス。安養寺は水色と紫のゲーミング色っぽい厚めの上着とパンツ、黒のレギンスにキャップを被っている。
装備は水や携帯やモバイルバッテリー、懐中電灯やコンパスなど思いつく限りのモノを持ち出した。山登りガチ勢からしたらナメてる装備だと思われるかもしれないが、ただ裏山に上るだけだし、学校の敷地近くだからそこまで神経質にならなくてもいいとは思う。遊びで書いた地図なら所詮はハイキング程度の難易度だろうしな。
「お宝が徒町たちを待ってるんだよね! 宝石かな埋蔵金かな!? それを売って大金を手に入れたら……みんなの夢を叶えるためにそのお金を使いたいよ! 例えば花帆先輩のためにショッピングモールを作ってあげるとか!」
「誰かのためにって小鈴ちゃんらしいねぇ~。アタシはそんな大きな妄想はできないけど、強いて挙げればゲーミングPCの性能を盛り盛りにしたいかな~」
「私は家の近くにある『金沢くらしの博物館』に寄付をして、より多くの人に伝統工芸を知ってもらうための宣伝費にしたいかな」
「おおっ、現実的だね吟子ちゃん!」
そもそも宝石や埋蔵金が見つかったとしても自分のモノにできねぇからな。警察に届け出ないと横領罪で普通に犯罪だ。まあ6か月以内に受取人がいなければ僅かだけど貰えるみたいだけどな。
ただそれを指摘するのは野暮ってものだろう。ガキはガキらしく素直に夢を追い求めてほしい。
和気藹々とした雰囲気の中、遂に宝探しが始まる。
裏山なので舗装された道があるのかすら怪しかったのだが、どうやら管理のため道は存在しているようだ。ただそこまで踏み場はよくないのでハイキングにはあまり適さないか。足元は常に注意した方がよさそうだ。
そんな中、地図が指し示す最初のチェックポイントに辿り着いた。
そこの名は、『フォール橋』。
「崖と崖を繋ぐおオンボロの桟橋を渡る。まさに創作の世界でよくあるシチュエーションですね~」
「いやそんなのんきなこと言ってる場合じゃないでしょ! これ渡って大丈夫!? 途中で壊れて落ちない!?」
「大丈夫! 走って駆け抜ければすぐ向こう側に着くよ!」
「その衝撃で壊れちゃうかもしれないでしょ!? しかも『フォール橋』って、『フォール』って落ちるって意味だから! なんでそんな不吉な名前をつけたの!?」
「なんでって徒町に言われても!?」
早速俺たちに試練が待ち受けていた。崖と崖を繋ぐ橋は確かに老朽化しており、お世辞にも無事に渡れると見た目で保証はできない。橋の名前からして初手で挑戦者を門前払いしてるけど作った奴はそれでいいのかよ……。
「どうする? 早々に諦めるか?」
「いやこれはもうどう考えても帰るしか――――」
「諦めません! せっかく今までにないチャレンジですから、開始早々に諦めるなんて勿体ないです!」
「えぇっ!? ひ、姫芽は……?」
「う~ん、まあ老朽化してると言っても触ってみる感じはしっかりしてそうだし大丈夫じゃないかな? それに山の管理もされてるっぽいから危ない橋をそのままにしておかないと思うよ」
「そ、そうだけど……」
安養寺っておっとりしてるけど心眼は鋭いよな。周りをよく見ている。徒町は何も考えず血気盛んなだけだろうがこういう奴こそ周りを同調させる力がある。人を引っ張る性格があるから意外と将来の部長候補になったりするかもな。
対して百生は尻込みしている様子。そりゃそうだ、勇気と無謀は違う。そこの分別というか慎重な考え方はいつも通りか。
こうして見ているだけでもコイツらのことを知るいい機会になる。宝探し、同行するのも悪くないかもな。
「こればっかりは多数決ではダメだ。身体を張るんだから全員の同意がなければここで帰るぞ」
「吟子ちゃんお願い! 一緒に宝探しチャレンジを成功させよう! 落ちそうになったら師匠が助けてくれるよ!」
「人頼みかよ……」
「分かった! 分かったけど、手を繋いでいてほしい……」
「オッケーオッケー。じゃあれいくんせんぱいが先頭で、小鈴ちゃんとアタシでサンドイッチして手を握ってあげるね」
「それならいい……うん」
「決まりだな。じゃあ行くぞ」
安養寺の言った陣形で1列になって橋を進む。
やはり安全そうだが老朽化しているのは否めない。一歩一歩を踏みしめるたびに軋む音が響き、その音色が俺たちの緊張を高鳴らせる。後ろの三人の吐息が荒くなっていることから張り詰めた空気を感じる。
そして、橋の中盤まで歩を進めたときだった。後ろから俺の肩を掴んでいた徒町の足が止まる。
「ひゃっ!?」
「な、なに小鈴!?」
「今、徒町の踏んだところの板が少し崩れて、木の破片が川に落ちちゃった……」
「ちょっと怖いこと言わないで!」
「大丈夫だよ~。アタシが踏んだところなんてさっきから何度も木の屑がボロボロ落ちてるからね~」
「姫芽はなんでそんな冷静なの!?」
「いや~緊張はしてるよ? でも同時にこのドキドキ感が刺激的で楽しいとも思ってるからね~」
まだ最初の関門なのに楽しんでるなコイツら。実は先頭の俺が最初の一歩を踏み出した時点で足場の木の屑がポロポロしてた……とは言わない方がいいか。余計なことでコイツらをビビらせる必要はない。変に騒いで橋が落ちましたなんて洒落にすらなってねぇからな。
「残りは一気に渡るぞ。ここに立ち止まっているだけでもリスクなんだ、下を見ずに前を見て俺についてこい」
「「はいっ!」」
「は、はい!」
橋が普段と違う挙動をしただけで過敏に反応されるのも面倒なので、ここは心を無にさせて一気に渡らせることにした。個々人が前の奴の手を握ったり肩に手を置いたりしているので、先頭の俺が早く歩めばコイツらも必然的にそのスピードに乗らざるを得ない。
そんな感じで橋の揺れには注意を払いながら、早足で一気にオンボロ橋を抜ける。
反対側の崖に全員が辿り着いたことを確認すると、三人は既にやり切った様子でその場で尻をついた。
「も、もうこれだけで疲れたかも……」
「ぎ、吟子ちゃんまだまだこれからだよ……」
「小鈴だって震えてたよね!? 手ずっと握ってたから分かってるよ!」
「安全だと思っててもいざ渡るとなると緊張しますなぁ~……。れいくんせんぱいの勇敢さがより実感できましたよ~」
「この程度のことでは動揺すらせず、むしろ徒町たちをずっと気遣ってくださる。さすが師匠! さすししょ!」
「んなことほざく元気があるのなら行くぞ。日が暮れるまでには帰らねぇといけねぇしな」
まだ最初のチェックポイントを乗り越えただけだ。このペースだと日が暮れる前に宝の在りかを見つけるのは難しいかもしれない。もちろんコイツらの安全が優先なので潮時だと分かったらすぐに命令して引き返す予定だけどな。だがチャレンジすると決めた以上、このまま何の収穫もなく敗走するのは負けた気がする。初戦を制しただけだがここを突破したからには是非とも拝んでみたいものだ。その宝ってやつを。
しばらくしてみんなも休憩が終わったのか、立ち上がって次の関門へ行く覚悟が整う。
そのときだった。
橋のロープの一部が切れ、鈍い音を立てて橋が大きく揺れたのは。まだ完全に崩れてはないものの俺たち4人の体重を支え切れるかはちょっと怪しい。これで元の道を引き返すのは不可能になった。
その光景を見たコイツらは当然青ざめて――――
「「「えぇ……」」」
唖然とした声しか出ていない。
なんか俺たちの行く末を暗示しているようで幸先不安だなオイ……。
~※~
「次は『悪魔の手』……まさに何か危険なモンスターがいそうなダンジョン名だね~」
「ちょっと冗談はやめてよ! そんなのいない……よね?」
「分からないよ~?」
「もうっ!」
本当に落ちそうになった吊り橋を間一髪で乗り越えた俺たち。次は針葉樹が5本そびえ立つイラストが描かれた『悪魔の手』と呼ばれる場所へ来ていた。木が5本あるからそれを指に見立てているのだろうか。悪魔の手といえば左手だから。
にしてもまたそれらしいおどろおどろしい名前を付けやがって。この地図の作者は相当RPG好きらしい。
「でも変だね。木はたくさんあるのにイラストのツンツンした木が1本もないよ?」
「そもそもこの場所で合ってるの? ここに来るまででも道が結構入り組んでたから、もしかして迷ってるのかも……」
「いや、見てみろよこの切り株。太くて年季の入った切り株が5つ、扇状に並んでいる。多分これが元々地図に描かれてる木だ。だから場所はここで合ってるよ」
「でもここから道が複数に分かれてますね~。コンパスで方角を調べてみますか~……って、あっ、針が狂っちゃってます……」
「えぇっ!? じゃあ携帯で――――え、圏外!?」
「えっ!? 徒町たち遭難しちゃった!?」
「落ち着け。もっと開けたところに行けば電波があるかもしれない」
地図に描かれているチェックポイント同士の距離は近くはない。ハイキング程度と思ったけど悪路も多いから、決して生半可な旅にはならなさそうだ。それに既にふもとの入り口からかなり離れているのでコンパスが役に立たなくなるのも仕方ないだろう。
「でもどの道へ行けばいいんですかね~」
「地図には『悪魔の手』の下に小さく『光の源へと進め』って書いてあるね。どういう意味なんだろう」
「光の源……もしかして!」
「神崎先輩?」
どうやらこの地図の作者はただのゲーム好きってだけではないらしい。しっかりとチェックポイントの名前と謎解きを同期させている。興味本位でRPG風の地図を作ったわけではなさそうでちょっと感心するよ。
だったらこれを利用しない手はなさそうだ。コイツらは橋から落ちそうになったり方角が分からず迷子になったと思い込み、テンションが下がっている。その状況を切り抜けるためにもこのシチュエーションを活用させてもらおう。
「お師匠様! なにか分かったんですか?」
「あぁ。この切り株たち、年輪が広い部分と狭い部分があるだろ? 太陽光を受ければ受けるほど成長が良くなり年輪の間隔も広くなるんだ」
「ほぇ~なんか聞いたことがあるかもです」
「太陽光を最も浴びる方角は真南だから……あとは分かるよな?」
「あっ、まさか地図の『光の源へ進め』って、太陽の光が差し込む場所って意味ですか?。だとすると5つの切り株を見て――」
「その年輪が広がっている方向を一直線で結んで5本が交わる場所が――」
「『光の源』で徒町たちが進む道!」
「そう、正解」
三人に高揚感が宿っている。当初お宝の使い道を想像していた頃のワクワクが蘇ったようだ。
にしても、なんとか元気を取り戻したみたいだな。橋を過ぎてここに来る間もずっと緊張が張り詰めてたから俺まで息苦しくなっていた。自分たちで道を切り開いたという成功体験さえあれば少しは前向きになれるだろう。
ただこの地図、一体誰が作ったんだろうか。ハイキングというよりオリエンテーション的な気分を味わえる。ただチェックポイントを目指すだけではなく、みんなであーでもないこーでもないと頭を悩ませながら1つ1つ成功を積みながら謎をクリアしていく。まるで人と人を結びつけるような、そんな宝の地図のように思えてならない。本当の狙いがそうなのかは知らないが、コイツらと交流を深めたい俺にとっては有用な代物。是非使わせてもらおう。
~※~
「次は『毒蛇の崖』かぁ~。さっきから今にもゲームオーバーにさせられそうな名前ばかりだね~」
「なったらダメでしょ! これ現実なんだから!」
「毒蛇がいたら徒町は一巻の終わりです! ありがとうございました!」
「諦めないで! ていうかいないよねそんなの!?」
また物々しい名前がついているが、みんなでRPGの世界を冒険しているみたいだから雰囲気は合っている。また百生や徒町が騒いでるが、既に第三のチェックポイントだからコイツらも定型会話っぽくなっていた。
「この崖の上に行くためには、敷かれているロープを伝って登る必要がありそうだな。他に道もねぇし」
「もしかしてこのロープを蛇に見立ててるとか、そんなカンジなんですかねぇ~? 流石に危ない生き物がいるところを宝探しのステージにはしないと思うので」
実際にここまでで野生動物を見ていない。蓮ノ空の近くの山だからその辺の管理はされているのかもな。
ロープを握って登るだけであればただのアスレチックと変わらない。結局危なそうだったのは最初だけで後は難なく切り抜けられそうと分かったのか、コイツらの中では楽観ムードが漂っていた。
「あまり気を緩めるなよ。崖の反対側も崖だ。こっち側にはロープもないし、落ちたら戻ってこられねぇから」
「れいくんせんぱい、それはフラグというものですよ~!」
「大丈夫。下は急斜面だけど芝だから、岩肌丸出しの上りより全然マシだ。川には飛び込んじまうだろうけどな」
「じゃあ今度は徒町が先頭で登ります! もし落ちてしまったら、徒町を放っておいて先へ進んでください!」
「俺のことは良いから先に行けって、それもフラグだよ小鈴ちゃ~ん!」
「もうみんな怖いこと言わないで! 神崎先輩も!」
冗談を連打するくらい気が緩んでいるようだ。この調子ならここも尻込みせず切り抜けられるだろう。
ただ、何かあったときのために先に徒町を行かせることにした。橋のときに危機一髪を経験したから、同時進行してロープが切れて下へ落ちる悲劇をできる限り回避したい。懸念があるとすれば、落ちてきてもこのガキの身体で人を受け止められないことかな。役得なこともあるけどやっぱり不便の方が目立つなこの体型。受け止め役は残る2人に任せる必要しかなさそうだ。
「じゃあ行ってきます! 骨は拾ってください!」
「だからどうして玉砕前提なの!?」
徒町はロープを伝って崖を登る。それを下から心配そうに見守る百生と安養寺。そこまで高いわけではないし斜面も比較的緩やかなので登ることに苦労はない。だがなんだかイヤな予感もする。やらかしそうな徒町とさっき吊り橋での出来事の相乗効果のせいで全く気が抜けない。誰しもがまたロープが切れるかもと、さっきの楽観モードが噓かのように注視していた。
だが、もうすぐ徒町が登り切る。もしかしたら杞憂な心配だったかもしれない。
「師匠! 間もなく到着しそうです! 特に何も起こらず余裕でした!」
「油断すんな。まだ終わってねぇぞ」
「もう大丈夫ですよ! ほら、あとは足をかけるだけ――――」
徒町が警戒を緩める。
そのときだった。
崖の上、ロープが括りつけてある大きなフックのすぐ隣の木の根元。なんとその穴からリスが飛び出してきた。
「あ゛ぁっ!?」
「小鈴!?」
「小鈴ちゃん!?」
驚いた徒町はロープから手を放してしまう。リスを避けようと後ろに仰け反った状態のため、その体勢でロープの支えがなくなったらどうなるかは明白。さっきまで登ってきた崖から真っ逆さまに転落した。
そして咄嗟にそれを受け止めようとした百生と安養寺だったが――――
「「「ひゃああっ!?」」」
「百生! 徒町! 安養寺!」
徒町の勢いが強く受け止め切れずに三人まとめて背後の芝の崖を落下。そのまま転がり落ちて川に転落してしまった。
危なげながらも順調に進んでいたトレジャーハント。だが未曾有の事態が俺たちを襲い急展開を迎える。
果たしてお宝を無事に探し当てることはできるのか。そもそもこの山から帰還することはできるのか……。
To Be Continued……
小三角とのオリエンテーション回の前編でした。
自分の好みではありますが、こういったアドベンチャー要素のある回が結構好きだったりします。ただ話が長くなりがちなので、オカルト回や長編でしかこういう話はできないのがネックですね。ちなみにこの話は次の後半で完結です!
キャラ設定集ですが、前回吟子の分を反映してなかったのでしておきました!
【キャラ設定集】
零から蓮ノ空キャラへの呼称
・日野下花帆 → 花帆
・村野さやか → さやか
・乙宗梢 → 梢
・夕霧綴理 → 綴理
・大沢瑠璃乃 → 瑠璃乃
・藤島慈 → 慈
・百生吟子 → 百生
・徒町小鈴 → 徒町
・安養寺姫芽 → 安養寺
蓮ノ空キャラから零への呼称(零への好感度 0~100)
・日野下花帆 → 零クン (100)
・村野さやか → 零さん (100)
・乙宗梢 → 零君 (100)
・夕霧綴理 → れい (100)
・大沢瑠璃乃 → 零くん (100)
・藤島慈 → 零 (100)
・百生吟子 → 神崎先輩 (32)
・徒町小鈴 → 零師匠 (60)
・安養寺姫芽 → れいくんせんぱい(43)
スクールアイドル病の治療状況
・日野下花帆 → 治療済
・村野さやか → 治療済
・乙宗梢 → 治療済
・夕霧綴理 → 治療済
・大沢瑠璃乃 → 治療済
・藤島慈 → 治療済
・百生吟子 → 傷の位置調査中
・徒町小鈴 → 傷の位置調査中
・安養寺姫芽 → 傷の位置調査中