ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常2~   作:薮椿

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蓮ノ空ファンタジー3~絶望に至る狂騒~

「HPが、ゼロ!?」

 

 

 大きな音がした場所へ到着すると、そこには英川(えいかわ) 英奈(えな)美堂(びどう) 美和子(びわこ)を含む合唱部の面々がいた。

 そして到着するなり俺たちの目に飛び込んできたのはHPがゼロになった女の子。英川に抱えられているのだが、その表情は何やら怯えたような表情。HPがゼロになった場合にどうなるか俺たちはまだ知らない。だから自分が一寸先は闇の状況に追い込まれて恐怖を感じているのか。それともこの世界でHPが尽きた時のペナルティなのか。どちらにせよ俺たちは初めて目の当たりにすることになる。

 

 

「大丈夫!? ねぇ大丈夫!?」

「ダ、ダメ! 先輩が……!! 英奈先輩……!!」

「えっ、ウチなここにいるよ!? どうしたの!?」

「先輩……!!」

「だからここにいるって! ねぇ美和子、この子ずっと怯えてるみたい……」

「はい。それにどうやら英奈ちゃんの声、彼女には聞こえていないみたいですね……」

 

 

 結局合唱部の奴らがいくら呼びかけてもHPがゼロになって倒れた女の子は反応がなかった。むしろ何かに絶望するような表情をしたまま震えている。そのせいで目を見開いているが、その瞳に俺たちが映ることはないみたいだ。

 

 花帆たちもその様子を見て戦々恐々としている。これがHPが尽きた奴の末路。一体何が起こっているのかは分からないが、単純に戦闘に参加できなくなるだけのヌルゲーではなさそうだ。

 

 

「零クン、あの子どうなってるの……?」

「分からない。ただ自分だけの世界に入り込んでるみたいだ。夢でも見ているのか。夢と言っても悪夢の方だろうけどな」

「じゃあルリたちもHPがゼロになったら悪夢を見続けるってコト!?」

「さぁな。消えないだけマシだけど、どちらにせよ戦力外になっちまうからHPが尽きないように気を配るしかない」

「今はなんとか戦闘も切り抜けられていますが、敵が強くなってきたらそう上手くは行かないかもしれませんね……」

 

 

 さやかの心配は最もだ。そもそもこのファンタジーの世界が適切な難易度に調整されている保証は全くない。いきなりエンドコンテンツ並の敵が襲ってきたら、俺やみらぱの連中がいくら手慣れていようが勝ち目は薄いだろう。全員の特技や魔法を見せてもらったけど、終盤戦に立ち向かえるほどのものではなかったからな。

 

 とはいえ俺たちに逃げ場はない。強敵が襲ってきてもこの世界の真実を解き明かすためには立ち向かうしかない。最初から崖っぷちとはいつものことだが慣れねぇな。

 

 

「まっくろだ。この子の色、黒色に覆われて何も見えなくなっちゃった……。ボクまで震えちゃいそうなくらい怖い」

「綴理がそこまで敏感になるってことは、その子の様子は見かけ以上のようね」

「あっ、だったら蘇生魔法とか使えばいいんじゃない? それか蘇生アイテムとか! めぐちゃんルールだとそういうのは縛るのが好きなんだけど、今はそんなこと言ってる場合じゃないしね」

「でも私たち、誰もそのような魔法は覚えてませんよ……? 合唱部の皆さんも同じみたいです」

「だとすると、徒町たちHPが尽きたらその時点で終わりってこと!?」

「死んではないけどデスゲームっぽさあるよね……。ゲームだと盛り上がるけど、実際現実でやられちゃうとな~……」

 

 

 レベルを上げていけば蘇生魔法を覚えたりするのだろうか。だとしてもいつ覚えるのか分からないので無駄な時間を費やすだけかもしれない。レベルをしこたま上げて万全の状態で挑めれば完璧だが、そもそもこのファンタジーの世界に作り変えた元凶がそんな悠長な時間を与えてくれないだろう。

 

 となると一刻も早く現状を打破する必要がある。そのためにはその元凶を特定することがマストだ。ただ砂漠の中に落ちているコンタクトレンズを見つける、なんて途方もない話じゃない。

 夢を見る楽譜。この噂の真実を追えばこの世界の謎にも迫れるだろう。

 

 

「英川、美堂、ソイツをそこの音楽室へ運んでやれ。そして誰も教室から外に出るな。多分だけど教室は敵とエンカウントしないから安全だ。もし出ちまったらそのときは自分たちで対処してもらうしかないけど……」

「ありゃ、零ってば無責任な発言をしてるって思ってる? いや全然そんなことないよ! むしろそれが最善! それにウチら、こう見えてもRPGは経験者だから!」

「ウチらって、美堂もか?」

「ふふ、嗜む程度には」

 

 

 英川はともかく、美堂は超いいところのお嬢様のはずなのにゲームの経験があるなんて意外だな。別にお嬢様だからって全員が梢みたいな奴じゃないってことか。

 

 

「まあさっきは不覚を取ったせいでこの子がこうなっちゃったわけだけど……」

「悔やんでもどうしようもない。むしろ他の部員たちを守ったと誇るべきだ」

「零の言葉は心に染みるねぇ~。オーケー! こっちは任せてよ!」

「その代わり、零君は絶対にこの世界を元に戻すこと。いいですよねえ?」

「なんでプレッシャーかけんだよ……。分かってるよ」

 

 

 他の合唱部の奴らからも激励される。どれだけ期待を背負わせるんだって思うけど、これもいつものことなので今更気負うことでもない。別にヒーローを自称するわけではないがこういうときは誰かが最前に立つものだ。だとしたら非常事態に慣れてる奴が先導するのは当然だろ。

 

 

「さすがは零師匠! この慕われ具合、ファンタジーの世界でいえばまさに伝説の勇者ですね!」

「ふっふっふっ。これぞあたしたちの零クンだよ! こんな状況で不謹慎かもしれないけど、零クンのカッコいいところをまた見ることができて感動だなぁ……」

「なんで花帆先輩が自慢してるの……。それに本当に神崎先輩に釘付けだし――――って、先輩方みんなそう!」

「でもアタシもその気持ちが分からなくないこともない、かなぁ~って。れいくんせんぱいの勇猛さ……」

「無駄話してないで早く行くぞ」

 

 

 合唱部の奴らも大概だけど、コイツらも俺に向ける目線が熱くなってやがる。その気持ち自体は嬉しいが今は緊張を緩めている暇はない。ま、HPゼロの末路を知って恐々としてる空気を一変させるにはいいのかもしれないけど。暗い雰囲気のまま冒険を続けるよりかはマシか。

 

 空気が若干の穏やかさを取り戻しつつある中、俺たちは再び校舎の中の探索に戻ることになった。

 HPが尽きた子の様子を見ると心が痛いけど、そのおかげでゲームオーバー時の果てを知ることができた。その情報を攻略に活かす。おかげで俺たちの志はより一層高まった。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 蓮ノ空の学内はダンジョン化しているためか巨大化している。いつもなら数十秒で辿り着ける場所もこの世界では一苦労だ。

 何度か敵モンスターとの戦闘を片付け、ようやく目的地である生徒会室へと到着した。職員室は大人が消えた影響でもぬけの殻だったけど流石にここはアイツがいるだろう。

 

 ただ――――

 

 

「あれ、開かねぇ。おい椎葉! 中にいるんだろ開けろ! 俺だ!」

『今時オレオレ詐欺とは流行りませんよ。本物と言うのであれば証拠を提示してください』

「んなこと言ってる場合かよ」

『モンスターが化けている可能性もあります。ファンタジーの世界では往々にしてあることです』

「知ってるぞ。お前意外と性知識に興味あるだろ。昨日家に抜き打ち検査に来たときそんな雰囲気を感じ取れた。どうだ間違ってるか?」

「えっ、椎菜ちゃんそうなの!? あっ、開いた」

 

 

 変に付き合うのも面倒だから秘蔵の暴露話を披露したら、あっさりと生徒会室の入り口が開いた。いつの間に自動ドアになったのかって話だが、それよりも花帆たちはむしろさっきの暴露話に驚いているようだ。

 

 

「あなたの正体を信じたわけではありません。面と向かって反論するために招き入れたのです」

「それはいいから。お前、今の状況をどこまで把握してるんだ?」

「あれは生徒会への申しつけが多く対処が面倒だったので、一度家に訪問して監査対応することで以後余計な申しつけが来ないようにしたまでです。淫らな行為が行われていたとか、それを暴くのが楽しみだったわけではありません」

「だからそれはいいって!」

 

 

 現生徒会長の椎葉(しいば) 椎菜(しいな)。お堅いイメージで実際にそうなのだが意外と遊び心もある。さっき俺が暴露したのも生徒会室へ早く入るための方便ってのもあるけど、実は五割くらいは本当ではないかと疑っている。まあ本人は絶対に認めないだろうし、ご自慢の論破攻撃で相手を捻じ伏せるだろうから肯定を引き出すことさえもできないだろう。

 

 案の定花帆たちがさっきの暴露に対して探りを入れようとしたが、その巧みな話術によって説き伏せられてしまった。さっきHPゼロの末路を見届けて緊張感を高めてたのに、また一気に雰囲気が緩くなったな……。

 

 

「状況は概ね。英川二年生や美堂二年生と一緒にファンタジー系のRPGはやったことがあるので、生徒会室へ向かう道中の敵も難なく対処できました」

「そういえば椎菜ちゃんの服、凄く指揮官ぽい制服だね!」

「皆を指揮する生徒会長だからでしょうか。現代風であまりファンタジー感はありませんが……」

「そうですね。ガンショットとビームサーベルがメイン武器ですので」

「超近未来風じゃん! ルリたちより武器圧倒的に強くね!?」

 

 

 これが生徒会長の特権ってやつか。それだけ強い武器があったら一人でもある程度は戦えるわな。

 そんなことはさて置き、俺たちが見聞きした事実を椎葉に伝えた。蓮ノ空の校内が巨大なダンジョンになっていること、HPがゼロになった場合の末路、そして例の楽譜の噂とのこの世界誕生の関係のこと。

 コイツは以前俺がここに来たときに起きたスクールアイドルの悪夢騒動を独自調査で調べ上げ、一人で真実にまで辿り着いた。関係者以外には事件の詳細を黙っていたのでまさにゼロからの調査である。それにこの学校の過去にも詳しいし、もしかしたら夢を見る楽譜の噂のことも何か分かるかもしれない。俺がここへ来た最大の理由はその能力を買ってのことだ。

 

 

「なるほど、思ったよりも深刻な状況のようですね」

「それで椎菜さん。生徒会に噂の話は何か届いていないのかしら?」

「届いてはいますが、根も葉もない噂の調査に時間を割くほど生徒会は暇ではありません」

「さちならやってくれるのに……」

「大賀美会長は大のお人好しですから。問題児であったあなたたちを切り捨てずに抱え込んでいたくらいなので」

「えっ、もしかして私たち喧嘩売られてる? 先輩なのに……」

「先輩面をするなら、先生方に泣きついて卒業を許してもらうしかなかったそのお(つむ)をなんとかすることですね」

「わぁ~ん綴理ぃ~っ! また後輩にイジメられたぁ~っ!」

「お~よしよし」

 

 

 なんか前も同じことをやってなかったか……?

 椎葉の奴、相変わらず先輩に対しても容赦ないっつうか、筋が通っていない話に対しての攻撃力が半端ねぇな。

 

 

「とは言えどもこのような状況です。生徒会として生徒の安全の管理をするのは当然です。じゃあその安全とは何か。事件解決の道筋を示すことこそ最も安全を担保できるでしょう」

「お前のことだ、ああ言いながらも既に何か調査してるんじゃないのか?」

「鋭すぎるのは逆に鬱陶しいだけですよ。ただ私は蓮ノ空の過去に精通しているわけではありません。もしその楽譜が過去に存在していたとするならば、話を仕掛ける相手としてうってつけの人がいます。蓮ノ空の寮母さん。あの人は芸楽部の十数年の歴史を知る生き証人ですから、私よりも有益な情報を握っている可能性があります」

「おおっ、そういえば忘れてました! 確かに寮母さんに訊けば何か分かるかもです!」

「私のおばあちゃんに訊いてもいいかもって思ったけど、外部との連絡は取れないし、だったら寮母さんに訊くのが一番早いかもね」

「だったら寮へ向かいましょ~! 道行く敵はアタシたちでばっさばっさとなぎ倒してやりますよ~!」

 

 

 そういやあの寮母、俺が生まれる前からあの寮にいるんだっけ。じゃあ噂の楽譜についても何か知っているはずだ。逆に知らなかったら意図して隠しているかデマだったことになる。無駄足になる可能性もあるけどデマだったらデマで別のルートに切り替えることができるから、まずは目の前の疑いを晴らすことから始めよう。

 

 

「しかし、1つだけ問題があります」

「問題?」

「はい。校舎の外、校庭のモンスターは校舎内よりも強さが上のようです。さきほど学校の様子を探るために校庭に出たのですが、戦いながら散策するのは命の危険があると思い撤退しましたから」

「ええっ!? じゃあ寮に行けるかも分からないってこと!? あの椎菜ちゃんが逃げ帰るなんて……」

「戦略的撤退です。そういうことなので、くれぐれも気を付けてください」

「零さん、どうしますか? わたしも含め初心者だらけのパーティで校舎の外に出ていいものかどうか……」

「俺についてくるならついてこい。休むならここにいろ。それはお前らの自由だ」

「零くんは相変わらず俺様系だねぇ。大丈夫だよさやかちゃん! ルリたちが全力でサポートしてあげるから!」

 

 

 生徒会へ辿り着くまでにそれなりの戦闘を切り抜けてきたが、それは敵の強さが一定で各々が対処方法を学んだからだ。外の敵が強くなり動きが全然違ったら対抗できるのか分からない。

 それに不安を感じていたさやかを始めRPG初心者勢だが、みらぱが勇気づけたことで結局全員で向かうことになった。割と戦闘知識の吸収は早い方だったから足手纏いになることはないだろう。コイツらスクールアイドルだから、多分ゲームのコントローラーを持ってポチポチしながら覚えるよりも実際に身体を使って覚えたおかげで効率良かったんだろうな。

 

 

「そういやお前、秋葉がどこにいるか知ってるか?」

「神崎先生ですか? 実は校庭から帰る途中にあの方の教室へ行ったのですが誰もいませんでした。皆さんの話からすると、やはり大人はこの世界から除外されてしまったのでしょう」

「そうか……」

 

 

 危惧していたことだがやはりいないのか。でもアイツのことだ、ファンタジー世界の外から何かしら干渉してくれるに違いない。こういうときだけは信用できる奴なんだけど、今は俺たちにできることをやっていくしかなさそうだな。

 

 

「それでは健闘を祈っていますよ。蓮ノ空の命運はあなたにかかっているのですから」

「また余計なプレッシャーが……。つうかお前はなにすんだよ?」

「外部とコンタクトを取れるよう通信機の修理を試みようと思います。ついでに校内放送が使えるようにチューニングしようかと。裏方として指揮官としての役目はしっかり果たしますよ」

「おおぅ、椎菜ちゃん有能だね……。私の天敵だけど今だけは頼もしい……」

「ところどころにさちの面影があるから優しいよ。ね?」

「私自身に訊かれても困りますが……。とにかく、無茶だけはしないように」

「えぇ。ありがとう椎菜さん。期待に応えられるように頑張るわ」

 

 

 ようやく噂の手掛かりを見つけた俺たち。そのために寮へ向かう必要があるが道中の敵は校舎内の敵よりも強いらしい。ゲームだと橋を渡って別の大陸に上陸するようなものか。果たして俺たちはこれからの激闘に耐えることはできるのか……。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「今だよ小鈴ちゃん! 雷魔法をぶっ放して!」

「了解! バチバチ徒町雷サンダー!」

「いちいち技名を叫ばないといけないの!?」

 

「花帆さん、敵全体に回復魔法を!」

「えっ、なんで!? えぇっと、訳が分からないけどえいっ――――って、回復で敵が倒せた!?」

「花帆ちゃんナイス! ゾンビ系の敵は回復でダメージを与えられるんだよ! にしてもさやかちゃんの成長が半端ねぇ」

 

「こっちの敵には小さい炎でもいっか。こっちの敵には体力的に強い雷の魔法を使おう」

「綴理、MP温存のために効率化してる……。唯一数学が得意なだけのことあるね」

「逆にあなたは華麗に戦うことを求めすぎて無駄なダメージを受け過ぎよ。もっと落ち着きなさい」

 

 

 校舎の外の敵は椎葉の言う通りこれまでの奴らよりも一回り強かった。

 最初は全員手間取っていたが、何度か戦闘を繰り返すうちに攻略方法を覚えたのか段々と効率良く捌けているようだ。俺も前線に立ってコイツらに無理をさせないようにしているが、時にはどこかのパーティに助っ人に入るなどして難なく敵を片付けられている。最初にパーティを学年別に分断したのが功を奏したみたいだ。最初から10人で戦う必要はなかったし、手持無沙汰な奴が出てくると戦闘経験が積めないからな。

 

 そして案の定と言うべきか、校舎の外もダンジョン化に伴い敷地が拡張されている。そのせいで寮に辿り着くだけでも一苦労だが、それ以前に俺たちを不安に陥れる事案があった。

 

 

「神崎先輩! あれ……!!」

「またHPがゼロになった奴らがいるな……」

「そんなヒドイ……。逃げ遅れてしまったのでしょうか……」

「それにみんなあの合唱部の人みたいにうなされてるね。アタシたちが早く来てれば助けられたのかな……」

 

 

 ファンタジーの世界に切り替わった際に外にいた奴らも多い。それ故に俺たちが到着した頃にはHPゼロになって倒れている奴らを何人も見かける。外のモンスターは校舎内のモンスターよりも強いから、ゲーム慣れしてない人は抵抗も空しくやられてしまったのだろう。俺たちは雑魚ばかりの場所からスタートしたため僥倖だったかもしれない。

 

 花帆たちは目の前の状況に目を瞑りたくなるほどの怖気が走っているようだ。表情を強張らせて被害の悲惨さを実感する。以前に楓が襲来したときも相当なジェノサイドだったが、今回はマジの犠牲がいるため全然冗談ではない。生徒会を出る前に全員の士気を高めたばかりなのにまたすぐ下落しそうだ。

 

 

「零クン、急ぎなのはもちろん分かってる。分かってるけど、あの人たちを芝があるところに連れて行ってあげていいかな……? こんな堅いところで倒れたままなのは可哀想だよ……」

「ああ、やってやれ」

 

 

 流石にこの惨状を見かねたのか、花帆たちは弔うため(死んではないが)に倒れた人を日陰へと移動させる。せめて安全などこかの教室へ移動させられれば良かったのだが、そこまでやるとまたいつモンスターに襲われるか分からないし、そもそも時間がかかり過ぎてしまう。だからせめて日陰でゆっくりさせてあげようと9人全員の意見が一致した。

 

 気になるのは、ここまで大きな被害が出るのかってことだ。確かに女子高の生徒はゲーム慣れしてない奴が多いだろうと勝手な認識はある。だとしてもこれほど被害が広がるのだろうか。そりゃ俺みたいに急展開に慣れてないから仕方ないかもしれないけど、敵とエンカウントしても逃げる選択肢だってあったはずだ。ほとんどの奴が勇敢に立ち向かって返り討ちにされたのか、それとも逃げる暇もなくやられるほど強い奴がいたのか……。

 

 そんなことを考えている間にHPゼロ者の運びが終わったようだ。

 

 

「みんなずっと何かにうなされてた。誰かの名前を繰り返したり、ずっと謝ってたり……。絶望に支配されてるみたいだ……」

「随分ときな臭いわね。一体誰がこんなことを……」

「勝手にこんな世界に作り上げて、みんなをこんな風にして、元凶にガツンと言ってやりたくなったよ!」

 

 

 倒れた人の様子を見て恐れおののくのかと思っていたが、むしろ大切な仲間をこんな目に遭わせた奴に対する怒りも込み上げてきているようだ。

 

 新たな決意を胸に寮母へ会うために寮へ再び向おうとする俺たち。しかし、そこでまた悲鳴が聞こえた。しかも声が低い女性の声。歳の差を感じられるようなこの声はまさか――――!!

 

 

「あっちだ!」

 

 

 大きな木々の間を抜け、開けた場所へと出る。

 そこには腰を抜かした寮母。そして対峙しているのは――――

 

 

「灰色のドラゴン!?」

「お、おっきい……!!」

「あのままだと寮母さんがやられちゃいます!」

「くそっ!!」

 

 

 このままだと楽譜の噂の出どころを知ってる人がいなくなってしまう。

 俺は咄嗟にアイテムから小型のボムを取り出すと、それをドラゴンの背中に向かって投げつける。着弾したボムは当然爆発するが、俺たちの何倍もある巨体のドラゴンに対してはそれほどダメージはないようだ。

 だが俺の狙いはそこではない。ドラゴンが背中の衝撃に気付きこちらに振り返った。これでドラゴンの注目が寮母から俺に移った。とりあえずの危機は脱したってところか。いや本番はこれからなんだけど……。

 

 

「構えろ! 戦闘だ!」

 

 

 こっちは10人とはいえこんな巨大なドラゴンを相手に勝てるのか? いくら頭数が多いとはいえ、人間がアリ10匹を踏み潰すのが容易なようにコイツからしても俺たちを虫けらと思っているかもしれない。ただこんなところで果てるわけにはいかねぇぞ。

 それにさっきの被害。もしかしてコイツが……?

 

 

「スリブのみんな! まずは防御力アップの魔法を―――――!!」

 

 

 瑠璃乃が叫ぶのと同時にドラゴンが動き出した。

 羽を羽ばたかせ竜巻を発生させて俺たちに仕向ける。突然の先制攻撃に防御アップの魔法も間に合わずに直撃してしまった。

 

 後ろからみんなの叫び声が聞こえてきた。だが吹き飛ばされないように身体を地面に支えるので精一杯だ。身を引き裂かれそうになるものの竜巻の勢いが収まるまで耐え抜くしかない。

 少しして威力が弱くなってきたので若干の余裕ができた。アイツらの様子を確認するために振り返ってみる。

 

 

「な、なに!?」

 

 

 みんなのHPが大きく削られており、中にはゼロに近い奴もいた。

 たった一発の攻撃を受けただけでこの威力。レベルが足りていないのか負けイベントなのか。一瞬で崖っぷちに追い込まれた俺たち。既に満身創痍になる花帆たち。

 

 このドラゴン、一体どうやって倒す……??

 

 

 

 

To Be Continued……

 




 当然ですが戦闘シーンなんてものは書き慣れていないので、かなり簡素な仕上がりなっちゃいそうなことを事前に謝っておきます(笑)
 ただいつもの話と雰囲気が全く違うので、執筆していて楽しいってのは会ったりしますね。そういった意味では長編シリーズは需要があるないにせよ私のモチベを保つためには必要なのかなとか思ってます。

 次回はドラゴン戦!
 無事に生き残れるか零&蓮ノ空スクールアイドルクラブ……
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