昨日は大変な目に遭ったな。楽譜の呪いのせいで深夜まで奔走することになって、帰宅した頃にはもうクタクタだった。
ただ花帆たちが温かく出迎えてくれたおかげで玄関で寝るような醜態は晒すことなく、無事に自分のベッドで安眠することができた。今日は再転入してから8日目で土曜日。つまり休日だから昨日の疲れを癒すためにも今朝はたっぷり寝てやろうという魂胆がある。
今日も蓮華祭の準備やスクールアイドルの練習があるらしいが知ったこっちゃない。俺は寝る。もし目が覚めたとしても二度寝する。アイツらが執拗に起こしてこようが寝続ける。だって寝ていれば事件に巻き込まれることはないからな。今日だけはゆっくり過ごしたいんだよ。スクールアイドル病の調査も急がなきゃだけど明日からでもいいだろ。あれだけ頑張ったんだ、休日くらいゆっくりさせてくれ。まあご褒美というか体力のマイナスをゼロに戻してるだけのような気もするけど……。
少し覚醒したのでそんなことを考えていたのだが、また眠気で朦朧としてきたので再び夢の中へダイブしようとする。
その時だった。
「起きて! ほら早く!」
誰かの声が聞こえる。睡魔により意識がぼんやりしているので声色が誰なのか聞き取れない。
敬語じゃないのでさやか、吟子、小鈴、姫芽ではないはず。大きな声ではきはきと喋っているので梢と綴理でもない。じゃあ花帆か瑠璃乃、慈の誰かか。そういや今日は料理長のさやかに加えて瑠璃乃と慈も飯の係だったはずだ。じゃあここにいるのは――――
推理が核心に迫ると急に声が鬱陶しく思えてきた。こちとら二度寝したいのに大きな声により脳髄が響きストレスが溜まる。
「起きるまで声をどんどん大きくしちゃおっかな~? 幸い家の周りには何もないし、誰にも迷惑も掛からないからね!」
うぜぇ……。だったらこっちも大声で分からせてやるか。ていうか事件解決のため俺が夜遅くまで右往左往してたこと、コイツも知ってるだろ。だったら事情を察してゆっくりさせてくれよ。
ただ本当に段々と声を大きくして俺を起こそうとしてくるものだから、我慢の限界が来て思わず上体を上げてしまった。
「うるせぇよバカ! こちとらどれだけ疲れてると思ってんだ――――ん? え゛っ!?」
「やっほーっ! 久しぶり!」
「な゛っ、あ゛っ……!!」
高咲……侑!?
俺が幾度となく見てきた笑顔が眼前に映る。どうしてコイツがここにいるのか。もしかして俺だけまだファンタジーの世界から帰還できていないのか。なによりまたしてもイヤな雰囲気をひしひしと感じながらバッチリと目が覚める。
こちらが混乱する中で侑は慣れた手つきでてきぱきとベッドメイクをする。普段から俺にやっていることなので手際はいいが、となると俺の正体がバレているのかもしれないと疑いも大きくなる。
もはや何が何だか分からない。
1つ言えることは、昨日の今日でまた面倒事に巻き込まれているということだ。
~※~
「う~ん、さやかちゃんの朝ごはん美味しい~っ! これを毎日食べられるなんてみんな幸せ者だね!」
「そ、そんなっ! 褒め過ぎですよ……!!」
「さやかちゃんの料理は世界一ですから! あっ、なんならずっとみんなで暮らそうよ! 掃除洗濯料理、ずっとさやかちゃんの手腕をこの身に感じられるもんね! よっ、あたしたちのさやかちゃん!」
「かほ、それボクも賛成。これで衣食住ずっと困ることがないから助かる」
「なんで一緒に住むのに全部わたし任せなんですか! もし仮にそうだとしてもみんなで協力しましょう!?」
なんでいつもの食卓の雰囲気そのままなんだよ。明らかに異物が混ざり込んでるだろ……。
侑はまるで最初から俺たちと一緒に住んでいたかのように席について飯を食らう。コイツ、こんな朝早くから来て人の家に勝手に上がり込んで飯まで食うなんてどれだけ図太いんだよ。だからこそ馴染みすぎて違和感がある。もしかして俺だけパラレルワールドに飛ばされたか? んなわけねぇか。
「で? どうしてお前がここにいるんだよ……」
「秋葉さんがね、スクールアイドルコーチ制度を使って私をここに呼んだんだよ。ていうか知ってるものかと思ってたから、ここに来たときにみんなに驚かれて私も驚いちゃった」
「相変わらず職権乱用してんなアイツ……」
「すみません侑コーチ。事前に知っていれば相応のおもてなしができたのですが、生憎昨日は
「全然大丈夫だよ! こうしてみんなの元気な姿を見られただけでも十分だから!」
高咲侑。虹ヶ先学園スクールアイドルクラブのマネージャー的なポジションにいた奴だ。そのときに俺からスクールアイドルクのプロデュース方法を学び、現在は社会人の二年目でスクールアイドルの活動を促進する公式の会社に勤務している。
大人になってそれなりに美人にはなったが、やはり元々の童顔は抜け切れていないため美少女感も強く残っている。髪は相変わらず毛先に緑のグラデーションを施した意味不明な髪色だが、社会人なので爽やかに見られるようストレートにしている。学生時代はツインテールだったが、大人になったら流石に媚び過ぎだからな。
そしてスクールアイドルのコーチ制度について。
スクールアイドルコーチ制度はスクールアイドルの公式の会社から指導役、つまりコーチを各地のスクールアイドルに派遣する制度のことだ。スクールアイドルが流行っている世の中とはいえ、まともに指導役がいない状態で活動しているグループも多い。そんな中で生み出されたのでこの制度ってわけだ。
ただ人気のコーチになると指名の倍率がかなり高い。しかもただでさえ抽選なのに指導してもらう期間も希望が通るとは限らない。侑はまさにその人気コーチであり、虹ヶ先の実績があるコイツの指名率は会社でもトップクラスらしい。
つうか秋葉の奴、また裏で手を回して蓮ノ空に送り込んできやがって。しかも例の事件があった翌日にだ。
それにコイツは俺の正体を怪しんでいる。だからあまり一緒にいたくはないのだが、もしかしたらアイツ、俺に試練を与える意味で面白がって侑を送り込んできたのかもしれない。いや絶対そうだろ。
「でも驚いたのはみんなが一緒に住んでることだよ。秋葉さんから蓮ノ空に着いたらここへ行ってねって言われたから来てみたけど、まさか学校の敷地内に一軒家があるなんて……。でも秋葉さんならそれくらいやるか~」
「侑コーチ、呑み込みが早い……! ルリたちでも初日は戸惑ってたのに……」
「秋葉さんとも長いからね。思い返せばヒドい目にしか遭ってない気もするけど……」
「侑コーチって巻き込まれ体質って意味でも私たちの先輩だったり? 修羅場を経験した数ならコーチにも勝てると思ったんだけどなぁ~」
「いやいや、そんな経験しない方がいいって!」
間違いない。吊り橋効果で女の子たちとの距離感が詰まって結果オーライのこともあるけど、平和に過ごせるのではあれば絶対にそっちの方がいい。普通に命がけのときもあるからな。
ま、俺の正体がバレると身体が溶け落ちるらしいので俺の生活は毎日が命がけだけどさ。そしてコイツが来たことで俺は今にも死にそうだ。
「それにしても『ラブライブ!』を優勝したみんなを指導できるなんて光栄だなぁ~。ていうかそんな功績を持ってるのに指導することなんてあるのかな?」
「いえいえ、徒町なんてまだまだのまだまだですから! ムチもありますので、これで容赦なくスパルタ指導をお願いします!」
「なんでそんなものがあるの!? 確かに私たち優勝はしましたけど零先輩がいないときは我流で練習しているので、正式なコーチの方に指導いただけるのなら願ったり叶ったりです」
「それに蓮華祭でのステージもあるので、指導していただきたいことだらけですよ~」
「冗談のつもりだったけどフォローありがとね! 実は秋葉さんからちょっと情報を貰ってたの。蓮華祭で披露する曲を教えてもらったり練習風景の動画を送ってもらったりしてね。そして、その情報を整理したうえで指導することを既にまとめてあるんだよ!」
「「「「「「「「「おぉ~っ!」」」」」」」」」
あまりの準備の良さに蓮ノ空の連中が目を輝かせる。
高校時代から練習プランを練る役目を担っていたからか、事前準備の練度が半端ではない。こうやってスクールアイドルたちに献身的でそれが尊敬されているからこそ指示も多いのだろう。俺が育てたんだと自慢したくもなるのだが、正体バレの危険を考慮するとコイツの前であまり出しゃばるのはよくないか。
「あ、でも
「いや秋葉さんが予定を伝えてなかったのが悪いんだし、私は全然待つ待つ! なんなら準備のお手伝いとしてこき使ってくれてもいいよ!」
「コーチにそんなことさせられませんよ!? 零さんと一緒に待っていてください!」
「えっ? キミぃ、まさか某あの人みたいに他の人に働かせて自分だけふんぞり返ってるワケ?」
「誰だよあの人って……」
「決めた! じゃあ私はこの子と一緒に学校を見て回るよ! お祭り本番も好きだけど、みんなで一致団結して準備しているところを見るのも心が熱くなって好きなんだよね!」
「はぁ!? なんでお前と!?」
それはマズイ。正体バレの可能性を考慮すると同行されるのは危険極まりないからだ。
でもわざわざ公言するっつうことは何か狙いでもあんのか……? なんにせよ全力で拒否しないと。
「パス。俺は昨日の件で疲れてるから午前中は寝るって決めてんだ」
「あれぇ~? そんなこと言っちゃっていいのかなぁ~? あのこと話しちゃおっかなぁ~」
「な、なんだよそれ……」
「もしかして零クンの秘密とかですか!? あたし知りたいです!」
「それは彼の返答次第だけどね! どうする? 一緒に行くよね?」
なんだよこの圧力は……。コイツ、俺の何を知ってる?? もしかして既に正体に気付いてるとか? ありえなくはないが以前も今も決定的なボロは出していないはず。確証はないけど誘導尋問で俺の誤爆を狙おうって魂胆か。だったらしらばっくれても問題なさそうだが……。
とはいえ、その場のノリで俺の正体をバラされたらその時点でアウトだ。小さくなる薬の副作用により、正体がバレてしまうと身体が溶け落ちて即座にあの世行き。最悪のシナリオを回避するためにもここはこっちが折れるしかないか。超悔しいけど……。
~※~
「この衣装って吟子ちゃんが作ったの!? まだ未完成なのに芸術品みたいだね!」
「ありがとうございます。スクールアイドルの衣装を作り続けて一年、かなり上達したと自負しています」
「吟子ちゃんはあたしが育てました! クラブに入りたての頃はピヨピヨ可愛いヒヨコちゃんだったのに、今や立派になって……」
「どうして花帆が自慢げなのかしら……」
「そもそも花帆先輩に育てられてないから! それにヒヨコって、背は最初から私の方が高かったでしょ!」
飯を食って早速コイツらの準備に同行することになった俺と侑。
最初はスリーズブーケの衣装作りを見学しているが、そこで侑はお得意でもありチャームポイントであるときめきを発揮していた。吟子の加賀繍フィンガーによって編み出された衣装は侑にドストライクだったようだ。
「衣装は外注してるスクールアイドルも多いけど、みんなは全部自分の手で作ってるんだよね? もちろん外注すればその分だけ練習時間に割けるからいいことではあるんだけど、自分たちの手で作ると袖を通したときのワクワクっていうか、努力の結晶を纏っているカンジがしてやる気が出るって虹ヶ先のみんなも言ってたよ」
「まさにその通りで、初めて新規の衣装を着たときに伝統の第一歩を歩む新鮮な気持ちが気力を促進してくれます。先輩方の衣装を受け継いで使用することもありますが、それも丈を変更したりするなどこちらである程度は手直しするので、結局は自分たちが伝統を作り上げていく意志が込められていることに変わりはありません」
「私は自分の手で伝統を作り上げている感がモチベーションに繋がっているので、スクールアイドルの衣装作りがとても大好きです!」
「みんながスクールアイドル活動で楽しそうにしているところを見ると私も嬉しくなっちゃうよ! 未だに心が弾むんだもん、この仕事やってて良かったなぁ~」
「侑コーチ、あたしたちより楽しんでませんか!?」
「私、みんなで協力して作り上げるイベントが大好きだから! ま、好きになったのも某誰かさんがスクールアイドルの魅力を教えてくれたから、ってのもあるけどね!」
「なぜ俺を見る……」
じらしてくるなコイツ。正体を知ってるなら知ってるで言わないのも意味分からないし、知らないからこそ俺にボロを出させようとしているのか。なんにせよ性格わりぃよ。ただこんなイタズラな姿を見せるのは俺に対してだけなので、やっぱり気付かれてるんじゃないか……? でもだとしたら俺は既にこの世に存在してないだろうし……。コイツの行動がマジでじれったいな。
次はDOLLCHESTRAの作業を見学する。
「小鈴ちゃんたちは舞台の飾り付けを作ってるの? あっ、これキレイ! 万華鏡みたい!」
「そうなんですよ! これ中に光を灯すと花柄模様が舞台一面に広がるようになっているんです! 綴理先輩とアイデアを出し合って、ハンドメイドで作成しました!」
「えっ、アイデア込みのゼロから発明なんだ! 小鈴ちゃんも綴理ちゃんも天才!」
「お二人の発想にはいつも驚かされます。DOLLCHESTRAの曲だってお二人のおかげで作り上げられているようなものですから」
「さやの発想だって凄いよ。お笑いのネタもセンスもツッコミも完璧だから」
「なんかさやかちゃんだけ方向性違うくない……? 実はエンターテイナーを目指してるとか?」
「ち、違います!」
前からたまにコイツらのコントの話を聞く。ただそれほど黒歴史とは思っていないようなのでいつかその映像を見せてもらおう。共感性羞恥で共倒れするか万が一の可能性で面白いか。なんなら家で実演してもらうのもいい。
「侑コーチ、作曲だけじゃなくて舞台演出や衣装作成の経験もあるんですか!? もう徒町には手が届かない存在過ぎて、師匠と並んで雲の上、いや大気圏より上の存在です!」
「もしコーチのお時間があれば練習だけではなく、そういった裏方作業のコツも教えていただきたいです。みんなで協力して自分たちの手で作り上げることをモットーにしていますが、それでも消費する時間を短くするに越したことはありませんから」
「もちろん! スクールアイドルのコーチ制度はただ練習を指導するだけじゃないからね!」
「れいもコーチからいろいろ学べるよね。れいの指導はいつも的確だけど、コーチから教わったら最強が超最強になっちゃうかも」
「俺が、コイツに……?」
「う~ん、私がこの子に教えることってあるのかなぁ~? 思いつかないな~」
お前を育てたのは俺だよ。って言いたいけど言い出せないジレンマ。
つうかなんだよこの白々しさは。やっぱり俺の正体に気付いてるからこそ煽ってるんじゃねぇだろうな。相手に指導されたことをその相手に返すってどれだけ稀なシチュエーションだっつうの。うっかりツッコミを入れてしまうことで俺が本物の神崎零であるという確証を得ようとしているのか。
次はみらくらぱーくにちょっかいをかける。
「舞台の演出はパソコンでシミュレートしながらやってるんだね! みんなの長所と特技を掛け合わせて団結して準備をする。これぞまさにスクールアイドルのイベントって感じ!」
「えっ、ゆうちゃんコーチはアタシがパソコン得意だって知ってたんですか~?」
「もちろん! これから指導をする子たちだもん、そりゃどんな子たちなのか知っておかないと効果的な指導もできないからね!」
「侑コーチってば可愛くて性格も良くてスクールアイドルの愛もあって指導力もあるなんて、もうこのめぐちゃん並みに完璧じゃん! よかったら一緒にスクールアイドルしません?」
「そう言われたら侑コーチのスクールアイドル姿、超似合ってるかも! でもそういったお誘いたくさん受けてそう……」
「確かに何度も言われてるね。でも私の得意分野は裏方だから! まあ可愛い衣装に憧れないことはないけど……」
虹ヶ先にいた頃は歩夢たちに誘われることがよくあった。しかも歩夢たちのファンからはあまりの容姿の良さにコイツまでスクールアイドル仲間だと勘違いされるほどだった。挙句の果てにコイツのファンまで現れる始末。それほどまでに侑もスクールアイドル並みの可愛さと魅力を持っているということ。あの慈にここまで言わせてるのがその証拠だ。
「侑コーチって可愛さもあるけど指導してるときはカッコよく見えるし、普段の佇まいはお淑やかに見えるし、となるとみらぱだけじゃなくてスリブやドルケもイケるんじゃない? これはもう体験入部して決めてもらうしかない!」
「どれだけ私をスクールアイドルにしたいの!? 私の役目はみんなの可愛さを引き出すことだから!」
「え~せっかく可愛いのに勿体ないです~。彼氏とかに言われたことはないんですか~」
「か、彼氏って……」
「えっ、零くんを見てる……!? 侑コーチ、まさか……!!」
「違う! その子に似てるってだけだから! いや別にその似てる人も彼氏とかじゃないけど……」
そうだ。俺と侑は恋人同士ではない。関係性を一言で表すと『相棒』だ。
ただ妹の楓が不在のときは家に来てもらって家事を任せてるし、一緒に風呂に入ったり1つのベッドで寝たこともあるので普通の相棒かと言われたら謎が残る。周りからも『付き合ってるだろ』とからかいなどではなくマジトーンで言われるくらいだ。
そんな身近すぎる関係だからこそ正体バレの危険性が楓と並んで高い。だからこそ今まさにレッドシグナルが鳴り響いているんだ。
「もうっ、また勘違いされちゃったじゃん!」
「なんで俺が怒られなきゃいけねぇんだよ……」
まるで当の本人に憤りをぶつけているようだ。当ってるんだけど間違ってたら失礼極まりないな、当たってるけど。
でも似てるからってここまで憎まれ口を叩くか普通? しかも俺の見た目は中学生、しかも成長期を迎える前どころか小学生でも通じる背の低さだ。見た目が全く違う相手に対して『コイツこそあの神崎零だ』と疑いを持つだろうか? 普通ならあり得ないけど、コイツなら可能性があるのが怖い。
この正体バレ攻防戦、俺は制することができるのか……?
~※~
「「「「「「「「「お疲れさまでした!」」」」」」」」」
「みんなお疲れ!」
時間は進んで練習終わり。
侑の指導はもはや俺が口を挟む必要のないくらい的確で、花帆たちも気持ちの良い汗を流している。普段と練習環境が全く同じなのにここまでフレッシュな気分が味わえているのも侑のおかげか。たったの数日でスクールアイドルたちのあらゆるスキルを向上させるその実力は俺の目から見ても本物だ。花帆たちも自身の成長実感をその身に染みて感じていることだろう。
「流石は『ラブライブ!』優勝グループ! 飲み込みが早くて私も教え甲斐があったよ!」
「ご指導の仕方や練習メニューの改良版など、わたしたちが指導役となる面でも参考になることばかりでした。ありがとうございます!」
「今日の練習だけで蓮華祭のライブのクオリティが一回りも二回りも上がった気がするよ! あたしたちもより高次元に昇りつめたってことだね!」
「前のときもそうだったけど、身体が自分のじゃないって疑うくらいに動いてくれるんだよね。全体の練習メニューもそうだけど、個人へのアドバイスもしっかりしていてルリまた感動しちゃったよ!」
社会人になってより多くのスクールアイドルと関わるようになった経験が活かされているようだ。虹ヶ先の頃から一人一人に目を向けて練習メニューを練ったり、それどころかそれぞれ酷使している身体の部位に合わせたマッサージの仕方まで勉強するくらいだった。その丁寧な献身さが指導力として発揮されているのだろう。
「れいくんせんぱいの指導方法とはまた違っていて、これはこれで新鮮ですね~。やる気の上げ方がまた違うと言いますか~」
「零君の場合は『自分について来い』のカリスマ軍曹のスタイルで、侑コーチの場合は徹底的に褒めて伸ばすスタイルだから指導の方針は異なっているわね」
「でもなんとなく、れいとコーチの目指すところは同じだと思ってる。やり方は違うけど練習メニューの作り方とか似てる気がするんだ。れい、そうだよね?」
「いや俺に訊かれても……」
「おや~? 零ってば、私たちを侑コーチに取られそうで嫉妬かぁ~?」
「んなわけねぇだろ……」
俺がコイツを育てたんだからそりゃ理念は似るだろ。つうかそういう些細なことでも俺と侑が繋がっている疑惑が生まれそうになるんだな。となるとどこで俺の正体がバレてもおかしくない気がする。むしろここまで隠し通せてるのが奇跡かもしれない。
「そういえば今日はどこに泊まろう。1泊2日の予定なんだけど、泊まるところは決まってないんだよね……」
「じゃあ徒町たちの家に来ませんか!? コーチとまだまだたくさんお話ししたいです!」
「あっ、でも空いている部屋がもうないと思う……。流石にお客様にリビングで寝てもらうわけにはいかないし……」
「大丈夫! それだったら――――」
侑は俺の背後の回り込む。そして両手を俺の両肩にあてると、俺の後頭部から自分の顔を出し――――
「この子の部屋に泊まるから!」
「え゛っ!?」
「「「「「「「「「えぇぇえええええええっ!?」」」」」」」」」
突如として放たれた提案。それには俺だけではなく花帆たちも一斉に声を上げるほどだった。
コイツ、一体なにを考えてる?? 疑念が渦巻く中、俺の中の危機レベルは過去最大をマークしていた。
To Be Continued……
そんなわけでシリーズ恒例となった高咲侑のゲスト回です!
零の相棒でありながらも今回ばかりは一番の天敵になっている彼女ですが、果たして正体バレ攻防戦の結果は如何に……??
ていうか彼も口調を改めていない時点で本気で隠す気があるのやらないのやら(笑)
次回も週の真ん中、恐らく24日(水)の0時に早期投稿予定です!
vs侑の結末が早めに拝めます!(笑)
【キャラ設定集】
零から蓮ノ空キャラへの呼称
・日野下花帆 → 花帆
・村野さやか → さやか
・乙宗梢 → 梢
・夕霧綴理 → 綴理
・大沢瑠璃乃 → 瑠璃乃
・藤島慈 → 慈
・百生吟子 → 吟子
・徒町小鈴 → 小鈴
・安養寺姫芽 → 姫芽
蓮ノ空キャラから零への呼称(零への好感度 0~100 ※限界突破アリ)
・日野下花帆 → 零クン (120)
・村野さやか → 零さん (120)
・乙宗梢 → 零君 (120)
・夕霧綴理 → れい (120)
・大沢瑠璃乃 → 零くん (120)
・藤島慈 → 零 (120)
・百生吟子 → 零先輩 (81)
・徒町小鈴 → 零師匠 (88)
・安養寺姫芽 → れいくんせんぱい(85)
スクールアイドル病の治療状況
・日野下花帆 → 治療済
・村野さやか → 治療済
・乙宗梢 → 治療済
・夕霧綴理 → 治療済
・大沢瑠璃乃 → 治療済
・藤島慈 → 治療済
・百生吟子 → 傷の位置調査中
・徒町小鈴 → 傷の位置調査中
・安養寺姫芽 → 傷の位置調査中