ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常2~   作:薮椿

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瑞河のエンドロール(前編)

 不規則なリズムで揺れる中、あまりの寝心地の悪さに目を覚ます。自室のベッドは秋葉が俺の身体に合うように特注で用意したものであり、そのおかげで毎朝の目覚めは大変心地良い。スクールアイドル病の調査の使命がなければベッドに巣籠りしたいと思えるくらいの快適さだ。

 

 だが、今朝の目覚めは何かがおかしい。目を開けなくても分かる違和感。

 まず窮屈すぎる。頭部を除く全身が固定されてほぼ動かせない。そして顔面がやたらと風を切っている。そのせいで若干息苦しく、もはや外にいるのではないかと疑ってしまうほどである。

 なにより、身体が横になっていない。体勢的に明らかに座らされている。これもしかして誰かに上体を起こされて拘束具を装着させられている、なんてことを寝ぼけながらもはっきりと想像してしまう。

 しかし後頭部は柔らかい。そこだけは高級枕で支えられているかのようだ。

 

 眠気で朦朧としながらも状況を把握する中で段々と夢中から覚醒し始める。

 そして目を開けた瞬間に理解した。俺がいるのは紛れもない――――外!? いや外!?

 

 

「えっ、どこだここ!?」

「おはよ! こんな状況でも安眠できるなんて、特注ベッドの効果で普段から快眠してるおかげかな? それとも私の胸を枕にしてるおかげかな~?」

「秋葉!? なんだこの状況!?」

 

 

 後頭部から秋葉の声が聞こえてきた。それもそのはず、俺は秋葉の乗るバイクに乗せられていた。じゃあどこに乗っているかと言うと、なんと秋葉のライダージャケットの中だ。コイツ、俺の身体が小さくなっていることを利用してか自身のライダージャケットに俺を収納してやがる。つまり俺を前に乗せた状態でバイクを走らせていた。そして後頭部だけが柔らかいものに守られていると思ったのはコイツの胸が当たっていたから。ガキの姿になっているから秋葉の身体に俺の身体がすっぽり収まっている。

 

 バイクは速度を一定に保ちながら快速し、周りの景色がどんどん横切っていく。

 つうかなんだよこの状況。全く意味が分かんねぇ……。

 

 

「ここどこだよ!」

「ん? 長野」

「なんでそんなとこにいるんだよ!? てかどうしてバイク!?」

「いやぁ久々に乗りたくなったのと、そもそも乗るしかなかったからかな。昨晩楓ちゃんが来たでしょ? そのときになんかの腹いせで私の車をぶっ壊しちゃったから、こうしてバイクを使わざるを得ないんだよ」

「アイツ昨日のこと根に持ってんじゃねぇか……。んなことよりどうして長野にいるんだよ……」

「零君にヘルプして欲しいことがあってね。その現場に向かってるってワケ」

「なんでいつも急なんだよ……」

 

 

 いつもの如く事前連絡はなし。蓮ノ空への転入だって1回目も2回目も突然の連行だったし、それ以外でもコイツは予告ってものをしない。あまりにも自分勝手でコミュニケーション能力が欠如している。スクールアイドル病のような危機を察知するスキルは高いけど、傭兵を戦地へ目的も告げずに送り込むためコマンダーとしての才能は著しく低い。コイツからしてみれば事前に連絡したら断られる可能性があるから秘密にしているのだろう。それに振り回されるこっちの身にもなれっつうの。

 

 

「私も明確に事情を知ってるワケじゃないんだよ。だから今後のことは向こうに着いてから考えるってことで!」

「スクールアイドル病の件も片付いてないのに、また面倒な横槍を入れんなよな……」

「それはそれ、これはこれだよ。それに零君ならちょちょいのちょいって解決してすぐ帰れるから」

「さっき事情は知らないっつってなかったっけ? それでよくすぐ帰れるとか言えたな……」

「まあまあ、どうせ逃げられないんだから観念したら?」

「そりゃライダースーツに閉じ込められてんだから逃げれねぇだろ……」

 

 

 てかよく誰かに見つかったり職質されなかったな。ガキの頭を自分の服から出している奴なんてどこをどう見ても怪しすぎるだろ。死体を持って移動してると思われてもおかしくねぇぞ……。

 

 いきなり連れ去られて目的も告げられずにどこかへ派遣させられようとしているこのシチュエーション。蓮ノ空へ転入したときと同じくもう不穏な気配しか感じない。ただでさえスクールアイドル病のことも片付いてないのに別の面倒事を被せてくるとか正気かよ。

 

 

「とにかく、向こうで待ち合わせてる人がいるから着いたら指定の場所に向かってね。私は別で確認したいことがあるから」

「ん? 誰かからの依頼なのか?」

「そうだけど、教えない方がお楽しみが増えるでしょ?」

「いや普通に教えろ。なんで何もかもサプライズにするんだよ……」

 

 

 その質問に秋葉は笑うだけで一切答えず、俺を乗せたバイクは風を切って颯爽と目的地へ向かっていった。

 最近は蓮ノ空に余計な来訪者が多くて、ようやくスクールアイドル病の調査に本腰を入れられると思った矢先にこれだよ。つうか連日よくもまあこんなにもイベントが起きるよな。どうせなら俺のいないところで起きてほしいものだが、多分それだった何も起こらず平和なんだろうな。事件の方が引き寄せられている説はどうやら間違ってないらしい。迷惑な話だよ。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「瑞河女子高等学校……。また女子高かよ。俺の仕事現場っていつも女子しかいねぇよな」

「キミの世界に他の男は不要だからね。全部女の子に任せておけば人生が回るよう、私が常に根回ししてるんだよ。異物が徹底的に排除された楽園、いい響きでしょ?」

「何気に怖いこと言うな」

 

 

 秋葉はいつの間に着替えたのかいつもの白衣スタイルに戻っていた。サラッと俺の周りで人の淘汰が為されていることに若干恐怖を感じたが、今は余計なことを考えないようにする。

 

 バイクが停まったのは瑞河女子高等学校という女子高だった。

 どうやらイベントでもやるのか生徒たちがせっせと走り回って準備をしている光景が最初に目に入る。状況が蓮華祭の準備をしている蓮ノ空と同じだけど何か関係はあるのだろうか。卒業式シーズンなのに全然違う催しが開かれるなんて珍しいと思ったんだけど、蓮ノ空といい今の学校はどこもこうなのか……?

 

 

「今はイベントの準備で外部からの搬入が活発だし、私たちがこっそり入っても怪しまれないね」

「なんで潜入捜査みたいになってんだ。ちゃんとした依頼でここに来たんじゃねぇのかよ」

「正式かって言われると怪しいかも。実はこの学校のお偉いさんと知り合いで、イベント成功の障壁になってることがあるって心配してたから『私の弟は問題解決のプロだから、明日にでも派遣して速攻で解決してあげますよ!』って宣言したくらいかな」

「めちゃくちゃハードル上げてんじゃねぇか! 俺はここに来た目的もここにどんな奴がいるとか事情も何もかも知らねぇんだぞ!?」

「私はね、事件を華麗に解決する零君の姿が見たいの。何の手がかりもない状態から必死にもがく姿を見るのが私にとって何よりのスパイス。だから蓮ノ空でもキミが誰かのスクールアイドル病を治療するたび、私はその成果に達してしまう。でなきゃ幼児施設に放火なんかしないって」

「自分から黒歴史を掘り返していくのか……」

 

 

 相変わらず趣味が悪すぎる。コイツは俺の活躍を眺めることでしか自分の生きがいを感じられない。スポーツの試合を熱狂的に応援するサポーターみたいな感じだ。俺が各地の女子高に送り込まれてるのもコイツが自分の欲求を満たすためだけのこと。ただスクールアイドル病や今回みたいに誰かのお悩みを解決するために動いてる面もあるから、頭ごなしに否定できないのがもどかしいところだ。

 

 

「じゃあさっき携帯に待ち合わせ場所を送っておいたから、まずそこへ向かって。私は別でやることがあるから、またあとで」

 

 

 何も目的を告げられぬまま全く知らない場所で単独行動を強制させる畜生。いきなり女子高に放り込まれる男の気持ちを考えたことあんのかよ。これまで幾多の女子高を渡り歩いて来ているけど意外と最初の方は緊張するんだぞ。そりゃ教員や事務員ですら男がいないところばかりに送り込まれてるから、最初はどこへ行っても警戒されるんだよ。そしてその警戒に俺も神経を尖らせる必要がある。だから緊張感が高まっても仕方ないってことだ。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 そんな心配をしながら瑞河へ侵入する。

 ただその懸念を余所に部外者だから即通報みたいな事態にはなっていない。単にイベントの準備で忙しくて俺が目に入ってないのか、それとも普段から部外者が多いから気にしていないのかは分からない。それか子供だから警戒されていないのか。なんにせよ思ったより自由に動けそうなのは助かったよ。警戒されるのもそうだけど、蓮ノ空みたいに歩いてたら愛でる目的で囲まれるみたいな展開もなさそうだしな。みんな忙しそうだ。

 

 誰かとの待ち合わせ場所は校内のとある教室のようだ。ただ地図が大雑把で教室名も書かれていない。本当に情報を開示したくないんだなアイツと心の中で愚痴りながらも校内を練り歩く。

 看板やそこらへんから拾ったチラシの内容から察するに、どうやらこのイベントはお別れ会が目的のようだ。だとするともうすぐで卒業する三年生の先輩たち向けの催しだろうか。蓮ノ空の蓮華祭も同じような趣だけど、向こうはあくまで芸術披露の目的なのに対しこっちは純度100%の送別会のようで雰囲気が違う。

 

 雰囲気と言えば、なんとなくだが空気が若干重たいような感じがする。もし送別会だとしたら大好きな先輩たちの卒業を実感してしまってナーバスになっているのかもしれないけど、直感的だがそれ以上の重さを感じる。いなくなるのは先輩たちだけではなく、もっと大規模に送別するイベントなのかもしれない。

 もしかしてそれを解決しろってんじゃねぇだろうな。問題の規模は分からないけど、だとしたら一日や二日で蓮ノ空に戻れねぇだろ。

 

 勝手な想像で未来を想像しながらも待ち合わせ場所である教室まであと少しのところまで迫る。

 そのとき、視界に二人の女子生徒が映った。同時に会話も耳に入る。

 

 

「調査に協力してくれる人、どうやら全国でお悩み解決に奔走するヒーローみたいな人らしいよ。どんな人が来るのか楽しみだね」

「ヒーローってことは爽やか系のイケメン男子ってこと!? どうしよう、可愛い私に虜になっちゃって調査が上手く進まない可能性も……!!」

「虜になるのはあなたの方ではないのか……。ともかく、この問題は学校関係者の私たちではバイアスがかかって解決できないだろう。だから外部の人を呼ぶ必要があったのだけれど、まさかそんな有能な人が来てくれるなんてね」

「これも瑞河の名が全国に広まったおかげだね。凄い人を呼ぶなら自分たちもそれだけの地位に昇り詰める必要があるから」

「ふふっ、だといいね」

 

 

 一人は長身のいわゆるイケメン女子を体現したかのような奴だ。

 髪色がグレーで襟足の長いウルフカットと襟足を組み合わせたクラゲのような形をしている。瞳の色はピンクオレンジでかつ猫のような縦長の瞳孔。綴理に匹敵する長身であるが、アイツと違って出てるところは出ているメリハリの利いたスタイルの良さが目立つ。

 

 もう一人は一方に対してかなりの低身長な子。明らかに日本人の見た目ではない。

 髪はベージュ色で肩まで届くウェーブがかかったセミロング。青い瞳を持つジト目。両耳の後ろにそれぞれピンク色のリボンを付けている。

 低身長と幼さが残る顔立ちながらも胸の大きさが目を引く。制服のボレロの前が浮き上がってカーテン状になるほどであり、上手く着こなせずに生徒指導が入っていないか疑ってしまうほどだ。

 

 どちらも相当な美少女で蓮ノ空の奴らに負けてはいない。どこの女子高へ行っても神から授けられた容姿を備えた奴はいるんだなと毎度のこと実感するよ。そして俺自身がそういった奴らとの絡みが複雑になることも。

 

 アイツら部室の前にいるから、もしかしてもしかしなくても待ち合わせの相手って――――

 

 

「おや? 迷子かな?」

「ホントだ。でも男の子がウチの学校にいるなんて……誰かの弟さん?」

 

 

 見つかった。

 そして案の定と言うべきか誤解されてしまっている。そりゃガキが普通にこんなところをうろついてるわけないし、保護者の子供か誰かの弟と勘違いされるのも無理はない。そうなんだけど未だにガキ扱いは腹立つんだよな。

 

 

「ちげーよ。お前らが待ち合わせの相手か? ここに来るように言われて来たんだけど……」

「待ち合わせって、まさかこの子供がわたしたちの運命を預ける相手!?」

「それは失礼だろ……と擁護したいけど、私も似たようなことを考えてしまったよ。どんな問題でも颯爽と解決できるスーパーマンと聞いていたからね。スーツを着こなす敏腕な社会人の方が来ると思っていたから……」

「終わった……。瑞河の命運が今ここで儚く散った音がした……」

 

 

 失礼だなコイツ。確かにピンチを救ってくれるヒーローが現れると思ってたのに、こんなガキが当の人物でしたなんて俺でも目を疑うけどさ。この小さい奴には全くもって歓迎されていない。この長身の奴も表には出していないが明らかに俺に対して懐疑的だし、第一印象はあまり好感を持たれていないようだ。

 

 てかそれもこれも秋葉が無駄にハードルを上げすぎたせいだろ。最初からガキだけどそれなりに頼りになる程度のアピールをしておけばよかったものを、過度に持ち上げるから落差を感じてコイツらの期待を損ねてしまう。そうやって下がった期待を取り戻すのは俺なんだから勘弁してほしいよな……。

 

 

「どうする泉? やっぱりわたしたちだけでやる……?」

「だがそれでは一辺倒な思考にしかならない。だからこそ外部に協力を要請したはずだ。それで現れたのがこの子。もしかしたら卓越した才能を持っているかもしれないよ」

「え~? こんなちっちゃな子供が~?」

「私からすればセラスも同じように見えるけどね」

「それは泉の背とスペックが高いだけ! この子より私の方が一回りも大きいから! それにヴァイオリンも弾けるし、歌詞も作曲もできるよ! どうわたしの才能は!」

「別に。今お前らの抱える問題に関係ねぇだろそれ。その才能で解決できるなら俺が呼ばれてないだろうしな」

「うぐっ!? 子供に論破された……!!」

「早速上下関係が構築され始めてるけど大丈夫かな……?」

 

 

 セラスと呼ばれていた子、ぱっと見でお淑やかそうな性格だと思ったけど、どうやらかなり距離感を縮めた接し方をしてくるようだ。黙ってれば可愛いぬいるぐみのようだが、口を開くとちょけた喋り方をするので意外なギャップを感じた。自分を美化することに全く抵抗がないし、己の魅力を自覚してそれを武器にする。清楚系というよりは慈のような軽ノリの子だったらしい。

 

 対して泉と呼ばれていた子は見た目と雰囲気通りクールながらも、話し方に固さはないため心の壁はあまり感じられない。一目見ただけでできる奴だと察知したが、セラスって子のように見た目で人を判断せず利用できるかどうかしっかりと吟味するほどに頭脳も優れている。なのに尊大な態度もなく、とりあえず相手を受け入れてみる考えのため器も大きいようだ。

 

 

「せっかく来てくれたんだ、この子にお願いしてみよう。私の直感だけどこの子、とてもできる気がするからね」

「え、本気で言ってる……? 人は見かけによらないって分かってるけど、まだ小学生の子供だよ……?」

「一応年齢は中学生で今は飛び級で高校生なんだけどな。どんな問題を抱えてるかは知らないけど、ある程度のことならそこらの有象無象よりも役に立つ自信はあるよ」

「そこまで言うなら……」

 

 

 ガキの姿になってると自分の実力を信じてもらうだけでも一苦労だ。今回は派遣されてきたヒーローって名目があるから取り入るのはまだ楽だったけど、蓮ノ空に転入したときはどれだけ苦労したか。花帆や綴理みたいな無警戒な奴らもいたけどな。

 

 ただセラスって子が警戒する理由も分かる。瑞河の命運とか言ってたし、それなりの問題を助っ人に頼る予定だったのだろう。なのにこんなガキが来たら誰でも疑っちまうよな。

 

 

「そういえば自己紹介がまだだったね。私は桂城(かつらぎ) (いずみ)。高校一年生だ」

「セラス・柳田(やなぎだ)・リリエンフェルト。中学三年生」

「中学?」

「中高一貫校なんだよ、ここ」

「なるほど」

「それで、あなたは?」

「零。神崎零だ」

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「廃校?」

「うん。瑞河は今年度末で廃校になっちゃう。だから今準備してるイベントは卒業生に向けてってのはもちろんだけど、それ以上に瑞河のみんなありがとうって全員が全員に感謝を伝えるためなんだ」

 

 

 また廃校かよ。どこもかしこも同じルートばかり辿りやがって。

 ただそんな運命に陥りそうになった学校なら数多く見てきたけど、実際に廃校が決定づけられている学校に来るのは初めてだ。今まではなんだかんだ苦難を乗り越えてきたり最悪統廃合で済んだりしてたけど、やはり全てが全て大団円で終わるなんて都合のいい現実はないか。

 おいもしかしてここから形勢逆転の使命を俺に課そうって魂胆じゃねぇだろうな? 今年度なんてあと1カ月もねぇんだぞ。そんなのいくら俺でもムリに決まってる。

 

 

「廃校を阻止するためにスクールアイドルとして一世を風靡したんだけどね。願い叶わずだったよ」

「え? スクールアイドル?」

「そうだよ。知らないの?」

「知ってるよ。人生で一番聞いたことのあるワードだから……」

 

 

 またスクールアイドルかよ! 何回俺の前に現れれば気が済むんだよ! いやいいんだけどさ、やっぱり俺とスクールアイドルは切っても切り離せないものらしい。

 しかも廃校とスクールアイドルってもはや連想ゲームで正解にしてもいいくらいに関連付けられる要素だから、廃校って聞いた時点で察するべきだったな。

 

 じゃあコイツらは現役のスクールアイドルなのか。だったら花帆たちとも関わりがあるのかも。だったらソイツらに頼った方がいい気もしてきた。

 

 

「にしてももう廃校が決まってるのか――――ってことは、準備してた奴らの雰囲気が暗かったのも……」

「流石はヒーロー君、察しがいいね。本来は瑞河の最期をみんなで盛り上げるためのイベントなんだけど、やはり隠し切れない寂しさが表に出てしまっている。だからここのところ学校の空気が少し重いんだ。作業の手も鈍くて進捗が危うい。このままだとイベントを開催できるのかすらも怪しくなっている」

「だからわたしたちでみんなを元気づけてあげたいんだけど、わたしたちも同じ瑞河の生徒だからみんなに真に寄り添ってあげることはできないんだよ。どうしても同情しちゃう部分はあるから……」

「なるほど。だから事情を全く知らない外部の人間の力が必要だってわけね。なんとか外からの刺激でみんなの興奮を呼び覚ませないか、そう考えたのか」

「あぁ。察しが良くて助かるよ」

 

 

 桂城と柳田からこの学校の事情を大まかに説明してもらった。同時に俺が呼ばれた目的も明かされる。

 ただそれが分かったにせよ何かしら定量的な目標がないからどう動けばいいのか難しい。スクールアイドル病の調査のようにアイツらの身体に特有の傷があるかを調べ、仲良くなったうえで脱いでもいい関係を築き上げ、その傷を指で触れて治療完了。それを人数分行う。今回はそういった段階的なチェックポイントもないし、数が数だけに当然全生徒を対象にアクションを仕掛けるなんてできない。どうするかは後で検討だな。

 

 

「なんかネガティブエネルギーなるものがこの学校を渦巻いていて、その濃度がとても高いんだって。昨日科学者のお姉さんがそう言ってたから」

「秋葉か……。てかなんだよそれ。急にオカルト染みてきたな……」

「でも言わんとしてることは分かる気がするよ。たくさんの生徒が同時にネガティブ思考になっているということは、すなわち空気も重くなっているということだろうからね」

「だったらまず秋葉に話を聞いてみるか。現状を把握するためにもな」

 

 

 ここからどう動くかを考えるためにも解決に至る有効打を見つける必要がある。スクールアイドル病の治療は俺の手の指という有効策があるように、何かしら打つべき手を決めないとどうしようもないしな。

 

 

「最終目標は分かった。みんなが笑顔で最期の花火を打ち上げたい、そうだろ?」

「うん。そのためにもみんなのネガティブな感情を取り除いて」

「前向きな気持ちで門出を迎えられるようにする。よろしく頼むよ、零君」

「よろしく、零」

「ま、なるようになるさ」

 

 

 いつも通り突如として入った横槍。蓮ノ空とは全く関係のない学校の行事に首を突っ込み、しかも全校生徒からネガティブエネルギーを取り除くという割と大きめの事件を担わされた。

 そこで出会ったスクールアイドルの桂城と柳田と共に解決に導く。どうしてこんなことをやらないといけないのかと思いつつも、どうせ逃げられないから仕方なく手を貸してやろうと思ってしまうあたり、お人好しの自分が怖くなってきたよ。いつもこうしてなあなあで協力してしまうから、慣れって時には究極の貧乏くじを引かされるよな……。

 

 

 

 

To Be Continued……

 




 まだ続くゲスト回。今回からは瑞河編がスタートします!
 今月はちょうどアプリの活動記録でこの二人が主役なのも相まって、ずっと高鳴っていたセラスと泉を描きたい欲がようやく満たせました!

 そしてゲスト回が続くことでスクールアイドル病の本筋がどんどん遠ざかっていく罠が……(笑)
 ただ104期編はそれなりにじっくり話数を重ねていく予定なので、まだ脇道に逸れても大丈夫なはず……!
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