秋葉によって寝ている最中にいきなり外へ連れ出され、強制的に向かわされた先は瑞河女子高等学校だった。
どうやらそこは今年度末で廃校するらしく、最期の打ち上げとしてお別れ会イベントが企画されているらしい。現在はその準備期間の真っ最中であり、全校生徒が忙しなく動いている様子があちこちで見られた。
ただ、そのイベントの開催が危ぶまれる問題が起こっているとのこと。俺も感じ取れたのだが、妙に生徒たちのやる気が落ち込んでいる。個々人自分だけサボるわけにはいかないので準備自体は真面目にしているものの活気はない。そしてそんな奴らばかり集まる場所だからか校内の空気も重くなっている。これではイベントを開催してもお通夜ムードになりそうだし、そもそも準備が間に合わない可能性だってある。
そんなわけで事態解決のため派遣されてきたのが俺だ。だが見知らぬ子ばかりの学校に送り込まれてもどう対処していいのか分からない。今更廃校を覆すなんてミラクルは流石の俺でもムリだ。俺が女の子の悩みを解決する特効薬とでも思われているのだろうか。こちとらカウンセラーじゃないんだから無茶言うなよ……。
そういった背景事情がありつつ、同じく解決に動くセラス・柳田・リリエンフェルトと桂城泉と出会って現在に至る。
「へぇ、廃校阻止のためにスクールアイドルをねぇ。それはご苦労なことで」
「むぅ、なんか反応軽くない? この話をしたら大抵の人は『学校のために頑張るなんて凄い!』とか『中学生なのに立派だね!』とか賞賛してくれるんだよ」
「お前らの事情とか俺の知ったことか。それにそんな承認欲求のためにスクールアイドルをやってたわけじゃねぇだろ」
「それはそうだけど……なんか冷たくない?」
「元々こういう性格なんだ」
「え、可哀想……」
「ほっとけ」
廃校阻止のためにスクールアイドルなんて聞き飽きたフレーズだ。今や伝説となったμ'sが成し遂げた偉業から、同じく真似をしてスクールアイドルを始めた奴らも少なくはない。これまで何組ものスクールアイドルに出会ってきたが学校の生死を担っている奴らもちらほらいた。だからコイツらのやっていたことが俺にとっては珍しくもなんともなく、むしろまたかと呆れてしまうほどだ。スクールアイドルにそこまでの力があるのかよと未だに疑問に思ってるよ。
「うん。零君はかなり現実主義な人のようだね。見た目は幼くて態度はやや暴力的でもあるけど、話し方や思考は理性的だから頼り甲斐が生まれてきたよ」
「泉、本気で言ってる……?」
「私の観察眼の鋭さはあなたも知っているだろう?」
「趣味が人間観察だけのことはあるね」
「んだよそれ。悪趣味だな」
「ねー。もしかしたら零もイケない眼で見られてるかもしれないよ」
「彼のことを疑っていたと思ったら今度は同調するのか……」
もしかして桂城の奴ショタコンだったりするのか……? ロリお嬢様の柳田のナイトのようなポジションなので、背の低い奴に対してそういった眼で見てる可能性も無きにしも非ずか。まあ初対面でいきなりその判定を下すのは流石にモラルが終わってるので心に留めておこう。
そんな感じでアイスブレイクも終わったところで秋葉からメッセージが届く。どうやら準備ができたから屋上に来てほしいとのこと。何をしてるのか分からないが、問題解決に向けどう動くかも含め一度アイツと話し合った方がいいと思ってたのでちょうどいいタイミングだ。
~※~
「お~濃厚濃厚! こんなにネガティブなエネルギーが検出されるなんて普通はあり得ないよ!」
「なんだよこのアンテナ……」
秋葉に屋上へと呼び出され、向かってみるとまず大きなアンテナを備えた謎の機械が目に飛び込んできた。どうやら何かを観測しているらしいがあまりに怪しいため、コイツのせいで生徒たちが意気消沈しているのではと疑ってしまう。
「おっ、来たね」
「なんか危ない光を放ってますよ!? 今にもビームが漏れ出して校舎を破壊してしまいそうなんですけど!?」
「大丈夫、前に教えたネガティブエネルギーを測定してるだけだから」
「用事があるってこのことかよ」
ここに着いた瞬間にそそくさとどこかへ向かっていたが、まさか人様の学校にこんな異物を設置してたなんて。しかもモニタに映し出されているメーターのようなものが警告を発しており、備え付けの赤のランプが目に悪い光を放っている。演出が派手なだけなのか、それとも生徒たちのネガティブさが思ったより深刻なのか……。
「てかコイツらからも聞いたけど、ネガティブエネルギーってなんだよ」
「その名の通り、人から発せられる負の雰囲気のことだよ。落ち込んでる人とか機嫌が悪い人がいるとなんとなく場の空気が悪くなるでしょ? この装置はその空気の重さを数値化したものなの。敷地内に漂うネガティブなエネルギーの濃度を計測して、その範囲内にいる人数と照らし合わせて算出するんだけど……まあこの通りランプがピカピカ光って異常も異常ってわけ。こんな重苦しい雰囲気が続けばイベントの開催どころか準備も終わらないだろうね」
「仕組みはよく分からないけど、要するにその濃度を下げればいいってことか」
定量的な目標は立てられた。とは言いつつも実際にどう行動するかを決める必要がある。この機械がネガティブを吸い取る機能でもあれば話は別だが、人の感情をそう簡単に操ってしまうのは非人道的すぎる。いやコイツに人道的なことなんてなかったか。流石に俺以外の奴がいるそばでそんな暴挙には出ないだろうが。
「濃度を下げると言ってもそう上手くいくだろうか。恐らく廃校が間近に迫ってみんな悲愴に苛まれてるに違いない。私たちもだけど、一度は悲しみを振り切ったからこそぶり返しによる反動も大きい。繊細が故、言葉選びを一手でも間違えれば余計にみんなを悲しみの底に沈めてしまうかもね」
「これだけの人数の意識を変えなきゃだもんね。一度にみんなの心を晴らすには、それこそ奇跡が起こらないといけないかも……」
「確かにそれはそう。でもね、今回はこの子がいるからその奇跡、起こっちゃうかもよん!」
「抱き着くな……」
秋葉は俺に腕を回して説得力の欠片もない期待を寄せる。柳田も桂城も奇怪な目で俺たちを見つめるが、やはり変な奴らが学校の救済に駆け付けてきたと落胆しているのだろうか。桂城も言ってたけど、どんな問題も解決するスーパーマンが来ると伝えられてたらそりゃ専門の敏腕社会人が来てくれると思い込んでしまうだろう。しかし結果はいきなりネガティブエネルギーとか怪しいことを言い出す白衣の女とガキの二人。最初コイツらに疑われるのも納得だよ。
「奇跡を起こすにせよ、俺はこの学校のことも生徒たちのことも初見だ。何かクリティカルヒットする有効打でも存在すんのか?」
「人の感情を勝手に捻じ曲げるなんて、そんな悪魔みたいな方法が存在するわけないでしょ」
「ウソつけ……」
「とにかく、実際にみんなの心の内を訊いて対処していくしかないよ。何の捻りもないけど、この方法が取れるのはこの学校のために最前線で戦ってきたキミたちと、そして我れらが主人公である零君だけだから」
「そっか、わたしたちがやるしかないんだ……。また瑞河を救うために……」
「そう。人を前向きにするのは誰かのポジティブだよ。それを伝えてあげて」
なんかコイツが真っ当なアドバイスをしていると違和感あるな。ただコイツだったら何の悪びれもなく人の感情なんて意のままに矯正させられるだろう。それを倫理に反するとかほざいてるが、そんなまともな考えを持ってたら自分の快楽のために他者を実験に巻き込まない。今回も俺が事件解決のため奔走する姿が見たいとか言ってたし、自分の力を行使しないのもその欲望を満たすためだろうな。
ただ誰かの心を救うことが柳田と桂城にしかできないことなら、俺は何をすればいいのか。ただ同行して気付いたことをアドバイスすればいいのか、それとも俺を連れてきたのは何か他に理由があるのか……?
~※~
屋上から立ち去った俺たちは早速ネガティブエネルギーの濃度を下げるため、生徒たちへのお悩み解決に繰り出すことにした。
今回は俺が出しゃばる必要もなくコイツらにくっつけばいいだけなので楽ができると思っているのだが、ただ傍観してるだけでは役立たずの烙印を押され俺の品位が下がるだけだ。だから問題解決のため少しでもこの学校のことを知っておきたいので、コイツらからいろいろ情報を引き出している。
「じゃあ桂城をわざわざスカウトしたのか。廃校阻止、かなり本気だったんだな」
「うん、泉の実力は噂で聞いてたから。この学校が大好きだから、どんな大会でも確実に優勝できる人材が必要だったの。その功績が何よりの学校のアピールになるからね」
「それであれよあれよと『ラブライブ!』の決勝戦まで漕ぎ着けはしたんだけどね。対戦相手の実力、なにより会場や観客を沸かせる魅力と輝きで負けてしまったよ」
『ラブライブ!』の決勝? そういや花帆たちは今年の『ラブライブ!』優勝していたはずだ。てことはコイツらと決勝を争ったのはアイツらだったのか。これまた偶然な繋がりだな。俺が出会う女の子たちは遠からず何かしら繋がっていることが多いが、まさか今回もそうだっただなんて。
でも俺の所属は明かさなくてもいいか。別に今回の事件に俺の情報は関係ないし、今は事態解決に至る必要な情報だけを集めればいい。それに自分のことを話し過ぎるとまたどこでボロが出るかも分からないから黙っておくのが吉だ。
「泉が向こうと同じ9人いたら絶対に勝ってたのに……」
「たらればを言っても仕方ないさ。結果は残念だったけど、それでもみんなが笑顔で門出を祝える機会がこうして訪れた。あの頃に叶わなかった願いをここで果たそうじゃないか」
「今度こそ瑞河を救ってみせる。この淀んだ空気を元気いっぱい甘ったるいスイーツのような空間にしてみせるから!」
「それだと別の意味で重い空気にならないかな。お腹的な意味で……」
例えはアレだけど柳田は本気のようだ。俺の実力を疑っていたのもこの学校を救える人材かどうかを見極めるためだったのだろう。だったら俺に対して懐疑的になる理由も分かるな。
校内を歩きながらコイツら自身や学校の事情を教えてもらいながら、送別会の準備を進める生徒たちに接近する。柳田はまず話し合いたい子がいると言っていたがそれは一体誰だろうか。
「あっ、セラス先輩に桂城先輩! お疲れ様です!」
「海莉、お疲れ様。準備は順調?」
「ま、まあまあですかね~! でも当日までにはしっかり終わらせますよ!」
「みんなのやる気を無駄にしないためにも、私たちも可能な限り準備に参加するよ」
「そんな! お二人はこの企画の実行委員でもありますし、雑用なんて私たちにお任せください!」
最初に接触したのは二人にとってかなり親しい後輩のようだ。元気のいい子で体裁は明るく振舞ってるけど、雰囲気ではどこか悲しさを漂わせている。この子と初対面の俺でもすぐに勘付けたんだ、柳田と桂城も同じ空気を感じ取っているだろう。
「あれ? お隣にいるその子は……? わっ、超イケメンショタじゃないですか! まさかセラス先輩の弟さんとかですか!?」
「ふふん、自慢の親戚の子だよ!」
「ショタっ子でこんな美男子……。アニメや漫画でしか存在しないと思ってましたけど、こんな子が本当にいるんだ……」
「おい柳田、勝手なこと言うな」
「事情を説明するのも面倒だし、この設定の方が怪しまれなくて済むでしょ」
「やっぱり美形の血筋は本物なんですね! こんなイケメンショタが学校中を歩いたら注目の的どころかみんな惚れちゃいますよ!」
いやさっき歩いてたけどな。お前らが気付かなかっただけだから。やはりそれだけこのイベントに思うところがあって没頭していたのか。
「それで、皆さんは私に何か用事でしょうか?」
「実は海莉に訊きたいことがあるんだけど、その……」
「?」
「セラス、言い出しづらいのは分かるけど、最初の一歩で立ち止まっていてはいくら時間があっても足りなくなる。年度末は待ってはくれないからね」
「分かってる! その……海莉、悩みとかある? それこそこのイベントのこととか……」
「え゛っ!? そ、それは実はあったりするんですけど――――って、セラス先輩ってエスパーですか!? 読心術を心得ていらっしゃる!?」
「そ、そうだね! わたしも中学三年生の大先輩だから、後輩の考えてることなんてなんでもお見通しなんだよ!」
「凄い! やっぱり最初から先輩に相談しておけばよかったのかな……」
「なんかコイツらのやり取り芝居がかってるな……」
「お互いに気の置ける先輩後輩同士だからね。いつもこうだよ」
だったらソイツの抱えてる悩みくらい俺が来る前に解決しとけと言いたくなるが、親しい間柄だからこそ言いづらいこともあるだろう。だから多少距離感のある人に相談し、同情も忖度もない意見を聞きたいことだってある。桂城が言っていた『自分たちだけで動いても相手に寄り添い過ぎてしまう』というのはまさにその通りで、こうして俺が呼ばれたのも相手の事情に感情移入しない要員としての活躍を見込まれたからかもしれない。
ただ直球でも押せば素直に悩みを吐いてくれるのは仲の良い者同士の特権だ。柳田は海莉って子の心の内を自然と引き出す。
そして彼女は送別会イベントに馳せる思いを語り始める。その内容は俺たちの予想通り廃校への未練だった。
「セラス先輩と桂城先輩から与えられた希望は、私だけでなく全校生徒の光となりました。学校の行く末を変えることは叶いませんでしたが、それでもその光のおかげで残りの学校生活が明るく照らされたんです。最期のこの送別会もきっといいものになるって、みんながそう思っていました。ただ……」
「ただ?」
「やっぱりどうしても寂しくなっちゃいます。年度末が近づくにつれ、そしてイベントの準備が整うにつれ、この学校での生活が本当に終わってしまうのだと実感してしまって……。先輩方や仲間たちと過ごした時間が断ち切られてしまうとなると、刻一刻と迫るその現実に悲観せざるを得ないんです。多分みんなも同じ現実に直面して寂しくなっているんだと思います。みんな好きだったから、この学校とそこでできた仲間が。最期くらい笑顔で別れようと思っても、そう簡単に受け入れられるわけがないんですよ……」
彼女が語った後悔はそりゃそうと予想できる範疇だったが、実際に悩む本人の口から伝えられるとその感情も相まってより悲愴が増す。そりゃコイツらだけでこの事態を終息させようとしても同情に偏るからスムーズに解決できないわな。
そしてやはりと言うべきか、二人は彼女の本心にすぐさま返答はできなかった。コイツらは廃校に抗うために前線に立ってたから、むしろ悩んでいる人の思いに対して感受性が増してしまうのかもしれない。こう言っちゃアレだが、結果的には運命を変えることはできなかったからこそ気の毒に思うんだろうな。
柳田は彼女から悩みを引き出したのはいいものの口ごもってしまう。ただ何か言わないとせっかく相談してくれた相手を余計に困らせてしまう。
慎重に言葉を選ぶ必要があることはコイツも理解しているはず。一度軽く深呼吸をし、まずは自分の心を整理しているようだ。
「実はわたしも同じ気持ちだよ。だから海莉の悲しみもよく分かる。それでもわたしはみんなとの絆がこれで断ち切れることなんてないと思ってるよ。最終的には願い叶わず残念だったけど、それでもみんなから貰ったエールはこの送別会でお返したいと思ってる。全員が笑顔で旅立てるように。そう、ここが終わりじゃない。これからが始まりなんだよ。確かにこれからの進路は別れちゃうけど、記憶にはずっとみんながいる。いつでも会える。もしかしたら瑞河が再復興する可能性だってゼロじゃない。今の現実に悲観するなら、わたしはあるかもしれない未来に希望を託すよ。だってわたしが希望を持たないと、応援してくれた人を裏切っちゃうことになるからね」
絆や思い出が断ち切れてしまうという悩みに対し、記憶に残っているから結びつきは消えないと諭す柳田。それに別れても会えなくなるわけじゃないし、無駄かもしれないけど何かしら希望を抱えていれば同じ願いを持つ人と再会できる可能性も高くなる。意外と理に適った回答だ。まだ中学三年生のはずなのにここまで悟ってるとは、廃校阻止のために一年を費やした経験は伊達じゃないってことか。
「セラスの思いはいつも純粋だね。私まで慰められそうだ」
「なんにせよ、同じ志を持つ奴らが集まってるのならそう簡単に絆は切れないだろ。一度別れたらそれっきりの奴なんて人生を歩んでいけばごまんといる。だからこそ今あるこの強固な絆を大切にするんだ。一緒に悲しみを乗り越える。そうしないと、手放しちゃいけない一番大切な絆すらも廃校と共に捨てちまうことになる。これだけ信頼できる仲間が集まってるんだ、そんなの勿体ねぇだろ」
思わず口を挟んでしまった。今回は柳田と桂城に任せておくだけでいいって思ってたのに、やっぱ自分からも首を突っ込むのか。勝手に事件に巻き込まれる体質を不幸と感じるのはいいけど、こうして自分から横槍を入れてしまうお人好しな性格も災いしてるのかもな……。
ただ、柳田とその後輩は目を丸くして俺を凝視した後に瞳を輝かせ、桂城は何故か微笑んでいる。なんかおかしなことやったか俺……?
そして柳田と俺の言葉を受けてなのか、彼女は気持ちの整理ができたみたいだ。これまで誰にも吐き出せなかった悩みを打ち明け、それを破ってもらった影響ですっきりしたのだろう。表情には曇り一つない笑顔が戻っていた。
「よし、イベントにも俄然やる気が湧いてきました! 皆さんから受け取った希望を絶やさぬよう、瑞河ラストスパートにエンジンを噴かせてみせます! 準備に戻るので、それでは!」
「あ、行っちゃった……。ふふ、元気になって良かった」
彼女はポジティブになって即準備へと復帰した。結局は誰かが慰めれば済むだけの話だ。心の扉を開けて外に出すだけで片が付くんだけど、それが難しいんだよな。簡単に出来たら俺も苦労してないって。
「でもこれ、精神的にも疲れる……。あと何人にこれをやらなきゃいけないの……? まさか全校生徒に対してあんな綺麗事を!?」
「戸惑いながらもしっかり言葉を選べていたじゃないか。ただ何回も続けるのは先にこっちの精神が参ってしまうかもね」
「あれでも頭に浮かんだことをそのまま口に出しただけで、心の整理ができていたかどうかは怪しいかも……。それに海莉のことは良く知ってるからすぐ助言できただけで、他の人に対して同じことをできる自信もないし……」
「全校生徒にやる必要はねぇよ。ほら、早速周りを巻き込んでる。他の奴らも触発されてるだろ?」
「ホントだ! 海莉のポジティブに釣られて笑顔が広がってる!」
「今まではネガティブに全員が押しつぶされていたのだろう。でも海莉さんのポジティブさがネガティブな雰囲気を包み込んでいる。だから周りの人も前向きになれているんだろうね」
明るく元気な奴が隣にいればそれに誘われて心が軽くなることもある。その逆も然り。もしかしたらそこまでネガティブなエネルギーを持ってない奴らでも、学校全体の負のオーラに飲み込まれて結果ひどくプレッシャーを受けているのかもしれない。
「絆が強い連中が集まってるからこそ、影響力のある奴がポジティブさを取り戻せばコミュニティ全体の雰囲気も良くなる。だからリーダーポジションの奴を重点的に攻めればそう時間はかからないんじゃねぇの」
「確かにその方法ならできるかも! 今度は泉も参戦してよね! あと零、さっきは援護射撃ありがとう」
「思ったことが口に出ちまっただけだ。気にすんな」
「うぅん、わたしの心にも刺さったから……」
これで全校生徒に対してカウンセリングをする必要はなくなって一安心だ。一人一人の悩みに対してさっきみたいなクサいセリフを考えるのは面倒だしな。こういうお悩み解決に慣れてる俺でも連続で何人もカウンセリングしてたら先にこっちが廃人になっちまう。思ったことを口に出すだけだがそれなりにワードチョイスは吟味しているつもりだ。なのに柳田はダメージを受けたらしいけど……。
あの後輩がネガティブを払拭したこと、そして周りにポジティブを振りまいたことでもしかしたらネガティブエネルギーの濃度も下がっているかもしれない。
こちらの状況も併せて秋葉に連絡する。
「ってわけでさっき1件だけだけど問題を解決したぞ。他の奴らも触発されてポジティブになってるから、ネガティブエネルギーの濃度も――――」
『いや、全然変わってないね』
「はぁ?」
『元々その子の持つエネルギー濃度が低かったのかも……』
じゃあさっきリーダーポジションの奴を徹底的に攻めるとか言ってたのが無駄な提案になりそうじゃねぇか。結局は一人一人の心をノックするしかないってことか? んな面倒なことやってられっかよ。
『あと考えられるとしたら、ほとんどの人のエネルギー濃度は薄くて、特定の人だけがアベレージを押し上げている説だね』
「じゃあソイツが瑞河の廃校に対して後悔の念を抱き過ぎてるってことか?」
『そうかもしれないし違うかもしれない。とりあえず動いてみるしかないよ。濃度に動きがあったらこっちから連絡するから、そっちはやるべきことに集中して』
「あ、あぁ……」
いい感じのスタートを切れたと思ったけどどうやら濃度に変化はあまりなかったらしい。この調子で全員にカウンセリングを仕掛けてたら日が暮れるどころかいつ終わるか分かったものじゃない。
となると特大級の爆弾を抱えた奴がこの学校にいるのか。だったらソイツは一体誰なんだ……?
なんにせよ、そう簡単には解決させてくれなさそうだ。
To Be Continued……
なんとなく今回の話はリンクラの今月の活動報告の前日譚のような気がしなくてもない。公式に対して非公式の奴が何言ってんだって話ですが、妙にリンクしちゃってます(笑)
ていうかゲストキャラだけで3話構成の長編とかかなり珍しい気がしますね。ただ彼女たちの場合は後にメインキャラに昇格するためゲスト感はあまりないないですが……
次回はいよいよ解決編!
瑞河は笑顔でエンドロールを迎えられるのか……!?