瑞河に蔓延するネガティブエネルギーの濃度を下げるため、廃校に悲しむ生徒たちの悩みを解決することになった。
同じ目的を持ちこの学校の生徒でもあるセラス・柳田・リリエンフェルトと桂城泉と行動を共にし、生徒たちの心のケアとカウンセリングに回っている。ただ全校生徒を相手にするのは骨が折れるどころではないので、周りを先導する影響力がある奴らを対象とすることにした。リーダーシップのある奴らがポジティブになれば、同じコミュニティ内の他の奴らも煽られて前向きになるという算段だ。
手始めに柳田を慕う後輩である海莉って子の心を浄化した。周りの子も巻き込んで雰囲気もかなり明るく戻ったので、これでネガティブエネルギーも少しは薄まった――――と思ったのだが、どうやら濃度はほぼ変わりがなかったらしい。ソイツらのネガティブな感情が他の奴らよりも元々それほどだったのか、それとも特大級の爆弾を抱えた奴が他にいるのか。なんにせよ今は影響力のある奴らにカウンセリングを仕掛けていくしかない。
「私ももちろん悔しかったよ。でも悲観したところで結局は前を向くしかないんだ。ただ、一生涯の別れではない。またいつか会えると希望を胸に抱く。そのためにはお互いに最後まで笑顔でいることこそがその希望に光を宿す唯一の方法じゃないかな」
さっきは柳田、今回は桂城が相手に未来への道を諭す。それなりに苦難を乗り越えてきた二人だからか言葉に説得力はあるようで、今回もカウンセリング患者が迷いを振り切るきっかけとなった。
集団の長を狙い撃ちしているからこれでこのコミュニティにもポジティブの輪が広がり、そうなればネガティブエネルギーの濃度を下げることができるだろう。
俺はこの学校のことも生徒のことも全然知らないので、悩める子羊を救うことができるのはこの二人だけ。そう考えると今回の俺は秋葉に連絡を取るだけの楽なポジションだ。だったらここに呼ばれた理由が全く分からないけど……。
そんな感じで柳田と桂城は他の奴らにもカウンセリングを続ける。廃校と別れが迫る悲しみ、同じ傷を負った仲間同士で通ずるものがあったのだろう。相手の悩みを的確に引き出したうえでケアしている。
とりあえず学校を一周した後、待ちに待ったエネルギー濃度の再確認をするため秋葉に連絡するが――――
「はぁ!? あまり変わってない??」
『数パーセント減ったくらいかなぁ~。この調子だと平常値まで下がり切るのはいつになるのやら』
「でもそれなりの時間をかけて学校を回ったんだぞ? みんなすっきりした顔をしてたし、それだけしか変化がないって変だろ。まさかリーダー気質の奴をピンポイントで狙う方法が間違ってんのか……?」
『間違ってはないけど効果的ではないよね。このままだと何日も泊りがけになっちゃうかも……』
「冗談じゃねぇ。とっとと片付けてやっから、また連絡する」
『さっすがは零君! 頼りにしてるよ!』
結果、ネガティブエネルギーの濃度は多少下がったものの劇的な変化はなかった。それなりの時間をかけたにも関わらず成果が出なかったってことは、やっぱりほぼほぼ全校生徒にカウンセリングを仕掛けるしかないってことだろうか。いやそんな途方もないことをしてたらいつ帰れるのか分かったものじゃない。
なにかあるはずだ。この状況を好転できる革新的な一手が。
そもそも廃校の悲壮感は少なからず誰でもあるだろうけど、その感情の振れ幅は個人によるはず。だからさっきも言った通りその振れ幅が大きい奴、つまり爆弾を抱えてる奴を判別できれば手っ取り早いんだけど……。
「効果が全然ないだなんて、私の脳内辞書にある語彙全てを捻りだして慰めの言葉を考えたのに……!! 次もあるならもう今までのセリフを繋ぎ合わせて使い回すしかない……!!」
「クサいセリフをこんな短時間で何度も吐くのは私も苦労するよ。言葉と言葉の辻褄が合っているか考えながら話すのも一苦労だね。でもワードチョイスを間違えたら相手を更に深みに落としてしまうから、より慎重になってしまうのも無理はないけど……」
「だったら零、わたしたちは今から語彙力を蓄えるフェーズに入るからそれまでみんなのメンタルケアお願い」
「相手のことを何も知らねぇのに前線に立つのは無茶だろ。それより、廃校に対して物凄く後悔してるやつとかいねぇのか? 闇雲に攻めるのは時間の無駄だからもうやめたいんだよ」
「時間はまだあるよ?」
「バーカ。どれだけ俺を拘束する気だ。それに早くこの件を片付けなきゃイベントの準備に身が入らねぇだろ。ギリギリになって解決してちゃ遅いんだよ」
そりゃ時間をかければ腰を据えて解決に導けるが、こっちはスクールアイドル病の件で蓮ノ空に戻らなきゃいけない理由がある。そもそもそんな時間を費やすような問題じゃねぇだろ。メンタルの回復なんて要は何かのトリガーがあれば一発で解消することも多い。ネガティブエネルギーの濃度を特定の誰かが引き上げてるのであれば、ソイツの意識さえ変えてしまえば終わりなんだから早い話だ。
だから廃校に対して強い後悔や未練を背負ってる奴を知りたいから柳田に訊いたんだけど、コイツはそれに答えず俺のことをじっと見つめていた。
「んだよ?」
「あ、いや、意外とわたしたちのことを考えてくれてるんだなって。何も事情を知らずここに呼ばれたんでしょ? なのに結構親身になってくれてるっていうか、初対面の印象では冷たい子かと思ってたから意外で……」
「別に誰のためでもねぇよ。どうせ逃げられねぇんだし、帰るためには依頼されたことを終わらせるしかないならそうするしかないだろ」
「あなたは誰にも同情しない鋼の心を持っているみたいだね。もしかしたらみんなの心のロックを外すのは私たちのではなくあなたの言葉なのかも」
「わたしは感情に流されて色々考え込んじゃうことも多いから、零みたいな子がいると救われる人も多いかも」
「あぁ、羨ましい限りだ」
「お前らのことはいいから、爆弾を抱えてそうな奴を教えろよ」
あの人かもこの人かもと二人で検討し合っている柳田と桂城。悩むくらい候補がいるのかよと既に面倒がのしかかってくるが、それでも行き当たりばったりでカウンセリングを仕掛けるよりかはよっぽど楽に攻められるだろう。
ただ、気付いたことがある。
この学校の生徒は大なり小なり悲愴や後悔の念を宿し続けている。この学校の生徒、ということは当然……。
ここでこれまでのコイツらとの会話、そして誰かへの励ましの言葉の一部が思い浮かぶ。
『泉が向こうと同じ9人いたら絶対に勝ってたのに……』
『セラスの思いはいつも純粋だね。私まで慰められそうだ』
『実はわたしも同じ気持ちだよ。だから海莉の悲しみもよく分かる』
『私ももちろん悔しかったよ』
『わたしは感情に流されて色々考え込んじゃうことも多いから、零みたいな人がいると救われる人も多いかも』
『あぁ、羨ましい限りだ』
そうか、やっと分かった。どうして校内を一周してメンタルケアしまくってもエネルギー濃度が下がらなかったのか。この学校内の人間で誰が最も大きな爆弾を抱えているのか。
さっきまでいつ帰れるのか怪しかったけど、どうやら今日中には何もかも片が付きそうだ。
~※~
「あれ? キミたち屋上に戻ってきてどうしたの?」
「分かったんだ。どうすればネガティブエネルギーの濃度を下げられるのか」
「えっ、そうだったの? いきなり『屋上に行くぞ』って言われて何が何やらだったんだけど……」
「後悔が大きそうな人をセラスと何人かピックアップしたけど、それは必要なかったのかな」
「あぁ、こっちでも検討がついたからな」
秋葉のいる屋上に戻ってきた俺たち。これ以上学校中を駆け巡る必要はないと判断し、俺がコイツらを連れてきた。
その理由は道中では明かさなかったがコイツらは素直に従ってくれたので、少なからず俺のことを信用してついてきてくれたのだろう。それが分かっただけでもいい。ある程度の信頼関係を気付けているのであれば、俺の言葉が全く響かないことはないはずだから。
「検討がついたって、あなたは『学校のことも生徒のこともよく知らないからお前らに任せた』と言ってなかったかい?」
「そうだ。でも唯一ちょっとだけ知ってることがある。それは――――お前らのことだ」
「わたしたち……?」
「あぁ。今日ずっとお前らと一緒にいて、何気ない会話や他の奴らへを激励する言葉の節々にたまに違和感があることに気付いた。そしてようやく分かったんだ。もしこの学校の人間で廃校に対し最もデカい後悔や悲しみを抱いている奴。それは――――お前らだってことが」
「「!?」」
柳田と桂城の顔色が変わる。自覚があったのかは定かではないけど心を包み込んでいたのだろう。どうしても晴れることのなかった雨雲。傘をさして雨雲を見ないようにしていたか、部屋に閉じこもってそもそも雨雲がかかっていることを知らなかったか。どちらにせよコイツらの言葉は決して100%前向きではなかった。誰かを励ましている時の言葉も、前向きなように見えて自分に言い聞かせているような感じがしたからな。
「最初はてっきりお前らは廃校を阻止できなかった結末に未練なんてない。あったとしても既に払拭してると思ってたんだ。他の奴らの心を救おうとしてる奴らだからな。でもそれは違った。お前らの発言は枕詞にいちいち未練が見え隠れしてたんだ。他の奴らは自分の感情を抑え込むので精一杯で、お前らのそんなところなんて全く気付いてなかったみたいだけど」
「わたしたちがそんなこと……。でも零が言うなら本当なのかな……。泉はどう?」
「うん……。実は自分がセラスやみんなの夢を果たせなかった後悔をまだ引きずっているんだ。自分の中である程度は決着がついて、改めて前を向こうと決意はしているのだけど……まあそう簡単に割り切れるものではないからね。あの励ましのセリフも取り繕っていただけさ。でも、その様子だとセラスは潜んでいた自分の気持ちに気付いていなかったのかな?」
「気付いてなかったわけじゃないよ。でも必死に隠そうとしてた。だってみんなが応援してくれて、しかもこんな素敵なイベントまで計画してくれたのに、廃校阻止の最前線を走っていたわたしが最後の最期まで未練を引っ張りたくなかったから……。そして隠し続けてたらいつの間にか自覚もしなくなったって感じかな。せめてみんなや泉の前では前向きの仮面を被っていようって……」
「後出しで言うのはカッコ悪いけど、私はセラスのその感情に気付いていたよ。だけど、隠しているのにわざわざ掘り起こす必要もないと思って黙っていたんだ。もしかしたら私ではセラスの悩みを解決できないと無意識に諦めていたのかもしれない。だって自分が未だに後悔を抱いてるんだ、他人の心の暗雲を晴らすなんてできるわけないからね」
予想通りだったか。コイツらがどれだけの苦労を重ねて廃校阻止に奔走してたのかは知らないし、別に同情するつもりも一切ないけど、それでも誰よりも主体的に動いていたのは事実。その結果が夢破れたとなれば尾を引くのは当然のことだ。これだけ頑張って来たのに最期に『ダメだったね仕方ない仕方ない』と軽く流せる方が異常だろう。それくらいの鋼メンタルの方が生きやすくはあると思うけどさ。
「つまり、特大級の爆弾を抱えてたのはわたしたちだってこと……?」
「そりゃ他の奴らの期待を背負ってたんだ。最終的に結果叶わずですぐ切り替えられる奴はいねぇよ」
「そうだよ。だってわたしたち、頑張ったんだよ? みんなの期待と夢を泉と背負って、瑞河をアピールするために毎日毎日色んなライブイベントに参加できないかを調べたり、『ラブライブ!』で優勝するためのプランを練ったり、めちゃくちゃに頑張った! なのにどうしてこんな結果になるの!? 花ちゃんたちも凄かった! それは分かってる! でもこんな結末、簡単には受け入れられないよ! みんなも応援するだけじゃなくてたくさんサポートしてくれた! それなのにどうしてこんな悲しいエンディングなの!? ハッピーエンドじゃないとおかしいよ!」
「セラス……」
これが柳田の心の闇か。最前線として戦ってきた以上、他の奴らの前でこんな弱音は吐けねぇからな。ようやく滲み出てきたと思ったら火山のように噴火しやがった。相当心の奥底に抑圧されていたのだろう。
コイツの言わんとしていることは分かる。苦しいよな、もちろん。あまりの重責に押しつぶされそうになりながら、最後まで駆け抜けた結果が何も変わらずだったなんて。
だけど同情はしない。元々そういった性格ってのもあるが、今の柳田に必要なのは慰めでも励ましでもないからな。
「夢を持つのはいいことだよ。でもそのために頑張ったからって何でも叶うとは限らない。現実は理不尽なんだ」
「そ、それはそうかもだけど……。って、そんな言い方しなくても!」
「確かに悪いとは思ってるよ。でもお前、これから夢破れたときに毎回そうやってヒスを起こす気か? 努力が実らなかったことに対して、誰を責めるわけでもなくただ自分を追い込むのか?」
「それは……」
「重要なのはその理不尽を受け入れて乗り越えることだ。そうしなければずっと立ち止まったまま、未来なんて訪れねぇからな」
「言ってることは分からなくもないけど、だからってそう簡単に割り切れるわけが……」
「そうだ。だから仲間がいるんじゃないのか? お互いに支え合って前へと進む、大切な奴が。割り切るとか割り切れないとか、そういう問題じゃないんだよ。結果を受け入れて共に未来へ歩む。そんな奴がお前の隣にいるだろ?」
「ッ!? い、泉……」
柳田は切なそうな瞳で桂城に振り返る。桂城も同じ目をしている。
どうしてスクールアイドルってのはこうも自分で抱え込んじまうかねぇ。隣にいる奴に頼れば心の負担も軽くなるってのに、勝手に塞ぎ込んで勝手に壊れちまう。一年も二人三脚で夢を共にしてきたのならその絆は確かなはずなのにな。
「零君の言葉は心に染みるよ。私もセラスと学校のみんなの夢を叶えることができず、力不足な己を恨んでいたいんだ。謝ろうかと思っていた。でもそれはセラスの悲しみをより深くすることになる。だからずっと黙っていた。自分の失態はいつか自分で清算する。そう心に決めてね」
「そんな失態だなんて! むしろわたしの方が! わたしが泉を巻き込んだんだから、そんなこと言わないで……」
「いや、あなたが抱え込む必要はない。これは私の――――」
「そこまでだ。なるほど、学校や応援してくれた奴らに申し訳ない気持ちはもちろん、お前らが気持ちを抑え込んでいた最大の理由は相棒に迷惑をかけたくなかったからか」
「そう、だね。泉はわたしや学校のために最大限頑張ってくれた。泉には哀しい想いをさせたくなかったの。だからわたしは封じ込めた。自分の叫びを……」
「私も同じだよ。この学校を愛してやまないセラスがひどく心傷状態なのを知っていたからね、自分の惑いを共有させたくなかった。これ以上、追い込みたくなかったんだ」
「でもこうして想いを打ち明けた。だったらもう後には引けねぇよな。今ある現実を一緒に受け止めて、前を向いて進むしかないんだから。傷を舐め合ってその場で抱き合って泣くだけの関係なら、もう俺は止めはしねぇけど」
相手のためを想って肝心なこと、本来伝えるべきことを言えずにいたなんてよくあることだ。コイツらの場合は廃校って状況が状況だったし、二人三脚で互いの距離も近かったこともあってなおさら言い出しづらかったのだろう。これもスクールアイドルの連中には頻発することだ。アイツらもそうならなきゃいいが。いや俺のいない間になってた可能性もあるか。
「わたしはそう思ってないけど、泉は自分の失態だって思ってるんだよね……?」
「あぁ。そしてあなたは学校を救えなかったのは自分の力不足だと思っている。そうだろう?」
「うん」
「じゃあここは両成敗ってことでどうだろうか? 多分このままだとお互いに自分が悪いと言って譲らないだろうからね」
「そうだね。それがいいと思う。確かにまだ未練も後悔も残っている。だけど泉とそれを分かち合うことができるのなら、この結果を一緒に受け入れることができるのなら、わたしも泉も前へ進める気がするから」
「もしかしたらいつかリベンジできる機会が来るかもしれない。だけどここで立ち止まっていては永遠にその時は訪れない。一人で進むのは怖かったけど、あなたと一緒ならその未来に辿り着ける気がするよ」
ほら、言った通りだ。メンタルなんてトリガーが1つあれば回復できる可能性が高いってな。コイツらを隔てていたのは相手への過度な思いやりというハードル。まあそれが壁のように高かったわけだが、その1つしか存在しないのであればそれを乗り越えるだけで済む話だ。壁がそびえ立っていようが相手の心はすぐそこにある。再会するのは簡単だ。
「相手のことを思いやる気持ちは素晴らしいと思うよ。でも本当の絆ってのは、どんな理不尽な結末も相手と共に受け止めて、再出発できる関係のことなんじゃないかな」
~※~
「ありがとうね、零。おかげでモヤモヤが晴れたよ」
「私からも礼を言うよ。自分は慧眼だと思っていたけれど、最初にあなたの実力を疑ってしまったから私の目もまだまだのようだ」
日も暮れ始め、ところ変わって瑞河の校舎前。秋葉のバイクの後部座席に乗りながら柳田と桂城に見送られていた。
二人から感謝を告げられるが、俺は自分の役目を果たしただけなので別にお礼を言われるようなこともない。だが謙遜するのも悪いのでここは素直に受け取っておくことにした。
「でもいいのかよ。まだエネルギー濃度が基準値を下回ってねぇんだろ?」
「あとはこっちで対処するから問題ないよ。あなたが気付かせてくれたことを胸に、瑞河のみんなの想いは私たちが救ってみせる」
「自分の想いを全部ぶちまけたおかげで、みんなに伝えたいことがたくさん湧いて出てきたよ。だからわたしの脳内辞書も分厚くなった。これで綺麗事のワードチョイスも充実。みんな笑顔間違いなし!」
「この子たちにはさっき私が作った小型のエネルギー観測機を渡したから、それがあれば零君の力を借りなくても事態は終息させられると思うよ」
「だったらいいんだけどさ」
瑞河に蔓延していたネガティブエネルギーの濃度はかなり薄まったらしい。やはりコイツらが抱えていた爆弾が濃度のアベレージを押し上げていたようで、心が晴れた今その数値は当初より大きく下がっていた。
ただコイツら程ではないにせよ、瑞河の廃校に対して未練や後悔、悲しみを背負っている奴らはいる。その残りをケアするのがコイツらに与えられたこの学校での最後の役目だ。ただその完全な対処にはもう少し時間がかかるってことで、俺は役目をここで終えて帰宅することになった。
「それにしても、零君の活躍っぷりを生で観るのは相変わらず栄養がいいねぇ~。生命に必要なエネルギーが五臓六腑に染み渡るよ!」
「なにバカなこと言ってんだ。普段ほとんど食わねぇくせにいっちょ前に栄養を語るなっての」
「えっ、じゃあ秋葉さんは普段なにを食べてるんですか?」
「零君のキラキラした栄光をこの肌で浴びて生きてるよん」
「もしかして秋葉さん、植物……!?」
「んなわけねぇだろ」
つうかコイツ、俺をここに連れてきた理由ってやっぱり私欲だったのか? それとも最初から柳田と桂城の心情を察して俺にケアさせようとしたのか? 流石にネガティブエネルギー自体がマッチポンプじゃないとは思うけど。
「じゃ、私たちはそろそろこれで」
「はい、ありがとうございました。零も改めてありがとう」
「また会える日を楽しみにしているよ」
「会えるさ。お前らが前を向いて進む限り、どこかでな」
秋葉がバイクを走らせ、俺たちは瑞河から去る。
今回起きたことは瑞河だけではなく他でも普通に起こりえることだ。アイツらも一度『ラブライブ!』に敗退して悔しい思いをしたらしいので、もしかしたら同じ状況に陥っていたのかもしれない。ただ結局は悔やんでも現実は変わらないので、今を受け入れて前に進むしか方法はないんだ。まあ簡単に言うけど立ち上げるきっかけを作るのは結構難しいけどな。そのために俺が各地に派遣されているのかもしれない。だったら目的をそう伝えてくれればいいものの、毎回なにも告げられないまま連行されるから困ってんだよな……。
そして、俺たちが去った後――――
「零、不思議な子だったね」
「あれでまだ中学に上がりたてだなんて驚きだよ。でもあなたがそこまで男性を気にするなんて、珍しいこともあったものだね」
「なにが言いたいの……? それこそ泉はどうなの?」
「今日は状況が状況だったからね。今度はゆっくりとお話してみたいかな」
「うん、私も。また、会えるよね?」
「あぁ。彼も言っていただろう。私たちが前を向き続ければ、その道はきっとまた交わるさ」
瑞河編、これにて解決です!
もし104期ストーリーでセラスと泉の話が続いていたらこんな展開もあったかなぁとか勝手に妄想しており、今回小説にそれを起こしてみました。タイミングよく今月の活動記録でリベンジを熱望する二人が描かれていたので、ちょうど共感もしやすく描けたかなと思っています。
さて次はいつ会えるのか、そもそも登場するんですかね~(笑)