ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常~   作:薮椿

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 今回はこの小説唯一のガチ純愛モノ、嫉妬回第3弾大学生組です。
 今更ですが、この小説では全員の学年が1つずつ上がっているのでお間違えのないよう。たまに勘違いしている人がいるので。

~3人のテーマ~
にこ・・・独占欲
希・・・魅力
絵里・・・甘える

非常に簡単ですがこんな感じです。

ではどうぞ!


嫉妬するにこのぞえり

 矢澤にこよ。

 

 今日は零が大学に遊びに来るということなので、アイツを迎えるために大学門前へ向かっているところよ。ちなみに絵里と希は秋葉先輩の研究に駆り出されて不在だから、零はにこの独り占めってことね♪2人には悪いけど、俄然テンションが上がってきたわ!!一度やってみたかったのよね、キャンパスデートってやつを。

 

 

「なによ、結構人がいるわね……」

 

 

 この時間は授業の終了時刻と重なっているためか、大学門前にはかなりの人で溢れかえっていた。全く、にこと零の愛を邪魔してんじゃないわよ!!でも愛に障害は付き物だって言うし、この中から零を探し出してやろうじゃない!!

 

 

 零とデートできるから浮ついた気持ちで、自分らしくない妙なテンションのまま辺りを見回す。

 

 

「あっ、いた――――――って、え……?」

 

 

 意外にも早く見つけることができた……にこの友達と一緒にいる零を……。どうしてあの2人が一緒にいるのよ!?零のことを話したことはあるけど、会って話すような仲だったの!?そもそも零ににこの友達のことは話してないのに!?

 

 この人混みであの2人はにこに気付いていない。でもにこにはその2人の会話がはっきりと聞こえてきた。

 

 

「神崎君モテモテなんだよぉ~。だってにこっちたち、いつも神崎君のことばかり話してるもん」

「そうなんですか?意外というかなんというか……」

「ありゃ?嬉しくないの?」

「嬉しいですけど、にこたちはあまり外で俺の話をしないと思ってたから意外で」

「全然そんなことないよ。むしろその逆!!ブラックコーヒーが飲みたくなるくらいのノロケを聞かされて困ったものだよ!!」

「そこまでなのか、全くアイツらは……」

 

 

 むむむ……初対面のくせに仲良さそうね。まぁどちらもコミュ力はあるから不思議ではないんだけど……。

 

 

 ないんだけど……。

 

 

 別に零が誰と喋っていようが構わない。だけど今日はにこに会いに来たんでしょ!!どうしていつまでもそんなところで立ち話してんのよ!?来るのが遅いと思ったらにこに連絡すればいいでしょ!!さぁ早く携帯を出しなさい!!そしてにこに――――――

 

 

 ま、待って。どうしてこんなにも熱くなってるのよ……そうよ、零が誰と話していても関係ないじゃない。ただの日常会話なんだから、にこがそこに口出しをする必要はない。いや、口出しをする権利なんて始めからないのよ……。

 

 でも――――――

 

 

 

 

 この心にモヤが掛かったような気持ちはなに……?

 

 

 

 

「そう言えば、神崎君っていつもμ'sの練習を見てるんだよね?ダンスの指導とかしてるの?」

「見てはいますが、指導は絵里が中心ですよ。俺は素人なりの意見を出しているだけです」

「そうなんだ!!実は私も趣味でダンスをやってるんだけど、今度見てもらってもいいかな?」

 

 

 なんでそんな話になるのよ!?確かに零の指摘は素人なりに的確で、にこたちのダンススキルを向上させることも多い。だけどそれはにこたちと零が深い絆で結ばれているからその結果になっているであって、初対面の人のダンスなんてみても零は分かんないわよ。それに出会って数分の輩に零がお願いを聞く訳が――――

 

 

 

 

「いいですよ」

 

 

 

 

 は…………?

 

 

 

 

「やった!!ありがとう神崎君♪」

「うぉっ!!ど、どういたしまして……」

 

 

 な、ななななななによアイツ!!急に零の手を握っちゃって!!しかも零も満更でもない顔しちゃってるし、なんなのよもう!!いくら友達だからってそんなこと許されるはずないじゃない!!零はにこたちのものなんだから!!

 

 ものなのに……どうしてにこがこんな気持ちにならなくちゃいけないのよ……。

 

 

 あ゛ぁ~もう!!こんな気持ちになるなら、絵里たちと一緒に秋葉先輩の研究を手伝っておけばよかったわ!!こんなよく分からないモヤモヤした気分になるのなら…………。

 

 

 

 

「おいにこ」

「うわぁ!!れ、零!?いつの間にそこに!?」

「それはこっちのセリフだ。来てたのなら声掛けろよな」

「ご、ごめん……」

「ど、どうした急に……?」

 

 

 気が付けば、にこの目の前には零1人だけ。どうやらにこが考え事をしている間に話し終えたみたい。

 やっと……やっとなのね……!!

 

 

 にこは押さえ込んでいた気持ちが爆発し、零の身体へ飛びついた。

 

 

「に、にこ!?どうした急に抱きつきて……?」

「寂しかったから……」

「え……?」

「構ってもらえなくて寂しかったのよ……」

「にこ……」

 

 

 周りに人がたくさんいようがそんなもの関係ない。零と話したい、零と抱き合いたい、零に甘えたい。にこの心はその気持ちだけで埋め尽くされていた。こんなこと自分勝手だって分かってる。分かってるけどコイツを独占したいというこの気持ちは絶対に誰にも譲れない!!今日はコイツはにこのものなんだから!!

 

 

「悪かったよ……でもそんな気に病んでる顔してたら、これからのデートが楽しめないぞ?ほら笑顔笑顔!!いつものお前の笑顔、見せてくれよ!!にっこにこにーってな」

「……!!」

 

 

 零の笑顔はにこの心のモヤをすべて吹き飛ばす眩しい笑顔だった。この笑顔に何度助けられただろう……にこがμ'sに入る以前も、この笑顔に救われた。

 

 そうよね。にこと零は相思相愛、他のどんな女であろうともにこたちの愛には敵わないんだから!!

 それにここからは零と2人きりのキャンパスデート!!こんなこと滅多にできないんだからテンション上げていかないと損でしょ!!

 

 

「よぉ~し!!宇宙NO.1アイドル、矢澤にこふっかぁああつ!!」

「うおっ、急に元気になりやがって……」

「へへ♪だって久々の2人きりなんだし、こんなことで時間を潰したら勿体無いでしょ?」

「そうだな。でもあまりベタベタしてると噂になるんじゃないか?」

「むしろたくさんの人に見せつけてやりましょ♪他の人がにこたちに近付きたくなくなるくらいにね♪」

「そ、そこまで……!?まぁ……それでもいっか」

 

 

 そうよ。零が他の女の子とイチャイチャしていたのなら、にこはそれ以上にイチャイチャすればいいのよ!!にこと零の間に誰も入りたがらなくなるくらい、もう濃すぎるほど濃厚に!!キャンパス内でキスでも何でも見せつけてあげるわよ!!

 

 

「行くわよ零!!キャンパス内にはカフェもレストランもあるし、緑いっぱいの広場もあるから、モタモタしてたら全部回れなくなっちゃうわ!!」

「分かったから引っ張らないでくれ!!」

「何言ってんの?引っ付かないとデートにならないでしょ♪」

「あぁもう分かった!!こうなりゃお前にとことん付き合ってやるよ!!」

「そうそうその意気よ♪」

 

 

 ちょっとワガママなところもあるにこだけど、零は優しくそれを受け入れてくれる。だからずっとあなたの隣にいたいと思ったの。あなたの隣は本当に暖かい。それ故に誰にもあなたを渡したくないと思っちゃうけど、それくらいあなたが魅力的ってことよ♪

 

 そんなあなたが――――大好き♪

 

 

 フフッ、これからもよろしくね♪

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 東條希です。

 

 今日は零君と一緒に神社でアルバイト中。初めはウチや他のバイトの子の巫女服で興奮して仕事にならないだろうと思ってたけど、案外真面目に仕事をしていてちょっとビックリ。その手際の良さは初対面の神主さんをも驚かせるほど。いつものダラけた感じと違うけど、汗水垂らして一生懸命働くその姿にドキッとしちゃったり♪

 

 

 だけど、それによってウチの心を掻き乱すことが――――――

 

 

「申し訳ありません神崎さん!!あなたにすべて荷物を任せてしまって……」

「いえいえ、雑用は慣れっこですから。いつもは巫女さんたちがこれを運んでいるんですか?」

「はい。運搬作業も巫女の仕事ですから」

「だったらこんな時こそ俺を頼ってくださいよ!!力仕事なら、普段こき使われている俺にお任せを!!」

「頼もしいですね。ありがとうございます♪」

 

 

 零君が他の巫女さんと仲良くしている……べ、別に零君はバイトでここに来てる訳やし、あれも仕事の一貫、ウチが口出しすることじゃない。

 

 で、でも……ちょっと近すぎるんとちゃう?あんなに近付いたらもし手が滑って荷物を落としてしまった時、あの人の足の上に落ちてしまうやん。それに零君、さっきからまじまじとあの巫女さんの胸やお尻を見ている……本当に変態や零君は!!胸やったらあの人よりウチの方が大きいのに!!

 

 

 …………。

 

 

 折角一緒のアルバイトやのに、全然零君と話せてないな……。

 

 

「俺でよかったらいつでも手伝いに来ますよ。もちろん給料は支払ってもらいますが」

「ふふっ、随分としっかりしているのですね♪」

「えぇ~、それが普通じゃないですか!?」

「そうですけど、そこまで貪欲だと逆に清々しくて素敵です」

「そ、そうですか……?直球で褒められると照れるな……」

 

 

 照れる!?零君が!?普段は自慢ばかりで照れる姿なんてほとんど見せない零君が、初対面の女性に赤面させられてる!?零君のあんな姿、ウチも中々見たことないのに……。

 

 

 やっぱり零君はあの人のような美人系の女の子が好きなんやろうか?μ'sで言えば海未ちゃんや真姫ちゃん、絵里ちみたいな女の子のことが。

 

 確かに美人さんの巫女姿は絵になるほど綺麗やと自分でも思う。爽やかで清楚な感じが彼の心を惹きつけるんやね……。ウチは爽やかでもないし清楚でもない。巫女姿はμ'sの誰にもないウチだけの個性で、零君もそれで喜んでくれることもあったけど、まさかウチより初対面の女性の方に目を奪われてしまうとは……。

 

 

 ウチって、そこまで魅力がなかったんかなぁ~……。

 

 

 でもあの人はあの人、ウチはウチ、全然関係ない!!零君は変態やからあの人に目を奪われてただけや!!そうそうだから問題なし!!

 

 

 ――――――そうだと……信じたい。

 

 

 

 

「おい希、これってどこに運べばいいんだ?」

「わぁ!?れ、零君いつの間に……?」

「一緒にいた巫女さんが神主さんに呼ばれちゃってさ、あとはお前から指示を仰げって言われたんだよ」

「そ、そう……それは向こうの境内に」

「オーケー。じゃあ行ってくるわ」

「待って!!私も一緒に!!」

「わ、私?」

「い、いやウチも一緒に手伝う……」

 

 

 零君と一緒にいてここまで焦るのは初めてかもしれない。しかもこれは羞恥心に駆られた焦りではなくて、自分自身の不安から煽られる焦り。

 

 

 ウチの隣を歩いている零君が、もしウチの巫女服が似合っていないと思っていたら?

 ウチにそんな魅力がないと思っていたら?

 もしかして……零君の彼女として、ウチだけ穂乃果ちゃんたちのような魅力がないと思われていたら?

 

 

 そんな不安がどんどん肥大化して、自分の心を駆け巡る。

 

 

 

 

 そこで零君が唐突に口を開いた。

 

 

 

 

「やっぱ希って、巫女服似合ってるよなぁ~」

 

 

「――――――――え!?」

 

 

 

 

 それ以上の言葉が出なかった。

 だってウチの想像していた零君とは全く逆のことを言ったから。

 

 

「そんなに驚くことか?俺は巫女さんって言われると、毎回希をイメージするんだよ。テレビでも誰かとの会話の中でも、巫女ってワードが出れば巫女姿のお前が笑っている姿がいつもな」

「そこまで似合ってる……?」

「もちろん!!俺にとっては"巫女さんイコール希"の方程式が成り立つくらいにな」

「でも!!ウチは爽やかでも清楚でもないし、美人でもないし……」

「はぁ?別にそんなことどうだっていいんだよ。俺の大好きな希が巫女服を着ている。この事実だけで十分!!余計な理屈なんていらねぇんだよ。」

 

 

 さっきまで不安に伸し掛られていた心が一気に軽くなる。

 見てくれていた、ウチのことを零君が。巫女さんと言えばウチと想像してもらえるくらいに、ウチのことを考えてくれていた!!

 

 今までずっと自分は零君の彼女の1人、その中でもみんなのように突出したものがない彼女だと思い込んでた。

 でもそれは違ったみたい。零君はしっかりとウチのことを見ていてくれた。他の誰でもない、東條希という私のことを。巫女姿だけでも構わない。そこだけでも彼の一番になることができる、それがなによりも嬉しい!!

 

 

「どうしたお前さっきからニヤニヤと……」

「ちょっと嬉しいことがあってね♪」

「その笑みはちょっとどころじゃないと思うが……でもやっぱり笑顔のお前を見ているのが一番だな。笑顔で巫女姿だったらなお良し」

「じゃあ今は最高?」

「ああ!!最高の最高、ベストオブベストだ!!」

「なにソレさむぅ~い♪」

「いや、ギャグじゃねぇし!!」

 

 

 そしてウチと零君はお互いに笑い合う。さっきの不安はもうすべて忘れ去られていた。

 こうして零君と笑い合っていると、魅力云々で悩んでいたのが馬鹿らしくなってくる。彼はそんなことで女の子の優劣を付ける人間じゃない。もしそんなことを言ったら、『そもそも優劣を付けること自体が間違っているだろ!!』って怒られるかもね♪

 

 

 また零君の魅力にどっぷりハマっちゃった♪どれだけウチの心をくすぐれば気が済むんやろうか……?あなたがそんな人だから、どんどん好きになってしまう。本当に…………困ったなぁ♪

 

 

 これからももっとドキドキする刺激、期待してるよ♪

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 絢瀬絵里よ。

 

 今日は零を家に招いて楽しく談笑に洒落込みましょう!!

 

 ――――と思っていたんだけど、現在私はリビングで1人ぼっち。当の本人はキッチンで亜里沙に料理を教えている。どうしてこうなったのかしら……?確か楓が来るまで零が1人暮らしだったという話になって、そこから亜里沙が零の料理スキルに興味を持ったのよね。そして何故か零と亜里沙、2人きりのお料理タイムが始まった。それを私はリビングから見てるだけ……。

 

 

「こんな感じでしょうか……?」

「そうそうその調子!!すげぇよ亜里沙、お前やっぱり料理の才能あるな」

「そうですか!?ありがとうございます!!」

 

 

 2人は肩がぶつかりそうなくらい近づいて料理をしている。手とり足とり教えなきゃいけないのは分かるけど、ちょっと近すぎるんじゃないかしら……?そんなに近づいたらむしろ料理の邪魔になっちゃうでしょ……。

 

 それに亜里沙、零が教えている最中もチラチラと彼の顔を見つめている時がある。それも頬を赤く染めて……。そして褒められた時は満面の笑顔、相当零に構ってもらえるのが嬉しいのね。全くもう、褒められて頭を撫でられたくらいでそんな腑抜けた顔しちゃって……。

 

 

 

 

 はぁ~……そういえば私、零に褒められたことや頭を撫でられたことって全然ないかも……。

 

 穂乃果や凛、にこは自分から零にねだりに行くから別としても、ことりや花陽、あの素直ではない真姫ですらも頭を撫でられている現場を見たことがある。海未や希は……私と同じくないにしても、その現場を見たことがない訳ではない。

 

 

 みんなそれぞれ形は違うけど、彼に甘えているのよね。

 でも私は……零に甘えることもなければ、彼がみんなにやっているような激励を貰うこともない。私ならどんなことでもできて当たり前、そう思われているのかも……。

 

 

 

 

「うぅ~ん……ここの作業は難しいです」

「そこはかなりコツがいるからな。ちょっと手を借りるぞ」

「れ、零くん!?」

「悪い、勝手に手を握っちゃマズかったか?」

「い、いえ!!むしろ大歓迎です!!」

「大歓迎?」

「あっ、いや、よ、よろしくお願いします!!」

 

 

 な゛っ、なななな!!零が亜里沙に覆い被さるように亜里沙の手を取っている!?あれじゃあ零に抱きつかれているのと同じじゃない!?彼から抱きつかれたことなんて私は数回いや、そもそもあったすらも定かではない。

 

 

 自分の妹に嫉妬してどうするのよ!!と割り切れない私がいる。私も亜里沙のように甘えることができたなら、零とああやって一緒に料理ができたのかも……。この前の夏祭りでは積極的になれたけど、あれも祭りというムードがあったからこそ。日常生活で彼に甘えたことなんて一度もないかもしれない。そもそも2人きりでいたことさえもほとんど……。

 

 

 私だって……彼に甘えたい。だって恋人同士なんだから……。

 

 

 

 

「あっ、そろそろ時間だ。ゴメンなさい零くん、もう少しで雪穂との待ち合わせの時間になってしまいまして……」

「そうか、じゃあまた今度だな。片付けは俺がやっておくから支度をしに行ってもいいぞ」

「はい♪ありがとうございます!!」

「おう!!」

 

 

 亜里沙は雪穂と遊びに出掛けるのね。それじゃあ今からは零と私の2人きり……?

 

 私はチクチクとする心の痛みに耐え切れなかった。亜里沙が2階へ上がっていったのを確認し、1人でキッチンにいる零の元へ近づく。

 

 そして――――

 

 

「おわっ!!え、絵里!?突然後ろから抱きついてきてどうした!?」

「こうしたかった……ずっと」

「絵里……」

 

 

 零の背中ってこんなにも暖かかったのね……今まで知らなかったわ。それにこうして彼にギュッと抱きついているだけで安心する。好きな人の背中だから?久しぶりに彼と触れ合えて嬉しかったから?どちらにせよ、これは穂乃果たちが零に抱きついたまま離れたくないと言っていた気持ちがよく分かるわね。

 

 

「珍しいな、お前からなんて……」

「そうね。でも抑えられなかったのよ、この気持ちを……」

 

 

 穂乃果たちを見ていて羨ましかった。彼に甘え、彼から激励を貰うことが……同じ彼女であっても、姉妹であっても心の奥底では嫉妬していた。だけど私は誰かに甘えたりするような愛おしさも愛くるしさもない。ずっと自分の中で抑えていた。

 

 だから今はこれだけでも満足。こうして背中に抱きついているだけでも、私は――――

 

 

 

 

 その瞬間、私の頭の上にフワッとした感触が伸し掛った。

 

 これって、零の……手?

 

 

「突然で悪い。こうして絵里の頭を撫でたことってあまりなかったなぁと思ってさ。意外とスラッとして整った髪の毛してんだな。とても撫でやすい」

「い、意外とってなによ……」

「ははは!!でも絵里に甘えられたりしたことがなかったから、唐突に頭を撫でたくなったんだ。そもそも今までお前と2人きりになることも少なかったし、もし今日2人きりになれるチャンスが来たら、お前にこうしてやりたかったんだよ」

「自覚してたんだ、私との時間が少ないってこと……」

「ああ。だからお前が俺にこうやって甘えて来てくれたのは嬉しかった」

 

 

 まさか零も私と同じことを考えていたなんて……やっぱり恋人同士は繋がっているものなのね♪

 彼の背中から伝わってくる暖かさと、頭を撫でる心地よさが、私の不安をすべて払拭する。心の痛みもいつの間にか収まっていた。彼が私のことをちゃんと見てくれていた、この事実だけで心が舞い上がりそうになる。

 

 

「だ、だから次はさ……俺からも甘えていいか?ほら、膝枕して耳かきとかさ……」

「あなたから……?ふふっ♪」

「な、なんで笑うんだよ!?」

「ゴメンなさい♪でも顔を赤くしているあなたが面白くって♪」

「これでも結構勇気出したんだぞ!!」

「ふふふっ♪」

「オイ!!」

 

 

 零が私に甘える……か。ここまで恥ずかしながら言うってことは、もしかして今までμ'sの誰かに甘えたことはあまりないのかも。そうだとしたら、彼の可愛い姿を新たに発見できちゃうかもしれないわね♪私だけに見せる、彼の甘える姿か……なんかいいかも♪

 

 

「じゃあ早く片付けてやりましょうか!!」

「な、なにを……?」

「なにをって、するんでしょ?膝枕をして耳かきを」

「やってくれるのか!?」

「もちろん。あなたの腑抜けた表情が見られるかもしれないしね♪」

「もしかしなくても馬鹿にされてる?急に拒否したくなってきた……」

「拗ねない拗ねない♪」

 

 

 こんなに零が恥ずかしがっている表情を見るのはこれが始めて。普段はカッコいい彼がここまで羞恥に悶えるなんて、中々見られるものじゃないわね。今日はそんな彼を探すのもいいかも♪私の知らないあなたを、もっともっと私に見せて欲しい!!もっと知りたい、大好きなあなたのことを!!

 

 

 だからこれからも、ずっと私の隣にいてね。約束よ♪

 

 




 ガチ純愛モノを書いていると、変態の血が騒いでその要素を取り込みたくなる衝動に駆られます(笑)
この小説で真面目に恋愛している話はこの嫉妬回ぐらいなので尚更なのです!

 そして嫉妬回も残るは1年生組だけとなりました。その中にはブラコン過ぎる妹様がいるので、どんな展開になるのやら……


 次回のタイトルは『暴走天使楓ちゃん!!』。投稿日時は10日の21時予定です。


※小説内での"君"と"くん"の使い分けについて※

 非常に今更ですが、登場キャラによって"零君"と"零くん"が区別されていることにお気付きでしょうか?

実は……

穂乃果、花陽、希、雪穂、秋葉・・・『零君』
ことり、凛、亜里沙・・・『零くん』

と微妙に使い分けています。
誰が喋っているのか分からない時の判断材料になればいいと思ってます。


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