ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常2~   作:薮椿

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再戦!小三角 vs 大三角!

「はぁ? アイツらに勝ちたい?」

「はい師匠! 先輩方が卒業するまでにリベンジしたいです! ボコボコにされたまま終わるわけにはいかないので!」

 

 

 編入生活リトライ16日目。

 前触れなく一年生たちが俺の部屋にやって来た。いきなり押しかけてきて何の用かと思えば、三年生たちに一泡吹かせたいという物騒なこと。先輩たちを慕ういい後輩たちなのに心の奥では恨みつらみを重ねていたのか。まさか身内から謀反されるされるとはアイツらも思っていなかっただろう。まさか卒業するこの時期になってグループ解散か?

 

 

「日頃の鬱憤が溜まってるなら本人たちに直接言え。俺から伝えたらアイツらに効きすぎて心折っちまうから」

「違います! 以前私たちのスキルアップの一貫で先輩方に勝負を挑んだのですが、案の定コテンパンにされてしまいまして……」

「でもこのまま勝ち逃げされたくないので、卒業される前に一矢報いてやろうと画策してるんですよ~」

「なんだ暴動じゃねぇのかよ面白くねぇな」

「私たちに何を求めているんですか……」

 

 

 ただのガキの遊びか。俺も幼かった頃は秋葉や母さんに分からされてばかりで、いつか反抗してやろうと躍起になっていた時期もあった。今思い返せば秋葉にはあの頃から実験対象にされてたし、母さんからは溺愛されて過剰なスキンシップされまくりだったからロクな思い出がねぇな。楓が物心ついたときはアイツからも絡まれて大変だった記憶がある。もう家族愛とか兄妹愛を超えてたなアレ。まあ恐ろしいのはその三人共かつてのまま全く変わってないところだけど……。

 

 

「で? 俺の部屋にまで来てなにをしに来たんだよ?」

「徒町たちはあの敗戦からたくさんレベルアップしましたが、やはり偉大なる大先輩が相手となると今でも怯まざるを得ません! なのでここは大先輩と同じくらい偉大な師匠に、戦いに勝利できるアドバイスをいただきたいと思いまして!」

「あの先輩たちですら顎でこきを使うれいくんせんぱいなら、相手にクリティカルヒットする業を教えてくれるはず!」

「アイツらと一緒にいた期間ならお前らの方が長いだろ。むしろお前らの方が知ってんじゃねぇの?」

「梢先輩は機械、慈先輩は勉強、綴理先輩はできなことだらけ……とかですね」

「サラッと出てくるくらいには把握してるじゃねぇか……」

「いや客観的に見てという意味で、蔑む意図は一切ないですから!」

 

 

 後輩たちからは崇め奉られるほどに持ち上げられてるアイツらだけど、俺からしてみれば弱点だらけのひよっこだけどな。まあ本当の年齢はアイツらより上だから子供に見えちゃうのも仕方ないけども。

 

 

「だったらお前らの得意分野で勝負すりゃいいじゃねぇか。ゲームとか早食いとか、加賀繍とか舞踊とか……えぇっと」

「徒町には何もないんですか!?」

「短時間で人の長所を見つけるゲームとか?」

「アタシたちの土俵で戦ってもいいんですけど、できれば勝負ネタはフェアにしたいんですよ~。独壇場だと勝ったとしても当たり前~って気持ちの方が強いので」

「勝ちたいは勝ちたいけど、最初から優位にはなりたくないってことね。メンドくせぇな、倒すだけなら一瞬なのに」

「相変わらず凄い自信ですね先輩……。いや先輩だからこそか」

 

 

 完璧な人間なんていない。俺だって女の子側から予想の範疇を超えたアタックを仕掛けられたときは戸惑っちまうし、常に相手のマウントを取れるわけじゃない。アイツらにだって弱点はあり、そこを的確に攻めれば陥落は早い。だがコイツらはスポーツマンシップに則っているのか律儀なのか、あくまで公平な勝負をお望みのようだ。

 

 

「先輩は何かいい案ありませんか? 以前は実力差のある歌やダンスで勝負してあっさり負けちゃったので、大三角の先輩方と実力が平等になるような妙案を……。とは言っても私たちでは歯が立たない相手だと重々承知していますけど……」

「それでも挑むなんて相当負けず嫌いなんだな」

「意外とアタシよりも頑固なんですよ吟子ちゃんは~」

「ただ負けっぱなしってのも面白くないだけだから!」

「と言うわけです! 師匠、ネタ提供よろしくお願いします!」

 

 

 丸投げかよ。

 だけどわざわざ相談しに来るあたり本気でアイツらに勝ちたいと思っているのだろう。それでいて実力は平等になるようにしたい。バランス調整が難しいところで、あらゆる実力は経験の差で三年生側が凌駕している。まあアイツらのポテンシャルは他の同学年の奴らに比べてもスバ抜けている故、コイツらといい勝負をさせるにはどうすればいいか。

 

 

「そうだ、あるにはある」

「えっ!? じゃあそれにしましょう!」

「聞いてもないのにかよ。お前らとアイツらのスキルも経験もほぼ同じで、どちらの専門でもないネタを思い付いた。まああまり勝負には使いたくないけどな」

「とりあえずフェアに戦えるのなら何でもOKですよ~」

「私もです。聞かせてください」

「それは――――」

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「まさかこのタイミングでリベンジ戦を挑んで来るなんてね。でもまさか――――零をドキドキさせる勝負ってどゆこと!?」

「以前はダンスや歌だったから、またフィジカルやリズムでリベンジするのかと思っていたけれど……」

「アタシたちと先輩方がフェアになるような勝負は何かな~って考えた結果、これに決まったんですよ~」

「ボクたちドキドキできるの? その勝負だったら楽しそうだね」

「私たちはさせる側ですけど……」

 

 

 三年生たちを呼び出してリベンジマッチの火ぶたが切られた。家のリビングに集合しており、お互いに私服のラフな格好なので身体を動かす系ではないことが分かる。梢の言った通りそのことに三年生たちは疑問を抱いていた。

 ちなみに俺が提案した勝負ネタはあくまでコイツらが考えたことにしてある。内容が内容だから自分が言い出しっぺだと思われたくねぇからな。全員を同じ土俵に立たせるにはこれしかなかったんだ。案を提出しないと部屋から出てくれなさそうだったし、決して俺がナルシストなわけではなく苦肉の策だと思ってくれ。

 

 

「ドキドキさせるとは言っても、まさかここで告白をするわけではないわよね……?」

「もちろんです! 実はこの箱に役作りが書かれた紙がたくさん入ってまして、そのお題に沿って師匠をドキドキさせるルールです!」

「なるほど面白そうじゃん。でもキミたちに勝てるかな? めぐちゃん一人だけでも零をメッロメロにできちゃうんだけどな~」

「うぐっ! めぐちゃんせんぱいの自信はもっともですけど、アタシたちも今回を逃せば勝ち逃げされると思えば全力で抵抗しますよ!」

 

 

 こういった成りきり系の演技が上手そうな慈がいる三年生チームが少し有利そうか。でもこれは団体戦だから一人の活躍だけでは決まらない。むしろ歳の差的に一年生たちの方が雰囲気ピッタリのキャラ付けも数多く候補になっている。ま、それは逆も然りだからフェアにはなってるけどな。あとはくじ引きでどのキャラになってどちらに有利が傾くかだが……。

 

 

「それでは綴理先輩、この箱から紙を1つ取り出して内容を確認してください」

「うん。じゃあこれ―――――ん? 『妹』って書かれてるよ」

「つまりはれいくんせんぱいの『妹』になりきってドキドキさせろってことです。演技面でなら公平な立場で勝負できますしね~」

「でも年下の男の子に対して妹のように振舞うだなんて、どう接したらいいのか難しいわね……」

「それは徒町たちも同じでフェアなので大丈夫です! 師匠は学年は上ですが徒町たちよりも年下なので!」

「思えば結構ややこしい立場にいるよね、先輩と私たち」

 

 

 最初は割と定番なやつがきたな。一見すると年下の一年生たちの方が有利そうに思える。三年生ともなると妹より姉の印象が強くなるからな。まあ三年生ってよりかはコイツらは姉キャラに見えるってだけだけど。だって現二年生の花帆たちが三年生になっても姉キャラには見えねぇだろうし、やっぱり初対面の印象ってのはずっと引きずられるものだ。

 

 

「どんな役でもめぐちゃんにお任せあれ! ほら零、こっちこっち!」

「なんだよ手招きして……」

「こほん――――お兄ちゃーんっ! 今日もよく頑張ったねっ。ご褒美に妹をなでなでしていいよ?……ううん、やっぱり、ぎゅーってして?」

「お前……」

「ぐはぁああああああああああああっ!? 甘え上手妹のめぐちゃんせんぱい!!」

「あぁっ!? 先に姫芽ちゃんがノックアウトしちゃった!」

 

 

 なるほど、媚びたキャラ作りは慣れてるから完璧ってことか。普段から可愛いアピールを欠かさないからこそ無邪気っ娘の妹を演じるのも上手い。不意打ちでなりきりやがったからちょっとだけ心が揺れてしまった。実妹からの愛の言葉は告げ慣れてるつもりなんだけど、やっぱ人が変われば同じような言葉でも抱く想いは全然違うな。

 

 

「吟子ちゃん! 姫芽ちゃん! 徒町たちも負けてられないよ! 行きますよ師匠!」

「あ、あぁ……」

「兄上! 今日も徒町チャレンジ頑張ました! えへへ、兄上に似合う妹になれるよう頑張るね!」

「兄さん、いつも助けてくれてありがとう。たくさんのお礼をしたいから、やってほしいことがあったら何でも言ってね」

「お兄ちゃ~んゲームしようよ~。お兄ちゃんの胡坐の上にアタシが座って~、お兄ちゃんにギュッとされながら一緒に遊びたいな~」

 

 

 年下組は案の定妹っぽいな。現実にいても全く違和感がなく、妹キャラとしては余裕の及第点だ。もはや『お兄ちゃん』と呼ばれるだけで興奮する奴がこの世の中にたくさんいるだろう。

 それに各々呼び方が違うのもなりきりポイントが高い。三つ子の三姉妹としてスクールアイドルとは別のストーリーを作れそうだ。

 

 

「こず、ボクたちも魂に妹を宿さないと。えぇっと、おにい? あに? う~ん……れい、好きだよ。ずっとボクの隣にいてほしいな。」

「お前は呼び捨てが一番に合ってるな」

(わたくし)はそうね……。お兄様、あなたのことをお慕いしております。これからも(わたくし)の隣で、その凛々しく逞しいお姿をこの目にお焼き付けください。こんな感じかしら……?」

 

 

 綴理はいつもの綴理って感じ。逆に梢は妹にいたら兄を崇拝する清楚系。どちらも予想通りだが、こうして実際に目の当たりにするとしっかり型にハマっていて凄い。一年生もそうだけどスクールアイドルって演技能力も磨かれるのかよと疑ってしまうくらいだ。もしかすると定期的に生配信をしてるから、セリフ読み程度ではもはや緊張はしないのかもしれない。

 

 

「師匠! どちらの妹の方がドキドキしましたか?」

「結果は総合的に決めるっつったろ。ほら次のくじを引け」

「じゃあ次は私が引いちゃおっと! じゃあ……これ!」

 

 

 そんな感じでコイツらは引いたお題に従って次々と役になりきった。

 例えば――――

 

 

◆お題:ツンデレ 吟子の場合

 

「はぁ!? そ、そんな好きとかやないし! 普通だから普通! でもいつも優しくしてくれて少し、ほんの少しは感謝しとるよ……」

「いつもの吟子ちゃんだね!」

「え!?」

 

 

◆お題:メスガキ 小鈴の場合

 

「や~い 徒町みたいなちっちゃな子が好きとかイケないんだ~! へんた~い! へんたいおにいさ~ん――――って、ホントはそう思ってないですよ!!」

「いい子が滲み出ちゃってるねぇ~」

 

 

◆お題:メンヘラ 姫芽の場合

 

「ねえ、浮気したの……? 浮気するわる~い頭は……ふふっ、アタシの手で……こねこねして作り替えなきゃね」

「姫芽さんのおっとりボイス、狂気な雰囲気が割り増しになるわね……」

「認めたくない自分の才能!?」

 

 

◆お題:パリピ&ギャル 梢の場合

 

「チョリーッス? えっ、ガチ? 今日の授業は休講ってマ? テンションアゲアゲ……なのだけれど」

「これがボクの親友ですって、こずを紹介するときに使おう」

「動画撮ってたの!? 消しなさい!」

 

 

◆お題:世話焼き幼馴染 綴理の場合

 

「ボクの作ったお弁当は持った? ほらネクタイが曲がってるから直してあげる。もう動かないの。はい、できた。あぁもうハンカチも忘れてる。ほら。はい、準備が出来たら行くよ」

「口調に抑揚がない世話焼き系って新しいジャンルかも……」

 

 

◆お題:性奴隷 慈の場合

 

「あっ、ダメ! はじめてだから! 今日は危険な日だから絶対にダメ! で、でもどうしてこんなに気持ちいの?? 悔しい……あっ――――」

「カット! これ以上はダメです! ていうかこのお題入れたの誰!?」

 

 

 なんかもう俺をドキドキさせるって勝利条件を忘れ、ただの遊びになっている気がする。中には恥ずかしがってまともにセリフを言えなかったことや、あまりにも自分のキャラとは乖離し過ぎて違和感だらけのこともあったけど、概ね全員が一通りの役になりきって演技を披露した。正直普通に完成度が高くて驚いたが、これも元の容姿がいいからどんな役でも可愛く映るのだろう。

 

 たださっきのお題の通り、途中から性癖を疑われるお題がぶち込まれて場の空気が一変したのも事実。俺をドキドキさせるのが目的の勝負だったはずだから、つまりは俺が性奴隷とかそういう偏屈趣味が好きだって思われてるのか……?

 

 

◆お題:鈍感彼氏に業を煮やしてベッドに押し倒した 吟子の場合

 

「あんたが悪いんやよ。私をこんな気持ちになるまで放置して。今ここで欲求不満を解消してくれるまで帰さないから……って、なんなんこのお題!?」

 

 

◆お題:犬っ娘 小鈴の場合

 

「わんわん! ご主人様! どうぞこの下等な生物である私を躾けて欲しいワン……ん? これって本当に犬のモノマネなんですか!?」

 

 

◆お題:ヤンデレ 姫芽の場合

 

「これ~? キミの写真だよ~。天井に壁にも窓にもドアにも、どこを向いても愛するキミの顔を見られるようにしてるんだ~。ん~なんかアタシ、こんなのばっかじゃない……?」

 

 

◆お題:ショタを誘惑する女家庭教師 梢の場合

 

「この問題なら解ける? え、やる気を出したい? そうね、じゃあ一問解き終わるたびに先生が服を一枚ずつ脱いで……待ちなさい! このセリフは誰が考えたのかしら!?」

 

 

◆お題:幸薄い系女子 綴理の場合

 

「全くキミはどれだけあたしをときめきさせれば気が済むんだい。でもそういうところ、素敵だぜぃ――――えっ、さちじゃないの? 幸薄い……おおがみさち……違う?」

 

 

◆お題:ダウナー系女子 慈の場合

 

「あ~メンド。別に告らなくてもアンタなら大体分かるでしょ、私の気持ち。好き、なんじゃない、多分。ま、そういうことだからこれからは恋人同士ってことでよろ。う~ん、ローテンションキャラは私でも難しいかも」

 

 

 その後、長くなるので途中から役1つにつき一人でやることになったが、そのおかげか箱に入っている全ての紙を引ききって役作りプレイは終了した。

 途中で何度かツッコミが入りはしたものの全員割とノリノリだったため中だるみすることがなく、見ている俺も普段は見ないキャラに新鮮な気持ちだった。意外と違和感がないキャラ作りもあり、そっち路線で曲作りをしてもいいなど各々インスピレーションも生まれたようだ。

 

 

「疲れました……。最後の方なんて勢いで喋っていたので特に……」

「うへ~色んなキャラを演じたせいで、どれが本当の人格なのか分からなくなりそうだよ~」

「ボクは楽しかったよ。自分の演技を貫くことができたから、今なら役者になれそうな気しかしない」

「最初はどうなることかと思っていたけれど、己の表現力を磨くことができたと思えば有意義な時間だったかもしれないわね」

 

 

 恥ずかしいセリフを言わされたりもしたがそれなりに好評だったようだ。結局途中から勝負をしてることなんて忘れて、各々どんな役作りをするかに集中していた。サブカル系に頻出するキャラは知らない奴もいるため、姫芽や慈が詳細を教えてあげるなど、もはや勝負の垣根を飛び越え協力してお題を乗り切る姿も見られた。どんな珍事が起きるのかと身構えていたけど、結果的には全員満足で終わって良かったんじゃないかな。

 

 

「零先輩。どちらの方が先輩をドキドキさせられましたか?」

「そういえば忘れてた! 私たちリベンジされてるんだった! どうなの零?」

「みんな楽しくやってたみてぇだし、勝敗なんて決さずにどちらもよく頑張りましたでいいんじゃねぇの」

「れいくんせんぱい、そういうのはいいですから。アタシたち、雌雄を決したいって言いましたよね~?」

「そうね。協力して乗り越えたとはいえ、白黒ははっきりさせておいた方がいいわ」

 

 

 面倒なことになったな。自分で提案したネタだから申し訳ないけど、正直優劣なんてつけようがない。どっちも普段お目にかかれないようなキャラを目の当たりにできたし、どっちも魅力的だったから『強いて選ぶ』なんてこともできない。コイツらが意外と真面目にやるものだから最初から見入っちまったよ。

 

 

「師匠、困ってますね。まさか徒町たちのアピールが足りてなくて、全然ドキドキしないとか!?」

「じゃあみんなでれいをドキドキさせる? れいだってみんなでアピールすればきっとドキドキしてくれるよ」

「マジ……?」

「そうですね。零先輩がドキドキしてくれないのであれば、やるしかないです」

「これだけの美少女に攻められれば一瞬で骨抜きになっちゃうかもね~」

「普段澄ました顔のれいくんせんぱいが陥落する日、遂に来ちゃいましたか~」

「あまりはしたない真似はしたくないのだけれど、みんながやる気であるのなら仕方ないわね。本当に仕方ないわ」

「の割には嬉しそうだぞお前……。本当にやんのか……」

 

 

 ソファでふんぞり返っていた俺に前から右から左から、後ろから攻めようとしてくる6人。吟子や梢なんてこんなことをするのを恥ずかしがる立場なのに、さっきので羞恥心が吹き飛んだのか他の奴らと同等の積極性を見せている。

 

 さっき『俺だって女の子側から予想の範疇を超えたアタックを仕掛けられたときは戸惑っちまう』と言った。まさにそのシチュが目の前で発生しようとしている。

 ガキの姿で身体が小さいのも相まって、例え小鈴のような背の低い奴であろうと抱きしめられたらソイツの身体にすっぽりと俺が収まってしまう。そんな攻撃が四方八方から来ればどうなるかはお察しのこと、容易に身動きなんて取れなくなってしまう。

 

 そのときだった。

 

 

「こ、これは……!!」

 

 

 女の子に囲まれて甘い香りに鼻腔をくすぐられる中、ふと目に入ったのは勢いで捲れてしまった女の子の服。胸元辺りまでたくし上げられてしまっており、恐らく密着した際に自然と捲れてしまったのだろう。

 姫芽だ。そして気付く。下着が見えそうで見えなさそうなその位置。赤く滲んだ痛々しい傷。トロフィーのような謎の形をした妙な造形の傷はまさにアレ。

 そう、スクールアイドル病特有のあの傷だ。やっぱりコイツもスクールアイドル病に罹っていたんだ。

 

 治療のため手を伸ばそうにもさっきも言った通り、身動きが取れないため触れることは叶わない。

 目の前に傷があるのに触れられないもどかしさの中、やがてみんながその場から離れると自然と拘束も解放される。ただそうなると当然姫芽の服は元に戻ってしまっているため、もうこのタイミングで治療してやることはできなくなってしまった。

 

 

「れいくんせんぱい、顔が赤くなってますよ? まさかドキドキしちゃいましたか!?」

「いやこれはお目当ての……なんでもない。てか女の子に抱き着かれたら男なら誰でもドキドキするだろ」

「やった! 徒町たちの大勝利ですよ!」

「ボクたちの勝利だ」

「あれ、そうなると6人の勝利ってことになっちゃいませんか……?」

「それはそれでいいんじゃない。だってあの零に一泡吹かせられたんだからね!」

「これで心置きなく卒業できるわね」

「なにこの納得できない結果オーライは……」

 

 

 最終的にどちらかを選ぶ必要がなくなったのは助かったけど、俺を打倒することに快感を覚えられるのは困るな……。

 まあコイツらが満足してるのならそれでいいか。コイツらの貴重な一面も垣間見えたし、なにより姫芽がスクールアイドル病を患っている証拠を偶然にも発見できて非常に僥倖だった。

 

 それに今回で思ったよりコイツらが俺に対して積極的にアピールしてくることも分かったし、これでコイツらの想いに応えることもできるだろう。小鈴とさやかのように、俺に直接コンタクトを取ってくる日も近いかもしれない。吟子や姫芽の場合はスクールアイドル病の調査も同時に進むだろうし、いきなり攻めてきてもいいように受け入れ態勢は常に万全にしておこうと思ったよ。

 




 今回は大三角と小三角メンバーのみでしたが、なりきりプレイは花帆たちともやってみたい欲が生まれちゃいました。ゆくゆくはセラスや泉にも……!!


 今年分の投稿は今回で終了です。皆さま今年一年ありがとうございました!
 もちろん来年も続けていく予定ですので、またお時間のある時に覗きにきてくださると嬉しいです!


 来年一発目はいつもの日時に投稿予定。蓮ノ三連華 & ABCトリオの二年生組からスタートです!




【キャラ設定集】
零から蓮ノ空キャラへの呼称
・日野下花帆 → 花帆
・村野さやか → さやか
・乙宗梢   → 梢
・夕霧綴理  → 綴理
・大沢瑠璃乃 → 瑠璃乃
・藤島慈   → 慈
・百生吟子  → 吟子
・徒町小鈴  → 小鈴
・安養寺姫芽 → 姫芽

蓮ノ空キャラから零への呼称(零への好感度 0~100 ※限界突破アリ)
・日野下花帆 → 零クン   (120)
・村野さやか → 零さん   (120)
・乙宗梢   → 零君    (120)
・夕霧綴理  → れい    (120)
・大沢瑠璃乃 → 零くん   (120)
・藤島慈   → 零     (120)
・百生吟子  → 零先輩   (84)
・徒町小鈴  → 零師匠   (100)
・安養寺姫芽 → れいくんせんぱい(87)

スクールアイドル病の治療状況
・日野下花帆 → 治療済
・村野さやか → 治療済
・乙宗梢   → 治療済
・夕霧綴理  → 治療済
・大沢瑠璃乃 → 治療済
・藤島慈   → 治療済
・百生吟子  → 傷の位置調査中
・徒町小鈴  → 治療済
・安養寺姫芽 → 傷の位置特定済
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