美堂美和子の依頼によりハーレムを信仰する村に伝わる神、稲荷火様に豊作の祈祷をしに来た俺、花帆、さやか、瑠璃乃。そして美堂と同じ『ABCトリオ』の英川英奈と椎葉椎菜。
ただその神のご神体の像の前まで来たまではいいものの、いきなり輝きを放ち俺たちを混乱に陥れる。
そしてその光が収まったとき、目の前に謎の幼女が現れた。しかもただの女の子ではない。
コスプレではないごく自然に馴染んでいる狐耳とふさふさの尻尾。創作の世界でよく見る狐少女そのものだ。お高そうな和服を着こんでおり、幼い見た目ながらも高潔そうな印象を受ける。
ただ、その子が発した言葉でそんな壮麗なイメージはあっという間に吹き飛んだ。
「遂に来たのじゃ……」
「えっ?」
「遂に来たのじゃ! ハーレムを囲う女たちを一人残さず孕ませる超鬼畜シチュエーションを実行できる雄の力を持った男が!!」
「は……?」
まさかの『のじゃロリ』属性――――ってのは置いておいて、開口一番に放たれた淫語に開いた口が塞がらなかった。花帆たちも唖然としたまま何も言葉を発することもできないようだ。
そもそもコイツは一体誰なのか。どこから現れたのか。どうして俺たちの姿を見て喜んでいるのか。さっきの言葉の意味とは。何もかも訳が分からない。対して目の前の狐少女は瞳を輝かせて俺を見つめている。何やら期待を込めながら、長年待ち望んでいた人に再会で来たかのように感動している。もはやこの状況すらも意味不明だ。
「えぇっと……全然なにがかんだかなんだけど、まずあなたは? 狐さん……だよね? あたしたち幻覚を見ちゃってるの??」
「現実じゃ。何を隠そう、我こそが稲荷火様その人、いやその神なんじゃからの!」
「えっ、稲荷火様ですか!? だってあの像の美麗さとは全然違うと言いますか……」
「ふん、今は力の大半を失ってしまってこんなちんちくりんな姿になっているだけじゃ。全盛期の力を取り戻せばもっとナイスボディに……」
「とにかく、ルリたちはまた別の世界に行ってしまったとかではなく、マジモノの神様が目の前にいるって解釈で……オーケー?」
「だからそう言っておろうに」
平行世界に飛ばされたとかではない。本当に神様が目の前に現れたんだ。ただ一応驚きはするもののそこまで衝撃を受けたかと言われたらそうではない。なんたって俺たちガチの異世界に飛ばされたことがあるからな。それに幽霊の女の子の存在とかも知ってるし、もはや俺たちは普通の日常を歩む一般人じゃないってことだ。自慢することじゃないけどさ……。
~※~
「なるほどお。では稲荷火様がそのお姿になってしまったのは、ハーレムの主に相応しい男性が祈祷に現れなかったからなんですねえ」
「そうじゃそうじゃ! 軟弱な男ばかり連れてきおって!」
「なるほど。この村の不作が続いたのは稲荷火様の力が弱体化したから、というわけですか。美和子ちゃんから聞いていた話と因果関係が成り立ちましたね」
「でも稲荷火様、零とウチらで力を取り戻そうとしてるんだよね? それがアレだ、ウチらが孕まされるとかなんとか……」
「我が見たいのは強い雄がボテ腹女子を侍らせるシチュエーションなのじゃ! 自身のリビドーを高めればこの村も救われる故、win-winな関係じゃぞ!」
「こんな神様を信仰していたんですか私たちは……」
淫乱思考が極まり過ぎて放送禁止用語が華の女子高生の前で連発されている。そりゃ美堂もドン引きするって。自分の故郷の村が長年信仰してきた神が実は淫乱だったなんてな。
稲荷火から大方の話を聞いた俺たち。さっき椎葉が言った通り、この村の不作はコイツの力不足のせいだった。毎年祈祷を捧げていたはずだがコイツは満足しておらず、自身の欲望を満たすに至る男と女の組み合わせをずっと待っていたらしい。そのせいで祈祷の力を得られずに力を失ってしまった。だが俺たちがその条件に合致したということで喜びのあまり像から飛び出してきたんだそうだ。
しかしその欲望ってのが想像を絶する。どうやらコイツ、ボテ腹ハーレムのシチュエーションが大好きらしい。つまりそれを実現するための役者を祈祷をする奴らの中から選別していたってことだ。村の人たちが豊作を祈りにきているのに、当の神様は淫らな私欲のためだけに村人を不作で苦しめてたなんて、もう同情すら通り越して悲しみで涙が出そうだよ俺も。美堂たち村人があまりにも不憫すぎる。
「本当に稲荷火様のお願いを聞かないとこの村は救われないの? でもどうしてそんなことを……?」
「その昔、我が下界の様子を偵察するためこの地に降り立ったときじゃ。ふと川辺を歩いていると、ひっそりと積まれている書物が目に入った。確認してみるとそれは――――ボテ腹ハーレムモノのエロ本だったのじゃ!」
「えっ!? じゃあまさかそれに影響されたとかでは……?」
「そのまさかじゃ。興味本位で読んでみると、その内容に衝撃を受けた。我は自身が高貴なる神であることも忘れ、一晩中そこでその本を読み耽ってしまったのじゃ。そして神にあるまじき性欲を感じ、いつの間にか自身を慰めておった。もはや隣に流れる川よりも我の下半身は洪水じゃったぞ」
「生々しいわ! ルリたちなんてものを聞かされてるんだ!? そういうプレイなのか!?」
「人間界には電流が走るような背徳的な代物が溢れていると知った。それからというもの、その本をこっそり持ち帰って自身の性衝動を高める日々。だが毎日使用していると性欲の高鳴りも徐々に薄れていく。飽きってやつじゃ。もはやこの村を守る力と一体化してしまった我の性欲。我の性的本能が弱まり、この村が不作になる構図が出来上がってしまったというわけじゃな」
「そんな……!! 私たちの村が神様の性欲で成り立っていたなんて……!!」
「美和子が気絶しそうになってる! 戻ってきて!」
神の性欲が満たされてるかどうかでその年の豊作不作が決まるなんて、俺だったら即そんな村から出てくっつうの。
つうか神のくせに随分と俗世に塗れてるんだな。いや神にすら影響を与える人間のエロ文化のパワーが凄まじいのか。なんにせよロクでもない神に生活を支配されちまってるなこの村。
そしてもはや祈祷をするだけではこの事件は解決しなさそうだ。ただ祈りに来るだけかと思って美堂の依頼を承諾したけど、やっぱり面倒事に発展するのね……。
「じゃああたしたちが零クンと子供を作るしかこの村を救う方法がないってこと……?」
「その通りじゃ! そこの男、背は低いが並々ならぬ雄々しさを感じる。そしておぬしたち女も極上の女子高生ばかりじゃ。これは我が求めていたボテ腹ハーレムの人選にピッタリじゃからの。おかげで失った力も元に戻る、というわけじゃ」
「ちょっと待ってください! まだやるとは一言も言ってませんよ!? そ、そんな、零さんと赤ちゃんだなんて……」
「恥ずかしがっておるが満更ではないのだろう? 我だってボテ腹ハーレムを担う女が誰でもいいとは思っておらぬ。おぬしのようにスポーティで引き締まった身体の女がお腹をぷっくりさせている様……うん、いい!」
「よくないです!!」
「おぬしのような胸の大きい少々だらしない体型の女も、おぬしのような犯罪ロリ体型の女もボテ腹にピッタリじゃ!」
「だらしないってあたしのこと言ってる!? そりゃ最近はダイエットやってないけど……」
「ルリって犯罪だったのか!? 失礼な!」
もはや言われたい放題だな。女子高生に対してここまで下ネタを連発できるなんて、もうこの場面を証拠にするだけで何らかの罪に問えそうだ。まあ相手は神だから人間界のルールは通用しないかもしれないが、その神が下界のR-18界隈というアブノーマルに夢中になってるから何とも言えない。もはやまともな話し合いで納得させられると考えない方が良さそうだな。
「馬鹿馬鹿しいですね。彼と関わるとおかしな出来事ばかり巻き込まれるのは目に見えていました。まだ学校でやることがありますし、帰らせてもらいます」
「椎菜!? いやまあ気持ちは分からなくもないけど……」
「ふん。ようやく釣れた役者じゃ、逃がしはせん」
「いたっ。え、なにこれ……」
呆れた椎葉が下山しようとしたとき、何か見えない壁のようなものにぶつかった。迂回しようとするもその壁はどこまでも続いているようで下山が完全に不可能になっているようだ。
まさかこの神、俺たちを……。
「この山を取り囲むように透明の壁を生成したぞ。これでおぬしたちは逃げられぬ。我の欲望、ボテ腹ハーレムをこの男に作ってもらうまではの」
「いやでも子供ってそう簡単にはできないですよ! それにお腹が大きくなるのだって月単位でかかりますし……」
「我は神ぞ、そんなことを想定していないわけあるまい。これを使え」
「なにこのビン? 中にピンクの液体が入ってる……」
「それを一滴飲むだけで排卵から受精までを超高速で行える。つまり一日でボテ腹になることも可能なのじゃ! こういうのもすぐ作れる、神じゃからの」
「凄い……。もはやエロ同人の世界に迷い込んじゃったみたいだよ。いやぁ零と一緒にいると飽きないねぇ」
「飽きろ。いいことねぇぞ非日常なんて」
秋葉と同じくらいぶっ飛んだことしてるなこの神。コイツより神と同格に肩を並べるアイツの凄さを感じるが、どちらにせよ俺の日常を脅かす厄介なお邪魔キャラには変わりない。俺の周りに超人が増えるのはもういいって。
稲荷火の神は俺たちをこの山に拘束し、謎の液体によりみんなの排卵を加速させようとしている。もはや展開がエロ同人版のクローズドサークル、つまり性行為するまで出られない島とか村の類のやつだ。まあ今回はそれに加えて妊娠まで確定させなきゃいけないからハードルが高すぎるけど……。
「なにやら戸惑っているようじゃが、おぬしらこの男のことが好きなのじゃろ? 特にそこの三人は並外れた愛を抱いている気配があるぞ。ほれ、我の尻尾を触ってみよ」
「えっ、急に話題が変わった? えぇっと……あ、ふさふさで温かくて気持ちいい」
「ふむふむ。日野下花帆、おぬしこの男にボテ腹にされることに対して少しいいかもと思っておるな?」
「えっ? えぇっ!?」
「図星じゃな。我の尻尾は相手の感情と記憶を読み取る性能があるからの。触れさせることで胸に秘める気持ちを1から10まで理解できる。そしてそやつが密かに抱く性欲を我とリンクさせ、そのリビドーを感じ取ることもできるのじゃ。そういうわけでほれ、そっちの二人も触れてみよ」
「いやそんなこと暴露されて自分から触りに行こうだなんて思いませんよ!」
「お互いに好きであると気持ちが分かっていれば、愛のエネルギーが溜まり妊娠もしやすくなると思うがの」
「なにそのフィクション!? それエッチな本の影響受け過ぎだから! ルリたちはもっと純情なんだ!」
「なんかあたしだけ貧乏くじ引かされてない!?」
なんでもありだなこの神。同じ人間ではないから俺たちと常識が違い過ぎるし、適当な説得では身銭を切らずに帰宅なんて奇跡すら起こらないだろう。このままコイツのペースに乗せられているだけではこの状況は絶対に解決しない。せめてコイツらだけでも逃がしてやりたいけど、流石に見えない壁なんて非現実的な技に正攻法で乗り越えることはできなさそう。
まさか本当にコイツの欲望を叶える必要があるってことか。いやそんなことは絶対にできるわけねぇだろ。
「稲荷火様、どうしてもあなたの欲望を叶えるまで帰してくれないのでしょうか? 私たちはまだ学生ですから、お腹に子供を宿すなんて非道徳的だと思うんですけどお……」
「ん? でも我の読んだ本に出てくる女はみな学生じゃったぞ?」
「稲荷火様にとってはエロ同人の常識=ウチら人間の常識みたいになってんだねぇ~。ガチのマジで孕むまで帰らせてくれない感じ?」
「くれない感じじゃ」
「はぁ……。本当にあなたがいると面倒事しかおきませんね。責任を取ってここからの脱出ルートを模索してください」
「俺のせいかよ……。つうかそれならとっくにやってるよ」
やってるけど見つけ出せそうとは言っていない。仮に脱出できそうな道を見つけても神であるコイツなら退路くらいすぐ絶てるだろう。つまりまともなルートでコイツの追跡を振り切るのは不可能だ。だったらどうすんだって話だけど、こればっかりは逃げで解決できるものではない。とりあえず稲荷火に話を進めさせて活路を見出すしかないか。
「安心せい。子作りをする場所がこんな山の中ではムードも皆無じゃろう。壁のついでに近くに小屋も作っておいたから、そこで思う存分に子作りするがよい。ああ心配せずともおぬしら7人全員で寝ることができる特大ベッド付きじゃ。そうでもないとハーレムではないからのう」
「安心もしないし心配はしますよ! どうして子作りする方向で話が進んでいるんですか!?」
「さっきから文句が多いのう。好きな男の子を宿せるというのに何が不満なのじゃ?」
「稲荷火様が常識知らずなだけで、ルリたち人間からすれば子供を授かるのは人生でもトップクラスで重要なイベントなんだよ。それをこんな形で消費したらそりゃ文句も出るっしょ」
「そうだよ稲荷火様! 分かってもらえたならあたしたちをここから解放してほしいなぁ~って」
「いやじゃいやじゃ! 我はボテ腹ハーレムが見たいのじゃ!」
「あ~あ、子供みたいにダダこねちゃったよ。これってウチらのせい……?」
「子供にしては欲望がR指定を飛び越えすぎていますけど……」
本当にコイツの真の姿ってこの像みたいな大人なのかよ。エロ同人で性癖を歪められたと被害者面してたけど、ガキっぽさは元々の性根だったんじゃないかと疑ってしまう。とんでもえねぇ神に絡まれちまったな俺たち。
「まあよいわ。おぬしらの生殺与奪は我が握っておる。ここから脱出して元の生活に戻りたければその腹に子を宿せ」
「子供を作った時点で元の生活には戻れない気もしますけどお……」
「ちなみに衣食住は心配せずともよいぞ。おぬしらが望めば神の力で何でも生み出してやるからの。どんな料理だろうが設備だろうが、なんでもな」
「えっ!? じゃあショッピングモールも作れるってこと……?」
「ああ、できるぞ。おぬしが好きなクレープ食い歩きもできるようにしてやろう」
「う゛っ!! ちょっといい生活かも……!!」
「そんなことで決意が揺らがないでください花帆さん!!」
花帆の記憶を覗き見たことでコイツの秘かな夢を的確にかなえようとしてやがるこの神。
ただ願いが叶う空間か。人によっては夢のようかもな。望めば何でも手に入る空間で美少女たちとまぐわえるなんて男からしたら天国だろ。まあそんなシチュエーションに付き合ってくれる女の子がいるなら、別に神の力に頼らなくても日常が充実してるんだろうけど。
「じゃあ我は像に戻るとするかの。人間界で活動するとエネルギーを消費するのじゃが、子供の姿ではバッテリー持ちが悪いからの。というわけで明朝にまた様子を見に来るから、そのときにはボテ腹になっておくんじゃぞ」
「あっ、ちょっとまって稲荷火様! あぁ行っちゃった」
言いたいことだけ一方的に伝えた稲荷火は、その姿を光に変えて像に帰ってしまった。
この状況を唯一操作できる奴が存在しなくなったことで、俺たちは本格的にこの山に閉じ込められてしまったわけだ。ただ見方を変えれば監視する奴がいなくなったので脱出ルートを見つけられる可能性があるとも言える。あの神あまり有能そうじゃないし、もしかしたら粗があってどこかに見えない壁を設置し忘れてるとかありえるかもしれない。逃げ出したら逃げ出したらで村がどんな目に遭うのかを想像したら安易に脱出もできないけどさ。
ただ一応緊急避難用のルートは確保しておきたいので、念のためみんなで山を散策して壁が抜けているところを探してみる。
しかし――――
「あ~ダメだ! ちょっと歩いてみたけど抜けてるところ全然ないね~。稲荷火様、本当にウチらを逃がさない気なんだ」
「自分の欲求を満たすためだったら抜かりはない、ということでしょうか」
「そうなると稲荷火様が作ったとされるあの建物に行くしかなさそうですねえ。このまま山の中で一晩を明かすのは現実的ではないので……」
「でも行くとなると稲荷火様の策に乗ってしまいそうで、わたしは少し警戒してしまいます……」
「もしかしたらあの家に入った瞬間、ルリたちを強制的に発情させる芳香が焚かれてるとかあるかもね。ほら、エロ同人でよくある催眠モノみたいな……」
「瑠璃乃ちゃん怖いこと言わないでよ!!」
エロ同人で性癖が拗れてしまった神様だ。背徳的な性的欲求に従って淫猥な仕掛けが施されている可能性もなくはない。ただボテ腹を見たいだけなのでそこまでの策を講じているかは不明だ。
毎回思うけど、こういう超常現象の事件って常識的な前提が通用しないから事前に対策を立てようがねぇんだよな。しかも今回は俺たちがどれだけの危機に陥っているのかも分からないから、どれだけ本気を出せばいいのかも分からない。秋葉の発明といい愛莉の襲来といい、トンチキな事件の方がシリアスよりも頭が回んねぇな……。
「零クン、これからどうする? まさか本当に子作りとかしちゃわないよね!?」
「当たり前だ。アイツの思惑に乗るわけにはいかねぇからな。でも山の中にずっといるってのも体力を奪われるし、それに解決を見出すためにも多少はアイツの話に合わせた方がいいかも。だからあの家に行こう。もしかしたらこの事態を解決するクリティカルな方法を思いつくかもしれねぇしな」
村の神様である稲荷火によって山に閉じ込められた俺たち。
ここから抜け出すためにはこの6人との性行為が必須らしい。本当にやらなければならないのか。他に解決策はあるのか。
ったく、スクールアイドル病以外で面倒を押し付けてくるのはホントにやめてほしいよ……。
いやスクールアイドル病も勘弁だけどさ……。
To Be Continued……
下ネタ系の話は秋葉などオリキャラのパワーを借りた方がぶっ飛んだ内容にできるので、今回もそれに倣ってエンジンを噴かせてみました!
μ's編みたいに主要キャラの性格を変更するのはあまりやりたくないと思っているので。
それにしてもちょっと神様をはっちゃけさせ過ぎた気もしますが……
次回は解決編です。
まさか本当に花帆たちと子作りをするしかない……のか!?