ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常2~   作:薮椿

685 / 703
全員孕ませるまで出られない村!?(後編)

 稲荷火の力で見えない壁によって山を包囲され、俺たちは下山できなくなってしまった。

 この状況を打破する方法は稲荷火の提案を飲むこと。俺が花帆たちを相手にボテ腹ハーレムを形成し、あの淫乱神のリビドーを満たす。ずっと欲求不満だったところに現れた強い雄と都合のいい雌たちを逃がすまいと、言動はめちゃくちゃだがアイツは本気だ。

 

 だがもちろん花帆たちにそんな真似はできない。仮に女の子たちから同意があろうとも高校生を妊娠させるのは男として、そもそもこの世の倫理に反する。ただ稲荷火は神だから人間の常識なんて全く通用しない。さっきの会話でも俺たちの要求なんて一切聞く耳を持たなかった。

 

 しかし、だからといって何もせず時を過ごすこともできない。コイツらをこんなくだらねぇ戯れから解放させる必要があるし、それにアイツの欲求はこの村の豊作不作に大きく影響しているため完全に敵対することもできない。

 相手は紛いなりにも神様だ。花帆たちを傷物にせず、かつ美堂の村を豊作にする二兎とも取る結末を迎えるにはどうすればいいのか。まだ何も思いつかないがきっとなにかあるはずだ。

 

 それを考えるため、俺たちは稲荷火が用意した小屋へ向かうことにした。

 小屋とは言っても7人が暮らせる想定だから見た目は大きく、外装はまるでペンションのようだ。女の子たちと同棲するための家が突然現れるって物凄くデジャヴだが、俺が蓮ノ空に戻って来たときと同じだな。どうしてもこうも超人的な力を持ってる奴は同衾させたがるかねぇ。

 

 

「ねぇこれホントに入っていいの!? 瑠璃乃ちゃんが言ってた、家に入った瞬間に催眠にかけられる……? みたいなことにならないよね!?」

「ゴメンゴメン! そんなビビると思ってなかったらノリで言っちゃった……。大丈夫……じゃないかな。根拠ねーけど!」

「心配すんな。俺たちをコントロールできるのならとっくにやってるよ。それに人間を自由に操れるなら俺たちが現れるのを待つ必要なんてなかっただろうしな」

「確かにそうですね。力の大半を失っているようでしたし、わたしたちに強制させることはできないんだと思います」

「稲荷火様の力が弱まっているとすれば、待ってればいつかはウチらに勝機が訪れるってコト?」

「そうかもしれませんが、その『いつか』が問題です。このままだと明日の授業どころか蓮華祭にも間に合わないかもしれません」

「山にずっといるのも冷えてしまいますし、話し合うのならまず中に入ってからにしませんかあ?」

 

 

 トラップなんて仕掛けられていないと踏んでいるが、念のためドアを開けるのも中に入るのも俺が先陣を切ることにした。

 ただ心配は杞憂だったようで、中は至って普通のペンションのように綺麗で家具も整っていた。数日どころかこれからここで暮らせと言われても不自由なく生活できるくらいだ。

 

 だがその中で唯一異彩を放つのがリビングに置かれた大きなベッド。確かにギリ7人同時に寝ることができそうな特大サイズがリビングの主力家具だと主張せんとばかりに鎮座していた。

 レイアウトの不自然さに花帆たちは言葉を失うが、それ以外は特にトラップらしきものもなくまともだったからか、そして神登場という超常現象の衝撃が収まってきたのか、ようやく腰を据えて休める場所で落ち着きを見せ始める。

 

 そのうち好奇心を抱いたのか割とウキウキ調子で内部を探索し始めた。

 

 

「すごーいっ! 冷蔵庫にジュースもスイーツもたくさんあるよ! これだけあれば食い倒れできるかも……!! でもこのピンクのは……?」

「稲荷火が言ってた排卵誘発の液体だろ」

「ふぇっ!? あ、危ない……!!」

 

「このキッチン、とても立派ですね……!! わたしたちが今住んでいるところのよりも一際豪華で、料理の腕が疼いて仕方ありません!」

 

「うぉおおおおっ!! このキャンプ用具めっちゃいいやつじゃん! それにこの釣り道具! 高くて買うの断念してたモノがこんなにたくさん……!!」

 

 

 花帆もさやかも瑠璃乃も自分の趣味に刺さる代物を発見してご満悦のようだ。この瞬間だけここから抜け出すことや村を救うなんて使命は忘れているだろう。

 それは英川や美堂も同じで、自分の関心を惹くモノが狙ったかのように用意されている。ただ椎葉だけは冷静で、持ち前の冷徹さは神の贈り物ですら溶かせないか。

 ちなみに俺が惹かれるモノは何もない。多分男だから女の子と同棲できるだけで天国と思われているのだろう。そんなの毎日だからこの程度の状況では全く興奮しねぇけどな。

 

 

「落ち着いてください皆さん。これはあの神の作戦でしょう。あなた方が最も興味を示すエサをぶら下げて、この檻から逃がさないようにしているだけです」

「だろうな。不自由なく生活できるけど娯楽がないとあれば、男女でやることは一つになる。それが狙いだと思うぞ」

「あの手この手で私たちにえっちなことをさせようとしてきますねえ。家の中でもじわじわと退路を塞がれている気がします」

「こんな状況でないならプチ旅行みたいで楽しいんだけどねぇ。零や花帆ちゃんたちと遠出することって全然ないからね」

 

 

 性欲に脳を支配されているからバカなのかと思ってたけど、俺たちを逃がすまいとするその執念は本物で心理的にも追い詰めてくる。ここに住まわせようとしてくる緻密な作戦には少し感心してしまった。まあ性欲ってのは物凄い原動力を生み出すこともある。もう二度と見ることのないと思ってエロ画像のブックマークを外したけど、少し経った後にやっぱり見たくなってその画像を血眼になって探すとかな。そのときの原動力たるや、つくづく人間の性欲って半端ねぇな。

 

 誘惑に負けそうになっている花帆たちを連れ戻し、ようやく本題に入る。

 

 

「そういえば零クン、ここから出る方法なにか思いついた?」

「いや全然。この家はアイツが用意したモノだし、脱出の手掛かりになるものなんてないって最初から分かってたけどさ」

「外部に連絡してみるのはどうでしょうか? 秋葉さんに助けていただけないでしょうか?」

「それなら山の中を歩いてるときに試したけど、圏外でどこにも繋がらねぇよ」

「じゃあいっそのこと壁を壊せる道具を作る……とか? ルリたちの力で神サマの壁を壊せるかは分かんないけど……」

「仮にそれで脱出できたとして、アイツが俺たちを見逃がすわけねぇだろ。それに強行突破がバレたらこの村がどうなるか想像もつかない」

「まあ! 私の村のことも考慮にいれてくれているなんて感動ですう!」

「村が不作で飢えそうになってるのに俺たちだけ無事だなんて後味悪すぎるだろ……」

 

 

 自分のことしか考えてない卑怯な奴だと思われてたのか俺って……。まあ人助けも全ての人を助けるわけじゃないっていつも公言してるけどさ。

 

 

「あなたが妙案を思いつかないのは珍しいですね。幾度となく学校や生徒を救ってきた英雄が、まさか女性との同衾を回避する術がないとは……。まさか本心では期待していたり?」

「んなわけねぇだろ。相手は人間業じゃねぇんだ、そう簡単に渾身の一手が思いつくかよ」

 

 

 ただ椎葉の煽りは得てして妙で、未だ四方八方の状況に何ら突破口を開けていない。いつもだったらとりあえず先陣を切って進みながら考えるんだけど、今回はボテ腹ハーレムを作ることを強要されているので動きづらい。夢見る楽譜の事件のときのように敢えて相手の土俵に立ち、続けざまの出来事に対処していればいつかは事態を切り抜けられるんだけど、今回ばかりはその土俵に立つことすらできないからな。妊娠なんてもちろん性行為すらもお断りなんだから。

 

 誰も作戦が思い浮かばず緊張のある静けさが場を支配する。

 そんな中、英川が冷蔵庫から例のピンクの液体の入ったボトルを持ち出してテーブルに置いた。

 

 

「やっぱさ、やるしかないんじゃない?」

「えっ、英奈ちゃん本気なの!?」

「ウチはいいけどね。これまで何度か男と付き合ってきたけど、零ほどイイ男はいないからね。ま、いずれこうなる運命だったら今やっても同じっしょ」

「英奈さんの場合はそうかもしれませんが、普通そんな簡単に割り切れる話ではないと思うんですけど……」

「でもさ、花帆ちゃんもさやかちゃんも瑠璃乃ちゃんも零のこと好きなんでしょ? もちろんこの怪しい薬を飲むとは言ってないよ? でもウチらが本気になったら稲荷火様の欲求もちょっとは満たせるかなって。本物の性行為を見たら意外とそれで満足しちゃうかもよ。相手はリアルを知らないんだしさ」

「なるほどそういう……。いやそれでも結構な覚悟必要じゃね!? ルリはまだそこの境地まで至っていないと言うか……」

「ただ自然には解決しないので何かしらアクションを起こさないと……となると、英奈ちゃんの提案は解決に最も近い手かもしれませんねえ」

「零クンとあたしたちが……子作り??」

 

 

 なんか急にあらぬ方向に話が進んでいる。とは言えども真面目にこの事態を終息させて村を救う最短経路を考えた場合、英川の提案が最も手っ取り早いのは誰もが納得している。稲荷火が自身の欲望を発散したいだけなら、もしかしたらボテ腹ハーレムではなく普通の性行為でもOKの可能性がある。だってアイツ、人間の性交渉を紙でしか見たことがないんだから。生でその現場を見たら思ったより刺激が強くて満足させられるかもしれない。希望的観測にもほどがあるが、妊娠がないだけコイツらの負担を最小限に抑え、かつ村も救われるこの方法が最前手のように思える。

 

 意外だったのが美堂もそれなりにノリ気なことだ。英川はキャラ的に言い出してもおかしくないが、ここで美堂の後押しが加わると心が揺れ動いている花帆たちもそちらに靡いてしまうかもしれない。てか完全に拒否せずに靡く兆候がある辺り、俺とそういった関係になりたいってことなのか? 以前にさやかとの関係がグッと縮まったけど、花帆も瑠璃乃も同程度の想いの強さを抱いているのかもしれない。

 

 

「わたしはありかなしかで問われたら、ないとは断言できませんけど……。本当にこれしか方法がないのであれば覚悟を決めます」

「ルリもまぁ、零くんなら……って。マジで一緒のベッドに上がるしかないってなってもイヤな気はしないどころか、多分運命だって受け入れると思う……かな」

「やっぱりみんな零のことが好きなんだねぇ~。さっきから黙ってるけど椎菜はどうなの?」

「一緒にベッドに入れと言われたら入りますし、その必要がなければやりません。ただ自分のポテンシャルに見合う男をこの先の人生で探すのも面倒なので、もう彼でいいのかなと思ってはいます」

「それは零君を褒めているんですかねえ」

「そもそもエッチする理由が椎菜らしいね。事務的すぎるよ。で? あとは花帆ちゃんがどうするかだね」

「えっ、あたし!? あたしだってみんなと同じ、零クンとやるしかないのならそれでもいいかなって思ってるけど……」

 

 

 妙な空気になってきたな。まさか満場一致でOKするなんて。妊娠誘発ドリンクは飲まないものの、それでも男と1つになるなんて相当な覚悟が必要だ。花帆たちもそうだが、まさかABCトリオの連中まで俺でもいいと断言するとは……。

 

 

「じゃあこれで決まりだね! もうここまで親密になったんだから、ウチらのことも名前で呼んでよ~!」

「なんでだよ……。てか俺の意見は無視か……」

「それはいい考えですねえ。私たちだけは名前呼びで、相手から苗字呼びは不公平ですしい」

「いやお前らが勝手に呼んでるだけだろ……。てか椎葉の許可は取らなくていいのかよ。コイツは別に俺のことを名前で呼んでねぇぞ」

「別にどちらでも」

「じゃあけってーいっ!」

 

 

 よく分からないが名前呼びを強制されてしまった。

 そしてABCトリオとそんなやり取りをしている中、隣で花帆たち三人が頬を膨らませていることに気が付く。

 

 

「なんであたしのときはお願いしてもすぐ名前で呼んでくれなかったのに、英奈ちゃんたちにはすぐOKしちゃうの!?」

「別に同意してねぇよ」

「なんだかこう、浮気されているような気分です……」

「ルリは寝取られた気分です……」

「お前らは名前呼びを強要してなかったろ。なのにそんな感情を抱かれるなんて理不尽すぎる……」

 

 

 そんなことでふくれっ面になるなよ。てかこんな形で名前呼びになるよりも、何か事件による吊り橋効果が加わった方が印象に残りやすくていいんじゃねぇの。去年の悪夢事件みたいに。俺としては別にどっちだっていいんだけどさ。

 

 

「まあまあ、そんな蟠りも全部ベッドの上で発散しちゃおうよ! 零の恥ずかしい姿っていう弱みを握れるかもしれないし、ストレス発散になるかもよ!」

「稲荷火様は尻尾で人の記憶や感覚を共有できるらしいので、お願いして零君の黒歴史を覗き見るのも一興かもしれませんねえ」

「よくそんな邪悪なこと思いつくな――――って、ッ!? そうか!!」

「よ~しっ、それじゃあベッドへゴー!!」

「ちょっ!? うわっ!?」

 

 

 美和子が稲荷火の特性を思い出させてくれたことで活路が見えたと思った瞬間、英奈に首根っこを掴まれてそのままベッドに放り出されてしまった。ガキの姿になっているが故に女の子にすら軽々扱われるほど軽量級になっているが、まさかそのデメリットをこんなところで発揮しなくてもいいだろ。この小さなカラダでは女の子7人のパワーには到底及ばないため、もしかしてベッドの上で好き勝手されるのはれ俺の方じゃないかと危機感を抱いてしまう。それだと稲荷火が満足しないんじゃねぇか? だって男が上位のボテ腹ハーレムを求めてんだから……。

 

 このままだと妙な空気で何故かノリノリなコイツらに襲われかねない。

 それを回避するためには、さっき思いついたアレをコイツらに共有するしかないか……。

 

 

「落ち着け。分かったんだよ、この状況を打破するクリティカルな策をな」

「「「「「えっ?」」」」」

「ようやくですか」

「あぁ、待たせたな。まあちょっと危険を伴うけど、多分大丈夫だ」

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「覚悟が決まったとのことじゃからの。様子を見に来たぞ――――って、おぬしら服すら脱いでおらぬではないか! 今から脳内麻薬がドバドバ出る、濃厚な即孕ませ性行為を見せてくれるはずではなかったのか!?」

 

 

 策が固まったので稲荷火を家に呼び出した。ただ俺たちが濡れ場どころか制服を着たままであることに憤慨している様子。服の乱れもないので誰が見ても一目で何も起きていないことが分かる。

 女の子7人もいて何もしてないなんて正気かなんて目をされてるけど、関係ない。このふざけた戯れをリスクほぼゼロで終わらせることができるんだから。

 

 

「おぬしらここから出たくはないのか!? 早く我のリビドーを頂点に迎えさせなければ永遠に幽閉されたままじゃぞ! 村も不作になる一方じゃぞ!」

「つまりお前の性欲を発散させることができればいいんだろ? ボテ腹ハーレムはお前の好きなシチュエーションだから、それが一番性欲を満たせるってだけで」

「そりゃそれ以上に刺激を与えてくれればいいのじゃが……。おぬし、もしかしてそれができるのか!?」

「あぁ、できる」

 

 

 稲荷火から怒りの感情が引いていくのが分かる。まだ半信半疑だとは思うのだが、それでも場の空気が真面目モードなので流石の神と言えども話の流れには逆らえないか。出会った頃の自分の主張だけを貫いてくるエゴイスティックは鳴りを潜め、他人の話を受け入れようとはしているみたいだ。これでも駄々をこねる子供ムーヴをされたらどうしようと思ってたから、まず最初の関門はクリアだな。

 

 

「尻尾を出してくれ。俺の記憶やそのときの感覚をお前に共有してやるよ」

「なに? 直接行為を見せてくれるのではないのか?」

「それ以上の体験をさせてやる。でも覚悟しておけ。お前が見たエロ同人よりもよっぽど濃厚でリアルな感覚を堪能させてやっから」

「言ったな? おぬしのような子供、経験なぞ乏しいとは思うがの。ほれ、触ってみるがよい」

 

 

 稲荷火は尻尾をこちらに向ける。

 さっき俺が言ったことは誇張でもなんでもない。俺の記憶、つまり女の子たちと濃密な関係になった回数は数知れず。そして濃厚な行為をした回数もそれなりだ。だから稲荷火の尻尾に触れている間、俺がそのときの記憶を呼び出し続ければどうなるか。あのとき俺に走っていた性感覚が電流のようにコイツの身体を、脳を支配するだろう。俺は慣れているからいいけど、実際の性行為の刺激を知らないコイツがその電流の威力を身をもって体感した際、果たしてコイツの反応は……。

 

 俺は稲荷火の尻尾に触れる。同時に他のことは一切考えず、女の子たちとの快感を得ていたそのときだけの記憶を濃縮して想像する。できる限り俺も性欲を高め、稲荷火に感覚を共鳴させる。

 

 

「んほっ!! ひゃっ!! な、なんじゃこれは……!! おぬし、子供じゃ――――んひゃん!!」

「えっ!? えぇっ!? 稲荷火様、急に顔真っ赤になっちゃった!? まさか本当に成功したの!?」

「こ、これが人間の性行為の感覚なのか……!! うぐっ! んがががかぁ!! あ゛あ゛ぁぁぁっ!!」

「神様がしてはいけない顔になってますよ!? 大丈夫ですか稲荷火様!」

「大丈夫なわけなかろう! 今にも身体から汁という汁が噴き出しそうじゃ!! んぎゃぅ!! ひゅぅ、ひゅぅ……!!」

「ちょいちょい! 放送禁止になっちゃってるから! タンマタンマ!! 尻尾から手を放して零くん!!」

 

 

 もはや顔面がイキ崩れている稲荷火は、俺が尻尾から手を離したのと同時にその場にへたり込んでしまった。口からは涎を垂らして脱力しているため、自らの身体の機能を全く制御できていないことが分かる。まさかここまでイキ死にそうになるとは思ってなかったが、でもこれくらい濃密な記憶を共有した方が満足感は与えられるだろう。

 

 

「どうだ? ボテ腹ハーレムなんて同人界隈のネタなんかより、さっきの体感の方がよっぽどリアルだったろ?」

「ふーふー……」

「ありゃりゃ、まだ息整ってないよ。目も虚ろだしホントに大丈夫これ……?」

「でも効果はてきめんみたいですねえ。自分の信仰している神様のこんな痴態を拝むのは少し気が引けますが……」

「そうじゃそうじゃ! 神である我になんてことを……。でも合格じゃ。一生分の快楽を身に染みて味わった気がするぞ……。こやつの長年の刺激を一瞬で味わったせいで今にも壊れそうだったがの……」

「ということは、あたしたち帰れるってコト!?」

「そうみたいですよ。外を見てください」

「あっ! 見えない壁に亀裂が入ってる! これってまさか稲荷火サマが超特大の刺激を受けた影響?」

 

 

 窓から外を見てみると、見えない壁に徐々に亀裂が入っているのが確認できた。瑠璃乃の言った通り、恐らく稲荷火の力に連動していた壁がコイツの感覚と同期していたため同じダメージを受けたのだろう。間もなく壊れるだろうからこれでようやく帰宅できるわけだ。ったく、面倒かけやがって。

 

 

「おぬしらを帰すのは我が満足したってのもあるが、この男を蓮ノ空に返還する必要があるからの。ここに留めておくわけにはいかないのじゃ」

「えっ、もしかして零、神様に認められた?」

「どうだろうな」

「おぬしは何も言わなくても良い。我から言いふらしたりはしない故、安心せい」

 

 

 この強硬手段は2つの懸念点があり、その1つがこれだ。俺の記憶を覗かせるってことは当然スクールアイドル病のことも稲荷火にバレる。そして俺の正体も。俺を小さくしている薬は誰かに正体バレたら身体が即溶け落ちる厄介な副作用があるのだが、それは人間に対してだけ適用される。だから神であるコイツにバレても問題ないと思っていたけど、どうやらその通りだったみたいだ。愛莉の前例があるとは言えども怖くてヒヤヒヤだったけどな。

 

 

「それにしてもおぬし、これだけ魅力的な女がいながらよく誘惑に靡かなかったの」

「大切だから傷つけたくないんだよ。それにコイツら、ここから帰るため、村を救う使命のため俺と繋がろうとしていた。それも相当な覚悟だと思うけど、そんな仕方ないって気持ちで1つになんてなりたくねぇんだ。お互いの本当に好きだって気持ちが交わったときでないと、な」

「零クン……。だから全力で拒否してたんだね」

「やはり我の目に狂いはなかった。いい雄を手に入れたものよな、お前たち」

 

 

 運命とか使命とかそんなやらされてる感で性行為とか俺は絶対に許さない。お互いが後悔しない関係になるそのときになるまで、俺に身体を蹂躙されることに一切の抵抗がない状態になるまでは安易に手を出さないって誓ってるんだ。

 

 

「あーあ、でも心残りがあるなー。なあなあとは言えもう少しで零と一緒になれたのにー」

「こういう機会でもないと零君にお近づきなんてできませんからねえ」

「さっきイイ感じの話をした矢先にそれかよ。こえぇよお前ら。普段からそんな目で俺を見てたのかよ……」

「零クン人気者だからね! いつか他の部に取られちゃわないかっていつもヒヤヒヤしてるよ!」

「ほぅ。だったら蓮ノ空の他の連中をつれてこれば、それこそボテ腹ハーレムを拡大できるのう!!」

「ダメですよ! さっきので満足してください!」

「仕方ないのぅ。まあボテ腹までとは行かぬが、典型的なハーレムと極上の刺激を貰ったが故、今日はこれくらいで許してあげるかの」

「それでも上から目線は変わらないなぁ稲荷火サマは……って、今日?」

 

 

 なんとか神の煩悩を浄化したことで帰宅を許された俺たち。自分の記憶が鮮明に伝わるかは賭けではあったものの、結果的に大成功だったのでこれで良かったのだろう。これで上手くいかなかったら逆上されて本当にコイツらを孕ませることになりそうだったから安心したよ。

 

 そして見えない壁が全て消えたので下山することに。

 小屋を出た花帆たちは意気揚々とその足を軽やかに弾ませる。

 

 そのとき、同じく列の後ろを歩く椎菜が小声で呟いた。

 

 

「神にあそこまで刺激を与えるなんて、あなたはその年齢でどれだけの女性と関係を持っているのですか? 普通ではあり得ません。そしてあの神が口を紡いだこと、あなたにはどんな秘密が……」

「…………」

「どうであれ、あなたの事情なんて私には関係のないことです。あなたがいることで蓮ノ空全体が活性化するので、その電源としての役割さえ果たしてくれればあなたが何者かなど些細な事です」

 

 

 いやこえぇよ。さっきからずっと喋ってなかったからもしやと思ったが、やっぱり疑われちまったか。他の奴らは稲荷火の痴態を見た衝撃とここから出られる喜びで気にもしてなかったようだけど、鋭いコイツは俺の正体を疑うかも思っていた。これが懸念の2つ目だ。

 

 ただ一応スルーしてくれたってことでいいんだよな……?

 幽霊よりも神よりもコイツの方がよっぽど怖いよ、俺にとってはな。

 




 稲荷火様事件、これにて解決です!
 流石に本当に本番行為を描くわけにはいかないので上手く抜け道を使って逃げちゃいましたが、それでも久しぶりに頭の悪いネタを描けて楽しかったです!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。