誰の目から見ても、蓮ノ大三角の実力は圧倒的だった。
花帆たち下級生たちから大尊敬されるだけのことはあり、三人全員がトップクラスの歌唱力、ダンススキル、パフォーマンス、そしてカリスマ性を所持している。普段は各ユニットでの活動が多いため、コイツらが揃ってステージに上がるのは全体曲でのライブくらいなのだが、いざこうして三人だけで肩を並べるとその『強さ』がより際立つ。三人のみで練習なんて普段はしていないと思うけど、それでも息がピッタリなあたり阿吽の呼吸の調和、強固な絆を感じられる。高校生活の三年間で培ったスクールアイドルの経験、そして仲間との結束力が存分に活かされているようだ。
これほどまでに華やかで、そして力強いライブを披露されたら、例えアンダーグラウンドの観客であろうとも流石に魅了されてしまう。対戦相手を燃やし尽くして蹂躙するような熱狂的なライブに慣れてる観客であろうとも、観る者を虜にする魅力を放つ三人には目を奪われるしかない。コイツらのライブの瞬間だけは、賭博により一喜一憂が乱舞するこの会場にも自然と一体感が生まれているようだった。
ちなみに衣装やライブ音源は秋葉から送られてきた。あらゆる物質を物理的に転送できる謎のスマホの力により、ライブに必要な物資を余すことなくこちらに送り込んでくれた。相変わらずアイツの発明品は原理が不明な物ばかりで、正直こんな裏クラブや賭博ライブなんかよりもよっぽど闇が深い。知らない方がいいこともあるの典型だな。
現在披露しているライブでも十分に会場の注目を集められているが、
秋葉の招待状の力のおかげで運営に無理矢理にでもライブの予定を組み込ませられたのだが、流石にタダで最初から最高ランクで戦わせてはくれず、それでも譲歩はされて中の上くらいのランクからのスタートとなった。
たださっきも言った通り、コイツらの実力は圧倒的だ。だから対決慣れしている裏クラブのスクールアイドルが相手だろうと、コイツらの無双は止まらない。みるみるうちにランクが上がっていき、昇格するたびにファンもどんどん増えていく。最初は賭けライブに相応しくない連中がステージに上がるなと心無い怒号も飛び交ったものの、今ではコイツらによって会場の熱気をすっかり支配されていた。
そして、あっという間に三人は最高ランクへと到達した。
「な~んだ。違法なライブ対決だからちょっとは警戒してたけど、案外余裕だったじゃん。いや、これも私たちの実力ってヤツ?」
「自慢していいと思うよ。相手がいくら戦いのためのライブをし慣れているからといって、経験やスキル、なにより周りを魅了する力はお前らの方が上だ。会場のボルテージがポイントとなる勝負だから、むしろお前らの方が有利だろうな」
「でもやっぱり相手を蹴落とすライブなんて、ボクは好きになれないな。こんなライブは今回だけにしたいよ」
「そうね。今は澄奈に思いを届けるために同じ舞台に立つ必要があるからやっていることで、本当はスクールアイドル活動が過酷なサバイバルだなんて認めたくないもの」
「安全圏からなんのリスクもなしに相手の心に語りかけようだなんて、そんなの到底聞き入れてくれるわけないからな。だからお前らが今やってることは賭けライブなんかじゃない。対話だ。気にすることはないよ」
コイツらは片城澄奈と向かい合うためにと言いつつも、やはり賭けライブに加担しているのではと疑問を抱いていた。だけどこれは誰かを救うための戦いであり、決して誰かを貶めるための戦いではない。別に俺たちはこの裏クラブを壊滅させることが目的ではないので、ここでライブをすることに躊躇していても仕方がないだろう。コイツらもそうやってすぐに割り切れたから、やっぱり精神面の強さは目を見張るものがあるな。
「この会場のステージに立ってみて、ボクはあの子が見ている世界を少し知れた気がする。ずっと火が点かなかった自分の心の薪を、この会場のお客さんなら着火してくれるんだって。ステージから見えた熱狂は、表舞台では決して感じられないほどの暴力的な熱量だった。相手を焼却せんとするほどの炎こそ、あの子が必要としていたものなんだね」
「認めるわけじゃないけど、スクールアイドルにはこういうライブもあるんだなって思ったよ。確かにこの気持ちを知らない状態で、澄奈と話し合うことなんて到底無理な話だったよね」
「えぇ。ただこれまでは澄奈の気持ちを知るためのライブだったけれど、次は
ここから先は俺が出しゃばる必要もないみたいだ。最初は自分たちの築き上げた人生観を押し付けちゃうミスをしたけど、それを速攻で修正して心の構え方を変えている。ここまでライブで無双できたのも、気持ちの焦りが解消できたからだろう。こうしてみると、花帆たち下級生と比べると格段に大人に思えてくるなコイツら。まあ実際にそうなんだけども。
なんやかやあり、次が裏クラブの最高ランク同士のライブ対決。敗けた方が一発で降格し、待遇が一気に落ちてしまうまさに裏社会では生と死を分かつライブとなる。コイツらからすればここでの処遇なんてどうでもいいことだが、敗北すれば片城澄奈に気持ちを伝える機会は消滅、つまり俺たちのミッションは失敗となる。まさにリトライできない一発勝負で、これぞ裏社会って感じだ。
「手ほどきがあったとはいえ、まさかここへ来た当日中に最高ランクまで上がってくるとは思わなかったよ」
「澄奈……」
廊下の休憩スペースで話していると、通りかかった片城澄奈に話しかけられる。秋葉の招待状により真ん中のランクからスタートという特別支援を受けながらも、それでも一瞬で最高位に昇り詰めたことにコイツも驚きを隠せないようだ。
「そこまでして私をここから連れ出したいのか。もう放っておいてくれと言ったはずなのに……。それに君たちが実力を示せば示すほど、私はどんどん惨めになっていくんだ。表舞台では輝けないから裏クラブに入ったのに、そこでも表舞台の舞姫たちに主役を奪われるなんてね……。やっぱり君たちは人の気持ちをとことん分かっていないようだ。君たちが私の前から姿を消してくれること。それこそ私の心が落ち着く、唯一の方法だということに……」
とんでもないマイナス思考だな。でも今のコイツの心情からしたらそう考えても仕方ないか。表舞台では成功できず、裏クラブで頑張ってトップに昇って承認欲求を満たすことができたのに、挫折の元凶の人物であるコイツらが目の前に現れ、しかもたった一日で自分と同じポジションにまで辿り着いたんだから。片城からしたら死体蹴りされている感覚なのだろう。
「帰らないよ、ボクたちは。今度は君の気持ちを心で受け止めた上で、それでもなお知ってほしいことがあるんだ。それを伝えるまでは絶対に帰らないし、ライブも負けられない」
「綴理がここまで闘争心を剥き出しにするなんて相当だよ。でも私らも本気だから。あんたを助けたいとか、そんなエゴじゃない。友達に伝えいたことがある、ただそれだけ」
「随分と押しつけがましいんだね」
「
梢、綴理、慈の目線が同時に俺に集まる。そして遅れて片城もこちらに目を向けた。片城は『こんな子供が??』と言わんばかりの表情で、コイツらが最高ランクに昇り詰めたときよりも驚いているようだ。
「とにかくだ。次のライブ対決で私が勝ったら、今度こそここから立ち去ると約束してくれ。ここはアンダーグラウンドの裏クラブ、敗者はそれなりのリスクを伴ってもらわないとね」
「いいよ。私らも覚悟を持って臨んでるわけだしね」
「そうか。もし仮に君たちが勝利することがあれば、そのときはまた話を聞いてあげる。それで私の心が揺らぐとは思えないけど」
「ボクたちの話を聞いてもらう必要はないよ」
「え?」
「ボクたちの言葉はライブで伝えるよ。お互いにスクールアイドルだから、心に響かせる手段はライブこそが一番いいって思ったんだ」
「現実的じゃないね。そんなロマンティックな方法では何も解決なんてしない……」
「きっとできるわ。だって
片城の中では自分はここに居座るつもりであると結論が出ている。だからこそ言葉だけでは説得なんてできない。だったら別の方法を取る必要があるけど、それこそがライブだ。
それにコイツ、さっき少しだけ隙を見せた。『何も解決しない』と言っていたが、少なからず現状の自分が褒められた存在ではないことを理解しているのだろう。できるならどうにかしたい。でも自分の力では裏クラブによって満たされる承認欲求には抗えない。もしかしたら本人は気付いていないだけで、心の奥底では現状を打破したいと思っているのかもしれない。
「泣いても笑っても次のライブで決まる。私は自分の居場所を守ってみせるよ」
「私たちも伝えてみせるよ、その沈んだ心にね」
そしてお互い物理的には別れたが、人生の道はようやく交差したと言ってもいい。表舞台の華が勝つのか、それとも裏舞台の影が勝つのか。
~※~
観客の声を盗み聞きするに、今回のライブの熱気はかつてないものらしい。いきなり現れたスクールアイドルが一気に最高ランクまで昇り詰めたのだから、そりゃ興味が惹かれるのは当然のことだ。
そんな酔ってしまいそうな狂乱の中、遂にアイツらにとっての最終戦が幕を開けた。先行はディフェンディングチャンピオンの片城澄奈、後攻は梢たち。
これまでは無双していたアイツらのライブだが、流石に最高ランクとなれば相手も相手。最初に観た片城のライブが圧巻だったように、今回も観客を巻き込む求心力は凄まじい。相変わらず相手を飲み込まんとする、自分が勝つため、そして相手を打ち負かすための迫力のライブは梢たちとは違う形で場内の注目を引っさらう。観客も片城のライブを観慣れているため、アイツによって生み出された心の内に秘めていた発狂するくらいの熱量が、今まさにアイツのライブによって呼び覚まされた。場内のボルテージは本日の最高潮に達する。
観客の誰しもが『やっぱり片城澄奈だよな』と確信を得ている。
しかし、大三角のライブはそれでもなお強烈な印象を与えた。相手のライブが観客をも飲み込んで唯一の支配者となる勝利のためのライブであれば、コイツらのライブは観客を巻き込んで一体感を得る。たった数分間の曲を披露する中で、同じ時間や夢、あらゆる希望が光に照らされる。それは観る者を魅了するだけではなく、自分たちも同じ舞台に立っているのだと実感させられる。賭博ライブなんて酔狂なことを愉しんでいる奴であろうと、表舞台の女神たちによる聖なる輝きは邪な心を持つ者でさえ圧倒してしまう。片城のライブを否定するのではなく、肯定した上で自分たちの世界に取り入れる大三角。勝つためなのはもちろんだが、それ以上に『共有』を重視しているアイツらのライブ。
対戦相手や観客を含め、会場全てを包み込む光。
そんな中、舞台袖にいた俺の隣に片城澄奈がやって来た。
「こんなの、最初から自分たちの勝ちですよ言ってるようなものだね。勝負をする意味なんてないじゃないか」
「勝負に意味はないな。アイツらはただ、お前に伝えたかっただけだよ。三年間スクールアイドルをやり続けてきた答えを。お前の言った通りスクールアイドルの定義なんて様々だけど、あれがアイツらの答えなんだよ」
「夢を一緒に観る……か。承認欲求と勝ち負けに拘り出してから、そんなこと一切考えたことがなかったよ。でも三人のライブを観ていると、どこか懐かしい感じがする」
「多分だけど、アイツらはお前に自分たちと一緒にいた時間を思い出してほしいんじゃないかな。アイツらから聞いたけどお前、結構苦労しながらも楽しそうにしてたらしいじゃねぇか。あの頃のアイツらってどこか尖ってて、大賀美もそうだけどお前も困ってたって話だ」
「そうなんだよ。梢は『ラブライブ!』に向けて練習メニューをハードにするし、綴理はそもそも部室に来ないし、慈は子役時代があったからってスクールアイドルを舐めてたし、それはもう散々で――――あっ!」
片城は困ったような口ぶりだが、どこか懐かしさを覚えたのか小さな笑みを浮かべていた。自分もそれに気付いたのか、目を見開き口を手のひらで覆って意外そうな表情を見せる。
「やっぱりな。苦労しながらも楽しそうにしてたってアイツらの思い出話は、どうやら本当だったみたいだな」
「…………うん、本当だよ。あのときはまだ実力も全然だったけど、みんなで共有するスクールアイドルの時間はとても楽しかった。だから夢中になっていたんだ。スクールアイドル活動に、ライブをすることに。沙知先輩に教えられたスクールアイドルとはなんたるかを、あのときは気付かないながらも既に分かっていたのかもしれないね。今は心の空洞を埋めるため、弱い自分を慰めるために強い自分を演じている。観客の声援は承認欲求を満たすため。全ては一人で、ただ燃え尽きるのを待つだけの存在になり果てている。まさか私の追い求めていたことが、高校生活の一番最初に得ていたことだなんて思わなかったな」
「アイツらも同じことを思ってるよ。不思議だよな。三年間で成長して、その末に出した結論が一年目の春に自分が抱いていた気持ちそのものだって。でも誰もが忘れちまうものなんだよ。アイツらだってここに来て最初にお前と話したときもそうだった。だから今のライブで伝えていることって、アイツらもさっき気付いたことなんだよ。三年生の末期になって、凝り固まった思考になってたのはお前もアイツらも同じだな」
成長するってことは自我を強く持つということ。つまり、思考回路が固執してしまう可能性も高いってわけだ。それに気付かないと梢たちにみたいにスクールアイドルの意味を自分の結論に置き換えてしまったり、コイツみたいに『こうするしかない』と脅迫観念に駆られて自身を追い詰めてしまう。固執の方向は違えど似た者同士だな。
「梢たちのライブを観て、あの頃の好奇心を思い出した気がするよ。承認欲求に苛まれず、ただ純粋にスクールアイドルを楽しんでいたあの頃を。ここまで人と惹きつけ、夢を共有させることができるんだね」
「それは形は違えどお前もそうだろ。賭けライブはダメなことだけど、観客を沸かせていたのは間違いなくお前の実力なんだから」
「うん、そうだね。だからなのかな。心は落ち着いたけど、多分私は承認欲求を捨てられない。誰かと比較して落ち込んでしまう癖も治らないだろう。もしこのクラブから脱却できたとして、こんな弱い私に未来はあるのか。もう高校も卒業だから、スクールアイドルも卒業しなきゃいけないからね……」
承認欲求を捨てられないなんて誰でもそうだ。俺だって女の子の笑顔が見たいって適当な夢を掲げてるけど、それだって相手の女の子がいてこそだしな。
「スクールアイドルにはなれないかもしれないけど、それを活かす道はあると思うぞ。それにこんなアングラでスクールアイドルを経験した奴はそういない。絶望を味わったからこそ、今度は誰かが底に堕ちないように教育する立場にでもなればいい。ほら、スクールアイドルってなりたい人は多いけど指導者不足だろ。だからちょうどいいんじゃねぇか」
「でも私の心は弱い……」
「弱くていいんだよ。アイツらだってそうだ。大切な先輩や仲間と喧嘩して別れて、後輩が入ってきてからも笑って泣いて悩んで喜んで、表舞台の人間だけどそれなりの修羅場を乗り越えてきた。でもさっきも言ったけどアイツらだって自分の考えに固執してたし、結局強い奴なんてそういないんだよ。弱いまま強くなればいい。アイツらはそれを受け入れて羽ばたいていくんだと思うよ」
アイツらにとっても今回は高校生活で最期の試練だった。まさかそれがスクールアイドル活動の初心を思い出すこととは思わなかっただろうが、成長すれば当初の純粋な気持ちなんて忘れちまうもんだ。俺だって最初は好き勝手に恋愛して、今はあれこれ考えを巡らせるようになったけど、気楽だったのは圧倒的に前者だしな。今あのときの猪突猛進さがあれば、女の子に変にやきもきさせることもないんだろうな。ま、それに関しては今更変えるつもりはないけどさ。
「弱くてもそれを受け入れて先へ進む……か。もしそれができるのだとしたら、私もようやく梢たちと同じ境地に立てるということだ。自分を反面教師にして、今度は誰かが挫折しないように導く立場になる。それもいいかもしれないね。これが梢たちのライブが照らす、夢の共有か」
裏クラブで勝ち続けていたからこそ隠されていた視点が、敗北した今見えるようになる。アイツらのライブはしっかりとコイツの心に響いたらしい。実際に有言実行するなんて他のスクールアイドルからすればそう簡単にできることじゃない。凄い奴らだよアイツらは。
片城澄奈から放たれていたダウナー気味な雰囲気が消え、穏やかな表情を浮かべている。どうやら何か決心がついたようだ。
会場が沸き立つ中、アンコールの歓声が響き渡る。片城澄奈はステージの真ん前でアイツらのライブを観るため、急いで舞台袖から駆けていった。
~※~
外は既に夜になっていた。
裏クラブに突然乱入した挙句イベントに乗り込んだから何か罰を受けるとか、若干身構えてはいたけど、案外素直に帰らせてくれた。秋葉の紹介状の力なのか、梢たちのライブが盛り上がったので結果オーライだったのか。なんにせよ変に話が拗れることがなくてよかったよ。
そんなこんなで帰路につく俺たち。片城澄奈も一緒だ。
「結局しばらくは残ることにしたんだ、あの裏クラブに。あんな胡散臭いところ、とっとと縁を切ればいいのに」
「確かに賭けライブはよくないことだ。でも私の承認欲求を満たしてくれた大切な場所でもある。それに賭け事関係なく純粋なファンもいるからね、最後にお別れライブくらいはしてあげたいと思うんだ」
「あの場所はずっと残り続けるのかしら? 違法な場所を自分たちのライブで盛り上げてしまった気もするから、少し癪なのよね……」
「光があるところに闇もあるものさ。放っておけばいいんじゃねぇの。俺たちの邪魔をするようであればそのときに壊滅させる、そのくらいに思っておけばいいよ」
「あなたも暴力的ね……。その程度で片付けていいものなのかしら……」
片城はしばらくあそこに残ることになった。アングラな場所だけどお世話になったことに間違いはないし、自分の心の安寧になっていた場所だからだそうだ。でも近いうちに裏クラブからは抜けるとのこと。今後何をしていくのかはまだ決めかねているけど、未来を見続ける強さがあれば道には困らないだろう。
「今日はありがとう、梢、綴理、慈。君たちのおかげで未来を見据えることができたよ。それに君にも感謝しないとね」
「えっ、れい、ボクたちがいない間にこっそりなにしてたの……?」
「いや別に。普通に喋ってただけだけど……」
「ふ~ん。『俺は今回出しゃばらない』雰囲気全開だったのに、やっぱり最後はお前がいいところを持っていくのかーっ!」
「落ち着け! コイツから話しかけてきただけで、俺は会話に付き合ってただけだ!」
なんで俺が責められてんだよ。いや今回は本当に俺はそこに居ただけだから。今回の事件解決の貢献者はコイツらで、俺はただのサポート役だから。まさかまた女をオトしたとか疑ってんじゃねぇだろうな……?
「でも普通の子供とは思えなかった。君は一体……?」
「ん? 神崎零。ただの中学生だよ」
「「「ただの……?」」」
「なぜそこで疑問符……?」
三人から疑惑の目を向けられる。
いやここで天才ですって自慢する方が痛い奴だろ。ただでさえコイツらに正体がバレそうなときもあるのに、こっちから地雷をバラまく必要もない。秋葉の忠告通り、もっと子供らしく振舞えたらこんな気苦労はないんだろうな。
「君みたいな子がパートナーだったら私も堕落しなかったし、これからの未来も明るくなるんだろうね。どうだろう? わたしをサポートするっていうのは?」
「おっと、それは許さないよ! 零は私たちのモノだから!」
「そうね。もうこの子の未来は
「れいはボクたちのお世話で忙しいからね。他の誰かのところへ行く暇はないよ」
「お前らそんな独占欲強かったけ?? てかなんで三人で抱き着く!?」
「フフッ、愛の力は偉大だな。君たちが輝かしい未来を掴めた理由、なんとなく分かった気がするよ」
なんか勘違いされてねぇか?? 梢たちは俺を取られないようにガードしつつ何故か抱き寄せて渡さないようにしてるし、コイツらが俺に向ける想いは思ったより底が深かったらしい。ちょっぴりヤンデレ風なのはなんなんだよ。連続でライブをし過ぎて疲れてるだろ絶対。
そんなわけで和気藹々としながら今回の事件も無事に幕が下りた。目的は片城がアングラ施設に入り浸る理由の追及だったが、結果的にはコイツを表舞台に復帰させられたこと、そして梢たち自身が最後の最期で初心を思い出して最終進化を遂げられたことがなによりの収穫だっただろう。
もうすぐコイツらが蓮ノ空を去る日。それまでに俺も、コイツらとの関係性をまた一つ上に昇華させる必要があるのかもしれないな。
大三角メインの事件編、解決編でした。
大三角はこの章でメインキャラとして最後になるので、私の方でも何かしら最後の成長と零への想いを描きたいなと思って今回のネタを思いついた次第です。
最後とは言いつつも、三人の個人回は後々やる予定です。
次回は吟子の個人回の予定です。スクールアイドル病もようやく解決の兆しが……!