ラブライブ!~μ'sとの新たなる日常 EX~   作:薮椿

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儚き夢幻の希望

「美里ちゃん、とりあえず大丈夫そうでよかったね」

「あぁ。まさかトイレで倒れてたなんて……。店内にいた頃は体調が悪そうな様子を見せなかったから、全然気づかなかったよ」

 

 

 俺たちは現在、病院にいる。

 美里がお手洗いに行ったきり中々帰ってこなかったら、ことりに女子トイレを確認させに行ったらまさかの事態が発覚。なんと美里が過呼吸になってその場で蹲っていた。間もなくして意識も遠くなってしまったので、急いで救急車を呼んで俺たちも同行。そして今に至るというわけだ。

 

 検査の結果、命に別状はなくてまずは一安心。だが体調が安定するまでは短い間だが入院する必要があるとのことで、彼女のが嘆いていた病院生活がまた幕を開けることになってしまった。

 本人からは自分が病弱体質で、いつ入院になってもおかしくはないと聞いていた。その時は不憫だなと、言い方は悪いけど他人事のように憐れむ気持ちがあったんだ。でも実際にこうして本人の苦悩を目の前にして、アイツが常に後ろ向きになってしまう気持ちを少し理解できた気がする。

 

 それにしても、本当に急に倒れるんだな。普通に生活する中で予兆もなく忍び寄る病。いつ自分が病に伏せるのか分からないなんて、そりゃ怖くもなるよなって話だ。実際にアイツの苦労を目にした俺たちだが、それでも真の辛さは本人にしか分からないだろう。

 

 

「どうする零くん? 病室へ行く? もう目を覚ましているらしいけど……」

「向こうは俺たちを巻き込んじまったって罪悪感を抱いてそうだから、このまま帰った方がアイツも安心できるのかもな。でもスクールアイドルの応援イベントを一緒にやるって決めたんだ。仲間として、ここですれ違ったままにはしたくない。なんて声をかけたらいいのかは分からないけど……」

「そうだね。美里ちゃん、多分すっごく落ち込んでいると思う。せっかくイベントに向けてやる気を出していたのに、その矢先に倒れちゃったから……。でも意外、零くんがここで迷うなんて」

「俺はそんな強くねぇよ。女付き合いが長いだの経験人数が多いだの色々言われてるけど、結局はお前らだけだ。しかも美里の場合は事情が事情だし、どんな境遇の奴だろうと励ませるほどの力量は俺にない。ただ、ここで立ち止まっても何かが好転するわけじゃないからな。とにかく行ってみるか」

「うん、そうだね。黙ってすれ違いになっちゃう方が一番悲しいもん」

 

 

 行ってどうにかなるのか、先を見据えることはできない。ただ俺たちは大学に入って初めて紡いだ絆を失いたくないだけだ。その考えもこっちの勝手な傲慢でなけりゃいいんだけど……。そんな心配をせず前へ突き進めるくらい、俺ももっと強くならねぇとな。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「アイツの病室はここか。ネームプレートはまだ出てないみたいだけど」

「さっき受付の人に部屋番号を聞いたから間違いないよ。美里ちゃ~ん! 私、ことりだよ! 入っていい?」

 

 

 ことりがあくまでいつもの調子の声色で入室許可を得ようとする。

 しかし、返答は一切ない。あんなことがあった矢先だ。顔を合わせづらくて無視をしているのか。

 だがこのまま帰るわけにもいかないので、ドアを少しだけで開けて中を覗いてみることにした。

 

 そこには――――

 

 

「いない!?」

「えっ、ホント!?」

 

 

 部屋はもぬけの殻だった。物音は少し開いた窓から風に靡くカーテンのみ。

 雑な捲られ方をしている掛布団を見るにここにいたのは間違いない。ただ、イヤな汗が流れそうなくらい重大な危機感を抱く。

 

 

「お手洗いに行っちゃったのかな……?」

「あんなことがあったのに一人では無理だ。部屋から出るにはナースの付き添いが必要なはず。でないとまた人知れずぶっ倒れるかもしれないからな」

「でもでも! 私たちがここに来るまで誰ともすれ違わなかったよね?」

「あぁ。となると、アイツが勝手に抜け出したんだ。病室に入ってすぐな」

「えぇっ!? じゃあ探さないと! またどこかで倒れちゃったら大変だもん!」

 

 

 一体なにを考えているんだアイツは……。

 でも俺の中で想定される最悪のシナリオが浮かび上がる。イヤな汗の原因はそれだ。そこまで心が弱っていないと信じたいが、友達とお出かけしている最中での病院送り。持病を隠していたわけではないものの、目の前で自分の不幸を晒す結果となってしまい、後ろ向きの性格のアイツならとことん気にするだろう。

 

 最悪の結果になってしまう前に早くアイツを見つけ出さないと。あの身体だ、遠くには行けないはずだ。

 

 

「ことり、まず受付に美里がいなくなったって知らせてくれ。俺はその間にこのあたりを探してみるよ。一刻の猶予もない可能性があるからな、時間を無駄にしたくない」

「うん、わかった! 美里ちゃんのこと、お願いね!」

 

 

 俺たちは部屋を飛び出して二手に分かれた

 

 アイツが病室に入ってからそこまで時間は経っていないはず。それに誰にも見つからずに病院を出るのは不可能だ。つまりまだ近くにいる可能性が高い。

 ただ、女子トイレにいるとしたら俺では探し出せない。そこはことりに任せるとして、とりあえず手当たり次第に隅から隅まで探すしかないか。携帯を見ると既にことりがチャットグループ内で美里にメッセージを送っている。が、当然ながら無反応。変に早まっていなければいいんだけど……。

 

 ただ、気になることがある。アイツのこともそうだけど俺自身のことだ。

 もし美里を見つけたとして、なんて声をかける……? 病室を抜け出したのにはそれなりの理由があるはず。それも知らずただ連れ戻すだけでは抵抗されるだけだ。向こうはかなりの心傷状態に違いない。だからこそ、薫子のときと同じく手を引いてやるだけではアイツの心を癒すことはできないだろう。

 

 迷っているが、それもこれもまずアイツを探し出さなければ始まらない。どう向き合えばいいのかはまだ分からないけど、とにもかくにも無事を確認してからだ。

 

 院内を駆け巡る中、廊下の曲がり角で女の子たちと衝突しそうになってしまった。

 謝ると同時に二人の女の子の顔を見る。

 

 すると――――

 

 

「凛、花陽……?」

「あれ、零くん!? こんなところで奇遇だね!」

「零君も誰かのお見舞い……とか?」

 

 

 雪穂と亜里沙に引き続き、これまた偶然μ'sメンバーの凛と花陽に遭遇した。しかも病院の中という、特別な用事がなければ立ち入らない場所だからこそ驚きが増す。先日の絵里と希もそうだったし、こうして俺たちがばったり出くわすのも必然的に引き合う力が働いているのか。なにもせずとも顔を合わせる機会が訪れる。今の美里との間に欲しい能力だな……。

 

 星空凛と小泉花陽。幼馴染同士かつμ'sのメンバーであり、現在高校三年生。穂乃果たちから受け継がれたμ'sをしっかりと引き継ぎ、高校生活最後の一年間もμ'sと共に駆け抜けようと奮闘している。一年生の頃は頼りない部分も多かった二人だが、今では立派な大先輩として後輩を率いる。春のライブもいいスタートダッシュを切れたらしいので、最後の集大成に何を魅せてくれるのか期待しか生まれない。

 

 ただ病院で出くわしたことでケガでもしたのかと一瞬心配になったが、花陽の言葉からどうやらそうではないらしくて安心した。

 

 

「『零君も』ってことは、お前らもお見舞いか。俺もだよ。友達の見舞いに来てる。でも当の本人が病室からいなくなっちまって……」

「えぇっ!? それって大変なことだよね!?」

「あぁ。ことりが受付に行ってるから、俺はこのあたりを探そうと思って」

「ちなみに、その人はどんな人なの? さっき何人かとすれ違ったから、もしかしたら力になれるかも……」

「俺と同年代の女の子で、茶髪でお淑やかそうな子だ。美人系だけどちょっと幸が薄い感じの奴だよ」

「最後のいる!? 凛その人のこと知らないけど、ちょっと小馬鹿にしてない!?」

「いやマジでそんな雰囲気なんだって。説明するにはこれ以上ない表現っつうか……」

 

 

 悪いとは思ってるよ。本人の不幸な境遇を言葉で濁して表現している感じがするので、罪悪感はある。でも今は一刻を争うんだ。誰にでも分かるように特徴を伝えることが先決だろう。

 

 

「あぁ~そういえば、それっぽい人とすれ違ったかも? ね、かよちん!」

「うん。綺麗な人だったけど、険しい表情をしていたからよく覚えてるよ」

「多分ソイツだ。で? どこへ行った?」

「向こうの階段を上がっていったよ。確か屋上へ続く階段だったと思うから、どうしてそんなところに行くのか気になってたんだ。でもまさか零君の友達だっただなんて……」

「その理由はなんとなく分かってる。また落ち着いたら話すよ」

 

 

 最悪のシナリオが現実味を帯びてくる。正直どう引き留めるのか、そもそもできるのかも不安だ。病弱体質の人とこんなに親しくなることはなかったし、そういった人たちの気持ちを理解する機会もなかった。いざその立場に立ってみると、境遇の違いってだけでここまで心を通わせるのが難しいんだな。μ'sやA-RISEの奴らと仲を深めるのって相対的に楽だったんだと実感するよ。

 

 

「情報ありがとう、俺も屋上に行ってみるか」

「ちょっと待って!」

「凛……? 悪い、急いでるんだ」

 

 

 屋上へ向かおうと二人をすり抜けた矢先、凛に腕を掴まれた。

 なんの用かと思って振り返ってみると、彼女は微笑んでいた。こんな状況なのに……?

 

 

「零くんもとっても難しい顔してる。事態が事態だからどうしようもないかもしれないけど、零くんはその人に笑ってほしいんだよね?」

「そりゃまぁ、そうだな……」

「じゃあ説得する零くんが笑顔にならないと! 凛が知ってる零くんは、凛が困っているときはいつも笑顔だったよ! その笑顔のおかげで救われている人たちがいる。凛も、かよちんもね!」

「うん、そうだね。私たちは他のみんなと比べて秀でた実力も才能もなかったから、スクールアイドルを始めたての頃も途中も苦労することが多かったんだ。でも零君がいつも隣で優しく寄り添ってくれたから、自分でも立派になったと自負できるくらいに成長できたと思う。だからね、いつもの零君だったら絶対に大丈夫だよ」

「零くんの人に寄り添える優しさと理不尽に自分を貫くその力があれば、その人がどれだけ危ない状況でも絶対に助けられる! 凛はそう信じてるよ!」

「!?」

 

 

 まさかこんなタイミングで激励されるとは思っていなかった。

 でも、おかげで迷いや焦りが引いた気がする。どうしようどうしようって先が見えない状態で悩むよりも、その人の心に触れてその場その場で笑顔を開花させるための手を打つ。美里の境遇を考え過ぎた結果、本来の自分のやり方を忘れてたっけ。相手がどんな立場であろうが、結局は俺は自分の手腕を貫くしかない。俺が秘めるのは相手を笑顔を見たい、その願いだけだ。

 

 

「本当にありがとう。行ってくるよ」

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「やっぱりここに来ていたのか……」

「零くん……」

 

 

 予想通り、美里は屋上にいた。

 フェンスに軽く手をかけ、儚げな表情で下を見降ろしている。弱々しい様子だが、まだ体調が回復しきっていないのだろうか。それとも心に深刻なダメージを受けて精神的に参っているのか。どちらにせよ俺がやることは変わらない。

 

 

「残念ながら飛び降りることなんてできないぞ。そんな危ない造りになってるわけねぇだろ」

「わたしのこと、全て分かっているのね。流石はあなたといったところかしら……」

「いや、分かってないよ。だから聞きに来たんだ。お前の叫びを……」

「そう……。優しいね、零くんは」

「大したことじゃないよ。俺がやりたいから、それだけだ」

 

 

 どうやら誰の話も聞きたくない自暴自棄にはなっていないようだ。でも飛び降りる場所があれば身を投げ出す覚悟はあったのだろう。誰かに迷惑をかけず、人知れずいなくなる。普通に会話しているように見えるが、その心の傷は見た目以上に深いみたいだ。

 

 

「わたしのことはもう気にしないで。イベントは辞退するわ。足手まといになるだけだから……」

「俺たちはそう思ってない、って言ったら?」

「そうよね。あなたたちは優しい。こうしていつ床に臥せるか分からないお荷物のわたしを、あなたたちが支えてくれる。だけど今はその優しさが突き刺さるの。わたしなんかで、あなたたちの夢を追う時間を無駄にしたくないのよ。いつもそう。わたしは誰かに心配され、こうしてお見舞いに来る手間で時間を浪費させてしまう。そんな自分がイヤになる。もう誰にも迷惑をかけたくない……」

 

 

 その息苦しさは想像するに余りある。もはや誰にどう思われているかではなく、自分が相手もたらす負荷に嫌気がさしているらしい。周りが気にしなくてもいいと言っても、そんなことは関係ない。ただただ相手へ迷惑を振りまく自分自身を恨む。コイツが常に自己評価を下げる真の理由はこれだったんだ。

 

 

「みんながわたしの夢を壮大だねって褒めてくれることは嬉しい。でも、わたしは普通の人じゃない。いつまた倒れるのか分からない未来に絶望して、夢なんて叶えられるはずがないじゃない! 穂乃果ちゃんたちの誘いに乗って、今日はあなたとことりちゃんに新しい体験をさせてもらって、もしかして夢を見ていいのかなと思っちゃった。でも、結局はこうなった。わたしは夢を叶える資格がないのよ。昔も今も、未来も、ずっとね……」

 

 

 コイツの本音の叫びをようやく聞くことができた。なんとなく察してはいたものの、本人の口から直接語られると気迫と感情でリアリティが増す。同時に悲壮感も伝わり、動きたいけど動きだせない恐怖を強制的に共有させられてしまう。故に誰も同情のあまりこれ以上コイツに踏み込むことはできなくなり、結果として上辺だけの付き合いになってしまうのだろう。本人が遠い目で嘆いていた、人間関係の希薄さの理由がそれか。

 

 だが、俺は違う。相手がどんな境遇だろうと、どんな悲しみを叫ぼうと、こっちがやることは変わらない。

 

 

「もうわたしのことは放っておいてくれる? 優しいあなただから、分かってくれるわよね……?」

 

 

「いや、隣にいるよ」

 

 

「えっ……?」

 

 

 鳩が豆鉄砲を食ったような顔をする美里。いま一瞬だけだが、自分の嘆きを忘れて俺の言葉だけに集中してくれただろう。

 

 

「そんなことを言われると、なおさら隣にいたくなる。人の心に土足で上がり込むのが趣味なんだ。μ'sの奴らを相手にしているときから、ずっとな」

「随分と悪趣味なのね……。でも、わたしの隣にいてもいいことなんてない。むしろあなたを不幸にするだけよ」

「だったらその不幸以上に幸福なことをたくさん体験すればいいじゃねぇか。病弱体質はいつか治るかもしれない。でも治った時に楽しいことを楽しいと思える経験をしていないと、それこそいざって時に幸せをつかみ損ねてしまう。そのために俺は隣にいるんだ。俺は女の子の笑顔が好きだから、その自己満足のためにもな」

「そんな横暴な……」

 

 

 これが俺のやり方なんだ。どれだけ拒絶されようが、どれだけ敵意を向けられようが、自分のやりたいことを貫いて女の子に寄り添う。凛と花陽のおかげで思い出せた、高校時代を駆け抜けた俺の手腕を。容赦なかったな、あの時は。だって彼女を二桁人数作ったんだぞ? そりゃルールも礼儀も全て破って積極的にならないと、その結果には辿り着けねぇしな。

 

 美里は俺の求心力に飲み込まれようとしている。それでいい。抱く不幸を全て吸い取り、笑顔に変える。相手への同情はしない。自分のやり方で相手を染める。それが俺の問題解決方法だ。

 

 

「横暴でもいいさ。お前がどん底に堕ちそうになったら、俺が何度でも引きずり上げてやる。光が届く地上にな」

「わたしがまた倒れて迷惑をかけたりしても?」

「あぁ」

「卑屈になって周りの空気を悪くしても?」

「あぁ」

「さっきみたいにあなたに八つ当たりしても?」

「あぁ。そんな迷惑、俺にとっては戯れだ。俺がこれまで何度女の子の悲哀を受け止めてきたと思ってんだ」

 

 

 美里の緊張が徐々に解れていく感じがした。さっきまで張り詰めていた空気も和らぐ。

 恐らく俺のやり方に納得してはいないだろう。だが、俺にどんな言葉をぶつけようが受け入れられ、相手の尊大な態度を更に成長させるだけだと実感した。だから自分が根負けするしかない、そう考えているに違いない。

 

 

「はぁ……。あなたって、涼しい顔をしてとんでもないことを言い出すのね。穂乃果ちゃんたちから聞いてはいたけれど、まさかそこまで独断専行だとは思っていなかったわ。嘆くことが空しくなってくるくらいにね」

「それでいい。すぐお前の問題が解決するわけじゃないけど、そのたびに俺がいつでも駆けつけてやる。ヒーローがいればピンチに陥るのも悪くねぇだろ? 俺の勇姿が間近で見られるんだからさ」

「自分のことをどれだけ評価してるの……。でも、そうね、あなたのキラキラした顔が見られるのであれば、多少の不幸は頑張って乗り越えようって思えるかしら」

「だろ? それに、俺はお前の笑顔を見てみたい。マイナス感情が一切ない、心から晴れやかな笑顔をな。お前のことだ、きっと綺麗なんだろうな」

「えっ!? も、もうっ! いきなりそういうことを言うのはやめて! そ、その、男の子から褒められるのは慣れてないから……」

「そういう顔もだよ。俺が見たいのは」

「うっ! あなたって優しくない。むしろイジワルね、ふふっ」

 

 

 それだよそれ。その小さな微笑みは、まさに心の底から自然と湧き出たものだろう。コイツのそんな感情の笑みは、もしかしたら初めて見るレベルかもしれないな。

 

 俺自身のやり方を貫いたことで、無事に美里の笑顔を取り戻すことができた。

 だけど、さっきも言った通りコイツの病気が完治したわけじゃない。むしろこれからだ。隣にいると宣言したからには、女の子の心を常に支えられる強さを持たなくてはならない。鍛えくなちゃな、もっと。己を成長させるためにも。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「も~うっ! 私も美里ちゃんを励ましたかったのに! 全部一人で解決しちゃう癖、零くんの悪いところだよ!」

「それは悪かったけどさ、一刻の猶予がなかったのはお前も分かってただろ……」

「美里ちゃん! 私もずっと隣にいるからね! 絶対に!」

「ふふっ。ありがとう、ことりちゃん」

 

 

 病院の人たちに平謝りしに回った後、病室に戻った俺たち。だがことりは俺だけで美里を説得したことに不満があるようで、頬を膨らませてしまった。まあそういうコミカルな表情をされると、問題が全て解決したんだなってむしろ安心するよ。

 

 

「じゃあ俺たちは帰るか。当初はお前の家に戻る予定だったから、荷物も置きっぱなしだしな」

「本当にありがとう二人共。また少しだけ入院することになるけど、その間もイベントに向けての衣装案、たくさん考えておくわね」

「うん! 楽しみにしてるね!」

 

 

 俺たちは病室を出る。美里の表情は柔らかく、笑顔で見送ってくれた。無理をしている感じは一切しないため、ひとまずは解決と喜んでいいだろう。

 

 

「美里ちゃん、元気になって良かったね」

「そうだな。でも病気とは付き合っていかなきゃならない。だからこれからだ。アイツの心の強さ、そして俺たちの絆の強さが試されるのはな」

「これから……。本当に大丈夫かな、美里ちゃん」

 

 

 心配をすることり。

 その時、俺たちの背後を一人の金髪少女が駆けていった。そして美里の部屋の前で止まると、ノックをしてすぐに部屋へと飛び込んだ。

 

 

『美里おねーちゃん! 大丈夫!』

『いらっしゃい、愛ちゃん。来てくれてありがとう!』

 

 

 そういや、妹みたいな奴がいるって言ってたな。声からして元気溌剌な子だと分かる。なんだ、俺たちだけじゃなくて近くに太陽がいるじゃねぇか。

 

 

「あれだけ明るい子まで隣にいるんだ。大丈夫だよ、きっと」

 




 零の成長の過程を描くのっていつ以来か分からないくらい久しぶりかもしれません。虹ヶ先編以降はすっかり大人になっちゃいましたからねぇ。

 今回の美里編は、実は虹ヶ先のアニメで彼女が出てきた時から薄っすら考えていました。まさか6年越しに描くことになるとは思いませんでしたが、サブキャラ含め『ラブライブ!』シリーズのキャラの層の厚さを実感します(笑)

 そして今回のゲストは凛と花陽でした!
 真姫とは違ってTHE後輩感のある二人なので、今回彼に激励を送るのはμ's編でも中々ない展開で新鮮さを作者ながら感じちゃいました!

 更に最後にちょいとあのゲストキャラ。
 この頃の虹ヶ先キャラはこの時系列的に小中学生くらいですが、零と相対したらどんな反応するんだろう……?_
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