「ふぃ~……。やっと運び終えたぁ~。って、あれ? 零クンたちは?」
「さっきセラスちゃんたちとボートに乗りに行ってたけど……。まだ戻って来てないんだ」
「少し待ちましょうか。花帆さんが買い過ぎたお土産物を整理する必要があるので……」
「帰りがけに買えばいいのに、どうしてこのタイミング……?」
「う゛っ!? つい目移りしちゃって……!! すみません……」
「あはは……。じゃあルリはまた釣りにでも行こうかな」
~※~
季節外れのバカンスのため海にやってきた俺たちスクールアイドルクラブ。
ボートの貸し出しがあったので、後輩組と乗り込んでまったりしようと思っていた矢先に事件が起きた。波が荒れてきたせいでボートの制御が不能になってしまい、浜から離れた岩場の洞窟へと流されてしまった。しかも上陸したはずみで岩に強く衝突したせいか、空気が抜けて使い物にならなくなる始末。つまり、俺たちは変える手段を失うことになったんだ。
しかも不幸はそれだけじゃない。満潮の時間帯が迫っており、俺たちがいる洞窟の入り口が徐々に海水に侵食されている。だからここで立ち止まって助けを待つこともできず、ゆっくり脱出に向けた作戦を考えることもできない。すぐに動かなければどんどん手遅れになってしまうだろう。
それにしても相変わらずというべきか、やっぱりスクールアイドル病とは関係ない事件に巻き込まれるんだな。花帆たちが一年生の頃から目的外の面倒事を何度も何度も処理しているので、慣れたと言えば慣れている。だが実際に危機に直面すると神経が磨り減るし、ピンチを乗り越えるのだって容易ではない。今回も選択を誤れば取り返しのつかないことになるので気を引き締めないとな。面倒だと思う脱力感もあるっちゃあるけど……。
「このままだと入り口も間もなく海水に浸かってしまいそうなので、洞窟を進むしかなさそうですね」
「あぁ。幸い緩やかな登りだ、歩き続ければ波からは逃げられる。ま、それでもいつまで粘れるかは分からないけどな」
「そもそも出口があるかも分からないですし、脱出できるかも分からないですよねぇ……」
「だがここにいるよりかはマシだ。体力が残っている間に少しでも潮から遠ざからねぇと」
「大丈夫です! 脱出できますよ絶対に!」
「小鈴さんはこの状況でもポジティブだね。不幸に苛まれていても仕方がない、か」
吟子も小鈴も姫芽も、不安はありつつも絶望していないのはいいことだ。これまで何度も綱渡りをしてきたわけだしな、覚悟を決めるのも早いのだろう。桂城も三人に煽られて前向きに状況を打破しようとしている。元々肝が据わっていそうな性格ではあるから頼もしい限りだよ。
ただ、気になるのは柳田だ。さっきからずっと黙ったまま。緊急事態に怯えているのか。下手をしたら命を失いかねない状況なんだ、ビビって足が
「セラス……? 大丈夫? 歩ける?」
「吟子先輩……。はい、大丈夫です」
「もし怪我をしているとか、気になってることがあったらいつでも言ってね」
「はい、お気遣いありがとうございます……」
「……?」
明らかに元気がない。こんな状況だからそりゃそうなんだろうけど、こんな場合だからこそいつものおどけた感じで場を和ます要員が必要だと思っている。コイツこそ適任なのだが、やっぱり命の危険と隣り合わせでは本来の実力を発揮できないか。
そして、俺たちは洞窟を進むことにした。
当然足元は補装されていないので歩きにくく、薄暗いため周りの様子も確認しづらい。道幅は狭いけど、一本道で奥に繋がっているので迷子にならないだけマシだろう。
「ひゃっ!?」
「うぇっ!? ど、どうしたの小鈴ちゃん……?」
「水滴が背中に落ちてきて、つい……」
「ビックリしたぁ~。ずっと気を張ってるから心臓が止まりそうだったよ……」
「あはは、ゴメンゴメン……。それにしても、どこまで繋がっているのかな?」
「繋がっているかも分からないね。もしかしたら行き止まり……ってことも」
「泉、こんな時に希望のないこと言わないで」
「すまない。現実主義なものでね」
桂城の言う通りだったとしても、進む以外に選択肢はない。入り口は今頃海水で満たされているだろうし、いまこの瞬間にここに流れ込んできてもおかしくはないからな。希望があるにせよなんにせよ、脱出を信じて歩くしかないんだ。
再び洞窟を進もうとしたその時、柳田が気付く。小さな光が俺たちの側を微かに照らしていることに。
「え、なになに? こんなところに光が……それも一つや二つじゃない!?」
「ホタルだ! そうか、希望を持って良さそうだぞみんな!」
「どういうことですか?」
「この洞窟は満潮時に海水で満たされるはず。だからホタルが住み着いているとは考えづらい。だからどこかに出入口があって、そこから入って来てるんだ」
「確かにこのホタルたち、この奥から来ているみたいなのでその可能性はありそうですねえ」
一筋の希望が見えた。このまま突き進めばいずれ外と繋がる出入口が見つかるはず。
突然の奇跡に、みんなも心なしか元気を取り戻したようだ。元々前向き思考であったとはいえ、不安は払拭できていなかっただろうしな。生命力を維持するにはまず本人が生きたいと願うこと。だから少しでもコイツらに希望を持たせるため、気付いたことは何でも共有しておこう。
「でもホタルが入れるからって、私たちがそこを通れるとは限らないと思うけれど……?」
「あぁ、もしかしたら小さな穴から入ってきているかもしれない。でも、俺たちが通れる穴は絶対にあるはずだ」
「えっ、そうなんですか!?」
「瑠璃乃が池で魚を釣ってただろ? でも何故か海の魚が釣れていた。つまり、満潮の時に海から池に移動してたんだよ。アイツのクーラーボックスを見せてもらったけど、図体がかなりデカい奴もいた。だから出入口はそれなりの大きさがあるはずだ」
「なるほど! 流石は零先輩!」
「安直な持ち上げはやめろ。事実を並べただけだ」
脱出の可能性が見えたのはなによりの安心だ。このまま進んでも行き止まりかもしれない、と不安でみんなの足取りが重くなっていたので、ここで希望があることを確定させられたのは大きいな。
「とりあえず進もう。脱出ルートがあるとはいえ、いつ海水が雪崩れ込んでくるか分からないからな」
「よかったねセラス。どうやら脱出経路が塞がれて詰み、ということにはならないみたいだ」
「そう、だね……」
「どうしたのかな? さっきからずっと元気がないけど」
「そんなことないよ! 出口が見つかりそうでやったーっ! ほらほら、早く行くよ!」
「せらりん、もしかしなくても空元気……?」
こういう時は小鈴と並んで手放しで喜びそうなのに、未だに調子を取り戻せていない柳田。桂城に煽られて無理矢理テンションを上げていたけど、明らかに空元気であることは全員が察していた。恐らく俺たちに心配をかけないように気を張っているんだろうけど、まだ何か懸念があるのだろうか。
脱出できると信じて洞窟を進み続ける。
後方から海水が壁を打ち付けるような音が聞こえてきたので警戒しながらも、それでも出口があると思えば自然と足も動く。こんなところで遭難してお陀仏だなんて勘弁だからな、絶対に抜け出してやる。
「あっ、分かれ道になってる……。時間もないのに、どっちに行けばいいんだろう……?」
「闇雲に進むなよ。ホタルを探すんだ」
途中から一本道ではなくなったが、数少ないヒントをもとに先へ進む。足元が悪いのでお互いに手を取り合いながら歩くなど、脱出のためにできることは最大限やる。波が迫っている状況で、誰か一人でも怪我をして歩けないとなったら大変だ。水着で肌を露出させているからなおさらで、急ぎながらも安全第一で進むのは当然だ。
また少し歩いた後、次の問題に直面する。
「さっきからホタルを全然見かけなくなっちゃいましたね~……。また分かれ道があるのにぃ~!」
「みんなで手分けをして進むのもアリかもしれないけど、この状況で分散するのは危険かもしれないね」
「じゃあホタルさんが飛んでくるまで待つ! のもダメだよね時間がないから……」
これまではホタルが俺たちの道を照らしてくれていたのだが、遂に存在が確認できなくなってしまった。そのせいで正解の分岐が分からず焦るコイツらだったが、かなり歩いたから出口にはそれなりに近づいているはずだ。
だが満潮が迫っているため一つ一つの道を確認している時間はない。だからと言って賭けで選ぶ必要もない。まだ手はある。
「慌てるな。こうすりゃいいんだ」
小石を各分かれ道に投げ入れる。すると洞窟なので当然反響が返ってくるわけだ。注目すべきは、その音にある。
「なるほど、反響の違いを聞き分けるんですね」
「あぁ。反響が大きいほど行き止まりが近く、遠いほど道が奥まで続いているってことだ。だから一番右の道が正解だよ」
「予定外のことが起きても咄嗟に次なる一手を思いつき、最善手を即断即決する。あなたの手腕に感服するよ。中学生とは思えないくらいに……ね」
「そりゃどうも」
桂城の前ではあまり出しゃばらないようにしたいんだよな。前も疑われて付き纏われていたので、静観できる場面ならこちらから口を挟むような真似はしないと決めていた。だけど今は状況が状況なので仕方がない。切羽詰まっているからこそ全員で力を合わせる必要があるので、コイツらの成り行きを見守るだけってのもできないしな。大変な未来が待ち受けているのはほぼ確定。だからこそ持てる力は最大限に振るわないとな。誤魔化しは後でなんとでもなるから……。
その後はずっと一本道だ。
だが洞窟に入ってからそこそこ時間が経ち、歩き続けていることも相まってかみんなが徐々に疲れを見せ始めている。出口があると信じていても脱出の時が来るまではまだ不安は残り続けているので、張り詰めた緊張から精神的にも疲労が溜まっているのだろう。口数も少なくなり、入り口にいた時と同じ暗いテンションが戻りつつあった。
特に、最後尾を歩いている柳田の歩くペースが遅くなっている。俯くことも多いので、転倒しそうになるなど非常に危なっかしい。
近くにいる吟子も彼女の様子のおかしさに気付いたのか、いったん立ち止まって彼女に駆け寄った。
「セラス大丈夫? 疲れちゃった?」
「平気です。行きましょう……」
「いやいや、見た感じ全然大丈夫そうじゃないよ! どこか痛かったりするの?」
「えっ、セラスちゃん怪我しちゃったの!? だったらもっと早く言ってくれれば……」
「違います! 疲れてるのは確かですけど、それだけですから!」
「ホントにぃ? 時間が迫っているのはそうだけど、こんな状況だからこそ喜びも辛さも共有しないとね。なんでも話してくれていいんだよ?」
「あなたの大好きな先輩たちがここまで心配してくれているんだ。素直になったらどうだい?」
なにを躊躇しているのか。
疲労によるペースダウンもなければ怪我によるダメージでもない。その足取りが重い理由、彼女の様子から理由が分かった気がする。
柳田は言い淀んでいたが、桂城に諭されて溜めていたものが今にも口から漏れ出しそうになる。
そして、本人からようやく事情が語られた。
「ゴメンなさい!! 巻き込んだりして!!」
「えっ、えっ!? どういうこと?」
「だってわたしがボートに乗るって言い出さなければ、ジェットスクリューなんて持ち出さなければ、みんなを巻き込まずに済んだのにって……」
「あ、そういうこと……」
「今こうしている間にもいつ海水が流れ込んで来るか……。そんな命の危険にみんなを晒して、どうお詫びをすればいいのか分からなくて……!! でもみんなはわたしを責めることがなくてずっと前向きで、だから空気を壊さないようにずっと言えなくて……!! このまま黙っていてもいいのかなって、いや謝らないとと自問自答するたびに、どんどん自己嫌悪に陥っちゃって……!! つまり……ゴメンなさい!!」
予想通り、自責の念に駆られていたか。怪我をしていたら痛みを感じる場所に頻繁に目をやったり手で押さえたりするはずだが、そんなことは一切しておらず俯くばかりだったので、内面的な問題だとは思っていた。それにしても洞窟に響くこの声の大きさ、相当抑圧されていたようだ。
柳田の嘆きに沈黙が場を支配する。
ただ、そこで責め立てる奴は誰一人としていない。むしろ驚いている、と言った方がいいだろう。同時に吟子たちは柳田に微笑みながらも、どこか呆れたような表情をしていた。
「えっ、なんですかその顔は……?」
「いやだって、
「そうだねぇ。ボートに乗ると決めたのはアタシたち個人だし、ジェットスクリューのスピードを楽しんでいたのもアタシたちみんなだからね。最初からせらりんが悪いだなんて思ってないよ」
「むしろ誰が悪いとか、そんなことすら考えてなかったよ! 今はみんなでここから脱出する! 考えてたことはそれだけかな」
「皆さん……。わたしが考え過ぎていただけ……?」
「あなたの悪いクセだね。何かと自分で抱え込んでしまう。他人にとっては些細なことなのに、あたかも世界の終わりかのような規模で解釈して自爆する。いつものことながら考え過ぎだよ。大体の悩みなんて蓋を開ければ
なるほど、柳田はそういう性格なのか。こんな状況だけどコイツの新しい一面を知ることができた。どちらかと言えばマイナスの面だけど、信頼関係を結ぶには相手のいいところも悪いところも知って受け入れる必要がある。スクールアイドル病の治療に向け、相手の身体の傷を特定する上で大切なことだ。そう言った意味では、この不幸な遭難事故でも収穫はあったのかもな。
「それにだ、命の危険に晒したからお詫びは早計すぎる。意外と楽しんでるぞ、コイツら」
「え?」
「楽しんでるって言うのは語弊がありますけど、でも零先輩がいるから大丈夫と安心はしていますよ。だから前向きになれるんです」
「徒町は冒険みたいでちょっと楽しいよ! 怖いこともあるけど、みんなとなら絶対に乗り越えられるって信じてるから!」
「だからせらりんも楽しんで……なぁ~んて強制はできないけど、それでも気負う必要はないよ。アタシたちがいて、なによりれいくんせんぱいが絶対に脱出させてくれるから」
「先輩方……」
柳田の目が輝く。自分の悩みがちっぽけどころか無駄なことだと判明したから心が軽くなったか。もちろん先輩たちが勇気づけてくれたおかげでもある。なんにせよ、希望を宿すことができたのなら良かったよ。
それにしても、コイツらも成長したな。去年の山でのサバイバルや夢を見る楽譜事件で怯えていた奴らとは思えない。今の状況に全く不安がないと言えばウソになるだろうけど、それでも前向きでいられるのはコイツらが逞しくなった証拠だ。花帆たちの後輩として一年半、柳田の先輩として半年以上やってきてるわけだから、そりゃ成長も目覚ましいよな。去年の花帆たちもそうだった。二年生は先輩と後輩を同時に持つ世代になるので、人間的にも成長しやすい学年なのかもしれない。
「それに諦めるのはまだ早い。あれを見ろ」
「と、鳥がいる?」
「恐らく水が引くときに取り残された魚を取りにやって来たんだ。さっき魚の死骸もあったしな。鳥にとっては絶好のエサ場なんだろ」
「鳥がいるってことは、この奥に出口があることは間違いないってことだね」
「そういうこと」
「私も安心したよ。セラスほどではないけど私も緊張しっぱなしだったからね。その静寂を破ってくれたセラスも、勇気づけてくれたあなたたちにも礼を言うよ」
「ふん、感謝してよね!」
「急に元気になった……。セラスらしいと言えばそうだけど、ま、いっか」
柳田の瞳に光が戻り、ついでに桂城の心配も解消できたことで俺たちは再び歩を進める。
しかし、現実は非常なもの。海水が流れる音がどんどん大きくなっていた。いくら俺たちが希望を信じようとも自然へは抗えない。脱出まで時間がないのならもうその身を任せるしかないか。次の決断を下す時が来たみたいだ……。
「お前ら、隣の奴と手を繋いでおけ。もうすぐ水が流れ込んで来る。大きく息を吸い込んで、絶対にその手を離すなよ」
「!? 水の音が大きく……!!」
「手を繋いで息を溜め込め! 早く!」
「「「「はいっ!」」」」
「あぁ、分かった!」
俺が叫んだ次の瞬間だった。水が来た道から勢いよく流れ込み、俺たちは一瞬で飲み込まれてしまった。
「「「「あ゛ぁあああああっ!!」」」」
思ったより流れるスピードが速く、そのせいで俺たちの身体は制御不能になる。前も後ろも上も下も分からない。冷たい水に浸かりながら、溜め込んだ酸素を活用して何とか耐え忍ぶ。だが波の勢いが強いため、その反動で息が漏れ出してしまう。息継ぎもままないため、俺たちが生存していられる時間はそれほど長くないだろう。
だが、手の温もりだけはしっかりと感じ取れた。先頭にいる俺は後ろにいた小鈴の手を握っているのだが、小鈴は姫芽の、姫芽は吟子の、吟子は桂城の、桂城は柳田の手を握って離さない。ここで一人でも欠けたら、無事に脱出できたとしてもそれは成功ではない。ここは踏ん張ってくれ……。
どれだけ流されたか、恐らくそこまで時間は経っていないがそろそろ息が限界の奴が出てきてもおかしくない。だが流石の俺でも流されながらでは何ともできないので、ここは各々の生命力に賭けるしかなかった。水も冷たいので体力も奪われる。抗えない自然の暴力に俺たちはただただ身を任せるしかなかった。次の一瞬で生きているかも分からない、災いの渦中にいるかのようだ。
だがその矢先、目の前に光が見えた。その光は徐々に光度を増していく。つまり出口が近いってことだ。
あと少し、もう少しで脱出できる。
耐えてくれみんな! そしてその手を絶対に離すな! みんなで脱出するって、決めたんだから!
光が視界を覆い尽くす。
そして、俺たちは外へと放り出されて――――
池にダイブした。勢いよく飛び込んだため大きな水しぶきが上がる。
しばらく池の底から抜け出せなかったが、洞窟を飛び出した時に息継ぎができたためか何とか無事に浮上に成功する。
まず最初に聞こえてきた声は――――
「あれれ? みんな何してるのこんなところで!? みんなで手を繋いで……ウォータースライダー?」
「瑠璃乃……。いやちげーよ! って、みんな無事か!?」
「はい、なんとか……」
「死ぬかと思いました……」
「耳にちょっと水が入っちゃいましたけど、大丈夫ですよ~……」
「中々にスリリングだったね……」
「これが天然のウォータースライダー……」
ジョークを言えるのであれば大丈夫そうだな。
それにしても、俺の予想通り洞窟は釣り堀の池に繋がっていたようだ。でなきゃ海の魚も入り込めないだろうしな。
ちなみに池から水が溢れ出るのではと思うかもしれないが、そうならない理由もさっき分かった。池の底に沈んだ時、洞窟の下に小さな空洞が開いていることに気付いた。恐らく満潮時に流れ込んだ海水はその地下を通って海に戻っていたのだろう。だから池の水位が一定以上は上がらなかったんだな。
「瑠璃乃ちゃーんっ! みんなまだ戻ってこないけど、焼きそばが冷めちゃうからそろそろ食べよう―――って、ええっ!? 零クンたちどうして池で泳いでるの!?」
「こんなところにいたんですか!? わたし、てっきりボートで気持ちよく日光浴しているから戻ってきていないだけかと……」
「なんか、全然心配されていなかったみたいですね……」
「そりゃ死地から生還したとは思わねぇからな普通……」
花帆とさやかもやって来たが、俺たちを心配してではなく、冷めそうになっている飯を食うために瑠璃乃を呼び戻しただけだったらしい。なんとも薄情な奴らだと思うけど、俺たちが背水の陣であったことなんて誰も想像できないから仕方ないか。それで納得できるかは別問題だけど……。
「よかったね、セラス。みんな無事に脱出することができて」
「うん、本当に良かった。こうしてお互いに紡いだ勇気と絆のおかげ、なのかな」
「あ、そういえばみんな誰も手を離さなかったね~。アタシたちで成し遂げた大勝利ってカンジで、なんだか気持ちいいかも」
「凄いことだよこれは! なんだかんだハラハラドキドキの大冒険で楽しかったし、またみんなと仲良くなれたから徒町は大満足!」
「危なかったけど、結果オーライってことでいいのかな。うん、いいよね――――セラス?」
「はいっ! ありがとうございました! 泉も。零もね!」
「えっ、どうしてみんな楽しそうなの! あたしも混ぜてよーっ!!」
花帆の嘆きに笑いが響き渡る。さやかと瑠璃乃は未だに頭にハテナマークを浮かべているが、事情は後で説明しておこう。
俺たちは未だに握った手を放さず、お互いを信頼して脱出できたという証を胸に苦難踏破の喜びに浸っていた。
そういやスクールアイドル病の傷は見つけられなかったけど……ま、今回はいっか。
104期編のサバイバル回でもそうですが、危険な冒険は新人たちが超えるべきハードルになっているような気がする……
セラスの成長物語が105期で一旦ストップしているのは非常に気になるので、早く106期のアニメを観たいと思いながら執筆していました!(笑)
【キャラ設定集】
零から蓮ノ空キャラへの呼称
・日野下花帆 → 花帆
・村野さやか → さやか
・大沢瑠璃乃 → 瑠璃乃
・百生吟子 → 吟子
・徒町小鈴 → 小鈴
・安養寺姫芽 → 姫芽
・セラス → 柳田
・桂城泉 → 桂城
蓮ノ空キャラから零への呼称(零への好感度 0~100 ※限界突破アリ)
・日野下花帆 → 零クン (120)
・村野さやか → 零さん (120)
・大沢瑠璃乃 → 零くん (120)
・百生吟子 → 零先輩 (100)
・徒町小鈴 → 零先輩 (100)
・安養寺姫芽 → れいくんせんぱい(100)
・セラス → 零 (60→65)
・桂城泉 → 零君 (75→78)
スクールアイドル病の治療状況
・日野下花帆 → 治療済
・村野さやか → 治療済
・大沢瑠璃乃 → 治療済
・百生吟子 → 治療済
・徒町小鈴 → 治療済
・安養寺姫芽 → 治療済
・セラス → 傷の位置特定中
・桂城泉 → 傷の位置特定中