国民的RPGである『ドラゴンクエスト』を主体に敵や魔法が登場します。もちろん知らなくても楽しめます!
※ドラクエでは呪文ですが、この話では分かりやすく表記を魔法に統一
それでは『ラブライブクエスト』、略して『らぶくえ』編スタートです!
まただ……またしてもアイツの遊びに巻き込まれてしまった。
しかも今回は今までとは違う。そう、今俺たちがいる場所は――――ゲームの世界らしい。
ちなみに俺と一緒にいるのは穂乃果、ことり、海未の3人だけ。俺たち4人はそれぞれ神殿の台座のようなものの上に立たされ、顔や腕を動かすことができるが脚は動かすことはできない状況だ。周りは青黒い背景が水のようにゆらゆらと揺れていて、それだけでここが仮想空間であることを思い知らされる。
「どうしてこうなったんだっけ……?」
「確か、穂乃果たちみんなで一緒に大学の教室を借りて勉強をしていたら……」
「急に穂乃果ちゃんが眠いって言い出したんだよね。そのあとことりたちも段々眠たくなってきちゃって……」
「気が付いたら、私たち4人だけがここにいると……」
「そして俺たちはこう結論付けたんだったな。こんなことをするのは奴だけだろうと……」
まあこんな感じだ。穂乃果の言った通り、俺を含めたμ'sメンバーが全員いたはずなんだけど、ここにいるのは俺たちのみ。一体どうすんだよこの状況……。
ちなみにこの世界をゲームだと断定できたのは、俺たちの目の前に謎のステータス表示があるからだ。まだ数値は表示されていないが、プレーヤー名にそれぞれ平仮名で『れい』『ほのか』『ことり』『うみ』と書かれている。その下には『レベル1』と表記されていることから、ここはRPGの世界だとすぐに理解することはできた。
唯一理解できないのは、秋葉の頭の中だけだ……。
「ん?選択肢が表示されてる?」
「ホントだ!!なになに、職業を選んでください……だって!!」
「しょ、職業、ですか……?」
「なるほど俺たちがプレイヤーだから、自分の就く職業を選んでゲームを開始しろってことなのか」
俺たちの目の前に突如として現れた選択肢。そこには『しょくぎょうをえらんでください』と表記され、その下には王道RPGならではの職業が並んでいた。
アイツの言いなりにゲームを進めるのは癪だけど、ゲームに参加しない限りここから出ることはできないだろう。ここにいないみんなのことも気になるしな。
「戦士に魔法使い、僧侶……すごーーい!!どれにしようかな?」
「ことりはファッションデザイナーがいいな♪」
「流石にそんなのはねぇだろ……」
「あったよ!!」
「なにィ!?!?」
職業欄をスクロールしていくと、本当にありやがった……。しかもスクールアイドルや和菓子屋の店員など、RPGにおいて役に立つのか全くもって意味不明の職業が名を連ねている。こうして見るとまともな職業の方が少ねぇじゃねぇか!!しかもスクールアイドルって職業なの!?
「クリアするだけなら普通の職業にしようぜ。もちろん俺はこれ一択だけどな」
「勇者か、零君らしいね!!じゃあ穂乃果は魔法使いにしようかな、頭良さそうだし」
「頭悪いのに?」
「直球すぎるよ!!もうちょっと捻れなかったの!?」
「大変申し上げにくいのですが、頭の方が少しおかしいのではないでしょうか?」
「丁寧に言えばいいってものじゃないよ!!それにそっちの方がヒドイ!!」
ゲームの中ぐらいでは、魔法使いのような頭脳明晰キャラでいたいという訳か。でも俺には穂乃果が肝心なところで魔法を失敗する、ドジっ子魔法使いにしか見えない。でも穂乃果ならどの職業でもそうなっちまうだろうがな……。
「じゃあことりはみんなを癒す僧侶にしようかな。僧侶って回復魔法とか使えるんだよね?」
「ああ。パーティに1人はいてほしい人材だ」
「ことり、零くんの使える女になれるかなぁ?」
「言い方を変えてもらってもいいですかねぇ!?」
「えぇ~いいと思うんだけどなぁ~」
「女って怖い……」
ことりって、持ち前の笑顔と声で簡単に男を騙せそう。天使の笑顔で近付いて来て、あま~い脳トロボイスで男を陥落させる。そして貢ぐだけ貢がせて、途中でポイと。恐ろしい女だ……俺も騙されてないだろうな……?
「私はRPGに詳しくないのですが、どれを選べばいいのでしょう……?」
「勇者、魔法使い、僧侶ときたら"戦士"だろ。王道だし」
「せ、"戦士"ですか?あまり私には似合いそうにありませんが」
「そうか?しなやかに振舞う剣技、気品煽るるフォーム、お前だからこそできる職業だと思うが」
「そうですか、それではそれにしましょうか」
海未は職業欄の一番上にあった"戦士"をタッチする。
これで俺たちの職業がすべて出揃った。俺はもちろん"勇者"。穂乃果は似合わない"魔法使い"。ことりは癒しの"僧侶"。海未は美しい"戦士"。王道と言えば王道だが、アイツが仕組んだゲームをプレイする以上、スクールアイドルやら和菓子屋やら変な職業を選ぶ方が間違ってるだろ。何か仕組まれてそうだし……。
そして俺たちの目の前に、『ミッション:このゲームをクリアせよ』と最終目標が提示された。その下には『ゲームが開始されます』と書かれた文章と『OK』と書かれたボタンが表示されている。
「これを押せば穂乃果たちの旅が始まるんだね。楽しみ~♪」
「みんなと一緒に旅ができるなんて、楽しそう♪」
穂乃果とことりは今に始まりそうなゲームにワクワクと期待の笑顔を浮かべているが、海未だけは心配そうに怪訝な表情を見せていた。
「穂乃果もことりも気楽ですね。ここからどうなるのか分かったものではないというのに……」
「確かにそうだが、もうこの際だからパーッと楽しんだ方がよさそうかもな」
「そ、そんな呑気なことを……」
「そこまで神経質になることないだろ。滅多にない機会だと思って楽しめばそれでいいじゃん。それに、危なくなったら俺が守ってやっから」
「そうですか、それなら……お願いしますね♪」
「ああ、任せろ!!」
ようやく海未の顔にも笑顔が戻ったか。そうだよ、どう足掻いてもこのゲームの世界からはクリアしないと抜け出せないんだ。この際余計な心配は捨ててゲームの世界へ洒落込むぜ!!
そういや、このゲームもしHPが0になって死んじまったらどうなるんだ?
…………だ、大丈夫!!俺がいればそんなこと起きやしないって!!
「よしっ!!それじゃあ行くか!!」
「「うん!!」」
「はい!!」
そして俺たちは4人同時に『OK』のボタンにタッチする。
その瞬間。俺たちのタッチパネルから目が眩むような光が放出された。
「こ、これは!?」
「ま、眩しい!!」
「きゃあっ!!」
「うっ!!」
状況を理解する間もなく、俺たちの意識は再びそこで途切れた。そしてこれが、壮大な冒険の幕開けとなる!!――――のか?
~※~
「ん?ここは……?――――って、なんじゃこりゃ!?」
目が覚めると、俺の目の前には果てしなく続く草原が広がっていた。空は快晴の青空で、気温も程よくポカポカして気持ちがいい。さらに吹き抜ける風はのどかで心地よく、草原を一定のリズムで起伏させる。遠くには西洋風のお城がそびえ立っているのが見え、この世界がゲームの世界なのだと認識させられた。
「うぅ~ん……ここは――――って、すごーーい!!」
「ホントだ!!こんな鮮やかな緑の草原なんて初めて見たよ!!」
「綺麗……ですね。これ以上の言葉が出ません」
俺の後ろから穂乃果たちの声が聞こえる。どうやら3人も目が覚めたと同時に、目の前の広大な草原を見て心を奪われたらしい。
ゲームの世界だというのに、踏みしめる大地もそよぐ風も違和感はなく俺たちの住む現実世界のようだ。俺たちがもたれ掛かっていた木もまるで本物みたいな手触りがある。
だがいつまでもここにいる訳にはいかないので、俺は振り返って穂乃果たちの様子を確認する。
しかし、そこで俺はみんながコスプレをしていることに気が付いた。
「お、お前ら!!なんて格好してんだ!?」
「へ……?あっ、ホントだ!?穂乃果、こんな服着てなかったよ!?」
「ことりもだ。それに零くんもだよ!?」
「えっ!?あっ、全然気付かなかった。マジかよ……」
俺は青い上着に紫のマントを纏い、頭には銀色の冠、靴は茶色のブーツと、某国民的RPGの勇者そのものの格好をしていた。もちろん剣と盾も付属している。ちなみにどちらも結構軽く、持ち運びに苦労することはなさそうだ。
穂乃果は緑のローブにオレンジ色のマント、さらに魔法使いを象徴するかのような黒いトンガリ帽子を被っている。腰に身に付けているものは杖のようだ。僅かだがその杖からは魔力っぽいものが感じられる。これもゲームだからか……。
ことりはオレンジ色の服、さらにその上には聖職者を意味する十字架の書かれた上着を羽織っており、頭は司祭のような少し背の高い帽子を被っている。武器は殴る目的で使われる杖、いわゆるロッドというやつだろうか。
これで全員……じゃねぇ!!
「おい、海未はどこへ行った?」
「あれ?さっきまで近くにいたんだけど……お~い!!海未ちゃ~ん!!」
「あっ、あそこにいたよ!!」
ことりの指差した先を見てみると、海未が顔だけをこちらに覗かせ涙目になりながら木の陰に隠れていた。
まさかゲームの世界が怖いとか……?でもさっき普通にこの広大な草原を見て感動してなかったっけ?
「そんなところで何してんだよ。もう出発するぞ」
「い、いやです……」
「はぁ!?どうして?」
「もう少しだけ時間を……」
「なんだよ決まりが悪りぃな」
海未は駄々をこねるだけで一向に木の陰から動こうとしない。ゲームの世界が怖いのかはたまた緊張しているのかは知らねぇけど、とりあえずここから動かないとゲームの攻略ができねぇだろうが。
俺ははぁ~と溜息をついたあと、海未を引っ張り出すために木陰へ歩を進める。
だがそこで海未の顔が、俺が今まで見たことのないくらいに引きつった。
「来ないでください!!!!」
ガーーーーーーーーン!!!!
女の子からそこまで近付くことを否定されると、流石の俺でも心を貫かれる。グサッと矢が刺さっているみたいだ!!しかも相手は自分の彼女だし……そこまで大声で、そして涙目で否定することないじゃんかよぉ~!!
「よしよし零くん♪」
「ことりぃ~!!」
「もうっ!!海未ちゃんヒドくない!?零君泣いちゃったじゃん!!」
「穂乃果ぁ~!!」
俺はことりの胸に顔を埋め、自分の彼女に傷つけられた痛みを癒す。
むっふ♪なんとふかふかな枕だ!!ゲームの世界だっていうのにおっぱいの柔らかさはそのままなのか!?この感触に香ばしい匂い、これはまさしく普段から堪能していることりのおっぱいそのものだ!!
こうなったら勇者という権限を利用して、町娘たちと一緒にキャッキャムフフなことを……!!
「ひゃん♪零くん暴れすぎだよぉ~♪」
「むぐぅ!!そう言う割には、むぐっ、自分からおっぱいに俺を、むぐっ、押し付けてるじゃねぇか!!い、息苦しい!!」
「ことりちゃんズルいよ!!穂乃果にも変わって!!」
「え~~ヤダ」
「むぅ~~!!」
お~お~2人共俺を取り合うなよ。俺としては穂乃果のおっぱいに埋もれようが、ことりのおっぱいに埋もれようがどっちでもいいけどな。どっちも俺ために大きくしてくれているみたいだし。でもできれば2人のおっぱいに挟まれるのがいい。いやぁ~モテるってイイね!!
それにしてもゲームの世界だっていうのに、俺たち現実世界とやってること変わってなくね?
「あなたたち!!こんなところまできて、よくもそんな破廉恥なことを!!!!」
「あ……」
「あ……」
「あ……」
「……ハッ!!」
俺たちがじゃれ合うのは分かる、それを見て海未が怒るのも分かる。俺たちが驚いたのはそこじゃない。
海未は俺たちを引き剥がそうと木陰から飛び出してきたのだ。そして俺たちは今まで隠されてきた海未の姿を見て驚愕する。海未も血が上っていたのか、自分の失態に気付き顔がみるみる赤くなった。
これは、これは……!!
海未の格好は羽の付いたピンクの兜にピンクの鎧、手袋もピンクでブーツもピンクというピンク好きのにこが見たら大歓喜しそうな派手過ぎる装備だ。しかし驚くのはまだ早い。なんとこの鎧、胸と股の部分しか身体を覆うところがなく、もはや鎧とは言い難いくらい全体の面積が少なかった。まるでビキニのような……。
そうか、これが俗に言う"ビキニアーマー"と言うモノなのか!!まさか"ビキニアーマー"を生で見られる日が来ようとは!!や、ヤバイ!!鼻に血が溜まる……!!
うぐぅ!!な、なんて破壊力満点なんだ!!普段際どいコスプレをしたがらない海未だからこそ、俺の秘められていた欲求が解放される。まさかあの海未の控えめな胸の谷間に、思いっきり手を突っ込んでやりたいと思ってしまうとは……!!
しかしそこで、自ら近付くなと叫んだ海未が俺の元へ全速力で走ってきた。
両手で剣を握りながら――――――
「は、破廉恥です!!」
「うぉいっ!!いきなり剣を振り回すな!!」
間一髪、剣先が鼻の頭に当たるスレスレのところで回避することができた。だが海未は顔を真っ赤にしながら、何故か俺だけを執拗に追いかけて剣をブンブンと振り回す。パーティアタックとかありかよ!?!?
「落ち着け!!似合ってるから!!恥ずかしがる必要はない!!」
「だったら逃げないでください!!一生私の姿を見られないよう、早急にその眼を潰してあげますよ!!」
「俺何もやってないだろうがぁああああああああああああああ!!」
穂乃果とことりも『海未ちゃん可愛いよ』『海未ちゃんカッコいいよ』などの褒め言葉で海未の怒りを沈めようとするも、コイツの耳には一切入っていないようだ。もはや俺を殺るためだけに全身全霊を掛けている。流石に俺から海未に攻撃することは自分の信念が許さないので、彼女の華麗なる剣技を回避しつつ逃げるしかない。
――――ていうかコイツ、剣持つの初めてなんだよな!?どうしてこんなにもしなやかな剣技なんだよ!?今まで絶対何人か殺ってきてるだろコレ!?
海未の様子を伺うために後ろを向きながら走っている、その時だった。
「うわっ!!」
俺はその場でドスンと大きな音を立てて転んでしまった。
今まで踏みしていた地面もかなり柔らかかったのだが、俺が今踏んだ地面だけはやたらヌメヌメとしていた。海未から逃げることに必死だった俺は、そのままバランスを崩して滑り転んでしまったのだ。
こののどかな草原に、まさか湿地になっているところでもあったのか……?そんな風には見えなかったけど……。
「いってぇ~~……一体なんだったんだ?」
「零、大丈夫ですか?」
「零君大丈夫!?」
「あっ、今こそことりの出番だね。回復回復!!」
「いや、HPは減ってないみたいだぞ」
言い忘れていたが、俺たちの隣には常にウインドウが表示され、レベルやHP、MPなどのステータス情報はいつでも見られるようになっている。
れい:ゆうしゃ
レベル1
HP30 MP10
ほのか:まほうつかい
レベル1
HP15 MP20
ことり:そうりょ
レベル1
HP20 MP15
うみ:せんし
レベル1
HP40 MP0
「ほっ、よかったぁ~」
「それにしても、このヌメヌメしたのはなんなんだ……?」
俺は先ほど滑って転んでしまった場所を散策する。
するとそこには、何やらプルプルと震えるゼリー状の物体が蠢いていた。剣でツンツン突っついてみると、そのプルプルの震えはさらに激しくなる。そしてそのゼリー状の物体は我慢できなくなったのか、遂に草むらから飛び出した!!
もしかしなくても分かる。RPGの一番初めの敵を言えば、まさにコイツだ!!
『スライムが現れた!!』
「わっ、スライムだ!?すご~い!!」
「どうやら安眠を妨害して怒らせちまったみたいだな……」
「わぁ~これがRPGの戦闘かぁ~♪」
「き、緊張します!!」
俺たちは先ほどのビキニアーマー騒動なんて忘却の彼方へ忘れ去り、目の前の敵との戦闘に集中していた。
俺たちにとってこれがゲーム世界での初戦闘。海未のように緊張してしまうのも分かる。逆に穂乃果とことりはこの世界に来てからも、この戦闘もめちゃくちゃ楽しんでいるが。
「よし、俺も初戦闘ってことで俄然やる気が出てきた!!俺の相手にしては力不足だが、肩慣らしってことで許してやろう」
「力不足って、私たちみんなレベル1でしょう……」
「どうだっていい!!じゃあみんなは俺の先制攻撃のあとに続いてくれ。行くぞ!!」
そう意気込んで、俺が前へ出ようとしたその瞬間。
「零くんダメぇええええええええええええええええええええええ!!」
『ことりの攻撃!!』
ドゴォ!!っと、何故か俺にロッドが叩きつけられた!!
「ぐぼぉああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
『会心の一撃!!れいに10ダメージ!!』
れい
HP20
「れ、零君!?」
「零!?」
俺はことりから振りかざされたロッドにより、軽く数メートル飛ばされた。仮想空間なので幸い痛みは感じないのだが、全身にかなり強い衝撃が走る。
何考えてんだあの鳥頭はぁあ゛あああああああああああああああああ!?脳内ラブホテルだからじゃあ済まされねぇぞ!!
「ことり!!一体なにすんだ!?」
「こんな可愛い子をイジメるなんて、ことりできないよ!!」
「いや、ソイツ敵だからな……」
「敵であっても、可愛いから攻撃したくないもん」
「俺のHPが減っているのはいいのかよ……」
「少しくらいならいいかな?」
「即答かよオイ!!せめて少しは迷え!!」
ことりの可愛いもの好きがこんなところでアダになるとはな……このまま初戦闘でゲームオーバーとかシャレにもならねぇぞ。しょうがない、ことりにはちょっと休んでいてもらうか。
俺はことりの後ろに素早く回り込み、身体をガッチリとホールドした。
「れ、零くん!?」
「初戦闘で敗北だけは避けたい。だから大人しくしてろ」
「ダメ!!スライムちゃん逃げてぇええええええええええええええええええええええ!!」
「スライムちゃんって……穂乃果!!今のうちだ!!」
「よ~し!!ここで真打登場だね!!」
初戦闘で、しかもスライム1匹に真打が登場するパーティとは一体……。
今度は穂乃果が前線に出て杖をスライムに向ける。
「一度でいいから魔法を使ってみたかったんだ♪子供の夢だよね!!」
「いいから早くしろ!!ことりがうるさいから」
「スライムちゃぁああああああああああああああああああああああん!!」
「分かってる!!いくよスライムさん、覚悟!!」
穂乃果はウインドウ画面から魔法を選んだあと、杖をスライムに向かって大きく振りかざす。
『ほのかの攻撃!!』
すると杖の先から真っ赤な火の玉がスライム目掛けて一直線に放出される。火の玉はあっという間にスライムを包み込み、そのまま跡形もなく焼却してしまった。敵の姿がゲームのようにパッと消えたからよかったものの、想像すると中々にエグいな……。
『スライムに12のダメージ!!スライムを倒した!!』
『れいたちは戦闘に勝利した!!それぞれ1の経験値を獲得!!』
「ゴメンねスライムちゃん……ことりたち、あなたの経験値でもっともっと強くなるからね」
「悲愴感漂いすぎだろ!!俺たちまで心苦しくなるからやめてくれ!!」
可愛い系のモンスターとの戦闘の度にいちいちやるのかよ……面倒だなオイ!!これは意外にもことりのせいで前途多難になりそうだぞ……。
「ホッ、無事に終わってくれて何よりです」
「そういやお前、ずっと黙ってたな」
「仕方ないでしょう!!こんな格好を見られたくないんですから――――ハッ!!」
「もう堂々と俺の前にいるけどな」
「零ぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
「危ねぇ!?だからなんで剣を振り回す!?」
海未は再び剣を両手に持ち、俺に向かってブンブンと振り回し始めた。
また追いかけっこするのかよ!!しかも俺はさっきの戦闘(ことりによる)でHP減ってんだぞ!?馬鹿力の戦士の攻撃を受けたらどうなるか分かったものじゃねぇ!!
「何とかしてくれ穂乃果!!」
「うんっ!!海未ちゃん、頭冷やそうね!!」
「オイなぜ杖を使う!?普通に止めてくれればいんだぞ!?」
穂乃果は何故か杖を使って海未を止めようとしていた。もう杖の先端に火の玉が見え始めている。
しかも……さっきより火の勢い強くないか!?穂乃果の奴、もしかして制御できてない!?
「そんなこと言ったって、もう止まらないよぉおおおおお!!零君どうしたらいいの!?」
「ちょっと!!だからってこっちに杖を向けんな!!火の玉飛んでくるだろ!!」
だが、時すでに遅し……。
『ほのかの攻撃!!』
「あっちぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
『れいに15ダメージ』
れい
HP5(ピンチ!!)
「やっべ、死にそう!!」
そういやゲーム開始の直前、HPが0になったらどうなるのか想像していたことを思い出した。まさかあれから数分で想像が現実になる時が来ようとは!?冗談じゃねぇぞ!!アイツらふざけやがって!!
「待ちなさい零!!」
「スライムちゃ~ん……しくしく」
「あはは、失敗失敗♪やっぱりまだ慣れないねぇ~」
理不尽な理由で俺を追いかけ回す海未。未だ悲壮に溢れかえっていることり。そしてやはりドジっ子魔法使いだった穂乃果。もしかして、今回マトモな人間って俺だけ!?
前言撤回。これはコイツらのせいで前途多難の旅になりそうだ……
こんな調子で、本当にゲームクリアなんてできるのかよ!?
To Be Continued……
このパーティでゲームをクリア出来る気がしない人挙手。
今回から数話を掛けてらぶくえ編となります。明確な話数は決めていませんが、恐らく全5話程度の長編になるかもしれません。短編集とはなんだったのか……でもやりたいネタがたくさんあるので、自分自身とても楽しみにしています!
基本的に戦闘シーンもストーリーもご都合主義のギャグ調です。こんなことを言うのも今更かもしれませんが(笑)
ちなみにレギュラーキャラは全員登場予定なので、自分の推しキャラが出てないからってここで見るのをやめるのは勿体無いですよ!!
また、ちゃん丸さんとのコラボ小説もそろそろ執筆予定です。ネタはもう決めてあるので、あとは形にするだけ!文字数かなり肥大化するかも……
告知は前回の後書き参照。
付録:RPGをよく知らない人への単語解説
・パーティ
プレイヤーたちの集合。
今回は零、穂乃果、ことり、海未の4人パーティ。
・職業
RPGにおけるプレイヤーの役割。職業によってそれぞれ得意分野が存在。
勇者⇒万能
魔法使い⇒攻撃魔法が得意。力やHPはかなり低い。
僧侶⇒回復魔法が得意。HPや力などステータスは中途半端。
戦士⇒力が高く、接近戦が得意。魔法は扱えない。
・スライム
キングオブ雑魚。大体ゲームの一番初めに戦う敵。ぬめぬめぷるぷる。
目を瞑っているとおっぱいの感触と感じなくもない。
・パーティアタック
眠っていたり混乱している仲間を、他の仲間が殴って正気に戻すこと。もちろんダメージあり。
・メラ
炎属性の攻撃魔法。この小説では敵単体に10~15程度のダメージ。
じゃあ零君は……敵?
・ビキニアーマー
ビキニのような鎧。もはやそれは鎧……?これを着ている人は漏れなくエロ要因。
詳しくは"ビキニアーマー"で検索検索!
新たに高評価をくださった方々(敬称略、幻の72話以降の方)
かずもん、怒りに満ちた瞳、我桜、NEKTSCROWN、514、エデン、もけもけ~、雷竜
ありがとうございました!
~Fate風次回予告(誰が話しているのかはご想像に)~
「すご~い!!海外に来たみたい!!」
「これが花陽特製の、黄金米おむすびです!!」
「凛のラーメン屋へようこそだにゃ!!」
「ここでは女王なのよ、私の命令に従いなさい」
「あれって……にこちゃん!?」
「まさかここで戦うことになるとは思いませんでした……」
「にっこにこに~♪残念ながらこの街はにこのものよ!!」
「さぁ俺たちのコンビネーションを見せてやろう―――って、あっちぃいいいいい!!オイ穂乃果ぁあああああ!!」
次回:ラブライブクエスト2~進撃のにこにー~
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