ラブライブ!~μ's&Aqoursとの新たなる日常~   作:薮椿

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 今回でビーチハーレム編終了です。
 ハーレムと言っても、話の内容自体は真面目回でうみえり回となっています。たまにはこんなロマンチックな場所で真面目な話っていうのもいいですね!


※諸事情があり、もう一度投稿し直しました。


全員集合!ビーチハーレム!!(夏の終わり)

 

 

 A-RISEのメンツと別れた俺たちは、まだ声を掛けていない海未と絵里を探しに砂浜をぐるっと一周してみたのだが――――――

 

 

 どこにもいねぇ……一体アイツらどこ行ったんだよ。もしかしてすれ違いになってしまったとか……?これだけ人がいたらすれ違っていても気付かないし、余裕で有り得そう。

 

 

「おなかすいた~」

「これだけ歩けばそうなるわな。俺ももう疲れてきたし、闇雲に探すんじゃなくて、海未と絵里がいそうな場所を推理してみっか」

「おぉ~」

 

 

 虎太郎の奴、俺の言ってること分かってんのかな?まあいっか。

 海未も絵里も、みんなと一緒にワイワイ騒ぐのは嫌いではないけど、どちらかといえば静かでゆっくりできる場所を好む。特に海未は歌詞作りのために海へと出かけ、静かな波の音を聞いてインスピレーションを研ぎ澄ませているらしい。絵里も海未に同行して、たまに一緒に歌詞作りを手伝うこともあると言っていた。

 

 

 ここから導きだされる解答は――――――

 

 

「よし行くぞ虎太郎!!昼飯までもうひと踏ん張りだ!!」

「お~」

「お、おぅ……」

 

 

 虎太郎の声を聞くと、折角意気込んだのに力が抜けてしまう。この行き場のなくなったやる気はどうすればいい……?

 とにかくみんな待ってるかもしれないし、海未と絵里を探しに行こう。俺の推理が正しければ、アイツらは恐らくこの海のあそこにいるはずだ。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 波の音が耳元で囁くように聞こえてくる。入り江の細波が岩浜の縁を洗う音だ。

 俺たちは砂浜から少し離れた、岩が天然の防波堤となった小さな入り江に来ていた。入り江の海を湖のような形にみせる役をしている細長い岬があり、日の光を受けて刻一刻とその表情を変える。人がたくさんいる砂浜の海と同じ海とは思えない、まさに幻想的だ。

 

 

 そして――――――

 

 

「あら、零に虎太郎君じゃない」

「人の影が見えたと思ったら、あなたたちだったのですね」

 

 

 俺の推理通り、絵里と海未は平たい大きな岩の上に2人仲良く並んで座っていた。

 この2人が幻想的な入江に鎮座しているその光景は、2人の落ち着いたクールな雰囲気と、若干暗めだが僅かに光が差し込む神秘的な入江と相まって、とても絵になる。

 

 

 海未の水着は花模様が描かれた、ビスチェのような水着。下は藍色のスカートになっていて、微かな風で靡くスカートがまるでオーロラのようだ。

 

 絵里の水着は、まるで深海の綺麗な珊瑚礁をイメージした、濃くも鮮やかな青色のビキニだ。アクアリウムのようなその水着をサマーガールの絵里が着ていることによって、入江の神秘的な光景に一役買っている。

 

 

「こんな人目の付かないところで何してんだ?」

「本当は穂乃果たちと一緒にビーチバレーをするつもりだったんだけど……」

「行く末がよからぬ方向へ捻じ曲がりそうだったので、こっそり抜け出してきたのです」

「あぁ、あれな……」

「穂乃果たちのところへ行ったの?」

「行ったよ。吹き飛ばされそうになったけど」

「やはり抜け出してきて正解だったようですね……」

 

 

 あのビーチバレーは俺の水着が勝手に賭けとして出されるわ、穂乃果に愛の籠ったビーチボールを打たれ吹き飛ばされそうになるわ、挙げ句の果てに幼稚園児である虎太郎に守ってもらうわで散々だった。ここまでされる程に愛されているのを喜ぶべきなのか、愛の方向が少しズレていることに危機感を覚えた方がいいのか……。

 

 

 とりあえず俺たちも2人の横に並び、虎太郎を抱きかかえる形であぐらをかいて座る。

 

 

「ここから海を見ていると、砂浜の賑やかな海が嘘のように静かだな」

「砂浜から見る海も活気があって好きなのですが、やはり私はこの静かな波の音を聞くのが一番心が落ち着きます」

「私も海未と一緒に来るまでは半信半疑だったけど、こうして実際にささやかな波の音を聞いていると、心に溜まっていたストレスや疲れが波に流されていくような感じがしてスッキリできるのよ」

「言いたいことは分かるよ。俺の口から上手いことは言えないけど、確かにずっと聞いていたくなる」

 

 

 海未も絵里も、目を閉じて海からの囁きに耳を傾けている。

 俺もそっと目を閉じてみると、潮騒が海の健康な寝息のように規則正しく寧らかに聞こえてきた。さっきまでのロリコン騒動やビーチバレー、ラッキースケベなどで心身共にかなり疲労がたまっていたのだが、この声を聞くだけで絵里の言う通りすべて流されてしまいそうだ。

 

 

 元々今日は受験勉強やμ'sの練習の慰安としてこの海へ訪れた。穂乃果たちのように頭をカラッポにして楽しむのも1つの休息になるだろうが、俺はやはりこうやってぼぉ~っとしている方が性に合ってるな。

 

 

 そうだ、μ'sの練習と言えば――――――

 

 

「もうすぐでラブライブだな」

「えぇ、あと1ヶ月程度。前回の大会から半年だけど、もう次のラブライブなのよね。時の流れが早く感じるわ」

「その言葉、年寄りくせぇぞ」

「失礼ね。本当にそう思ってるんだから仕方ないでしょ」

「でも新生μ'sが結成されてからというもの、本当に時の流れは早く感じましたよ。雪穂や亜里沙、楓がメンバーになったことで、より日々が楽しくなったからかもしれませんね」

 

 

 シスターズの3人がμ'sのメンバーになってから、去年よりも賑やかになったというよりかは騒がしくなったに近い。それも9割方は楓のせいだなんだが……まぁ良くも悪くも、みんな楽しく馬鹿騒ぎできるのはいいことだとは思うけどな。

 

 初めはラブライブを優勝したグループとして、絆が完成された穂乃果たち9人に付け入る隙などないと俺は懸念していたのだが、雪穂も亜里沙も楓も今やμ'sに欠かせないメンバーとなり、俺たちと同じ1つの目標を目指している。

 

 

「今回のラブライブは私たちは出られないから、楓たちには私たちの分まで全力で楽しんで欲しいわね」

「そうか、絵里たちは大学生だからラブライブに出られないもんな」

 

 

 『ラブライブ!』はスクールアイドルの祭典のため、もちろんだが大学生は出場することができない。通常の『μ's』としての活動ならば12人でステージに上がることができるのだが、スクールアイドルとしての『μ's』は大学生組である絵里、希、にこを除いた9人での活動となる。つまり『ラブライブ!』の舞台に立てるのは現役高校生までってことだな。

 

 

「一つ懸念があるとすれば、絵里たちが抜けることで雪穂たちの調子が狂ってしまわないかですが……」

 

 

 海未は怪訝そうな顔で静かに俯く。

 新生μ'sが結成してからも、結局絵里たち大学生組を除いた9人でライブをすることはなく、『μ's』として12人でライブイベントに望むばかりだった。だから9人で歌って踊るのは今まで練習の中のみ。そのため『ラブライブ!』のステージが公式で初のスクールアイドル『μ's』としての活動になるのだ。

 

 

 

 

 いきなり9人でのぶっつけ本番。海未が心配になるのも分かる。

 

 

 

 

 でも――――――

 

 

 

 

「問題ないと思うぞ」

 

 

 

 

「え……?」

 

 

 

 

 海未は驚きの表情を見せる。

 それと同時に絵里は優しく微笑んだ。まるで俺の言うことが初めから分かっているみたいに……。

 

 

 

 

「海未の気持ちも分かるよ。頼れる先輩たちが3人も抜けちまって、心細くならないか心配になること。特に亜里沙は絵里がいなくなったら緊張の糸が切れちまわないかってな」

 

「だったらどうして問題ないと……?」

 

「それ以上にアイツらには、ライブを楽しむという心があるからだよ。μ'sのライブの時、俺は毎回前列で見てるけど、雪穂も亜里沙も楓もいい笑顔をしている。心の底からライブを楽しんでいなければ、あんなキラキラした笑顔を絶対に見せることなんてできないよ。だから心配するな、アイツらは前回のラブライブのお前らと同じ、スクールアイドルとしてライブを楽しむ心、そして笑顔を持っているから。絵里たちが参加できなくとも、アイツらの心は揺るがない」

 

 

 同棲生活中、雪穂に『ライブ中、自分だけが笑っていなかった。だから自分はスクールアイドルには向いていない』と相談を受けたこともあった。そしてμ'sに迷惑を掛けることを恐れた雪穂は、自らスクールアイドルを辞めようとしたんだったな。

 

 でも彼女はスクールアイドルを辞めなかった。それはスクールアイドルの活動やライブを、精一杯楽しむことを思い出したから。誰かに劣等感を感じる必要もなく、ただ純粋に歌って踊ることを楽しむ心を取り戻したんだ。

 

 そして亜里沙と楓からも相談を受け、彼女たちの心をまた1つ解放した。

 

 それから彼女たちは強くなった。スクールアイドルとしての技能だけでなく、自分たちの心も大きく成長したんだ。心の成長に関しては、もう穂乃果たちとそれほど変わらないんじゃないかな。

 

 

「私はまだまだステージの上に立つ前や、ステージに立った後も少し緊張してしまいます」

「緊張しない奴なんてこの世にはいねぇよ。それに、その緊張を解してくれる奴ならいるだろ?」

「はい。穂乃果やことり、そしてみんなが……あっ」

「ようやく分かったか。お前らは1人じゃない、みんながいるじゃないか。それに、俺も全力で激励してやるよ」

 

 

 この世に完璧な人間などいない。だから仲間と共に支えあうんだ。

 

 緊張の糸が切れそうなら、仲間に抑えてもらえばいい。足が震えて動けなくなったら、仲間に背中を押してもらえばいい。1人で解決する必要なんて、どこにもない。スクールアイドルとしてのμ'sは9人なんだ。それに俺や絵里、希やにこもいる。

 

 

「更に、μ'sを応援してくれる人たちもたくさんいるし。な?」

 

 

 俺は抱きかかえている虎太郎の頭を優しく撫でる。虎太郎は俺の手の動きに合わせて、揺ら揺らと身体を動かす。

 いつもぼぉ~っとしているコイツでも、今までにこやμ'sのことを一生懸命応援くれたんだ。その応援の1つ1つが、μ'sへの励みになっただろう。

 

 

 するとここで、絵里が口を開いた。

 

 

「でも一度ラブライブに出場した私たちとは違って、雪穂たちにとっては初めての大会だから、緊張しないことはないと思うの。だからその時は海未たちが支えてあげて」

 

「私たちが……ですか?」

 

「えぇ。後戻りしそうになったら背中を押して、こけてしまいそうになったら手を引いて助けて欲しいのよ。私にできるか、なんて心配しなくても大丈夫。μ'sの絆があれば……ね♪」

 

 

 俺の言いたかったセリフ、全部取られたんだけど……ま、いっか。俺からより、今まで一緒に歌って踊ってきた絵里の口から伝えてもらった方が効果は大きいだろ。

 

 

 俺が海未に伝えたかったことは、絵里がすべて代弁してくれた。μ'sの絆の強ささえあれば、どんな困難も共に乗り越えていくことができる。もちろん俺もμ'sを見守るだけの存在ではない。彼女たちの誰かが道を踏み外しそうになった時、道を間違えそうになった時、みんなから離れてしまいそうになった時、俺はどんな時でも彼女たちの手を引っ張ってやる。

 

 

 そう、俺も同棲生活中に決めたんだ。μ'sの前へ行き彼女たちを先導するのでも、彼女たちの後ろから見守るのでもない。俺は彼女たちと共に、この道を歩んでいくと決めた。

 

 

「ステージに上がるのはお前ら9人だけど、お前らの心にはいつも俺たちがいる。13人の心が1つになっているんだ。だから心細くなんてない。俺も絵里たちも、ずっと隣にいるから」

 

「私たちは観客席だけど、海未たちと一緒にステージで踊っているかのように、精一杯応援するから。穂乃果の言葉を借りるなら……ファイトだよ!!って感じね」

 

「フフッ!!」

「ちょっ、ちょっと海未!?そこは笑うところじゃないでしょ!?」

「フフッ、ごめんなさい。急に穂乃果の真似をし出したのが面白くって……!!」

「も、もうっ!!折角元気付けてあげようと思ったのに!!」

「ありがとうございます。お陰さまで元気になりました♪」

 

 

 海未ももう全然問題なさそうだな。この調子だったら雪穂や亜里沙、楓を支えてあげることができそうだ。やはりμ'sの絆は世界一!!絵里は頬を赤くして恥ずかしがっているけれども、それも照れ隠しってことで。

 

 

「やらなければよかった……」

「とても可愛かったですよ♪ 特に穂乃果と同じガッツポーズをしたところとか」

「う~み~!!」

「フフッ♪」

 

 

 おぉう……今にも絵里が海未に飛びつきそうになっている。普段は2人の立場が逆なので、こんな光景を見るのは初めてだ。もうそんじゃそこらの女の子グループよりも、μ'sは絆も友情も深くて強いと言える自信がある。

 

 まさか2人のこんな一面を見られるとは、俺もまだまだ彼女たちのすべてを見られていないってことだな。また彼女たちと一緒にいる楽しみができたよ。

 

 

「おひる~」

「あっ、そうだった。昼飯にするからお前らを呼びに来たんだった」

「えっ、そうだったの!?それならそうと早く言いなさいよ」

「でももし零が来てこの話をしてくれなかったら、私の心に重圧が伸し掛っていたままでした。皆さんを待たせることになったのはもちろん反省していますが、私はとても嬉しかったですよ」

 

 

 海未のその笑顔は、静かな海にさざなみが広がっていくような爽やかな笑顔だった。海未の笑顔に、俺の心が安らぐ。

 俺が励ます側だったはずなのに、逆に俺が安心させられてどうするんだよ……でも、それだけ海未も心の整理ができたってことだから、これでよかったんだろうな。

 

 

 

 

 そして俺たちは、しばらくその場所に留まっていた。聞こえるのは、入江に流れる静かな波の音だけ。

 

 

 

 

「終わるわね……夏が」

「そうですね……」

 

 

 

 

 清らかな白波に、入江の僅かな隙間から入り込んだ日光が煌く。

 

 

 

 

「頑張ろうな、みんな一緒に」

「はい」

「えぇ」

 

 

 

 そして俺たちは安らかな波の音に癒されながら、決意を新たにした。

 




 攻める海未に攻められる絵里、いいコンビですね!


 そんな訳で今回で夏編は終了となります。
 夏編の思い出と言えば、穂乃果のダイエット回や痴漢回、ことりとのえっち回が印象強いです。でも一番はやはりらぶくえ編ですかね。『日常』当初から書きたかった話なので、5話に渡る長編になってしまいましたが、R-17.9回と同じくらい妄想を爆発できたかなぁと思っています。

 皆さんはどのお話が気に入ったでしょうか?


 次回からは『新日常』も秋編に突入します。
 1発目のタイトルは『性欲の秋!禁欲の秋!?』。章の一発目はいつも通り零君+ことほのうみで大暴走!!(笑)


 そしてここからは本編とは全く関係がないのですが、11月7日に私が小説投稿から一周年、そして新日常も同時期に100話を突破するということで、11月にちょっとした企画を立てるつもりです(もう水面下で進行してますが)。
新作小説ではないのですが、『新日常』の一風変わった話がたくさん見られると思うので、是非ご期待ください!!
投稿は11月1日からを予定しています。参加人数は今のところ19人の予定です。


新たに高評価をくださった 政行さん、アリゆめさん、忍者使いのWILLさん ありがとうございました!


Twitter始めてみた。
 https://twitter.com/CamelliaDahlia

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