ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常2~   作:薮椿

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 今回は季節外れのオカルト話!
 音ノ木坂学院に広がる怪現象の噂。その怪現象に零君たち3年生組が挑む!

※先生についてはスクフェス参照

※今回の話は元ネタありです。


音ノ木坂学院の怪(前編)

「はぁ?この学院が呪われてる?」

 

 

 まだ眠気が残る1時間目の授業中、俺の後ろの席である穂乃果が唐突にヒソヒソ声で話し掛けてきた。

 2学期の席替えで俺の後ろの席を陣取ってからというもの、授業中や休み時間を問わず嬉しそうに俺に話し掛けてくる。どうせ授業中に寝ちまうなら起きていた方が幾分かマシなのだが、それでも生徒会長なのかよ……。

 

 その穂乃果が口にしたのは、まさに胡散臭いオカルト話が始まりそうな言葉だった。残念ながら俺は、占いとかオカルトとかは信用しないタチなんだよ。もちろん実際に見せつけられれば手のひらを返す覚悟はある。

 

 

「ホントだよ!!昨日の生徒会会議でも議題に上がったくらいなんだから」

「もう学院中で噂になってるんだよ」

 

 

 俺の左隣の席のことりも穂乃果に便乗して話し掛けてくる。

 生徒会でそんなオカルト話が議題に上がるとは、生徒会も随分暇なもんだ。言い換えれば平和?俺としてはこの古臭い校舎を立て直すため、生徒の署名を集めた方が俺たちのためになると思うがな。

 

 

「どうせよくある学校七不思議ってヤツだろ?ピアノが勝手に鳴ってる~とか、階段の段数が数えるたびに違う~とか」

「そんな子供騙しじゃないよ!!ね?ことりちゃん」

「うんっ!!一週間前の早朝なんだけどね、この学院の生徒が美術室に入った時のことなの。その子は美術室の大きな絵が好きで、毎朝眺めに行ってたらしいんだ」

「あぁ、それで?」

「でもその日はいつもと美術室の様子が違って、気味が悪くなり教室に戻ろうとしたその時、彼女は見てしまったの!!」

「なにを?」

 

 

 

 

「美術室にある8体の石膏像全部が、その凍てつくような白い眼で彼女の方を睨んでたんだって!!」

 

 

 

 

 ことりは一旦間を置き、俺を怖がらせようとしているのか自分の顔を恐怖に震えた表情に変化させる。真夏の怖い話披露会じゃねぇんだから……。

 

 

「石膏像って、美術で使う人間の首から上の白い像のことだよな?偶然だろそんなの……」

「偶然じゃないよ。その彼女もそう思って確かめたらしいし」

「確かめた?」

「うん。その日の放課後、像と机に鉛筆で印を付けたんだ。像と机を一本の線で結んでね」

「なるほど、それで像が動かされていたら、線がズレて分かるって訳か。それで?」

「翌朝来てみたら、本当に動いていたんだよ。8体の像が、一晩の間に!!そしてその日以来、彼女は熱にうなされて今日も学校を休んでるみたい……」

 

 

 にわかには信じがたいがちゃんと確かめたということは、ただの偶然で片付けるのは賢い手じゃねぇな。美術部の部員が動かしたって説もあるから、考え過ぎなのかもしれないけど。

 

 

「穂乃果が聞いたのは、石膏像なんかよりももっとすごいんだよ!!」

「噂って1つじゃないのかよ……」

「保健室に気持ちの悪いお人形があるでしょ?」

「気持ちの悪いお人形って、それ人体モデルのことか?」

「そうそうそのお人形がね、4日前の夜に……」

「夜に……?」

「走ってたんだって!!廊下を凄いスピードで!!」

 

 

 穂乃果も一旦間を置いて、ことりと同じ恐怖に駆られた表情を俺に見せつける。

 どいつもコイツも、夏の風物詩はもう終わったんだよ……。

 

 

「……んなアホな」

「見てたのは1人や2人じゃないんだよ!!塾帰りの生徒が5人揃って見たって言ってたもん!!」

「そいつらが適当な噂を振りまいて、学院中が騒いでるのを面白がってるだけじゃねぇの?どうも胡散臭ぇなぁ~……」

 

 

 あの人体モデルが腕を振りながら全速力で走ってる光景なんて、俺だったら驚きを通り越して爆笑するまであるわ。想像するだけでさえ声が漏れてしまいそうなのに……。

 

 でももしその噂が本当であった場合、この音ノ木坂学院内で何かが起こっているのは間違いなさそうだな。ただのイタズラや偶然で済ますのはやはり得策ではないか……。

 

 

「ほら、海未ちゃんの話も聞かせてあげなよ」

「えっ、海未も何か見たのか?」

「穂乃果たちと同じ、言伝で聞いただけですよ。話したいのは山々ですが、今は授業中――――」

 

 

 

 

「そこの4人!!何コソコソ喋っているのですか!!静かにしなさい!!」

 

 

 

 

 も、もしかして……俺たちさっき怒られた?

 いや、難聴とかそういうのではなくて。俺たちの国語の先生、山内奈々子先生の声自体がことりや花陽と同等、もしくはそれ以上に脳を溶かすような甘ったるさがあるのだ。しかも声も高いため、どう聞いても怒っているようには聞こえなかったぞ……。

 

 

「山内先生って優しそうに見えるのに、意外と声を上げて怒ること多いよね」

「この2学期からの新任で、しかも教師として授業を教えるのも初めてだって聞いたから緊張してんじゃねぇか?」

「でもあの声で怒られても全然迫力がないんだよねぇ~」

「お喋りはその辺にしておきなさい。また怒られますよ」

「「「は~い……」」」

 

 

 俺の左後ろ、穂乃果の左の席の海未が、先生に怒られてもなお喋り続けていた俺たちを静止する。

 山内先生のことはいいとして、とりあえずこの学院のことについて詳しく調べてみた方が良さそうだな。先生に連絡は……しなくてもいっか。もし連絡して事の騒ぎが学院にバレ、その騒ぎでいつの間にか怪現象も消滅してしまいました~では面白くない。

 

 

 そう、面白くない。どうせまだ深刻な問題じゃないんだ。どうせなら怪現象の原因究明、ちょっくら楽しんでみるか。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「変な人を見ただって?」

「はい。この学院の生徒2、3人が見たと言っていました」

 

 

 笹原先生からの罰として屋上掃除をしている最中、俺は海未に授業中聞けなかった音ノ木坂の怪現象について聞いてみた。話す本人が若干暗い顔をしているので、穂乃果たちの話よりかは現実的なのだろうか。

 

 そもそも怪しい奴が彷徨いている時点で、怪現象でもなんでもないような……。

 

 

「3日前の夜、私たちの教室で見たらしいのです」

「どうして夜に学校にいたんだ?」

「部室の掃除をしていたら、時間どころか完全下校時刻すらも忘れていたらしく、先生に見つからないようこっそり帰ろうとした時に見たと言っていました。真っ暗の教室の中に、大きな白いマスクを着けてウロウロしている不気味な人を……」

 

 

 明かりを点けずにしかもマスクまで……?穂乃果やことりの話よりかは現実的で、確かに気味が悪いな。でも警備員という線も考えられるから、まだ怪しい奴だと決まった訳じゃないけど……。

 

 

「その教室を彷徨いていた奴の顔は、誰も見てなかったのか?」

「えぇ。その生徒たちも気味が悪くなって、走って帰ったと言っていましたから」

「その後、先生には相談しなかったのか?」

「生活指導の笹原先生にしましたよ。しかし『分かった、対処する』と言ったきり――――」

「音沙汰なしって訳か……」

「はい……」

 

 

 あの堅物真面目の笹原先生が、いくら問題児認定されている俺たちからの頼みを無視するとは考えられない。たまたま怪しい奴の尻尾が掴めていないだけなのか、それとも……いや、俺の考え過ぎかもしれないけど。

 

 

 

 

「こら!!何騒いでるの!?ちゃんと掃除しなさい!!」

 

 

 

 

 ま~た山内先生に怒られたよ……もちろん声が甘々だから怒られている気は一切しないがな。

 そもそも何で山内先生が俺たちの見張りをしているんだって話だ。一昨日までは笹原先生が見張りに立っていたのに……。

 

 

「山内先生。なんか無理して怒ってない?穂乃果はそう思うんだけど……」

「新任だから緊張してるんだよきっと。慣れてくればことりたちにも優しくしてくれるよ♪」

「そうだといいんだけどな」

 

 

 先生の怒りの声に覇気が籠っていないのは甘い声だけが理由じゃない。穂乃果の言う通り、どこか自分を抑えながら怒っているようにも感じられるんだ。本当は怒りたくないのに、無理をして渋々怒っているみたいに……。

 

 

 その後も何度か全然甘ったるい怒りの声で俺たちの心が癒されながらも、1週間の屋上掃除にようやくケリを付けた。

 

 でもそんなことよりも今はこの学院に起きている怪現象のことだ。海未が言っていた人影も気になるし、学院の生徒に何かがあってからでは遅い。これは早急に調べる必要があるぞ。

 

 

 

 

 こうなったら、作戦決行は今晩だ!!不謹慎かもしれないが、ちょっとワクワクしていたり。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 深夜……と言っても夜の10時。教師や警備員たちも帰宅し、恐らくこの学院にいるのは海未の話に出ていた怪しい奴だけだろう。そう考えると、いつも何気なく通っているこの校舎が不気味な雰囲気を漂わせているように感じる。さながらゾンビが彷徨く廃校みたいな……割とオンボロ校舎だからシャレにならないところもあるけど。

 

 

 そんなことよりも、もっと気がかりなことが――――――

 

 

「どうしてお前らまでいるんだよ……来るなって言っただろ?」

「だっていつもテレビでしか見られなかった怪現象が、今穂乃果たちの周りで起こってるんだよ!?気になっちゃうよ!!」

「ことりも結構興味があるよ~。夜の学院を探索するって、あの時のRPGみたいで楽しいし♪」

「私は生徒会副会長として、学院の秩序を守るためにですね――――」

「はいはい分かった分かった。全くお前らは……」

 

 

 俺たちは校舎の前に集まり、各々興味本位でここへ来た理由を吐露していた。どうやら全員、受験勉強で俺の家に行っているという設定で家を抜け出してきたらしい。ちなみにそんな俺も受験勉強で海未の家に行くと楓に言ってきたから、コイツらと全く同じ思考なんだけどな。

 

 

「でもどうやって校舎に入ろう?扉も窓も全部閉まってるよね?」

「そんな時はこれを使えばいい!!」

「そ、それって……秋葉さんの発明品じゃないですか?」

「そう、鍵複製マシーン改二だ。これは鍵を複製するだけじゃなく、簡単な鍵なら無理矢理こじ開けることもできる。原理は知らなけども」

 

 

 こういう時にしか役に立たない秋葉の発明品を使って窓を開け、靴に付いている砂を丹念に払い校舎内に侵入する。折角極秘で潜入しているのに、靴で廊下が汚れるという凡ミスで後々罰を喰らいたくないからな。

 

 そして廊下に降り立った後――――――穂乃果たちが来る前に窓を閉めた。

 

 

「れ、零!?どうして閉めるのですか!?」

「危ねぇから、お前らは早く帰れ」

「零くんおねがぁい♪開けて?」

「うぐぅ……いくらことりのお願いでも、今回は危険かもしれないからダメだ」

「開けろ開けろ開けろ開けろ開けろ開けろ開けろ開けろ開けろ開けろ開けろぉ~!!」

 

 

 穂乃果は窓を両手でドカドカと叩く。

 コイツ、今の状況分かってんのか!?この校舎内に怪しい奴がいるかもしれねぇって言ってただろ!?そいつに音を聞かれて逃げられたらどうすんだよ!?

 

 

「分かった分かった!!入れてやるから窓叩くな!!」

 

 

 結局穂乃果の無茶な勢いに負け、3人を校舎の中に入れることにした。こんな大所帯でゾロゾロと、見つかったりしねぇのかコレ……。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 とりあえず俺たちは下駄箱に靴を置き、上履きに履き替えてから例の石膏像がある3階の美術室へと向かった。

 中はもちろん真っ暗で、微かな月明かりに照らされている石膏像がいい感じに夜の学院の不気味さを際立たせている。絵里が見たら魂抜けるだろうな……一度連れてきてみたいという俺のドS心が働く。

 

 

「電気、電気っと……」

「ダメだ穂乃果。無闇に明かりを点けたら、俺たちのことがバレちまうだろ」

「えっ?じゃあ何も見えないよ!?」

「懐中電灯くらいは持って来いよな……ないなら携帯の明かりで代用しとけ」

 

 

 8体の石膏像は美術室の奥にまとめて置かれていた。ことりの話では、朝にこの美術室に来た生徒が8体の石膏像に見つめられていたって話だったけど、今のこの配置を見るに目線はそれぞれ全く別の方向を向いている。

 

 

「ねぇねぇ零くんこれ見て」

「どうしたことり?」

「これだよこれ!!その生徒さんが付けたっていう鉛筆の跡」

「本当だ……」

 

 

 像と机の接点に、鉛筆で黒いL字型の印が付けられている。どうやらことりの話は噂じゃないみたいだな……。

 

 

「鉛筆の跡以外に、特に変わったところはなさそうですね」

「そうだな。像に仕掛けがある訳でもないみたいだし……ん?」

 

 

 像の額になんかくっついてる。これは……セロハンテープ?どうしてこんなものが像にくっついてるんだ……?。

 

 

「零く~ん、もう行くよ~!!」

「あ、あぁ……」

「次は保健室に行ってみよ!!」

 

 

 あまり有力な情報は得られなかったけど、像と机の印を見る限り、ただ噂話を流して騒ぎを引き立てようとしている奴がいる訳ではなさそうだ。この学院に何かが起こっているのは間違いない。海未の話に出てきた怪しい奴のせいなのか、それとも別の誰かがいるのか……もっと調べる必要がありそうだな。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 俺たちは再び1階へ戻り、深夜廊下を全速力で走っているという滑稽な人体モデルがある保険室へとやって来た。美術室に比べれば雰囲気はそれほどでもないが、真っ暗な場所で救急セットや薬剤を見ると、まるで廃校のダンジョンを探索している気分になる。

 

 

「えぇ~と、人体モデル人体モデル……」

「変だな。どこにあるんだ?」

「もしかして本当に廊下を走ってたり!?」

「んなアホな……」

 

 

 懐中電灯で辺りを照らして見渡せども、穂乃果が言っていた走る人体モデルは見つからない。噂通り腕を振って廊下を……な訳はなく、誰かが持ち去ってしまったのだろうか。

 

 

 するとことりは懐中電灯の明かりで、白い布で覆われた背の高い置物らしきモノを照らす。更にその布のスリット状になっている部分に手を当て、その中身に光を当てながらゆっくりと布を捲った。

 

 

 

 

 そこには、懐中電灯の明かりで怪しく照らされる――――――

 

 

 

 

 人体モデルの姿があった。

 

 

 

 

「!?」

 

 

 

 

 その瞬間、ことりの表情が眼球が飛び出るくらいの衝撃に変わる。

 

 

 

 

「きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 

 

 

 ことりは恐怖に震えた声で叫びながら、保健室を飛び出した。

 

 

「お、おいことり!!」

「こ、ことりちゃん!?」

「どこへ行くのです!?」

 

 

 保健室を飛び出したことりは、縦横無尽に廊下を駆け巡る。俺たちはこの暗さで彼女を見失わないよう、携帯のライトで何とかことりの背中を照らし、何度も名前を呼び掛けながら追い掛けるが、ことりはスピードを落とすことはなく走り続ける。

 

 そして階段と教室の間にあるスペースに入り込んだことりが、何かにぶつかって尻餅をついたところでようやく追いつくことができた。

 

 

「やっと追いついたよぉ~……」

「ことり!?大丈夫か!?」

「う、うん……もう平気なんだけど、ハンカチをどこかに落としちゃったみたい」

「廊下にはなかったので、美術室か保健室かもしれませんね」

「そうだな――――って、なんだこれ?人形?」

 

 

 尻餅をついたことりの周りには、ダンボールから溢れ出たたくさんの人形が散らばっていた。そしてそのダンボールの中には、数え切れないほどの人形がこれでもかというくらいに詰め込まれている。恐らくことりがダンボールにぶつかった時に、中身の人形が一部廊下に飛び散ってしまったのだろう。

 

 そのほとんどが動物の可愛らしい人形ばかりなのだが、こんな暗闇の中で光を照らしながら見ると、これらの人形に申し訳ないが――――結構不気味だ。

 

 

「この人形の量。文化祭でどこかのクラスが人形劇でもするのでしょうか?」

「あっ!!このお人形可愛い~♪穂乃果持って帰っちゃおうかなぁ~♪」

 

 

 でもおかしいな……どうしてこんなところに人形が?廊下と教室の間のスペースは収納スペースとなっていて、そこに閉まってあったのは分かるんだけど、何故こんな真夜中に外に出ているのかが謎だ。

 

 

「わぁ~見てみて!!このクマさんのお人形、穂乃果と同じ名前の名札が付いてるよ!!ほら、『高坂』って」

「このウサギの人形には、『園田』と名前が付いてますね」

「ことりは……ヒツジさんだ。可愛い~♪」

「俺のは――――サルか」

 

 

 俺は『神崎』と名札が貼られたサルの人形を持ち上げる。

 なんだろう?この人形だけ他の人形よりもやけにボロボロだな……しかも頭がグラグラして今にも落ちそう――――――

 

 

「!!!」

 

 

 

 

 そう思ったその時――――――人形の首が根元からポッキリと折れ、廊下へ落下した。

 

 

 

 

「れ、れれれ零君!?く、くっ、首が取れてるよ!?」

「その言い方だと俺の首が取れたみたいだろ!!人形の首な!!」

「こ、これは呪いの人形というモノでは!?人形を傷つけた部分と同じところが傷付くという……!!」

「ま、まさか誰かが零くんを狙ってるの!?れ、零くんに何かあったらことりが守ってあげるからね!!」

「落ち着けって。ただ人形の首が折れただけだ」

 

 

 俺に恨みを持っているのか何かは知らないけど、これが呪いの藁人形的なノリならば、そんなことをする奴が学院の収納スペースにこんな人形を置いておく訳がない。誰かが意図して、この学院内でしかできないことのために使っているんだ。

 

 

「た、たまたま零君と同じ苗字だっただけだよね……きっと」

「どうかな。『神崎』って、そこまで多い苗字でもないし、お前らの苗字の人形と一緒に収納されていたってことは、この人形は俺を模していると見て間違いないよ」

「じゃ、じゃあやっぱりこの人形は穂乃果たち!?」

 

 

 人形が大量に詰め込まれているダンボールの中身を詳しく漁ってみると、結構な数の人形に俺たちの人形同様に苗字の書かれた名札が付けられていた。しかもその苗字は、すべて俺たちのクラスメイトの名前ばかり…………どういうことだよ一体。

 

 

「ことりや穂乃果ちゃんのお人形も、他のお人形に比べたらちょっとボロボロだね……ま、まさかことりたちも狙われてたり!?」

「えぇっ!?穂乃果、誰かに怒らせるようなことしないよ!!」

「そ、そんなことはないでしょう。私たちはただ噂に振り回されているだけです。石膏像に異変はありませんでしたし、人体モデルだってあの保健室の……中に……」

 

 

 

 

 突然、海未はある一点を凝視したまま硬直する。

 

 

 

 

 具体的には窓と中庭を挟んだ、俺たちのいる廊下とは反対側の保健室前の廊下。海未はそこの一点を見つめながら、一歩後ずさりする。これまで見たこともない光景が眼前に展開されるみたいに、息を呑んだまま唖然としていた。

 

 

 それもそのはず。そこから見えていてはおかしいものが、そこにあったのだから。

 

 

 

 

 海未は声も出せず、ただ衝撃を受けるしかなかった――――――

 

 

 

 

 何故か保健室に置かれているはずの人体モデルが、窓越しに俺たちを凝視していたことに――――――

 

 

 

 

 徐々に海未の口から小さな声が漏れ出す。そして――――――

 

 

 

 

「きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 

 

 

 遂に海未は恐怖を抑えきれなくなったのか、震えた声で奇声を上げ、その場で屈み込んでしまった。

 

 

 

 

「う、海未!?どうした!?」

「ほ、保健室の前に……あの人体モデルが私たちを!!」

「なんだって!?」

 

 

 俺たちは海未が凝視していた窓に寄り添って、保健室側の廊下の窓を確認する。

 しかし――――――

 

 

「え……海未ちゃん、何もないよ?」

「えぇっ!?で、でもさっきは本当に……」

「やはりか……!!」

「零くん!?どこへ行くの!?」

 

 

 俺はことりの落とした懐中電灯を拾って来た道を引き返し、再び保健室へと駆け出す。その後に穂乃果たちも俺の名前を呼びながら追従した。

 

 人体モデルが勝手に保健室から廊下に出て来るはずがない。だが海未が嘘を付いているとも思えない。だったら、そこから考えられるのはただ1つ――――――

 

 

 

 

 俺は保健室の扉を開け、懐中電灯で元々人体モデルが置いてあった場所を明るく照らす。

 そこには――――――

 

 

「あれ?穂乃果たちが来た時と同じ場所にあるよ、人体モデル……」

「きっと怖くて見間違えちゃったんだよ」

「そ、そうなのでしょうか……」

 

 

 見間違えで人体モデルが見えたりするか……?そんなはずはないだろう。なにかあるはずだ……この人体モデルに、さっきの騒動の痕跡が。

 

 ――――ん?人体モデルの台と床の間に正方形の布切れが挟まっている。さっきはこんなモノなかったぞ……。

 

 あれ?しかもこの布切れって……!!

 

 

「いや、海未が見たのは間違いなくコイツだ」

「「「えっ?」」」

「この人形の台と床の間に布切れが挟まってる。これ、ことりのハンカチだろ?」

「あっ、うん、そうだよ。保健室で落としちゃったんだ……」

 

 

 俺は人形を持ち上げてハンカチを取り出し、ことりに返す。

 さっきことりが落としたはずのハンカチの上に、人体モデルが乗っていたということは――――――

 

 

「つまり俺たちがこの保健室から出て行った後に、コイツが動いて再びこの位置に戻ってきたってことだ」

「えっ!?じゃ、じゃあこの人形が勝手に!?廊下を走る噂はやっぱり……!?」

「んな訳ねぇよ。誰かが動かして元に戻したに決まってんだろ」

「でもどうしてそんなことを?まさか穂乃果たちを脅かすために!?」

「脅かすためなら、人形をわざわざ保健室に戻さなくていいだろ」

 

 

 誰かが動かさなければ、ことりが落としたハンカチの上に人体モデルが乗っているはずがない。つまり、俺たちが保健室を飛び出してから廊下で人形を漁っている間に、何者かが保健室にやって来て、俺たちに見せびらかすために人体モデルを廊下の窓際に立てたんだ。

 

 

「コイツを使って何をしようとしていたのかは知らないけど、ご丁寧に保健室に戻したってことは、俺たちに自分のやっていることがバレたくないからだろうな」

「よかったぁ~じゃあオバケのせいじゃないってことだよね」

「じゃあ噂の怪現象は、ただのオカルトではなかったということですね」

「ことりもちょっと落ち着いたかも……」

「ハッ……オバケなんかよりよっぽど気味が悪いよ。こんな真夜中に学院でコソコソ奇妙なことをやっている――――」

 

 

 

 

 一瞬安心した穂乃果たちの顔が……再び曇る。

 

 

 

 

「人間の方がな……」

 

 

 




 μ'sのキャラって、希や楓を除けば全員お化け屋敷とか怖がりそう。


 ――ということで今回はホラー回でした。しかし本編を読んでもらった通り、ホラーというよりも怪しい自分物を突き止めるミステリーに変わってしまったのは否めませんがね(笑)元ネタもそんな感じでしたし。

 今回は話の展開上、ことほのうみのメンバーでの探索でしたが、初めは誰を零君と一緒に連れて行くか迷ったんですよね。絵里がいたら怖がりすぎて話が進まないだろうなぁとか、花陽や凛はいい叫び声を上げるだろうなぁとか、誰を連れて行っても面白い回になりそうですね!

 今回新たにでてきた山内奈々子先生の容姿が知りたい方は、「スクフェス 先生」で検索すると見られます!

 元ネタに関しては次回の後書きにでも!内容的にも先生をμ'sに絡ませるいい機会かなぁと思います。


 次回は解決編『音ノ木坂学院の怪(後編)』です。
 そして100話まであと3話!100話記念の小説や、100話突破記念企画(後述)もあるのでご期待ください!


そしてここからは本編とは全く関係がないのですが、11月7日に私が小説投稿から一周年、そして新日常も同時期に100話を突破するということで、11月にちょっとした企画を立てるつもりです(もう水面下で進行してますが)。
新作小説ではないのですが、『新日常』の一風変わった話がたくさん見られると思うので、是非ご期待ください!!
投稿は11月1日からスタートし、毎日投稿の予定です。


新たに高評価をくださった、きょんちゃんちゃんさん、ありがとうございました!


Twitter始めてみた。
 https://twitter.com/CamelliaDahlia
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