3人を追いかけて数十分はたった
既に神器の効果は切れ、元の力に戻ってしまい3人を完全に見失ってしまった
現在いる場所は駒王町から少し離れた森林地帯、最後に3人がこの森林地帯に入って行ったのは確かだ。記憶が正しければこの森林地帯の奥には廃工場があり、今では肝試しなどで訪れる人が多いと聞く
もしも身を隠すのなら最適な場所と言ってもいいだろう
「早く合流してイッセーくん達とも合流しないと・・・ッ!?」ゾワッ!
木場くん達と合流する為にはやあしで廃工場に向かっている最中に大きな殺気を感じ、一瞬足を止めた
【ほぅ、この殺気・・・あの鴉が関わっていたのか】
「イグドラ?」
【急げ七志、もし奴だったならあの3人だけでは死んでしまうぞ?】
「ッ!・・・くッ!」
イグドラの言葉に従い、僕は全力で先程の殺気が放たれた場所へと走っていく
木場SIDE
「くっ!があッ!!」
創造した魔剣が折れ、波動に耐えきれず後に飛ばされる
地に伏して荒れる呼吸を整えながら新たに創造した魔剣を杖がわりにし立ち上がり目の前の敵に視線を向ける
前にも見た事がある黒い翼、それが堕天使の羽だとすぐ分かった。だが、相手はただの下級の堕天使なんかじゃない
「ふんッ、ミカエルが寄越した聖剣使いと共に悪魔が来たと思えばただの神器使いの転生悪魔風情とはな非常に残念だ」
背中から生えている複数の黒い羽。あれは上級の、幹部クラスの堕天使。つまりやつがこの聖剣強奪の事件に関与しているグリゴリの幹部、コカビエル
三大勢力の戦争で魔王と神と戦って生き残った正真正銘の強者の1人だ
「く、くそっ・・・噂に聞いてはいたがこれ程の強さだったとは」
「どうするゼノヴィア?私ならまだやれるわ」
「・・・いや、一旦退くぞイリナ」
「なっ!主の敵に背を向けて逃げるって言うの?!」
「あくまで私たちの目的は聖剣の奪還。奴なら今すぐ私たちを殺す事ぐらい簡単な筈だ、遊ばれているのさ・・・仮に退けることが出来たとして疲弊した状態でフリードと連戦すれば流石に辛い、1度退いて態勢を立て直す。君はどうするグレモリー眷属?」
「・・・」
確かに、やろうと思えば僕達を瞬殺する事など簡単なはず
余裕でいるこの時しか逃げる好機はない
聖剣をまだ一つも破壊出来ないのは悔しいが今は彼女の提案に乗るとしよう
「そうだね。1度退いて態勢を立て直す」
「固まっては逃げきれない。散開して駒王町まで退くぞ、いいなイリナ?」
「はぁ、しょうがない」
「お喋りは終わったか?さぁ、次はどうする?」
「次は・・・こうするよ!」
「む?」
魔剣創造でつくった『炎燃剣(フレア・ブランド)』と『氷空剣(フリーズ・ミスト)』の2本をコカビエルに投げつける
しかし、コカビエルに当てる為に投げた訳じゃない
コカビエルの眼前で二つの魔剣がぶつかりあい、その瞬間白い蒸気がコカビエルを覆った
氷空剣の冷気を炎燃剣の熱で蒸発させ、水蒸気を起こした。これで少しの間、視界を塞ぐ事が出来る
好機と判断した僕達はバラバラにその場から逃げ出した・・・だけど
ヒュン!
「きゃ!!」
「イリナ!」
擬態の聖剣使いである紫藤イリナの悲鳴が聞こえた
彼女の足にコカビエルのであろう光の槍によって切り傷が出来ていた
(あの状態で的確に当てた?!)
「ゼノヴィア!先に行って!必ず追いつくから!」
「ッ・・・、行くぞ」
「・・・」
僕は彼女を置いてその場から逃げた
僕にとっては聖剣使いであり教会の人間である彼女を特に何も思う事は無い筈だった
しかし、この時だけ僕の心にグサリと刃が刺さるような痛みと罪悪感がこみ上げていた
木場SIDE 終
「くっ・・・」
擬態の聖剣を杖替わりに立ち上がるイリナ
目の前で黒い翼を広げ、上から自分を見下ろしているコカビエルを睨みつける
「ふん、2匹は逃したが一匹は魔王の妹の手土産にとっておかねばな。どうする?もう一度隙を見つけて逃げてみるか聖剣使いのエクソシスト?」
「冗談。主の敵に背を向けて逃げたら同士に笑われちゃうわ!(勝てなくても主の為に戦って死ねるなら本望!覚悟は出来てるわ!)」
「くくく、ふはははははッ!!この力の差を見てもまだそんな顔が出来るか。いいだろう、じわじわと痛めつけてやる」
「てやぁ!」
地上に降りたコカビエルに向かって擬態の聖剣を振るうイリナ
「ふん!甘いわ!」
「くっ!」バキッ!
しかし、刃は届かずコカビエルの反撃を受ける
先ほどコカビエルによって足に傷をつけられた性で機動力も奪われた為に回避することも今のイリナには出来ないのだ
「けほっ!けほっ!・・・はぁ、はぁ」チャキ
「次はこれだ」
右の手の平を空に向けて数十の小さな光の槍をつくりだす
(あんな数、防ぎきれない・・・)
「そらッ!」
「ッ!」
直撃すると察し目を閉じるイリナ
「なに?」
「・・・え?」
いくら待っても光の槍は来ず、ゆっくりと目を開く
そこには教会の神父服を着て、右手に青い篭手を付けた青年の後姿があった
「大丈夫?イリナ」
聞きなれた声にイリナは確信を持って青年の名を呟いた
「七志・・・くん」