七志 SIDE
「大丈夫?イリナ」
「七志・・・くん」
良かった
神器を使いながらでなんとか間に合い、イリナに当たってはいないようだ
「ほぅ、噂には聞いていたが蒼龍王となる者がついに現れたか」
「・・・」
上空に居た堕天使が地上に降りてくる
あれがイリナとゼノヴィアさんが言っていた今回の聖剣を盗んだ首謀者コカビエル
近くにいるからこそ更に禍々しく感じるコカビエルの圧倒的な存在感に冷汗を流す
「ほぅ、恐れていながらも逃げ出さないとは人間にしては度胸がある」
「度胸?そんな筈ないさ、今にも逃げ出してしまいそうになるほど怖いよ。だけど、大切な幼馴染が傷ついているのに置いて行くなんてのは出来ない」
「だ、駄目よ七志くん!相手は堕天使の幹部!いくら神器を持ってても勝てる相手じゃないわ!!」
イリナは必死になって僕を止めようとする
まぁ、多少合気道をやってる程度の僕がイグドラの神器を持ってても勝ち目はないだろうね
だけど何もここで倒す必要はない。肝心なのはどうやって足を負傷したイリナを連れて此処から逃げるかだ
「くくく、愚かだなぁ人間。その行動が自分の寿命を短くしてる事に気付かぬとはな。まぁ、そこまで長く生きることなど出来ぬのだ、ここで死んで楽になるのも良かろうな」
「・・・いーや、僕は死なないさ。僕のこの神器ともう一つの武器でお前から逃げてやる」
「ほぉ?そのもう一つの武器とはなんだ?」
「・・・イリナ借りるね」
「え?な、七志くんそれは!?」
イリナから借りたのは彼女が聖剣奪還の任務時に協会から授かった擬態の聖剣「エクスカリバー・ミミック」だ
「・・・ふぅ」スッ
息を吐き、両手で持ってコカビエルを見据える七志
「なに?(エクスカリバーを平然と、まさか適合者?)」
(うそ?!七志くんがエクスカリバーを持ってる!)
コカビエルとイリナも彼がエクスカリバーを平然と持てることに驚きを隠せなかった
(これは驚いたな。だが、逆に余興が増えそうだな。くくく・・・ん?)
何かの異変を感じ鼻をヒクヒクと動かすコカビエル
(なんだ?・・・血肉の焼けるような臭い?・・・)
「(え、なに?どこからこんな焦げたような臭いが?)・・・ん、あれ?」
あることに気づいたイリナは七志の手元を見る
彼の両手からは“ジュー・・・”と焼けているような僅かな音と共に煙が上がっていた
(ま、まさか!?)
「くッそ熱いー!!」ブンッ!
(投げたー!?)
「なに?!」
擬態の聖剣を勢い良く投げつけてそれをコカビエルは翼でガードし弾く
「イリナ!!」ガシッ!
「ふ、ふぇ///!?」
『Release!』
「うおおおぉぉぉぉぉーーー!!」
擬態の聖剣をコカビエルに投擲した後にイリナを抱き抱えて走り出した
前回にもアーシアを背負って逃げ出した時と同じ速度で七志はコカビエルから逃亡した
「・・・く、くくく。この俺を出し抜くとは流石は蒼龍王、忌々しい龍を宿した人間だ」
額に青筋を浮かべ、七志に対する怒りが増幅するコカビエル
だが、しばらくしてから投げつけられそのままの擬態の聖剣を見てコカビエルは突如考えだした
(今の焼けるような臭いは適合者ではない者への聖剣の拒否反応・・・つまり奴には聖剣を持つに適してはいなかった、だが、なぜ僅かな時だけ聖剣が拒否反応を見せなかった?・・・まあいい)
「バルパーへのいい土産が出来た・・・まったくもって忌々しい剣だ」
七志宅
「ハァ・・・ハァ・・・こ、ここまで来れば、大丈夫・・・だよね・・・ハァ」
「だ、大丈夫?」
「前にも使ったから、その時よりは慣れたよ・・・とりあえず、中に入って傷の手当てしないと」
「うん、そうだね・・・でも、その〜・・・」
「ん、なに?」
「そろそろ降ろしてくれてもいいかなって///」
頬を赤く染ながら、小声で話すが何を言ったかはハッキリ聞こえている
「だめだよ、傷の手当てをしてないのに無理に動かしたらもっと悪くなっちゃうよ」
イリナの否応無しに抱き抱えたまま、家に入りイリナをソファーに座らせ、救急箱をとって来た
「痛いとおもうけど我慢してね」
「うん」
コカビエルによって傷ついた足に消毒液を染み込ませたティッシュでそっと拭う
「うッ・・・ッー〜〜〜」
「・・・じゃあ、あとは包帯を巻いて・・・これでよし」
深い傷では無いため、簡易な処置で治療を終えた
「ありがとう七志くん。また助けられちゃったね」
「いいよ。だって幼馴染なんだ、助けるのは当たり前だよ」
「うん、そうだね。じゃあ、私は早くゼノヴィアと合流しなくちゃ!」
「な!?待って!その足で行く気なの?!」
「私とゼノヴィアが此処に来たのはあのコカビエルから盗まれた聖剣エクスカリバーを取り戻す事だもん。やっと見つけたんだしゆっくりなんてしてられないよ!」
「駄目だ!せめて足の怪我が治ってからでも!」
「これは主がお与えしてくれた試練なのよ。これくらい乗り越えて見せなきゃ教会の同士に笑われちゃうわ、大丈夫だよ私だってこれでも聖剣使いのエクソシストなんだから」
その大丈夫だと思わせる様に見せるイリナの笑顔に
僕の中で何かがブチキレた
「・・・なんで」
「ん?」
「なんでそんな笑顔でいられるんだよ!!」
「ッ!?・・・な、七志くん?」
「どうして僕の周りの人たちまで不幸にするんだよ!僕から両親を奪っておいてまだ奪い足りないのかよ!イッセー君やアーシアさんまで死なせて!」
「そして今度は復讐の為に祐斗くんが、教会と主の為なんかにイリナやゼノヴィアさんが死にに行こうとする!!なんでなんだよ!俺の不幸が招いたからか?!神器を持ってるからか?!イクドラに、龍に憑かれているからか?!ふざけんな!どれも正当な理由になるものか!!」
心の奥底にずっと閉じこめていた本音を僕は叫ぶ
両親は死んでしまい
幼馴染のイッセーくんと友達のアーシアさんは悪魔に転生し生きているが僕は1度、彼らを守れなかった
そして今、親友ともう一人の幼馴染を堕天使の幹部とバルパーが奪おうとしている
これがもし運命なんて言うなら僕はこの世界を一生怨み続けるかもしれない
「待って七志くん!・・・両親を奪ったって、どういう事?」
「ッ!」
しまった、と心の中で気づいた七志
「ねぇ、どういう事なの?おじさまとおばさまに何があったの?」
「・・・来て」
七志がイリナに案内した場所は2階にある和室
そこは前にライザーとのレーディングゲームの前に気絶した七志をグレイフィアが自宅へと送る時に見た何もない和室
しかし、何も無いといっても普通の自宅において目につくような珍しい物がないというだけで、そこには仏壇らしき物がちゃんと存在していた
そこには途中まで使っていたような中途半端な長さの蝋燭に茶や菓子などの供物、そして2人の若い男女が写った写真が立て掛けられていた
「・・・う、うそ」
「もう、2年になるかな・・・中学の卒業式の日に信号無視の車と激しく衝突して父さんと母さん、相手の車の運転手も死んじゃったよ」
「・・・そうなんだ」
イリナはそのまま、両手を重ね両親に祈りを捧げてくれた
「ごめんね。辛い思いしてたのに気づけなくって」
「いいよ、僕も大人気なかったよ。幼馴染にこんな不満をぶつけるなんて・・・ほんとにごめん」
「ううーん、七志くんは私の為を思ってくれたんでしょ?だから、その・・・嬉しかった、よ?」
「・・・ッ、ありがとう」ニコッ
いつもの微笑みを取り戻し、とりあえず2人は仏壇のある和室を後にした
【(甘いな七志、龍に憑かれた人間に平穏なんて来ないのさ。サーゼクス、あの温厚な悪魔どもがバックに居ようが関係ない、ましてや貴様は初めて俺を目覚めさせたかつて無い所有者だ。いつか何かを失うという覚悟をしておかないと・・・いずれ、壊れちまうぜ)】
超久々投稿
ずっと人狼行軍行っててメンゴ