「そ、それでその後どうなったのですか……?」
彼に起こった突拍子の無い物騒な話を聞いて聖は彼にそう聞いた。
「んーと確か、そいつの自爆を耐えたら機嫌を悪くして、攻撃してきたから返り討ちにしてやったよ。」
彼はまるでつまらなそうな声を出した。
「か、返り討ちとは?」
「正確に言えば消滅。消したと言った方が正しいかな?跡形も残らないようにしないとお偉い神様に言いつけて探られたりするからね。」
「けっ、消す……!!」
神を殺す。実質的には無理だと思っていた星はそれを効いて驚愕した。
「それから僕は再び旅を続けましたとさ。」
「……因みに何人程手をかけたのですか。」
「これは聞いた話なんだけど確か……三百二十六って言ってたかな?」
彼は簡潔に事を纏めた後、顎に指を当てながら奥深くに眠る記憶を掘り起こした。
「さん……びゃく…………。」
「その……具体的な数値を誰から聞いたのでしょうか?」
「天照だね。一度あった時に説教じみた事を言われてたっけか。」
「あの太陽神と知り合いなのかい!?」
村紗とナズーリンは彼の規格外の事に唖然として何も言えなくなった。
「まぁね。話した事があるくらいで親密って程ではないかな?えっとこれで僕の話は終わりだけれど何か質問ある?」
彼がそう言うと聖は小さく呟いた。
「貴方は私の考えをどう思っているのでしょうか……」
彼は彼女の言葉に少し嘲笑うかの様に声に抑揚をつけずに言った。
「とんだ愉快な考えで生きていこうとするね。自分の願いと言う名の欲を他人に押し付けることは僕は嫌なこと嫌いなことの一つだよ。」
この場が瞬時に凍りついたがそんな事も気にせずに彼は続けた。
「でも、その考えに共感したから仲間がいる。仲間がいるって事はお前の仲間達は正しいと思ってるって事だろ?どうせ正しいか間違ってるかなんて自分でしか決める事できないし、そもそも自分で決める事なんだからさ、そんなどうでもいい他人の意見を聞いて一喜一憂しないで信念突き通しとけ、ってところかな?」
彼女は彼の言葉を聞くと驚いて目を見開いた。
「私達のことは憎いとか思ってないのですか?」
「さっきも言ったけど僕は聖の考え方が嫌いなだけでそれ以外は嫌いじゃない。というか、そういう事実を知っても曲げようとしない姿勢は凄いと思うよ。大抵の人には出来ないさ。同様に君の仲間達だって僕の話を聞いて彼女に見切りをつけたわけではないんでしょ?それなら失望もしないし、嫌いになんかはならないよ。」
「司さん……話してくれて本当にありがとうございます。」
彼女がそう言って頭を下げると彼以外は皆頭を下げた。
「はぁ、まぁそんなこと言われるようなことしてないんですけど……おっと、もうこんな時間かそれじゃあ皿洗いと晩御飯の用意をするね。」
彼はそう言って立ち上がったが聖とナズーリンは彼を静止させるよう囲んだ。
「そ、そんな!わざわざそんな事しなくてもいいんですよ!」
「そうだよ!君は客人なんだからゆっくりしてていいんだよ!」
「というか、泊まってかないの?」
そこで鵺が何気ない提案をすると彼女は何故か乗り気でバタバタと動き出した。
「それはいい考えです!一輪、彼に部屋を案内してください。」
「僕も賛成さ!ご主人布団しいておいてくれ。」
「分かりました。司さん、こちらです。」
「使用人に命じられる私って…………。」
そしてそれぞれ違った反応をしながら命蓮寺は彼をようやく受け入れていった。
村紗、鵺「あれ、私達は?」
鵺が来て賑やかになった命蓮寺が更に騒がしくなった。司はその寺にいる時は聖や星とともに仏教や色々な事を教えたり、学んだりして自分の心や体に磨きを掛けて行った。その空き時間で書斎に行って本を読んだり、文献を漁ったりした。また、命蓮寺の仲間達と再び話をしたり遊んだり巫山戯たりもした。そんなある日
「この本も違ったか……」
司は手に取った本を一通り見たあと本棚に戻した。
「すいません。ここにある本はこれで最後なんです……。」
「いやいや。気にしないでよ。無いのはしょうがないんだからさ。」
彼は溜息をして肩を落とす彼女に軽く口元を吊り上げるような笑いを浮かべて制した。
「しかし、そんなような方がいるなんてにわかに信じ難い話です。」
彼女は冷や汗を浮かべながらいった。
「まぁ、僕も聞き間違いであってほしいんだけどね……。」
そんな彼女の様子を見ながら彼は苦笑気味に答えた。
「私は昼食の支度をして参りますので失礼します。」
「分かった。暫く庭に出ていようと思うので何かあったら呼んでよ。」
「ええ、それではまた。」
彼女はそう言って去って行った。それを見たあと彼は近くの木の上に飛び乗り、平安京の方を軽く睨みつけていた。
「そう言えば、多分今日明日頃にここが襲撃されるかもね。」
いつも通り、昼食を取っていると彼は急に驚くべき事を言い、それを聞いた聖をはじめとする命蓮寺のメンバーが箸を止めた。
「え……それってどういう事?」
星は暫く続いた沈黙を破った。
「多分、妖怪と人間とが同じ屋根の下で仲良く、力を合わせて生きているのがあいつ等には気に食わないんだろう。」
彼は静かに呟き、そして聖の方を向いてこう言った。
「兵士や陰陽師の人数は合わせて五百人程度。大掛かり過ぎるとは思うがそのうち陰陽師は百人もいるかどうかってところ……それでどうするんだ?」
「どう……とは?」
彼女にはその言葉の意味が分からなかったため、彼に聞き返した。
「多分そいつらは君達を、下手したら命蓮寺自体を封印、滅ぼすつもりだろう。向かい打つのか?それとも受け入れるのか?」
彼は少し間を開けて最後にこう言い放った。
「俺に任せれば、アンタら無事で敵だけ殺してやる。」
その言葉には少しばかり、怒りの様な殺意の様な気持ち悪くなる様な雰囲気を持たせていた。その殺気に驚きながら、ナズーリンは少し疑問を持った。
「どうして僕達の味方をするんだい?君には関係の無い事なのに……」
「僕はこの地に、この地で会った皆に感謝している。とても有意義で楽しい生活を久しぶりに送れたさ。」
「久しぶり…………?」
彼の何か思わせぶりな言動に一輪は疑問に思ったが直ぐに流された。
「その恩返しっていうのもあるけれど、僕はクソみたいな人間の考えが嫌いなんだよ。なんも知らないで、ただ周りの空気に合わせて本当に憎くも無いくせに、妖怪のこと何も知らないくせにそうやって高慢な態度取りやがって…………
だから恩返しも兼ねて今から来る奴らを消してやろうかと思ったんだけど。どうする?」
彼はそう言ってご飯を口へと運んだ。聖は彼の様子を見て一呼吸起き、彼へときちんと向き合った。
「司さん、貴方のお気持ちは分かりました。しかし、これは私達の問題です。命蓮寺の問題です。これしきのこと私達で解決してみせます。」
彼がそれを聞くと、目を瞑って溜息をついた。
「本当に君は立派だよ。それも損する位にね……。それで聖以外の皆はいいのか?ただでは……………………はは、どうやら聞くまでも無かったね……。」
彼が目を開いて見渡すと彼女達の思いが伝わってきた。
「それじゃあ僕は行くよ。邪魔になりそうだし、そういう連中を見ているとボコボコにしたくなってくるからさ。」
彼はそう言って刀と鞄を持って立ち上がった。
すると命蓮寺のみんながそれぞれ声を掛けてきた。
「色々とお世話になったね。」
とナズーリン
「また会う時まで死ぬんじゃないよ。」
と村紗
「ふん、次こそは蛇で化かしてやる。」
と鵺
「料理の指導ありがとうございます。次にお会いする時までには、腕をあげておくので期待していて下さい。」
と一輪
「えぇっと。あぁ!ご飯美味しかったよ。また宜しく。」
と星
「ご主人はそればっかりだね。」
「まぁそれが星らしいんじゃない?美味しかったのは事実だし。」
とナズーリンと鵺が言った。
「うぅ…………。」
「貴方から様々な事を学び、私達は成長し、自分達の思いも固まりました。貴方のお陰です。本当にありがとうございました。また再び会える日事を楽しみにしています。」
そして、聖がそう締めくくると命蓮寺の皆は一斉に頭を下げた。
「楽しかったよ。ありがとう……またな。」
司は彼女達が顔を上げる頃にそう告げると命蓮寺から出ていった。
そして、その日から司は命蓮寺に行くことは無かった。
刀の設定を忘れてしまうんですどーしましょ。まぁ彼の能力で魔法の剣とか、木の枝を硬くする事で剣扱いができるのですよねぇ。まぁそんなこんなで命蓮寺編は終わりです。当初の予定では過去の部分は入れない予定だったんですよね。過去の話を書いた時にお気に入りが増えると何だか大事なところよりそこを評価される気持ちになり複雑な気持ちになります。次は紫と帝と玉藻前編です。帝は少なめですがね……それでは最後まで見てくれた方々ありがとうございます。