司と妖怪との戦いの決着が少しつく前、玉藻前の方はまだ戦闘の最中だった。
「あと……少しだ……。」
彼女はそう言いながら妖怪を殺していた。後、指で数える程の妖怪の数になったときに事件は起きた。帝を守ろうと必死になってしまっていたため自分の死角には目が回らなくなり、木の陰からの攻撃に気づく事が出来なかった。
「カカカ……シネ!」
その妖怪が襲いかかってきた時には遅く、咄嗟に防いだのはいいが、腕に傷を送ってしまった。
「クッ…………。」
彼女がその妖怪を見ると、
彼女の次に帝へと爪をに立てていた。
「鳥羽様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
途端に彼女は叫んで、彼を覆い被さるようにして妖怪からの攻撃を防いだ。
帝には怪我は無かったが、彼女の美しい背中には三本の深い傷がついていた。
「おい!しっかりしろ!大丈夫か!」
帝が彼女の肩を揺さぶると彼女は彼の姿を見て力無く笑った。
「良かった……鳥羽様には怪我が……なく……て。」
彼女はそれだけ伝えると意識を手放した。
「お、おい!……全く無器用な女だな。私も人の事言えないのかもしれないが……」
彼がこう呟く頃には司や紫が加勢に来ていた。
敵対する妖怪が皆死ぬと陰陽師の一人が帝に霊力弾を放って来た。しかし、司がそれを叩き割ると、その陰陽師に剣を首筋に突き立てた。
「な、何をするんだ?」
彼は唐突の事で顔を青くした。
「お前が依頼主か。」
司は彼の姿を一通り見てからそう言った。
「い、依頼主だと?」
「さっきの金髪の妖怪……ルーミアに聞いたんだが、貴様が彼女に帝の暗殺を頼んだらしいな。帝の敵対勢力の企てによりこうなったんだろうけど……まぁ運がなかったね。」
司は鼻で笑うと、彼は青かった顔を徐々に赤くして喚き始めた。
「畜生!!やっぱり妖怪は使えねぇ奴だ!こんなんだったら最初から直接………………ガフッ。」
「何馬鹿なこと言ってんだ?貴様程度の奴に出来るわけねぇだろ。クソみてぇな奴だなぁ。」
司は呟きながら、彼の豹変ぶりを嘲笑い何のためらいもなく剣を口から刺し喉や延髄を貫通させた。そして引き抜くのは面倒だと思ったのか、その剣を頬から振り抜いた後、剣についていた血を振り落としてから鞘に剣を収めた。
「見事だな……。」
「流石ね………。」
帝や紫はそう言っていたが、軽く無視をして、玉藻前を担いだ。
「それでは屋敷に戻りましょう。」
司がそう言うと彼らは少し呆気に取られていたが彼の後をついて行った。
「こ、ここは……?」
私が目を開くと、見慣れない木でできた天井を見ていた。取り敢えず起き上がり立ち上がると、後ろの扉が開き、聞いたことのある男性の声が聞こえてきた。
「おはようございます。お目覚めになった様ですね。」
振り向くとそこには赤い仮面をした青年が立っていた。
「あぁ、そうだな。取り敢えず貴様には聞きたいことが山ほどあるのだが……。」
「それでは食べながらお話をしましょうか。」
私が口を開くと彼は手に持っていた味噌汁を見せた。
「それでは、何処からお話をしましょうか?」
「山で起きた事を教えてくれ。」
分かりましたと言って彼は話を始めた。
「三日前の戦いで死者は十一人ほどで兵士は九人で陰陽師は二人です。帝に怪我はありません。」
「そうか…………」
私は軽く息を吐きながら相槌を打った。
「しかし、何故ルーミア程の大妖怪が加勢に来ていただ?」
「目的は帝の暗殺を予定していたみたいでした。しかし、私達の尽力により事無き事を得まして、今頃帝が、法やら何やらで、指示者の事をあれやこれやしているでしょう。」
「あれやこれやって…………。」
「詳しい法制度は分からないものですから。それで彼女との交渉材料は……まぁ大量の人間と聞きました。」
「なるほどな……。」
まぁそうだろう。彼女はそう言う奴だもんなと思っていると、彼は近くの棚から白い封筒を取り出して私に差し出してきた。
「これは?」
「帝からの貴方宛に書かれた手紙ですよ。」
それを聞いて私は受け取れないと思い、手を振ったが、彼はその振った手を掴み、くるりと回転させ、その手に手紙を置いてきた。私はその鮮やかな動きに呆然としてしまい私は渋々受け取って手紙を読み始めた。
玉藻前へ
我は何時も文面では歌を使い会話をしているのだが、今回は主に直接言わないと伝わら無いだろうと思って普通に言わせてもらう。本当にありがとう。主には感謝してもし尽くせない。我の世話をしてくれたり、つまらないであろう話を聞いてくれたり、あの時であったって命を掛けて我を守ってくれていたしな。
実は我は主が妖怪で、更に妖怪の中でも位の高い九尾の狐である事も知っていた。
「なっ!!」
私はその言葉を何度も見返してしまった。その言葉が間違いではない事を充分に理解したあとに読むのを続けた。
主と共に風呂に入ろうと思った時に覗いてしまってな……。それで見てしまったのだ。我はその日から主が何故我と共に暮らしているのかが気になった。国家を乗っ取るためだろうか、我を殺すつもりなのだろうか、それとも他に目的があるのだろうかなどと思った。しかし、ある日主の笑顔を見てて思ったのだ。
心から本気で笑っているのだろうなと。
その日から主の我に対する本気の愛を感じた。上辺だけでなく心からの愛を理解した。他の女には無いような本物の愛だということを。だから私は主が妖怪であることを気付かないふりをし続けた。我はそんな時間が永遠に続けばいいのにと思っていた。しかし、我と主は種族が違う。我は人間、主は妖怪だ。人間と妖怪はあらゆる面で違いがある。その上正体を隠して生き続けることはもう出来ないであろう。だから私はこの手紙で別れを言おうと思う。会えないのは辛いが会うのはもっと辛い。これは私の我侭だ分かってくれ。私は主と会えた世界が妖怪や人間などの関係を、とやかく言われないような世界に生まれたかったと思う。それじゃあな。
鳥羽天皇
私はその手紙を一通り読み終わった後に、手紙を点々としてあるしわに気づいた。そのしわが彼の涙であることに気がつくと、私は溜め込んでいた思いを吐き出した。
「鳥羽様ぁぁ……鳥羽様ぁぁ。私は貴方様との過ごした時間のことぉぉぉ……今でもっ…………忘れたごとはぁぁぁ…………。」
私が部屋を見渡すと、何時から部屋を出ていたのか分からなかったが彼の姿は見えなかった。その時思ったのだ。
いまこの瞬間だけなら泣いていい…………と
そして私は
思いっ切り
死ぬ程
声をあげて泣き叫んだ。
しばらくして、私は味噌汁の中に入っていた油揚げの味を噛み締めていると彼が再び現れた。
「それでは、話を再開しましょうか。 」
「えっ?あぁ。」
私は彼の変わらない姿に面をくらいながら答えた。
「それで他に質問はありませんか?」
「八雲紫と貴方との関係を知りたい。」
こういうと、不気味な空間が現れて、そこから声がしてきた。
「それなら私が話をしましょうか。」
時間が余り経たなくして、金髪の女性。八雲紫が姿を現した。そして彼女は少し不機嫌そうな顔で彼へと指をさした。
「こいつは貴方にも前に言った、私が将来見返してやりたい奴よ。」
「え?ということは。貴方は彼より弱いのか?」
それを聞いた彼女は更に不機嫌そうな顔をしたが私はその顔に気が行かないくらいかなりびっくりした。
八雲紫。彼女はとても有名で特別な妖怪だった。得体の知れない妖怪な上、他に類を見ない程彼女は人間に対して好意を持っていた。更に無類の強さを持つ妖怪であり謎が多いと専らの噂がたっていた。そんな妖怪が負けを認めるような人物と対談していたと考えると彼が急に恐ろしく思えた。
「えぇ。私なんかが勝てる相手じゃない。 」
「それでは貴方達の出会いについての話を聞かせて欲しいんだが……。」
私は彼女の元気の無さに戸惑いながら、彼との関係が純粋に気になった。
「構わないわ。」
すると、彼女は大きな溜息を吐いて話を始めた。
司がナズーリンを命蓮寺に送って帰ると、彼にとって何だか見たことがあるような金髪の女性が自分の家で寛いでいた。
「あら?おかえりなさい。」
「あぁ。ただいま。」
彼は彼女の挨拶を軽く返すと、入口にあった釣竿を持って再び出掛けようとした。すると、彼女は卓袱台を叩いて言った。
「いい加減にして頂戴。折角会いにきたんだから、話だけでも聞きなさいよ。」
それを聞くと彼は振り向いてため息をつき、釣竿を持ったまま、彼女へと向かいあった。
「分かったよ。それじゃあ自己紹介から頼む。」
そこから紫と司のお話し合いが始まった。
最初前書きに書いていたため溜息が出まくりました。そのデータが飛んだ時は絶望しました。予定では六時半に出せた予定でした……ハァ。それでは最後まで読んでくれてありがとうございます。