司「前にも言ったかもしれないけどさ、後書きで言えよ。」
忘れてしまうと嫌なので先に言います。それでは、本編の方へどうぞ。
「私の名前は八雲紫よ。自分の事はスキマ妖怪と名乗っているわ。」
「スキマ妖怪…………。固有種か?」
彼女の発した言葉に彼は疑問を覚えた。
「えぇ、私以外に見たことは無いから固有種だと思うわ。
それで貴方の名前は司。間違いないわよね?」
彼女は彼が自己紹介をする前に彼へと問いかけた。
「あぁ、間違いは無いが、僕の名前って有名なのか?」
彼は頷くと共に訝しげな視線を送った。ひっそりと暮らして来たつもりだった彼にとって名前を知られているというのは些か不審に思っても無理は無いだろう。
「天狗や鬼が住む山で貴方の話を聞いただけよ。貴方は蒼紅の化け物って言われていたわよ。」
「なんだよその二つ名はよ…………。」
彼女は口元を扇子で隠し、愉快そうに言うが司は唯溜息が出るだけだった。
「それで貴方に突然訪問して悪いけれどお願いがあるの…………。」
彼女は言葉を一度切ってから
「私の式にならないかしら?」
と言ってきた。彼は彼女へ白い目を浴びせて、再び溜息をついた。
式
簡単に言えば契約した主の使用人
悪く言えば、絶対服従で命令を背く事を許されない唯の下僕である。
そんな事をまだ会ったのも片手で数える程も無い相手に言うのだから彼の溜息は止まらなかった。
「やだよ。なんでそんなことしなくちゃいけないんだよ。」
当たり前だが彼の冷淡な反応をを見ると彼女は眉毛を上げていった。
「貴方の様な私の話を理解できている妖怪が少な過ぎる。だから私は貴方が欲しいの。」
「だからやだってば。大体えーっと、紫の話になんか興味はないし、一緒にいたくないから。第一僕に得なんかないだろう。」
司はそう言って立ち上がった。すると紫はスキマ越しに彼の首筋に短剣を当てた。そして睨みを効かせて威圧しようとした。
「やってくれるのなら、いくらでもお金は払うわ。」
「あ?馬鹿じゃねーの?」
彼は彼女の対応に呆れると彼女の短剣を持っていた手に能力で硬くした釣竿を貫通させた。唐突の痛みで手中から剣を落とすと、彼はその剣を持ち、スキマ越しに突き付けた。
「金じゃねーんだよ。その程度の物で買えると思ったら大間違いだぞ……。」
彼女はその瞬きが起きるような速さで起きた出来事を見て呆然としていた。その時自分と彼のとの大きな差を感じ、顔を悔しみで歪めていた。
「全く、一人で頑張るって言う話は何処に言ったんだよ……」
彼は前にあった彼女の考えの変わり用にあからさまに呆れ顔を浮かべた。
「一人じゃ無理って分かっただけよ…………」
彼女は悔しげな顔を悲しげな顔に変え、俯き弱音を吐いてきた。
「しょうがないな、それじゃあ紫の事を手伝ってやる。」
それを聞く彼女は勢い良く頭を上げた。
「何でも言う事を聞いてやる。でも、それは一回だけ。一度だけだから。だけど唯で言う事を聞く訳じゃない。条件は……」
「条件は?」
「お前に式ができた時だな。」
彼がそう言うと彼女は閉じていた扇子を開き口元を隠した。
「へぇ?甘く見られたものね。私を本気にさせた事を後悔しなさい。」
彼女はやる気に満ちた声でそう言うとスキマに消えていった。
あ、釣竿が………………。
「とまぁ、こんな所かしらね?」
「大筋の所は合っているからいいんじゃないか?」
紫や司はそれぞれそんな様反応を示した。
「それで今に至ると言うわけか…………」
玉藻前がそう言うと紫は答えた。
「えぇ。だからって訳では無いのだけれども、私の夢のために、彼を見返すために協力してほしいの、駄目かしら?」
紫の言葉を聞くと彼女は床に立て膝をついて、胸に手を当てて言った。
「分かりました。誠心誠意八雲紫様に仕えていきます。」
紫は笑みを浮かべ札を玉藻前の額につけて術式を唱え始めた。
式にする為の儀式の最中、彼は邪魔しない様に外でお湯を沸かし、急須にお湯を入れ、頃合いを見て部屋へ戻った。
「ふぅ、これで成功ね。どうかしら?私はしっかりと式をつくることが出来たわ!」
紫は湯呑みにお茶を入れている司に胸を張りながら堂々とアピールしてきた。
「おぉ、オメデトー。それじゃあ僕にお願いしたい事って何?」
彼は沸かしたてのお茶を飲みながら冷ましながらこう聞いた。
「え?そ、そうね。どうしようかしら?」
紫は手を顎に当てながら唸った。すると、近くにいた玉藻前が口を開いた。
「紫様。司様にはさっき私に話してくれたあの計画に同行してもらえばいいいのでは?」
それを聞くと紫は顎に当てていた指を鳴らして言った。
「あ!それがいいわね。流石藍ね。」
彼はそれを聞いて様々な疑問を感じた。
「色々と疑問点があるのだけど。玉藻前さん?いきなり敬語を使っていますがどうなさったんですか?後紫。藍って何?」
「あぁ、彼女との契約の時に玉藻前から藍に名前を変えたのよ。」
「その時に口調も変えるように紫様にも言われたのだが、紫様以上の存在なのに対して司様に敬意が払われていないのはどうかと思ってな。」
彼女達はこう答えた。
「律儀ですねぇ……。まぁ宜しくお願いしますね藍。」
司がそう言って手を差し出すと、藍は複雑な顔をした。
「私の方が紫様より偉くないのに私には敬語を使うというのはおかしくないだろうか?」
彼女は取り敢えず手を差し出して彼の手を握った。
「そちらの方が面白いと思ったんだけどお気に召さなかったみたいだからやめとくよ。」
二人は紫は顔を顰めたを見て、笑みを浮かべた。
司は湯呑に入っていたお茶を飲みきると、紫に話しかけた。
「それで計画ってどんな計画?」
それを聞くと彼女は小さく欠伸をして言った。
「あぁ、それはね。近頃ある場所を攻めようと思っていたのよ。」
「ある場所?」
彼が聞き返すと彼女は堂々と言ってきた。
「えぇ。そうよ。その場所はね
月よ。」
彼はその単語を聞くと呆気にとられてしまった。
「目的は月の持つ技術、軍事力、そして資源よ。」
「紫様の話では月には紫様が望むほどの物凄い技術があるそうです。」
彼女達の話を聞くとは一つ疑問が浮上した。
「なぁ、それ誰から聞いたんだ?この地にそんな話が広まっているところがあるのか?」
こう聞くと紫は頭を横に振った。
「いえ、八意永琳という人物がその事について教えてくれたわ。彼女達は月から逃亡した身で住居を与えると月に関する持っていた情報をくれたわ。」
「へぇ………………。」
彼は適当に相槌を打った。
「それで私は四千近くの妖怪を集める事が出来たわ。その妖怪達で月の技術を盗み帰る。あわよくばその地の占領をしようと思うわ。」
「はぁ……。」
「貴方には前線で戦わなくていいから、後方からの援護や技術を盗み去って貰いたいのだけど……。」
「まぁ、全然構わない。面倒な事かと思ったが、その程度のことなら引き受けよう。まぁ約束だしな。」
「本当なの!?引き受けてくれるのね!」
彼女は意外そうに喜びの声をあげた。その幸せそうな様子を見て彼は深く息を吐いていった。
「そんなに意外だったのかよ。」
「当たり前よ。貴方って何だかんだで私には冷たいじゃない?」
「別に?紫の考えが心底嫌いなだけで他は普通だけど?」
「それはそれで困るわね…………。」
彼女は高くなったテンションをがくっと下げた。
そして数日後、紫に集められた妖怪達は司が数えた限り四千を超えていた。その中には彼の知り合いもいた。
「あれ?司じゃないか!久しぶりじゃないか。」
その知り合いというのはかつて彼と喧嘩と宴会を繰り返した二本の角をはやした、小さな鬼だった。
「あ、萃香?懐かしいね。元気だった?」
彼が彼女に気づいて手を振ると萃香は手に持っていた酒の入った容器を口に近づけながら言った。
「あぁ、元気さ。そう言えばあの山にいた天魔を始めとする天狗どもはこの作戦に参加しているよ。鬼や勇儀は山でお留守番ってとこかな。私も留守番が良かったんだけど司に会えるなんてそれだけでも来たかいがあったって感じだね。」
「終わって生きていたら一緒に飲みいく?」
「おっと、付き合ってくれるのかい?それなら帰ったらお祭り騒ぎになりそうだね。」
司は旧友と会話に花を咲かせていた。もっとも二人に花なんて似合わないが……
「そう言えば紫から聞いたんだが、僕のこと蒼紅の化物って呼んでるのって誰?」
「あぁ、呼んでいるのは天狗や鬼どもがちらほら、呼び始めたのは私だけどねー。」
それを聞いた彼は取り敢えず彼女の事を思い切り殴った。彼女が痛みで悶絶する中、紫の声が聞こえ始めた。
「それでは、私達は今から月へ行きます。そこへついたらもう戦場です、心してください。私達の力で月を手に入れてみせましょう。それでは、妖怪に栄光あれ!」
「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
それを聞くと皆視界が暗転していった。
司は妖怪の集まりを醜いと感じながら、月人や神よりはずっとましか……と思っていた。
この話から激突!妖怪と人間と……編が始まります。懐かしのあのキャラや出てきます。
司「一番活躍するのは「だめだめだめだめ言っちゃだめだから!」気になる人とかいるじゃん。」
それを待つのが読者の、醍醐味だから!それでは、最後まで読んでくれてありがとうございます。