「それじゃあ、後のことはまかせるわ!」
「分かってるって、そっちも失敗するなよ」
二人はお互いに声を掛け合った後、正反対の方向へと走り出した。
「それじゃあ頼みまっせ、神様」
…………それでは、何時は我に何を求めるのだ?…………
司はその言葉を聞いて力なく溜め息を吐いた。
「それ言わなきゃ駄目なの?地味に恥ずかしいんだけど…………」
彼は悪態つく様に神への不満を口にした。しかし返事が無く時間も無い為、無駄な徒労を感じた。
「チッ……性格のいい神様だな!!さっさと力よこせよコンチクショー!!」
誰もいないとは言え少しばかり恥ずかしく思いながら彼はそう叫び、眩しい光を体から発した。
体に巡る神力や霊力の量が増加し、彼はグーパーと拳を作りながら手を見つめた。
「神達と戦った時よりも更に力が増していない?もしかしてこれも回数によって強くなるの?」
…………前にも言った気がするがその通りだ。最初の時よりも百倍以上は強くなってるからな。もしかすると次は千倍以上になってるかもしれない……分かっているであろうがもうこれはやらない方がいいぞ?…………
「分かってはいるさ。けれど神様に力を借りなくていい訳だとは限らない……全く最低でもそんな危機が起きないくらいの平和な世界に行きたいもんだ」
…………はっ、笑わせる。例えどんな世界に行っていても主は変わらずに使っていたであろう?…………
「違いないね」
彼は一人自嘲気味に笑うと力を開放し出した。
司の能力、:物を操る程度の能力は液体と相性がいい。人妖大戦の時は水で無く血で使用したが妖怪達を蹴散らす事が出来た。そういう事もあったが今回は湖の様に水溜りがあるわけでも、戦場にならなかった為血が合ったわけででも無い。だからと言って以前、神との戦闘した時に使用した矢があったわけでもなかった。しかし、これらに変わるものがこの地にはあった。それは…………
水分を全く含まない砂、岩であった。
彼が大戦の時に血を使用したのは扱いやすかったという事もあるが都市には砂が無かったという事もある。都市の地は整備されてあった為、地面を一度分解し再び形を作らなくてはいけなかった。もし無理に地面を分解して戦っていたら砂のとは違い扱いにくく力を普段より多く使い時間が掛かっていただろう。洩矢の土地もそうだ。水が良く含んだ肥沃な土地であったため、扱いに時間が掛かってしまう。だからその時は比較的使いやすく殺傷力のある矢を使用したのだ。
しかし、今回はどうだろうか
野ざらしにされていて、動物はおろか、植物すら育たない不毛の地。この場所は彼の能力にはピッタリと合っていた。
司は何とかの奇妙な冒険の犬みたいに力を使って相手の勢力を削っていった。
「それにしても…………」
彼は砂で大量の剣を作り、飛ばしながら嘆いた。
「相手が再生するのはキッついぞ…………肉体的にも精神的にも。神様!戦況は?」
…………今、奴が半分ほど隕石を分解した。これまでに掛かった時間は五分。単純計算が適用されるとすれば後もう五分であろう…………
「まじかよ、最低の話なんて宛になるものか…………」
それを聞いた司は砂の操作をやめ、剣を引き抜いた。
「敵の殲滅より、豊姫の警護を厚くするか……くそっ、非効率だな」
そしてこの辛く苦しい状況に悪態をついて彼女を探し始めた。
一方豊姫は扇子を使って隕石を分解していたのだが、敵の攻撃をよけつつ、力を使うのは大量の体力を使っていたため、まだ半分も過ぎていないのにも関わらず息を切らしていた。その為遠くからの爆破攻撃に巻き込まれてしまい、遠くへ吹き飛ばされ傷を負ってしまった。顔を上げずに目線を動かすと、敵がすぐそばまで迫っていた。司はまだこちらに気づいていない。
「ハァ…………ハァ……も、もう……終わりなのかしら…………」
彼女は力なく呟くとポタポタと血が流れているのに気がついた。
「依姫……、妃奈乃……わ、私はもうダメ……みたいなの後は宜しくね…………」
そして笑う様に一筋の涙を流し、彼女は死を覚悟した。
ザシュ…………
が、彼女が再び目を開けると剣を振り抜いている女性の姿がいた。
「神楽式刺突術……殲の型」
その女性の声と鞘に収まる剣の金属音を静かに響かせ豊姫の鼓膜を振動させる事で彼女を生きてるという事実を実感させた。
「妃奈……乃?」
豊姫は今ある力を振り絞って起き上がった。すると、後ろから抱きついてくる感触を感じた。
「良かった……姉上が生きていて、本当に……本当にっ!」
振り向くと普段は凛々しい姿をしたポニーテールの女性が彼女の背中で泣いていた。
「ごめんなさいね。依姫には心配を掛けてしまったみたいで……」
すると、依姫と言われた女性は頭を横に振って、笑みを浮かべた。
「いいんです。私は姉上が生きているだけで充分なのですから……」
それを聞いた豊姫は微笑したが、妃奈乃は二人に現実を突きつけた。
「それは後ででいいから。今すべき事は敵を倒すこと」
それを聞いた豊姫は依姫の肩を借りながら立ち上がった。
「分かっているわ、必ず月を守り抜きましょう。」
その声は怖じける様でもなく寧ろ誇らしいものであった。
「しかしどうしましょうか……。」
依姫が呟くと遠くの方から人影が見えたと思ったら、彼女達の隣に音もなく着陸した存在がいた。
「あっ、依姫とたちば……上原じゃないか」
その声の主がそう声を掛けると依姫は剣を構えて彼へと吠えた。
「貴様……妖怪の仲間か、悪いがここで死んでもらう…………」
「ちょっと待ちなさい。今から作戦会議を行うわ。」
しかし、豊姫は彼女を静止させて事情を話した。
「ツクヨミ様は妖怪なんかに力を求めたのか…………」
姉の話を聞いていても依姫はイマイチ納得がいかなかったのか小言をぼやいた。
「愚痴を吐いている所悪いが早急に状況を説明する。隕石はバラバラとはいかないが処理はしきれた。隕石については何の問題もないが、大多数の敵どもがこちらにやってくるからそれを殲滅しなくてはいけない」
「それで策は?」
「あるにはあるが、その為には依姫に力を借りたい。」
「だ、誰が貴様などに力を貸すか!」
彼女は彼の言葉を聞いて怒りを露わにするが彼は平然とした態度を変えない。
「ならば月は滅亡だな」
「だが!得体の知れない貴様などに力など………」
「依姫……気持ちは分かるけど彼はこの月のために力を貸してくれているのわかって頂戴」
彼女は彼に噛みつくような勢いで反対していたが豊姫がそう言うと渋々頷いた。
「それに当たって幾つか聞きたいことがある」
「聞きたいこと?」
「あぁ、君の能力は神を召喚できるのだろう?」
「正確には違う……が大まかには合っている。」
彼女の能力は:神の依代となる程度の能力であるため、そう答えても差し支えは無かった。
「それであれば大丈夫だな。君には呼び寄せてほしい神がいる。媒体、祝詞などは僕が用意するから、能力を僕にかけて欲しいんだ」
それを聞くと彼女は目を見開いた。
「正気で言っているのか?それは貴様が神の供物になるのと同義なのだぞ?そんなことして体が持つかどうか……」
「構わない。それくらいしない倒せないんだからね。それできるの?できないの?」
依姫はしばらく考えてから口を開いた。
「できる。代償は分からないが出来ないことはない。」
「分かった。それじゃあ準備しようか。」
彼はそう言っては瞑想を始めた。
「私はお前の宿主であり、使役者である。私の霊力、妖力、神力、魔力を使って私の願いを叶えよ」
…………なんだ?我に力を求めないのか?…………
「最後のひとつは大事にしておきたいからね。」
…………ハッハッハ、そんな事を考える奴は早々いないさ、本当に面白いの汝は………………いいだろう、汝に力を貸してばかりで我自身では全く運動していなかったからな、それで、汝の望む願いは?…………
「月を襲撃している謎の生物の殲滅。」
…………心得た。神としての我の力をとくと見よ…………
そう言うと司周辺の空気が変わった。
「依姫頼む…………」
「ここまで大掛かりな用意をして呼び出される神とは一体…………」
彼女はそう呟きながら、彼に能力を込めだした。すると、再び神の声が聞こえた。
…………汝よ、我に今一度願いを言うがよい…………
「神楽真司が命じる。かの偉大なる殺戮神よ!目の前の敵を殲滅せよ!!」
その神の声に彼が答えると、彼から黒いモヤが現れていき、巨大な一人の女性の顔が形作られていった。暫くしてモヤは、はっきりとした人の様な形を完成させた。
そしてその顔がゆっくりと口を開くと
口から放たれた得体の知れない波動は月の大気を破り、地表を揺るがし
目の前まで迫っていた謎の生物は音をたてることなく消滅させていった。
やっぱり一話多くなってしまいました。サーセン?それで、依姫の能力は合っていますが、出来るかどうかは自己解釈です。出来るわけないじゃん!なんて思っても見逃して下さい。それでは最後まで読んでくれてありがとうございます。