司「まぁ、人間って足りないとうるさくて、余ってても文句言うよな。」
それを何だか実感した映画でした。それでは本編の方へどうぞ。
「えっと……ここどこカナ?」
物凄く久しぶりな始まり方をしてから、彼は状態を起こした。そして辺りを見渡して何らかの建物の中で眠っていたという事を認識すると彼は再びベットに横たわった。
「えーっと、確か敵が消滅して、意識失って……今に当たるってところか……な?」
彼は欠伸をしながら腕を伸ばそうと思ったが、何故か腕がうまく動かなかった。更に左の方からジャラジャラと何かの音がたっている。不思議に感じて確認してみると左手首が鎖でつながれていて、手首が赤くなっていた。彼は腕や手を動かす度にジャラジャラと重々しい音がなる様子を見ると溜息をつき、再びベットに横になって眠りについた。
しばらくして再び目を覚ますと、眠そうにポニーテールを揺らしながらとなりで座っている女性がいた。司は再び溜息をついた。
「一番面倒なのに当たったよ……」
よりにもよってお前か……と一人愚痴ると突然、部屋の扉が開き、黄色い髪の女性が顔を覗かせた。
「あらあら?依姫にそんな事言うなんて酷い男ね」
その声を聞くとカクカクと眠そうに、というか寝ていた彼女はピクッと体を動かしてから目を擦って声の主を視認した。
「……あ、姉上!何故ここへ?」
彼女は驚いて立ち上がると姉上と呼ばれた黄色髪の女性はとてもおかしそうな様子で笑っている。
「交代の時刻だから代わりに来たんだけど、もうその必要は無さそうね」
必要がない……?と依姫は頭の中で疑問符を浮かべていたが後で彼女が指をさした方向を顔を動かした。しばらくして状況を呑み込むと飛び上がって後ずさった。
「い、いつから…………?」
「え?さっきからだけど?」
軽い驚きを覚えた為、依姫はが軽く息を吐いて心を落ち着かせると部屋にはまた別の女性が入ってきた。
「あ、起きたみたいですね」
「あぁ、お陰様で」
「フフフッ……それにしても……貴方がねぇ」
豊姫は一段落笑い終えるとそう感慨深そうに呟いた。一方依姫も姉同様な感じで口を開いた。
「えぇ、以前とは全く雰囲気や見た目が変わってしまいましたね」
「まぁ何年も経つと変わるもんだからね」
「別に変わってない気がしますけどね。私は分かりましたし」
「よく分かったって感じだったよな」
「最後にあなたを見たのは私ですから」
「そういうものか?」
「そういうものですよ」
しかし妃奈乃は動揺する事なく寧ろ彼へと笑顔を見せた。
「妃奈乃が……笑ってるなんて珍しいわね」
「妃奈乃さんは誰に対しても興味を持たないというイメージがあったのですが…………」
彼女達の意外そうな言葉を聞くと司は呆れた表情を浮かべた。
「えー。お前誰にも素を見せてないの?」
「はい……夫にもまだ。べ、別に素なんて見せる必要無いじゃないですか……?」
「ふーん。まぁいいけどさ」
「すみません……素とはなんでしょうか?」
依姫はドンドン進んでいく話に困惑したので彼に問いかけた。
「ん……?あぁそれはコイツに酒を入れれば分かる」
「ちょっと!?ちょっと待ってください!それさらりと暴露しちゃうんですか?」
妃奈乃はさっきの冷静さから一変して寝ている彼の肩を勢い良く揺さぶった。
「うぅぅぇ、今日にでもパーティを開いたら良いんじゃないぃぃぃ?あぁ、店じゃなくて誰かの部屋でやらないとコイツ絶対来ないからぁぁぁぁ」
司は彼女に揺さぶられながらもそう言った。
「分かったわ。検討してみるわよ」
豊姫はその言葉を聞くとニヤリと笑って心のメモ帳に書き込んだ。
「私は絶対に行きません!ぜーったいに行きませんから!」
彼女は拗ねると彼の肩を揺さぶるのを止めて早々と部屋から出ていこうとした。すると、
「ねぇ?豊姫。そのパーティーに参加したいんだけど……いい?」
「…………!!」
彼のこの言葉を聞くと彼女は突然足を止めた。豊姫は彼女の様子を見て更に口元を緩めた。
「えぇ、勿論よ。まさか貴方から申し出てくれるなんて嬉しいわねぇ。そうだ、今日にでもその宴会でも開いて是非とも貴方のお話を聞かせてもらうわ……」
「はぁ、貴方は本当に狡い人です…………」
彼女は深い溜息をついてゆっくりと扉を閉めた。
妃奈乃が出ていくと彼女を追いかけるように二人も部屋を後にした。
彼女達が部屋から出てしばらくすると再びドアが開いた。その時入ってきた人物は…………
「変わらないね……ヨミ」
「お前は随分と変わったな……シン」
ツクヨミはそう言って司の姿をまじまじと見つめてからベットに向かって一直線に近づいて彼を抱き締めた。
「お、おい…………」
「何も言わないでくれ…………私は今、この時を噛み締めていたい…………」
彼女はしおれた声で囁き続ける。
「シン…………ごめんな………………本当に…………私が、私がしっかりしていれば………あんな事には!」
彼女は次第に涙を混じえながら思いをどんどん口にしていった。最初は声も小さくて言葉もはっきりとしなかったのだが、暫くすると部屋中に声が響き渡っている。司はギュッと抱き締め返し彼女の耳元に口を近づけた。
「ありがとう……ヨミ。こんなにも僕のことを思ってくれるなんて嬉しいよ。僕は幸せさ。だからもういいんだ……もう重い荷物を背負うのは辞めよう」
「シン…………シン、私はお前に……会えて本当に、本当に………………」
彼女はそこまで言うと言葉を切って遠慮する事無く、目一杯泣き出した。
今回の月での事
前回の地球での事
ツクヨミには悔いや負い目やその他にも複雑で良くない感情が渦巻いていた。
しかし彼女は彼と会ってようやく断ち切り、解き放たれた。
今から幾億年間という気の遠くなる様な時の中で味わってきたの中で味わってきたしがらみという物から。
そしてその夜豊姫が企画して、司と彼の見舞いに来たメンバーで宴会を行った。
最初、妃奈乃はジュースだけを飲んでいたがツクヨミがどの機会かでジュースと酒をすり替えた為彼女にも酒が進んだ。彼女はいつも冷静沈着でクールな感じではあるのだが
「本当にありえない!!あんな奴よりも副教官と結婚したかったんですよ!!」
今となってはこの有様で妃奈乃は見事に荒れていた。
「全く……僕とそいつを天秤に掛けるなよ。仮にも婚約者だろ」
「仮にもって…………」
「あんな妃奈乃さんは始めてみましたよ……」
「本当に久しぶりに見たな。妃奈乃は最近私を誘ってくれないからなぁ」
「ツクヨミ様の部屋は飲むのに汚すぎるんですよ!ありえない!本当にありえない!」
「そこまで言うか」
「流石に凹むぞ…………」
依姫や豊姫は妃奈乃の荒れっぷりに戸惑い、ツクヨミと神楽は苦笑いしながら彼女の言葉に反応し、何を話そうという訳でも無く他愛のない話をしていた。
「そう言えば神楽さん。何故あの部屋で鎖に繋がれっぱなしだったんですか?貴方の力があれば鎖を断ち切るどころか逃げ出す事も容易かったのではないでしょうか?」
依姫がそう言うとツクヨミと司は溜息をついた。
「依姫……お前は知らないかもしれないが、あの部屋から無理矢理出ようとしたら幾つもの罠が作動する」
「罠?」
「そうだ。あの部屋は永琳と豊姫が設計した物だ。感電、水攻め、薬漬け…………」
「思い出しただけでも、恐ろしい………………」
神楽とツクヨミは笑顔を凍らせながら顔を見合わせた。二人が少しうわの空の状態になっているのは気のせいなのだろう。
「あぁ、だからあの部屋に入り、生きて帰りたいのなら手荒な真似はしない方がいい。末恐ろしい罠が作動するからな……覚えておけ」
「というかなんであの部屋に僕を入れたんだよ……」
「そりゃぁもちろん!逃げてほひくないかられふ!!」
酔った中ででも聞いていたのか出来上がった妃奈乃が手を挙げて言った。
「彼女に酒を飲ましてはいけないって部隊長達が言ってたのはこれのせいか…………」
「こんな妃奈乃さん見たくなかった…………」
妃奈乃を、知らない彼女達はげんなりとしていて酒を飲もうという気にもならなかった。
しかし妃奈乃はそんな事を思っていた綿月姉妹に酒を飲ませ続けていった。妃奈乃自身もどんどん飲んでいき、最終的には三人とも気を失ってしまった。
二人っきりになったときツクヨミはこれまでとは顔色を変えて司へと迫っていた。
「なぁ、シンよ。お前は月に残らないか?」
「んー?残る気は無いね。」
彼はちらりとツクヨミを一瞥しながらも即答した。
「因みにだが理由を聞いてもいいか…………」
「うーん………………じゃあ誰にも言わないというなら………………………………………………」
「心得ておる…………」
司は彼女にもう一歩近づいてから重い口を開き始めた。
「そ、そんな事が!!」
ツクヨミは彼の話を聞いて驚きのあまり酒瓶を落としかけている。バタバタとしていると司はその瓶をひょいと手に取り彼女に酒を注ぎ始めた。
「ごめんねヨミ…………こういう事でなかったら少しの間くらいは一緒にいたかったんだけどね。」
そして彼は自分の杯にも酒を注ぎ視線を彼女の方へと向けた。
「それなら仕方が無い……もし、それが解決してお前と再びこうして月で酒が飲める日を期待している」
「ハハハ……楽しみにしといてね」
二人はそう笑い掛け合うとカーンという音を鳴らして杯を交わした。
「……っと、寝てたみたいだな…………」
彼が目を覚ました時は周りはまだ暗く、ツクヨミもまだ寝ていたため、うたた寝をしていだなぁと判断した。そして他の誰かに見つかる前に月から出ていこうと思い、彼は立ち上がり伸びをしたから荷物の整理を始めた。
「忘れ物っていっても剣くらいか……?そういえば剣って何処においてたっけか………………」
彼が残っている記憶を辿りながら周りを見渡していると後ろから小さな声が聞こえてきた。
「どうぞ…………」
司が振り向くと妃奈乃が彼の剣を持って手招きをしている。
「ゲートまで送りますよ。ついてきて下さい」
そうして真夜中の月の都を二人で歩いていった。朝とも夜とも言えない時間であった為、人はどころか兎一匹おらず二人整備された道をどんどん進んでいった。
数分歩くと青白く光る光の輪が見えた。
「ありがとうございました。また貴方のお陰で私達を救ってくれましたね」
「今回は本当にたまたまだけどもな。また会えるといいな。」
彼は別れの挨拶を言ってきた彼女に笑顔を見せて手を振った。するとすぐにゲートの方に向いて歩み出そうとすると誰かが後ろから彼の服を引っ張って来た。
「またいなくなってしまうんですね……私は本当は……行って欲しくない…………です。もう…………貴方とは……別れたくないんですっ!」
彼が振り向くと彼女の目には涙を浮かんでおり声もしゃっくり混じりの聞き取りにくいものだった。しかしそれでも彼女は何とか彼に聞いてもらおうと必死に訴えていた。
彼女がこれまでとは違った態度を取るのは仕方ないと言えるだろう。
悲惨な別れ方をし、再開したと思っていたらそうそうに月へ返され、今度はわざわざ月を訪ねてきてくれたにも関わらず思いを伝えずに去ろうとしているのだ。
もう会えないとまで思っていた人物にこれまでに何回も会う機会があった。それなのに初恋の人に好きと言う事が出来ない。
そんな虚しく悲しい事があるのだろうか?
「妃奈乃…………」
司は少し考えた後、振り向いて彼女に近づいた。俯いた彼女の顔を上げて右手で彼女の口を押さえた。そして、
司は彼女の口を押さえた手の甲に
唇を重ねたのだった。
「っっっつ………………!!!!」
妃奈乃は突然の司の行為に目を丸くし、同時に顔を赤くなった。
好きな人に……昔からずっとずっと思い続けていた人にこんな事をされると顔も赤くなるだろう。彼の顔はそんな彼女の耳元に近づいて口を僅かながらに動かした。
「……………………」
そして満足したのか彼は再び彼女に笑顔を見せたと思うとゆっくりと歩き始めて光の輪へと入って行った。
「貴方は本当に狡い人です……………………」
青白く光り輝く輪を見つめながら涙を流し、それでも懸命に笑いながら彼女は一人立ち尽くした。
勿論、司が妃奈乃に何を言ったかは彼女しか知らない。
これにて月と妖怪と……編はおしまいです。次は記憶を呼んだ妖怪桜編です。平安京は終わりなのですが同じ枠組みの中に入れさせてもらいました。それでは次は波乱万丈?平安の都最終章です。最後まで読んでくれてありがとうございます。
修正したら随分と長くなったなぁ……