司「こんな作者が続けていけたのは読者様の冷たくない視線がなかったからだと思います。」
冷たくないって……えらく消極的だね。
司「事実じゃない?」
否定できない……それでは本編の方へどうぞ。
「それにしてもこの庭にはとても立派な桜が育っているのですね」
司は屋敷へ向かう足を一旦止めて目の前にそびえ立つ巨木に感慨深そうな視線を送った。彼が足を止めると他の者もそれに呼応するように足を止めてその桜の木を見つめた。
「これは西行妖という桜でございます。実はこの桜は人を死へ誘うと言われている妖怪の桜なのです……くれぐれもお気をつけ下さい」
「成程……忠告どうもありがとうございます」
彼はそう呟くと西行妖から視線を外し、屋敷へ向かう為に再び足を動かし始めた。
その後、彼等は屋敷に着くと妖忌が用意した団子を皆で食べ始めた。何気無い話をしていると段々と司や紫は話し合いが続いていった。それに対応するように彼らは食べるのを止めたのだが幽々子の団子を食べる速さが変わらず、というより速くなってほとんど食べることになった。そのため二人の話が一段落つく頃には山のように積み上がっていた団子ほ姿を消していた。
「幽々子様……もしかしてお客様の分まで食べてしまったんですか?」
「何よ、何か問題かしら?私はここの主なの。だからここにある団子は全て私の物。だから心配は無いわ」
「……全く幽々子は何時も通りね」
「は、はぁ……申し訳ございません司殿」
「別に僕もそこまで気にはしてないけれど……そんなに食べていて夕飯の方は大丈夫なのでしょうか」
司がそう聞くと彼女は彼の方を見て可愛らしく片眼を閉じた。
「大丈夫よ。甘いものは別腹だから」
「は、はい……」
彼は不覚にももしかしたら本当に別腹は存在するのではないかと疑問を持ってしまった。
お茶会が終わり、彼は一人、部屋で寛いでいると彼のいる部屋に不気味な空間が姿を見せ、そこから一人の女性が現れた。
「司。話があるのだけれど」
「はいはい、それで僕に何をして欲しいんだ?」
「…………そうね、話が早くていいわ。私が貴方をここに呼んだのは他でもない…西行妖を切り倒して欲しいの……できるかしら?」
「切り倒す……か、出来ない事はないがあの桜の力は尋常じゃない。変に切り倒すよりも封印した方がいいな」
「やっぱりそうよね。だとすると問題なのは……」
「封印の媒体になってくるね。しかもあれ程の力を持つ桜に見合う物なんてそう無いだろうな」
「そうよね……だとすると媒体無しでやるしかないかしら……」
「今のところはそうなるだろうな」
「そうなるとかなり大変ね…………」
「だろうな…………」
二人は揃って溜息をついた。
晩御飯を終えて暫くすると彼は明かりのついている一室に訪れた。
「失礼します。幽々子さん司です」
「あら?来たわね。上がりなさい」
彼はその声を聞くと麩を開け、彼女と向かい合うように座布団に座った。
「それで話とは一体?」
「そうそう貴方にお願いがあるのだけれど…………
私を殺してくれないかしら?」
彼が部屋に来た当初はにっこりと笑みを浮かべてはいたが、話を始めると笑顔は消えて鋭い眼差しを彼へと向けていた。
「はぁ、それは一体なぜ?」
「貴方も気付いているのでしょう?私が一体どのような力を持っているのかと言う事を………」
「まぁ、見ていれば大体」
「なら分かるわよね?私がどのような力を持つか…」
「食べ物を無限に食べる能力ですか?」
彼が間髪入れずに冗談を口にした。
「今、結構大事な話をしているつもりなのだけども……」
彼女はきょとんとしたのも束の間で先程よりも表情を暗くし、少し苛立ちを感じている。
「それは失礼しました。西行妖と貴方の雰囲気は似ている……そう考えると死に関係するものですかね。」
「あの桜と似た雰囲気か…………まぁ間違いじゃないわね。私の能力は:死霊を操る程度の能力だった。けれどもあの桜の影響を受けてしまって今では:死を操る程度の能力になってしまったわ。」
「そんな事があるのかよ…………」
:死を操る程度の能力。彼女の持つ物は抜きん出て特異な物だと知り、彼は若干の驚きを覚えている。
「だから私は他の人に迷惑を掛けたくない。妖忌や紫に世話を掛けたくないの…………だから
人思いに私を殺して欲しいの……」
彼女は頭を下げてきた。司はその様子を見て暫く考える様な仕草をして腰に下げていた剣を彼女へと渡した。
「こ、これは?」
「自分の事だから自分で決めろよ。何他人に責任を押し付けようとしてんだよ。その剣を貸してやるからそれで自殺しろ」
彼女は彼から渡された剣を引き抜いて胸の上に掲げた。彼女の腕は震えていて標準が定まっていない。次第に彼女の目には涙が浮かび始めるが相変わらず剣が音を立てて揺れている。
「どうした?死が怖いのか?紫や妖忌さんに迷惑を掛けたくないじゃないのか?」
彼は彼女を馬鹿にするように煽るかのようにそう告げる。それでも剣は彼女の胸を突き刺すことは無い。
「そんなの怖いに決まっているじゃない……だって…………生きたいんだもの…………皆に迷惑を掛けてでも今は……生きたいって思ったのだもの…………」
彼女は目に浮かべていた涙を一筋も二筋も流して剣を下げた。
「そんな気持ちがあるのに諦めるなんて勿体無いな」
「仕方が無いじゃない……もう皆に迷惑は掛けたくない。でも生きていきたい……ねぇ司!私は……私はどうすればいいの!何が正しいかわからないわ!」
彼女は彼の肩を掴んで悲痛を言葉にする。しかし彼は態度や顔付きを変えないまま肩を揺さぶり続けている彼女の事をじっと見つめていた。
「正しいなんて分かるわけ無いだろ……そんなこと知ってたら後悔何てしないさ…………でもな幽々子
お前が諦めたら紫や妖忌さんの気持ちを踏みにじる事になる。彼女達の頑張りを無駄にすることになるだろう……」
「な、なら!!それじゃあ妖忌や紫に!!」
「しかしどちらかは選ばなくていけない。」
「……………………」
「どちらか選ばないといけないのだから……」
「選んだ後で後悔しろよ。選ぶ前に後悔するのは周りにも自分にも迷惑だからな」
彼は彼女へとそう告げた。
彼の言葉を聞いて彼女は俯いていた顔を上げ、瞳に溜まっていた涙を拭って無理にでも笑顔を作った。
「カッコイイこといってくれるじゃないの……」
「アハハ。そうでした?」
司は暗いムードを払い除けて入ってきた時の様に丁寧語混じりの言葉に戻しながら笑い飛ばしている。
「だったら私が最善の策を取れるように慰めて頂戴」
「それは、僕じゃなくて紫に頼んだほうがいいでしょう」
「そんな事ないわ。寧ろ貴方にお願いしたいくらいよ?だって私貴方のこと気に入っちゃたんだもの」
「ハハハ、悪いですが私には心に決めた人がいるのでね」
「あら?それは気になるわねぇ。是非とも挨拶をしたいわぁ。側室として」
「まぁ生きていれば会えるでしょう」
「何?嫌味かしら」
彼女と彼の談笑はこの後も長く続いた。
夜も深くなる頃私達は夕食後煎餅を齧りながら二人で話をしていた。
「彼、なかなかカッコイイわね」
私が唐突にこういうと話し相手である彼女は顔を歪めた。
「そう?顔に関して言えば……ってそもそも仮面つけているじゃないの、あの不気味な仮面の何処が格好いいって言うのよ」
「顔じゃないわ、内面よ内面。彼はとてもカッコイイ事を言ってくれる、頼りになる方じゃない?」
「内面……ねぇ。それはちょっと同意できないわ。私に対しては何だか冷たい気がするのし…………」
「そうなの?でも紫は彼の話ばかりしてるじゃない?」
「そ、そんなこと無いわよ!!」
「えー本当に?実は気があるんじゃないの?」
「な、なんてこと言うのよ!無いわ!絶対に無いわ!」
あからさまに不機嫌になり彼女はお茶を勢いよく口へ注ぎ込んでいく。
「なら、私が彼のことを好きになっても問題ないわよね?」
そんな中、私が冗談っぽく笑いかけると彼女は飲んでいたお茶を吹き出した。
「な、な!なんですってぇ!!!」
私はそんな様子を目の当たりにして手で口を押さえながら笑いを堪える。全く……紫ったら分かりやすいわ。
「あら?一体どうしたっていうのかしら?」
「どうしたもこうしたもないわ!どうして彼なのよ!」
「恋に理由なんて無いのだと思うのだけれど?」
「…………!!もうどうなっても知らないわ!」
「待って紫。司について幾つか聞きたいの…………」
「何かしら?」
すると彼女は不機嫌な顔をしながら振り向いてくれた。
「彼には心に決めた人がいるって言っていたのよ…………だから彼の交友関係を知りたいのだけれども、教えてくれないかしら?」
「心に決めた人……司がそう言ったの?」
彼女は少し驚いた表情で聞き返している。
「えぇ。誰か心当たりは無いかしら?」
「はっきり言って心当たりは無いわ。天狗や鬼を初めとする妖怪の交友関係を持ってるのは知ってるけど……そこまで長く共にいなかったから恋人って関係はないと思うわ……」
彼女は唸りながらぽつりぽつりと思い浮かんでいく者をあげていくが納得がいく答えはどうやら得られなさそう。
「もしかしたら紫の知らない人かも知れないということね」
「おそらくは…………」
私は紫の話を聞いて彼に対する闇を深めていった。
様々なフラグを立ててみました。後いくつ立てれるかな?
司「余計なことはしないでくれよ……」
多分次でこの編は終わると思います。
司「えっ?スルーなの?」
それでは最後まで読んでくれてありがとうございます。
司「えっ、ちょっと?あっはい。ありがとうございます…………。」