「ふぅ……取り敢えずこれを何とかするか。」
神楽は要塞と化した牢獄を触れた後に剣を引き抜きこう呟いた。そして柵を薙ぎ払うとピシピシと音がなった後にズズズズっと崩れを落ち、真っ暗な空洞に光が差した。
「うぅ…………。」
この光は天国への光であろうか……それとも地獄の光なのだろうか……ここ何処だろうか?
生きているのだろうか……はたまた死んでいるのだろうか……
そんな私にもはや無くなっていたと思っていた感覚が働いた。
「全く…………何ていう顔してんだよ……」
声が聞こえる事が出来ることに驚きを覚えた私はゆっくりと顔を上げた。そこには見たことも無いはずの男が立っているのを確認した。
「お、まえ……は?」
「僕?僕の名前は神楽。」
もはや空気の音に過ぎないほど掠れていた私の声は辛うじてだが届いていたみたいだった。
「か……ぐら?」
聞き覚えがないのかはたまた長い間閉じ込められていて頭が働かないのか知らないがその三文字に聞き覚えが無かった。彼は困惑している私に向かって近づいてきた。私は彼に未知の恐怖を感じ逃げようと思って立ち上がろうとした。しかし生後まもない子鹿の様に足をガクガクさせてとても歩ける様な様子では無かった。彼はわたしの目の前まで来るといきなり抱き締めて言った。
「誰もいなかったんだよな……誰かへと助けを求めても誰も来てくれなかったんだよな……俺もその気持ちは分かるから?」
「…………!!」
「お疲れ様。お前はもう独りで生きて行かなくてもいいんだ……。」
「……グスッ…………怖かった。恐ろしかった。…………けど独りだった……うぅぅぅぅぅ、うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ怖かったんだよぉぉぉぉぉ。もう、もう!誰とも会えないって……」
私は懐かしく思った。前にもこんな事があったなぁって
「全く…………美希は相変わらず泣き虫だなぁ……」
あぁそうか……この不器用ながら優しい胸は
「また会えて嬉しいよ……お兄ちゃん。」
大好きな私のヒーローだったんです。
「えっとぉ…………何がなんなの?」
エネルギーの衝撃波を受けた黒髪で短髪の天狗はその光景を見ていて少なからず驚いていた。すると隣で見ていた白狼天狗の一人が呟いた。
「まさか彼がやってくるとは…………。」
その独り言を耳ざとく聞いていたもう一人の白狼天狗が彼女に問い詰めた。
「母上、あの方をご存知なのですか?」
「えぇ、貴女が生まれる前。まぁ文さんやはたてさんは生きていたと思うのだけれどね……。嘗て鬼がこの地を統治していた頃、ある日この山に不思議な男がやってきた。その男は河童の技術が見たいと言ってこの山にきた。そしてある河童と半年近く掛けてある物の設計図を作り上げた。」
「ある物?それは一体なんなんだい?」
「工学迷彩。にとりさんが今使ってるそれは貴女の祖先と彼で作ったのよ。というか彼が設計図を作ってかおりが組み立てたみたいな。」
「それは本当なのかい?」
「えぇ、それに彼は鬼にも勝る力と天狗にも勝る速さを持ち合わせているから本当は彼がいた時は誰も彼に逆らう事はなかった……。」
「嘘でしょ……あの鬼相手に?」
「信じ難い話かもしれないけどこれは本当の事。現にあの美希があの様子だしね。」
「どうしてあんなに好かれてるの?」
「まぁ昔たちの悪い鬼に絡まれれててそれを助けたのが始まりね。何かよく分からないけど彼女にしか話してない事とかがあるらしいし。それにしてもこの幻想郷に彼が…………。」
彼女は微笑みながら二人の様子を見ていた。
「大丈夫か?」
「まぁ、何とか歩ける見たいだ。」
さっきまで泣いていたのが嘘かのように毅然とした態度をとっている。しかし号泣していたため目元は赤く締まりの悪い感じになってしまった。すると一人の白狼天狗が彼に近づきお辞儀をした。
「久しぶりですね、司。今は神楽と言ったところですか。」
「そうだね。なんか知らないけどいつの間にか結婚してたみたいだね。出来れば僕も呼んで欲しかったよ。」
「それは貴方が各地を旅してたからですよ?」
「もう一周くらいは出来ると思ったんだけど……長く居座りすぎたかな。というか今はそんな話をしている場合じゃない。」
彼は久しぶりの再開に喜びの表情を浮かべていたが目的を思い出すと真剣な表情になった。
「天狗の暴動を止めに来たんですか?」
彼の言葉に黒髪の天狗が反応した。
「あぁ。だけどただ止めるだけだと再び同じ事が未来にも起きるだろうから……」
「新しいリーダーを立てる。今暴れてる天狗に勝る信用を持つ天魔様に。うまく行きますかね?」
今の状況を打破するにはトップの天狗が騒動を辞めると言わない限り続く。しかしトップの天狗には誰にも逆らえない為どんなに損害が被ったとしても必ず上の指示に従う。
「天狗は上下関係がしっかりしてるからよっぽどの事が無い限り今回みたいな事は起きないだろうね。」
「確かに逆らう事が間違ってるって分かれば私達河童にも危機がやって来るからそのリスクを巡って妖怪の山の中で内輪もめも起きそうだね……」
「そうすれば天魔のこれまでの選択が正しかったという考え方が広まって来るだろうしね。」
「成程ねぇ……。それじゃあ私達は何すればいいかな?」
「君達二人みたいな烏天狗はこの騒動に介入しない方がいい。大体君達の頭の独断行動だからね。」
「そ、それは……。」
「だからこの騒動の傍観に徹してる白狼天狗や河童を始めとする烏天狗以外の種族に人里へ直談判しに行く。取り敢えず博麗の巫女が抑えてるっぽいからね。」
「成程……。」
「けれども大事なのはその種族を集める事だ。僕は土地勘に詳しくは無いし、何処にどの種族がいないかは知らないからね。」
「そこで私達二人の出番って事ですか。」
「そういう事だ。」
「任せておいてください。幻想郷最速は伊達じゃ無いって事を見せてあげます。はたて、私は向こうを行くからそっちをお願い。」
「はいはい。でも本当に来ると思う?」
そんなリスキーな事を他の種族が到底すると思えなかったので彼女は彼にこう問いた。
「そこはこの言葉を告げてくれ。」
彼は二人に耳元でゴニョゴニョと囁いた。
「ふふっ、確かにそれはいい考えね。」
「こらそこ、能力で聞くんじゃない。」
:聴力を引き上げる程度の能力を使った彼女は吹き出してしまった。
「何から何まで悪いな。つか……神楽。」
「お前には最後の最後で威厳を見せてもらうんだから弱々しい事を言ってるじゃないぞ。」
「あぁ。分かってるさ。」
彼女は弱気な態度を奮い立たせてぷるぷると震えながら親指を立て、ニコッぎこち無くと笑った。
そして今から
妖怪の山で高い権力を持つ二人の激突が始まろうとしていた。
文字数が少ない上、もう一つの小説を執筆する意欲もでない……目標は果たせるのだろうか。まぁ何とかなると信じて。それでは最後まで読んで下さってありがとうございました。