神楽「読むのはお前じゃないだろ。」
「ゼェゼェ……これだけ戦っておいてまだやられないのか……貴様は。」
「あ、当たり前でしょ?私はやられる訳には行かないんだから…………。」
大天狗と博麗の巫女が激突して一時間近くが経とうとしていた。天狗たちは数で圧倒していたが彼女の打ち出される高い威力の範囲攻撃に翻弄され、どんどん数を減らしていった。しかし数が減るにつれ範囲攻撃は当たらなくなり距離をとって攻撃する様になった。四十分以上が経つと彼女の動きも鈍くなり、スキを突かれることも多くなっていった。それでも彼女は意地と使命感に突き動かされ天狗たちの勢力を削って行った。
「しかし、やっと……やっとこの忌々しい博麗の巫女を殺して幻想郷のトップに立つことができる。妖怪の賢者は冬眠から起きたところを狙えば良い。あの程度の妖怪は何も恐れる必要が無い。」
「それって紫の事?言っておくけれどもアイツは私程甘くはないわよ?」
「ほざけ……妖怪のトップは天狗だ。人間さえ届く筈もないのだが……まぁ貴様はイレギュラーだ。」
「イレギュラー……ねぇ。」
その言葉を聞いて博麗神社で留守番をしているであろう彼を思い浮かべた。しかし、溜め息をつき気持ちを入れ直して大天狗へと正面から向かい合った。
「次で決めるか……。」
「そうね、そうしましょうか。」
二人はそう言うと残りに余っている力を振り絞りだした。空気はぴりぴりとして他の天狗達は二人から離れて行った。
一触即発
そんな状況下で
「辞めるが良い!」
第三者の声が人里に響いた。
二人の目線の先には神楽に肩を借りている天魔の姿があった。
その途端天狗達はどよめきだし、大天狗は怒りを覚えた。
「何故貴様がここに……いやもう遅い。この地を我らが治める時代が来るのだ。」
怒気を孕んだような声でそう言うもボロボロな状態だったためか声は掠れかけていた。
「そんな事をして何になるか!この地に馴染めなければ自然に淘汰されるのが運命。自然に逆らわずに何事も順応するのが大切だというのだ!」
「黙れ!貴様のような腑抜けに我らの長が務まるか!今はそれどころでは無い。誰かコイツを摘み出せ!」
しかし、そんな大天狗の声も虚しく誰一人として動こうとする者はいなかった。
「何故だ……早く摘み出せと言っているんだ!」
「何故ってあれを見れば分かるであろう?」
「何……?」
天魔の指をさした方向を見ると妖怪の山に住んでいる多種多様な妖怪達が天狗達を囲んでいた。
「これで分かっただろ!やっぱり無理だったんだよ!」
「だからやるなっていったのにね……。」
「権力を天魔様に全て献上しろ!そして争いの無い幻想郷を!」
囲んでいた妖怪達は次々に意識のある天狗達に不平不満をぶつけて行った。最初は臨戦態勢だったが相手の数と自分達の行いを振り返って間違っていたと思う者が次々に現れて、大天狗勢力はどんどん縮小していった。
「お前達…………。」
天魔は自分の事を慕ってくれる仲間が多くいた事に歓喜を覚え、瞳に涙をこらえながら宙を浮いていた。
「何故だ…………何故なんだ!我らは何故人間に服従せねばならないのだ!」
「服従なんかじゃない!私達は同じ生命として共に生きていくんだ!共存していくんだ!」
「黙れ黙れ黙れ黙れ!貴様なんかがいなければぁぁぁぁ!」
大天狗はそういって天魔に襲いかかったが、彼女の後方から多数の御札が降り注ぎ、その爆発によって彼は墜落して行った。
「悪いわね、これは博麗の巫女である私の仕事なの。そもそも戦いを半ばにして違う奴に目を付けるなんてやられても文句は言えないわよ?」
二人が驚いて彼を見ていると後ろからお祓い棒を構えた彼女がそう言い放った。
私は怪我でボロボロになった大天狗を見て彼に聞いた。
「神楽…………。」
「どうした?」
「私の行動は果たして正しかったのだろうか?」
「正しかった……ねぇ。」
それを聞くと彼は唸りながらそう呟いてこう言い放った。
「別に間違ってても良かったんじゃない?」
「えっ……!」
彼の衝撃的な一言に私は驚いて何も言えなかった。彼は構わずにこう続けた。
「間違って無ければ僕とは天魔とは出会えてない。それはある種の正しい事なのかもしれないけどお前は間違ってたんじゃないかって思ってたんだろ?」
「そ、それは……。」
私は彼の機嫌を損ねない様に言葉を選ぼうとしていたが彼はくるりと回って縛られている大天狗の方を向いた。
「正解か不正解か知らないけどお前には仲間がいる。お前の考えや意志を継いでくれる者、汲み取ってくれる者がいる。それだけでいいじゃないか。」
「神楽…………でも私は!」
私は私自身の行動に自信が持てなかった。何度も間違えたと思っていた。それでも私は不十分だった。
「それでも!!。」
彼は私の言葉を遮って話を続けた。
「それでも…………、お前が自分に自信が持てないっていうなら………………
美希……お前は正しいんだから胸を張れって言ってやるよ?」
「お兄ちゃん………………本当に……本っ当にありがとう。」
私は再び同じ男の胸で泣いてしまった。
カシャ
彼等から少し遠くの場所で騒がしい音に紛れて機械音がなった。その音を立てた本人は満足気にその機械を見ている。
「いやぁーここまで解像度と画質がいいなんて流石河童のカメラですねぇ。」
「だよな。というかカメラなんかこの時代にあったのか?」
「えぇ、何でもすごく時間が掛かったみたいです…………が。」
彼女は自身の独り言に返事のする方を見た。すると彼女の持っているカメラに映り込んでいた男性だった。彼女は顔を青ざめ、翼を広げて一目散に飛び立った。そして暫くしてから木の上に止まると一息をついた。
「し、死んでしまう所でした。あそこで逃げておかないと…………。」
「別にお前を店の焼き鳥のメニューになんかするつもりはねーよ?」
「あやややややや!!な、何故ここに?」
「何故ってお前を追ってきたからに決まってんだろ?」
「ひ、ひぃぃ…………。」
「取り敢えずこの写真は消して貰おうか。」
「は、はい…………モガッ!!」
彼女は次の機会を狙おうと思い、渋々ながらも彼に泣きついた天魔の写真を消した。それを確認した彼は、カメラをしまった彼女の半笑いした口の中に目にも止まらないスピードで腰にささっていた剣を突きつけて言った。
「貴様のやっている行為は天狗の地位を揺るがす事だ……自らの行為が安易なものであることを理解しろ。一度やった事に責任を取ることはそう簡単なことでは無い事を身をもって知る必要があるなんて言わないよな?」
向けられた多大なる殺気に怯えながら彼女はカクカクと首を縦に振った。それを見て彼は微笑み剣を鞘に戻して人里の方へ飛び去って行った。彼女は夕日が彼女に照るまで、今まで味わった事のない恐怖を感じていた。
天狗騒乱異変
こう言われる幻想郷で起きた初めての大きな異変がキッカケで後にスペルカードという物が開発され、天狗を筆頭とする妖怪に広まって行った。
三千文字を超えない……くやしいです!次話は多分スペルカードについてか、この話の後日談です。
神楽「んな事はさておきUA一万回を超えました。」
そうでした!皆様の応援がきっとあってこその事だと思っています!
神楽「きっととか言うなし。」
これからも頑張っていくので応援よろしくお願いします。それでは感想、質問等々常時受け付けています。最後まで読んで頂いてありがとうございます。