数日後、彼は大きな鞄を持って稗田家へと向かって行った。一ヶ月近く前の顔ぶれとは紫と慧音がいるだけであまり変わったことは無かった。彼は軽い挨拶を交わしたあと、鞄から辞書並みに厚い本を出した。すると慧音はそれを見てから口を開いた。
「お、おい。神楽。それは何だ?」
「この本の事ですか?これは僕が思いついた今後の問題を纏めた物です。」
「今後の問題だと?」
「えぇ、今の状況の解決。これから起こるであろう問題点。またその時の対処などなど様々な事柄等をこの本一冊にしたものです。」
「へぇ……あの、その本を是非とも読ませて頂けないでしょうか?」
「えぇ、構いません。というより稗田さんに預けようと思っていたので保管して頂けますか?」
「えぇ!いいんですか?ありがとうございます!」
彼女はその本を彼から受け取るととパラパラと中身を覗き、ニコニコと胸に本を抱きかかえた。
「それで貴方の考えた妖怪と人間の争いを解決させる方法は一体なんなのかしら?」
紫は頃合いをみて彼に話しかけた。
「まぁ簡単に言えばゲームをするんだよ。」
「ゲーム?」
彼の返答に藍は疑問を覚えた。
「そう。ゲーム、つまり遊びだね。自分の能力を最大に生かしたゲーム。具体的な内容ははっきりとは決まってないけど大体の内容は決めてある。」
「それはどんな内容なんだ?」
「それは後で稗田さんに聞いて。その本に書いてあるよ」
「ふぅん、そう。分かったわ。」
「それじゃあ僕は戻るから。また今度ね。」
彼はそう言うと空になった鞄を持ち部屋を出ていった。本を受け取った彼女は早速座布団に座り込み辞書の様な本を開いた。その本の目次を見た慧音は目を点にし、天魔はふふと頬を緩ませた。
その本に書かれた内容は大きく分けて三つ。
過去の問題、未来起きるであろう問題、そして人間と妖怪の関係性についてだった。
過去の問題は干害、冷害など災害。自警団の問題。食糧問題、妖怪の被害などである。
一方未来の問題は人口の増減が予測できない事、妖怪の増加が著しいため未来では今よりも危険が伴うのではないかという事などである。
そして最後に人間と妖怪の関係性についてでは妖怪が危険であると認識されにくくなってしまった事、それによって起きた事件、大きく取り上げる事となったのはやはり二つの勢力による争いの解決方法である。
彼の考えた物は簡単にまとめると自分の能力を最大限に生かしたゲームをするというものだった。その過程で殺しは禁止、怪我はご愛嬌と言ったもので最低でも死なない様なゲームをするという感じだ。ゲームの競い合う点は自分を相手より綺麗に、より美しく見せるというものだった。
「綺麗に見せる様にするですか……。それはつまり自分を飾るって事なんでしょうか?」
声に出して読んでいた彼女はそう話を区切った。
「そんな遊びなんて流行らない気がするのだがな……。」
「あぁ、それは私も思った。」
その場に居合わせていた慧音や藍達には彼の考えは理解出来ていなかった。
「しかしこうも解釈できないか?自分は優雅に勝つ、自分は綺麗な技を使うなどとな。」
天魔は顎に手を当てながらそう答えた。
「確かにそれならいいかもしれないわね。でも私みたいに能力が綺麗にする事に適していない妖怪達はどうすればいいのかしら?」
紫は天魔に疑問を問いかけると稗田が口を出してきた。
「それはこのページの端に書いてあった弾幕という物を使えばいいと思います。」
「弾幕?それは一体なんなのだ?」
慧音は彼女に問い返した。
「弾幕とは自分の生命エネルギーである霊力、妖力などから作り出す玉の事だ。」
藍は慧音の発言にこう告げ、手を開いて弾幕を作り出した。
「これが弾幕だ。触れると弾けて触れた者は傷を負ったり疲労したりする。下級妖怪や一部の妖精が自分の身を守る為に使っている物だ。」
天魔は藍の作り出した弾幕に触れながら言った。
「そう言えば私も小さい頃にそれの出し方をやった気がするわ……。それでそれをどうするのかしら?」
博麗の巫女は持っていた湯呑みを置いて言った。
「それを当てるというのが一番簡単であろうな。」
「しかしそれでは危険なのでは?」
「確かに無害という訳では無いが当たり過ぎなければ命に別状は無い。その本にも書いてあったであろう怪我はご愛嬌だとな。」
「成程……それなら危険は少ないか。仮に弾幕を使うのであるのなら出す量も当たっても良い回数も決めなくてはならないな。」
「確かにそれは一理ある。」
「でもそもそもこんな友好的なルールを守ってくれるのでしょうか?」
「そうねぇ……私と彼女が行ってくれれば問題があっても事態の収拾は楽だろうけど。」
「えぇ……面倒くさいわね。」
「貴女は博麗の巫女としての仕事をしなさいよ。」
「私の仕事は神社にいる事だから別にいいじゃないのよ。」
やれやれと言った表情で彼女は再び湯呑みの中のお茶を啜った。彼女以外の部屋にいた者達は溜息を吐いた。
それから数週間話し合った結果、弾幕を使った争いをするという事に大筋であるが合意した。彼の作った原案に更に細かいルールや制限を作り遊びの元となる物が完成した。天狗騒乱異変が起きてから三年近く経ったある日、紫がいつものメンバーを集め、皆にこう言い放った。
「ついに私達の手によってアレが出来たわ!」
紫は懐から白い紙を出して叫んだ。
「アレとは弾幕を綺麗に見せる技を使う時の札か?」
「えぇ、そうよ。この札に自分の思い描く物を念じるとそれが投影され、弾幕が放たれるの。」
「成程……そんな物を作れるなんて凄いですね。」
彼女の説明を聞いて神楽は微笑みながら言った。
「白々しいわね。貴方だって手伝ってたじゃない。しかも重要なところを。」
彼の言葉に少し嫌味を覚えながら彼女はそう呟いた。
「そうでしたけ?それでアレはなんて呼べばいいんですか?何時までもアレだと変じゃないですか?」
「それについては問題ないわ。スペルカードと名付けたのだから。」
「スペルカード?何か不思議な名前だな。」
紫の口から聞きなれない言葉が発せられたので慧音は瞬時に聞き返した。
「西欧の言葉で文字が綴られた札という意味らしい。少し前現代に行った時に異国の言葉を覚えて、その言葉を引用してみたのだ。」
慧音の疑問に藍は丁寧な説明をした。
「スペルカード……まぁ、悪くは無い響きだな。」
「でしょう?」
天魔の反応に彼女は嬉しそうにそう言った。
「それではこの弾幕を使った遊びの名前はどうしますか?」
彼の問いかけに皆はっとした。
「そう言えばまだに名前は決まってなかったわ……。」
「どうせ紫の事だから忘れてたんでしょ?」
紫が扇子で口元を隠すと同時に博麗の巫女はそう言い放った。
「名前ねぇ……どうします?」
彼がそう言うと皆が唸りながら一人一人考えを張り巡らした。
「取り敢えず皆が案を出して、そこからクジでいいですかね?」
石のように微動打にしなかった様子を見かねて彼は持ってきていたメモ帳替わりにしていた本をちぎり皆に配った。そして皆が配った紙にそれぞれが書き終わると鞄の中に入れ混ぜはじめた。
「紫さっさと引いちゃってよ。」
「狡いわ!それ。藍引いておきなさい。」
「なんでなんですか!ここは紫様が引くべきでしよ!」
「なんでそうなるのよ!天魔が引いて頂戴。」
「私は構わんがいいのか?前回の異変の主犯の種族だぞ?」
「なら慧音よろしく。」
「どうして私に回ってくるのだ……」
彼はそのこそこそ話を聞いていると呆れて自分が引く事にした。皆があっ、と間抜けな声を出す中こう言った。
「えっと、博麗さんが書いた(弾幕ごっこ)に決定しました。賛成でよければ拍手をお願いします。」
すると彼らのいた部屋は拍手喝采が巻き起こった。
小説を書いている方はどのように書いていますか?僕は最初に会話文を一通り書いてから地の文を付け足すようにしてます。長い地の文は物語の進みに合わせて書いていますけども。博麗さんと稗田さんは実は名前あんじゃね?という疑惑を持っていたので新しく名前を考えた方が良かったのかぁ……なんて思いました。調べたけど見つからかったんす……本居さんも確かそうですハイ。それでは最後まで読んでくれてありがとうございました。感想やコメント常時受け付けています。